新聞小説 「カード師」   (16) 中村 文則 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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超あらすじ  (1)~15まで

       15~21(最終)まで


朝日 新聞小説 「カード師」(16) 227(5/22)~238/(6/2 )
作:中村 文則  画:目黒 ケイ

 

感想
クラブ”R”でのピンチを脱した「僕」だが、再びピンチに。
佐藤の前でパスタ食わされて、絶体絶命の僕。

でも今度は佐藤自身が死ぬと言い出す(全く、もう・・・)
そこへ来て、今度は英子に宛てた遺書だって!?
オウム真理教まで出て来るし。

この作者の「教団X」というのがカルト教団の話らしいが、その類型を目指しているのだろうか?(読んでないし)

あんまり共感出来る小説ではないな(今気付いたのかよ・・・)


<こいぬ座の神話> 1 ~ 3
山本が住むホテルに出向く僕。外資系ホテル。
組織の規律化が進んでいると言う山本。

規律への服従をみな望んでいる。
開けられたアタッシェケースの中に拳銃、ナイフ、小瓶。

 

明日佐藤に会うと聞いて、明日殺せと指令する山本。
瓶を手に取る。この容器では目立つ。入れるなら目薬。

致死量を聞くが、答えられない山本。
アイテムを選ぶのに、占いを使わなかった事を指摘する山本。
占いを気にするのは、以前彼にした占いを気にしているから。
今年は流れが劇的に変わる時、と言って<皇帝>のカード画像を送っていた。
あなたの事を占った、と言って拳銃を取り、差し出した。
カード4枚を裏返して並べ、その一枚をめくると<皇帝>。

一瞬でしまう。
彼の背後にプロキオンが見えた事を思い出す。こいぬ座の一部。
この星座の由来である、主人殺し(アクタイーオンとアルテミス)
つまり僕に唆されて組織のトップを殺し、トップになる。

無能なあなたがトップになる事で、組織は力を失う。
ワインで酔いながら笑みを浮かべる山本。

一週間以内、と入れ替わりの期限を区切る。
そしてナンバー2を狙う者の存在も示唆。
驚くほどうまく行く。達成した時の快楽・・・・数々の甘言。
この組織の崩壊の真相を、誰が知ろうか。僕は姿を消す。


<唐突な最後> 1 ~ 9
佐藤の部屋を前にして、ドアを開けてからの行動を予習する。
やるべきは佐藤に危機を提示し、いずれ山本を殺させる。

手記の感想を言い、その後新しい占いに入る。
秘書の手でドアが開けられる。
部屋に入ると、チェック柄の男が死んでいた。今日はスーツ姿。


仰向けで目を開いている。
「・・・その男を知っているな」無表情で僕を見る佐藤。全てバレている。
彼はピッチャーで・・・二軍戦でスライダーを投げ・・・だからこうなり・・・
それには取り合わず、新しい女性秘書にルームサービスを命じる佐藤。
前の占い師が、殺される前にルームサービスを取っていた。

空腹ではないと言っても無視され、秘書からメニューを渡される。
チェック柄と目が合う。つまらなそうに死んでいた。

僕のことを裏のあだ名で「ナイーブ」と呼んでいた。
どんなメニューを選んでも関係ない。
「選べ」と促されて、パスタを指した。

極上ペペロンチーノ~冬の味覚を添えて。秘書が電話をした。

気付くとボーイが食事の準備をしていた。そしてパスタが出される。
助かる方法として、偽造の警察手帳に思い至る。

市井の事を調べる時に使った。警察関係者なら殺さない・・・
だが佐藤は言う「君が今警察手帳を見せても騙せない」
なぜ知っているのだろう。
パスタの束を巻き取り、口に入れる。悪くない味。もうすぐ死ぬのに。
鼓動が痛いほど速い。逃げる手段はエレベーターしかない。


「・・・君の、あの部屋は何だ?」

佐藤が自宅の膨大なカードの事を聞いた。
高校生の頃から集め出した。トランプ、タロット、花札・・・
女性と付き合っている時はそうでもなかったが、別れると、あの膨大なカードが馴染んだ。今はもう、置いてあるだけ。

ディーラーを始めた頃から、カード達から離れ始めた。

嘔吐に襲われる。パスタが、無数の切断された蛇を思わせる。
それを堪え、口に運ぶが飲み込めない。もう水がない。
秘書を外に出し、僕と二人になる佐藤。狭くなる視界。
改めて佐藤が聞いた。「お前は・・・占いの能力がないのか?」
本当に、少しでも占いの力があれば、この様な人生ではなかった。
占いの能力がない事を白状した事はない。あの老錬金術師のように。

言うわけにはいかない。言ったのは英子氏にだけ。
涙ぐむ。「はい。・・・ありません」


「・・・残念だ」ベッドから起き上がり佐藤は言う。
もうすぐ死ぬという佐藤。原因は判らない。だが判るんだ・・・
私の最後が何によって終わるのか。・・・君が教えてくれると思った。
君への期待。英子が私に連れて来たのだと。
「・・・英子?」英子氏と知り合いなのか? ではこの依頼は何だ?
君は、私から最後の機会を奪った。本物と出会う可能性を。

君が食事をしている間、どういう死に方が君にとって最も残酷か考えていた・・・
そもそも君に能力があれば、この部屋にも来ない。

これまで、幾人もの占い師が近づいて来た。

詐欺師、無能に気付かぬ者。殺すこともあった。
君を殺害させる事も考えたが、君の虚無的な視線が気になった。
そしてさっき能力がないと言った時の、君の声の無念さ。
間近に迫った私の死因を占え、と僕が以前渡した、ある発狂した物理学者が作ったタロットカードを渡す。
そのカードは知人が作ったものだという。
どう占えばいいのか。 カードを並べる。
<神> <無意識10> <ホログラフィック原理>

「もういい。・・・帰れ」 テーブルに肘をついたままの佐藤。
立ち上がる。助かったのか。 ドアを開ける。
待機していた秘書たちが驚き、慌てて佐藤に部屋に入る。
エレベーターで降りる。付き添いの秘書は以前送ってくれた男。
彼らは再来月解雇されるという。佐藤が死ぬから。

でも何故なのか判らない。
エレベーターが開く。逃げるなら今。

エレベーターから降りた時、男が佐藤の死を防ぐ方法を聞いて来た。

情報があれば占えるのか?
英子という人物に宛てた、長い遺書のようなものがあるという。
ホログラフィック原理とは何か。

オウム真理教が関係しているのか、とも聞く。
佐藤はあの事件首謀者たちの世代。
そしてダッシュボードから紙の束を出した。

 

死なせないためにコピーを取ったが、内容は判らない。
その束を持ち帰る。
マンションには居られず、このホテルに移動した。気が変われば佐藤にすぐ殺される。
目の前には佐藤の遺書。読めばもう無関係ではいられない。