どうみる?日本の財政赤字(7) -赤字の原因は大型公共事業?(山家悠紀夫さんに聞く) | くろすろーど

くろすろーど

国公労連オフィシャルブログ★貧困と格差なくし国民の暮らし守る行財政・司法へ

 《※連載「どうみる?日本の財政赤字(山家悠紀夫さんに聞く)」の「(1)孫子の代まで借金漬け?」 「(2)国の財政と家計は性格が違う?」 「(3)日本がギリシャのようになる?」 「(4)国民を黙らせる「呪文」?」 「(5)公務員人件費が高いから財政赤字が増えた?」 「(6)社会保障費が財政赤字の原因?」 のつづきです。》


 ――財政赤字が増えた本当の原因は何なのでしょうか?


 山家 日本の財政赤字が大きく拡大した原因のひとつは大型公共事業です。とりわけ、1990年代に続けられた大型公共事業費の膨張に問題がありました。


 ◆1990年代の大型公共事業へのバラマキ

   (※それぞれのグラフ上でクリックすると大きくして見ることができます)


              日本の公共事業投資の推移

くろすろーど-90年代の公共事業


 上のグラフにあるように、1986年までは年間20数兆円だった公共事業投資が1987年から増え始め、1993年と1995年には年間50兆円を超え異常に膨張しました。1980年代の公共事業投資の合計が291兆3,439億円であるのに対して、1990年代の合計は460兆2,869億円と1.6倍にも増えているのです。


 (※なお上のグラフにある「海部・ブッシュ430兆円のとりきめ」というのは、日米構造協議で、アメリカ政府が日本政府に対して、公共事業投資を大幅に拡大することを要求し、海部内閣が10年間で総額430兆円を使う「公共投資基本計画」を1990年に決定したことをさしています。また、「村山・クリントン630兆円のとりきめ」は、アメリカ政府の要求でさらに200兆円上積みして630兆円としたことをさしています。この問題について、1997年2月の衆議院予算委員会で当時の橋本首相は、「当時、アメリカ側が構造協議で求めてきたことは、わが国の公共投資の総枠を飛躍的に増やすことであり、同時にアメリカ企業の参入しやすいと思われるいくつかの分野に、その公共投資の相当部分をシフトせよという要求でありました。要求の背後にあったのは、当時の貿易収支でのわが国の大幅な黒字であり、アメリカ側の赤字であります」と述べています。)


 ◆イギリスの3倍以上にまで膨張した日本の公共事業費


              GDPに占める公共事業費


くろすろーど-GDPに占める公共事業費



 上のグラフは、GDPに占める先進主要国の公共事業費です。公共事業費が年間50兆円を超えて、GDP比でも一番多かった1995年を見ると、日本の公共事業費6.4%というのは、イギリスの2.0%の3倍以上という異常な膨張ぶりで、全国各地にムダな道路やダムなどの巨大開発が次々と進められたのです。


              財政赤字の推移(対GDP比)

くろすろーど-財政赤字グラフ



くろすろーど-表


 上のグラフと表は、財務省のホームページに掲載されている財政赤字の対GDP比です。比較されている7カ国の中で、日本の財政赤字は、1994年には3番目の大きさでした。ところが、グラフにあるように急角度で増え続け、1999年にはいちばん多くの財政赤字を抱えるに至っています。今回、見てきたように、財政赤字が大きく増えた原因のひとつは、1990年代の大型公共事業費の拡大によるものなのです。(つづく ※山家さんへのインタビュー記事は隔日掲載です)


(聞き手・編集=国公労連・行革対策部 井上伸)