30.押し肘の回内はなぜ必要か?
「的中率を上げるためにやれること」を説明する前に、検証しておかなければならないことができました。胸弦と同じようにあまり重要視はされないけれども、安定した的中に不可欠な押し肘の回内(肘関節の内側のくぼみの面を床に対してほぼ垂直にすること)です。
押し肘を回内させなくても的中を出せる人ももちろんいるでしょう。では、なぜ押し肘の回内が必要と言われるのでしょうか?
<仮説22>
押し肘の回内はなぜ必要か?
<検証>
さて、腕の骨格を考えてみましょう。
このように、上腕骨1本で支えられた上腕部と橈骨と尺骨の2本の骨に支えられた前腕部で構成されています。
上腕部は、肩関節によって前後上下のほぼ半球域に動きますが、肘関節に伝わった弓の力をそのまま肩関節で受け止めることができます。
前腕部は、橈骨と尺骨によって平行四辺形のリンク状となっていて、この平行四辺形の面直・内方向にのみ肘関節が折れ曲がります。
弓をまっすぐ押すには、肘関節が折れ曲がらないように、上腕部と前腕部を1本の棒のようにして突っ張ることが必要です。
矢を放つ時の弓の反発力は、弦の張り方向の上下のみであるため、この上下方向に肘関節が折れ曲がらないように肘を回内させなければ、離れの時の反動を抑えることはできません。
弓の反動を腕力だけで抑えきれる人は、肘の回内を必要としないでしょう。しかし、腕力の無い普通の人が少ない力で弓の反動を抑えるには、押し肘の回内による効果が必要となるのです。(回内させ過ぎると逆効果になることも理解することができるでしょう)
では、前腕部の筋肉についても見ておくことにしましょう。
肘と手首の関節の間の筋肉は。この図のように前腕に巻きつくように2つの筋肉群でつながっているので、押し肘の関節が折れ曲がらないようにするには、これらの筋肉の緊張状態を保つため肘を回内させると同時に、手首を反対方向に回外させて反発させておくことが必要になることを、自分の腕でやって確かめることができると思います。(弓道教本 射法八節図解 手の内の調え方の天紋筋が外竹の左角によくあたることに関係しますが、これを気にするあまりベタ押しになっている人も多いようです)
勝手の腕はどうでしょうか。
会では、腕を折りたたんで、矢が口割りの位置にくるまで肘を回内した状態にあります。押し肘と対称の位置関係になっているのです。
この両腕の肘の回内の位置は、弓構えのときに円相を取ることで、すでに定まってくるのです。
そして、勝手が矢軸方向にまっすぐ離れるためには、右肘から手首はむしろムチのように柔らかくしなやかな方が良く、前腕部の筋肉群の緊張を解く方向に関節の位置がありたいわけで、勝手の弦捻りの方向は。まさにこの状態を保つ方向に合致しているのです。
<まとめ>
押し肘の回内の必要性を人体の骨格から考えることで、円相や弦捻りの必然性までも理解することができました。目的が正しく理解されれば、誰もが怠りなくやることができるようになることでしょう。
押し肘を回内させることが苦手な人もいます。普段はやらない動きなので、無理も無いでしょう。押しの手を柱や壁に押し当てて肘の回内をトレーニングすることが簡単にできます。ぜひ、やってみてください。
次回は、的中率を上げるためにやれることを予定します。
夏の暑さから弓を守るにはに変更しました。
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もくじ
37.的中を維持するには、お風呂でエクササイズという手がある