新聞小説 「カード師」   (15) 中村 文則 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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超あらすじ  (1)~15まで

       15~21(最終)まで

 

朝日 新聞小説 「カード師」(15) 5/12(217)~5/21(226)
作:中村 文則  画:目黒 ケイ

感想
多少損は出たが、ポーカーを途中で切り上げ竹下の請け出し。
市井から言われたのは「勝たせろ」という事だったが、いささかの状況変化。しかしクラブ”R"の部屋なんて隠しマイク、カメラ何でもありの筈。

こんな所で催眠術かけて。
それに聞き出した話も、思わせぶりの割りに大したことない。

そして市井からのブツ返却を受けても背景は判らないまま。
ただ、外れたと思われた英子が相変わらず関与している事は判明。
何とか奪われたものは取り戻したが、果たしてそれで済むのか。
フツーに考えたら、情報は抜かれていると考えるべき。
これで何事もなく話が先へ進むなら、作者はよほど甘い(純文学作家ってそんなもん?)

挿絵チェック。
顔を細工して演出に使う手法は、2017年に連載されていた「国宝」で挿絵作家の 束 芋 さんが多用していた方法。

こんなやつ

初めの頃はともかく、以後延々と「顔なし」を続けられて、せっかくの作品に水を差された思いがした。

トリッキーな表現に溺れて欲しくない。

進展が遅いので、無駄エピソードに埋もれてメインストーリーを忘れかけている。
ちょっと次回辺り「超あらすじ」でもまとめるか・・・・


あらすじ 217 ~ 226
< 催眠術 > 1~10
竹下は市井の画像に首を横に振る。本当に知らない様だ。
次いで見せた英子氏の画像には反応。
英子氏が背後で動いている事を確信。元々英子氏から、占い師となって佐藤を探れと依頼された。
組織内で何かあって外れたのだろうが、英子氏が引き下がる筈がない。
知らないと言う竹下を無視し、人間の廃業について説明すると言って縄を引いた。


これから、ある体験をしてもらう。そうすると君は今とは別のものになる。途中で死ぬかも知れないが、もし生きることが出来たら君は、裸で四本足で動く性的なネズミになる。

様々な言葉で催眠術への導入を行って行く。
そして<女教皇>のカードを見せ、メインの意識を越えて秘密を話す事への罪悪感を軽減した。
そしてカードに集中させて、催眠術をかけて行く。
仰向けにベッドへ倒れ込む竹下。

縛られたままで親指を口元に持って行った。
指しゃぶりをやめさせ、彼女と出会った時の事を話させる。
職場の同僚だった男の話を始める。会社で上司に叱責された後、彼にプロポーズされた。彼は26で彼女は25。
つき合って半年で彼は結婚したがり、ネット上にある子供の写真を毎日見せて来た。
結婚はしたいけど、この人じゃないと思い別れたが、その後彼は会社を辞めた。自分はその後他の男性と出会っても続かなかった。

そこで竹下の様子が急に変わり、ケーキ屋での腐ったケーキの話を始める。失敗か、と思い彼女を起こすが、完全には覚醒しておらず、再び話を続けた。
つき合う男性と続かなかったのは、別れた男が相手に彼女の裸の合成写真を送りつけていたから。
人を伴ってその男を訪れ、止める様に言うと、土下座して謝ったが、その後ストーキングが始まった。
それで警察に相談すると、彼から遺書が送られて来た。
稚拙な文だが、そのために体調を崩してしまった。
ノイローゼになった竹下は、彼の霊が背中に憑き、首を絞められる様になった。

 

それでDVを扱う弁護士事務所に行き、対応してくれたのが写真の女性、鈴木英子さん。
翌日行ったのが霊媒師のところ。
心当りがあり、その男の特徴を言うと、竹下は相手の名前を言った。

やはり知っている男。霊媒師の行う、除霊についての方法を思い出す。ついでにブエルの事も。

霊媒師に、霊など取り憑いていないと言われた。

彼の気配は感じなくなっていた。
でもそれは当然。実は、彼は生きていた。一年ほどして結婚した様だ。

インスタで見た、彼の凄まじいまでの笑顔。


それ以来、英子に男の事での失敗を聞いてもらううちに、彼女の仕事を手伝うようになった。
「どんな?」

「もういい」と不意に彼女が言った。違う声質。同時に寝息を立て始める。
洗脳を解くため内面に入って行った時に、自滅を促す様なものか(オウム真理教信者の例)。
いずれにしろ、もう続けられない。
彼女のハンドバックの中味を確認し、ブランドロゴの裏にGPSを仕込んだ。
 

話した事を全て忘れる、と言って目覚めさせる。そして、無意識下にメッセージを入れたから僕を裏切らない方がいいと釘を刺す。
「性的なネズミ・・・・悪くない」と言って微笑む竹下。


聖書の黙示録から「かく熱きにもあらず、冷やかにもあらず、唯ぬるきがゆえに、われ汝をわが口より吐き出さん」の一節を言う竹下。

英子から教えてもらったという。
「私はぬるい存在じゃない。英子さんを裏切るなら、私は性的なネズミになる」

タクシーで帰る途中、竹下のGPSチェック後、市井のGPS位置を見ると自分のマンション。
すれ違った女性に気付きタクシーを降りる。市井だった。
竹下の無事を把握したので、奪ったものとGPSを、郵便受けをこじ開けて置いて来たという。
今までの事を説明してくれる筈だ、との問いにとぼける。
自分の母親を殺した時に、弁護士だった鈴木英子に救われた、と聞いても「何のことかわかりません」 表情から、当たっていると確信。

「部屋に来ませんか」の誘いに笑う市井。
挑発したのは自分の意思。気があるからどうにでも出来ると思っているのでしょう?
あからさまに言えば、その通り。

英子に伝言を頼む。敵には出来ない。
「こんなまねをしなくても、僕はあなたに仕える」
伝えます、と言って去って行く市井。

マンションに戻ると、壊された郵便受けに、奪われたものが全て戻されていた。