どうみる?日本の財政赤字(9) - 賃上げが赤字減らす?(山家悠紀夫さんに聞く) | くろすろーど

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 《※連載「どうみる?日本の財政赤字(山家悠紀夫さんに聞く)」の「(1)孫子の代まで借金漬け?」 「(2)国の財政と家計は性格が違う?」 「(3)日本がギリシャのようになる?」 「(4)国民を黙らせる「呪文」?」 「(5)公務員人件費が高いから財政赤字が増えた?」 「(6)社会保障費が財政赤字の原因?」 「(7)赤字の原因は大型公共事業?」 「(8)法人税減税・高額所得者減税が赤字を拡大?」 のつづきです。》


 ――財政赤字にどう対処すればいいのでしょうか?


 山家 社会保障など必要な公共サービスを削って財政再建をめざすのはまったく間違った道です。しかし、増え続ける財政赤字がずっとそのままでいいというわけではありません。

くろすろーど-国内余剰資金


 ◆内需拡大による景気回復が赤字削減への基本


 財政赤字を減らしていくためには、①世界一の国内余剰資金の活用(上のグラフ参照)、②内需拡大による景気の本格的回復、③負担能力に応じた税負担の実現、などが考えられます。


 とりわけ、内需拡大による景気の本格的な回復で、税収を増やすことが基本になります。


       ▼またもや、輸出主導型の景気回復
        【景気の谷と比較した需要の増減(内閣府「国民所得統計」)】


くろすろーど-輸出主導


 上の表にあるように、景気の谷時点の2009年1~3月期と直近時点の2010年4~6月期を比較すると、日本経済の総需要の増加は16兆円です。そのうち輸出の増加が23兆円で、国内需要は7兆円も減少し、雇用者報酬が2兆円も減っています。まさに、小泉内閣のときの景気上昇期と同じで、またしても輸出主導型の「実感なき景気回復」になってしまっているのです。


 ◆日本だけが賃下げでデフレ・スパイラルに陥っている


          ▼日本のみ、長期にわたり物価が下落
            【総合物価指数(GDPデフレータ)の推移】

くろすろーど-物価


          ▼日本のみ、長期にわたり賃金が下落
            【民間企業労働者1人当たりの賃金の推移】

くろすろーど-賃金


 上の2つのグラフにあるように、日本以外の国は長期にわたり賃金が上昇しているのに、日本だけが長期にわたり労働者の賃金が低下し続けています。そして、日本だけが長期にわたり物価が下がっているのです。この両者の関係は、①1998年以降、日本では賃金が下落に転じた→②そのため家計の収入が伸びず消費支出も伸び悩むこととなった→③消費不振を打開すべく企業は値下げ競争に走り、これが物価を下落させることになった→④値下げは企業経営を厳しくさせ、賃金をさらに引き下げさせる圧力として働いた→⑤賃金がさらに下落すると消費支出は一段と冷え込むことになる、という「デフレ・スパイラル」に陥っているのです。


 ◆賃上げ→内需拡大→景気の本格的な回復→

    →税収増→財政赤字減へ


 さらに、賃金が低いから競争力ばかり強くなり、円高をまねき、また苦しくなるという悪循環を生んでいます。「デフレ・スパイラル」を突破するには賃金を上げる必要があるのです。賃金を上げることで、内需が拡大し、景気の本格的な回復となり、税収が増え、財政赤字を減らしていくことができます。(つづく ※山家さんへのインタビュー記事は隔日掲載です)


(聞き手・編集=国公労連・行革対策部 井上伸)