《※連載「どうみる?日本の財政赤字(山家悠紀夫さんに聞く)」の「(1)孫子の代まで借金漬け?」 、「(2)国の財政と家計は性格が違う?」 、「(3)日本がギリシャのようになる?」 のつづきです。》
◆「国は財政赤字で大変だ」は、消費税増税や社会保障削減、
「小さな政府」づくりのための「呪文」
――なぜ、政府は財政赤字をことさら大きく問題視するのでしょうか?
山家 政府や財務省は、消費税増税を実行に移すチャンスをうかがっているので、「財政赤字は危機的だ」と国民に思わせた方が消費税増税をやりやすくなるというのが一番の理由です。
加えて、「小さな政府」づくりの口実にして、社会保障をはじめ、いろいろな公共サービスを削減したり、国民の負担だけを増やしたりしやすくなるからです。公務員の人件費削減もそうですね。なかば「呪文」のようなもので、「国は財政赤字で大変だ」と言えば、公共サービス削減も仕方がないかと国民をあきらめさせ、黙らせることができるというわけです。
◆財政赤字を口実として、国民に痛みを強いた上、
むしろ財政赤字を2倍以上に拡大
1997年に、橋本内閣が「財政構造改革元年」を宣言しました。当時、橋本内閣も財政赤字が「危機的状況にある」(橋本内閣が制定した「財政構造改革法」第2条に明記)として、すぐにでも日本の財政は破綻するかのようなことを言っていました。そのときの国債残高は250兆円程度で現在の半分以下でした。現在、その額は2倍以上になったわけですが日本は破綻していませんね。
問題の本質は、財政赤字を口実として、国民に痛みを強いた上、むしろ財政赤字を拡大してきたことにあります。財政赤字を口実にして消費税を3%から5%に増税し、医療改悪なども行った橋本内閣や、財政赤字を口実にして、社会保障費を毎年2,200億円も削減した小泉内閣は、財政赤字をなくすと言いながら、国民に痛みを強いて内需を冷え込ませ、税収が減少するなどで、結果的にむしろ財政赤字を大きく拡大してしまったのです。
財政赤字を口実として国民に痛みを強いてきた政府のやり方が、貧困問題の深刻化など国民の暮らしを壊すとともに、財政赤字そのものも大きく拡大してきたということを、私たち国民はしっかり認識しておくことが大切です。(つづく ※山家さんへのインタビュー記事は隔日掲載です)
(聞き手・編集=国公労連・行革対策部 井上伸)