小説 火の鳥 大地編(5)四章(中編) 「東京」 作:桜庭一樹 36~51話 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

小説 火の鳥  作 :桜庭 一樹 画:黒田 征太郎
            原作:手塚 治虫

レビュー一覧

                             終章 超あらすじ

                             

感想(てゆうか覚え)
四章が更に長引き、いつ終わるか判らないため「中編」を設定。

タクラマカン砂漠で三田村要造が捕まって、延々と続く告白。

こらー15回目の世界まで行かな、しゃーない・・・・

前編では、保の発明で二回目の世界に戻り、要造は夕顔と結婚。

父が殺した保を助けるため三回目の世界に戻る要造。そこでの事業失敗で殺された父。
父を復活させようとして、大滝が持ち帰った首でジャンプした要造。

中編ざっくり超あらすじ
四回目の世界では、過去の情報を利用し「鳳凰機関」として軍部を操作。日清戦争を有利に運び、会社も拡大した要造。
五回目から八回目までは、対バルチック艦隊戦で失敗を繰り返す。

ジャンプ直前に戻る事で鳥の首は「そこにある」という解釈(ムリヤリやな)
その繰り返しで情報を溜め、九回目の巻き戻しでバルチック艦隊を撃滅まで導く要造。
十、十一回目はロシア革命への干渉。
それから数年は平穏な時期が続く。

だが関東大震災により記憶を失う要造。
記憶喪失は15年続き、その後記憶を取り戻した要造は十二回目の世界へ。
しかし本来あの装置の近くでしか巻き戻しが作用しない筈だったのが、いつの間にか洋上の艦に居る要造に作用してるし。

ホント自由自在な作家やな。

絶賛付録「巻き戻し虎の巻き巻き~」
マリアの場合
                             出た時  戻る時       
世界   強奪者       の年代  の年代        小説  
繰返し                 1513                [18]
 1      大男         1904      1915/春     [18]    
  2    男(日本人)    1915       1918         [19]      
  3      犬山           1916       1938          [19]
       自ら外に出る    1931/8    1931/9       [20]   
  4      緑郎1        1934       1935         [20]
  5      緑郎2          1937/7    1937/7       [21]
  6      緑郎3          1937/9    1937/11     [21]
  7  首持ち外へ    1937/9     1938/1      [22]
解説(表の見方)
1513年の結婚前夜を繰り返していたマリアが、大男に首を奪われて外に出たのが1回目(1904年)。
1915年まで住んだ後風が吹いて戻る。次に男(日本人)に首を奪われ2回目(1915年)に(右端の数字は参照となる小説の号番号)

要造の場合          
                                                   JUMP前    JUMP後
世界  首提供     鳥人形  操作者   の年代    の年代        小説
          大滝        2号        保       1897           1890             [29]
 2      大滝         3号       要造     1893            1892           [31]
 3      大滝         4号       要造     1894           1893/6        [36]
 4    犬山狼太     5号        夕顔     1905/5/28   1905/5/24  [40]
 5                      5号       夕顔     1905/5/27   1905/5/24   [42]
 6                      5号       夕顔     1905/5/27   1905/5/24   [42]
 7                      5号       夕顔     1905/5/27   1905/5/24   [43]
 8                      5号       夕顔     1905/5/27   1904/10       [43]
 9   狼太遺品     6号        要造     1917/11/15  1915/夏      [46]
10    犬山虎治     7号      要造     1917/11       1916/秋    [46] 
  1923/9/1 関東大震災で記憶喪失                        [47]
11    犬山虎治     8号    要造      1938/夏      1931/夏      [51]   
12     緑郎1         9号                                    [53]
解説(表の見方)
例えば2回目の世界に居て保が殺され、要造が3号に乗って1893年からJUMPし、1892年に着く。それで下段の3回目の世界になる

中編あらすじ
[36] 「あんたみたいな子の頼みやから聞いたんや・・・」 

2020/1/11
その4 上海航路
要造が着いた四回目の世界は三田村家の朝の食卓。

父と、妻のお夕がいた。
新聞を見ると1893年6月・・父が道頓堀鬼瓦に殺される一日前だった。
父を書斎に押し込み、これまでの巻き戻しを説明するが、作り話だと取り合わない父。明日の朝殺されると聞いても意に介さない。

鬼瓦のおんぼろ長屋にまで出向き、鬼瓦に状況を説明する要造。
父も信じない話を、鬼瓦はあっさり信じてくれた。
そんな話を聞くのは、何もかも失ったから、と言う鬼瓦。
上海に行って一旗あげるという鬼瓦に一等船室を手配し、船賃も上乗せした要造。

四回目の1893年は、三回目と同様に過ぎて行くが、父とは距離を感じていた。
大学では、また異なる科目の履修に励んだ。

だが時が進むうちに、いてもたっても居られなくなる。
予言の手紙を書き始める要造。来年の初めに朝鮮で起こる農民反乱。その後の日本の派兵。

次いで起こる日清戦争で、大英帝国が清に協力すれば勝ち目がない。
よって開戦前に日英同盟を結ぶ必要がある、とまとめた。
年配者に見えるよう筆跡も工夫し「鳳凰機関」の通称とした匿名の手紙を政府宛てに投函した。
年の瀬を過ぎ、四回目の1894年がやって来た。前回大敗した日清戦争が迫る。

[37] 「大きなことからはもう逃げたい」 2020/1/18
新聞では朝鮮での農民反乱を報道。

そして日本派兵、清との睨み合いまでは三回目と同じ。
ある朝の新聞で、日本が大英帝国と通商条約を結んだ事が知らされる。
日本は清国に宣戦布告し、日清戦争が始まる。

今回は大英帝国と戦う必要はなく、大日本帝国の勝利に終わった。

父は製鉄と造船に投資し、大当たりして資産を増やした。

タクラマカン砂漠。
焚火の前で三田村要造を囲み、話を聞く一同。
火の鳥の力が利用され、日清戦争が二回行われた、と間久部緑郎。
鳳凰機関は二度歴史を変えた。そして日本が勝った歴史を採用した・・・
続きを聞こう、と猿田博士。

火の鳥の力で、我が国を勝利に導いた事に高揚感を抱く要造。

だが一方で大きなことからは逃げたいという気持ち。

もう時間は巻き戻したくない。
上海に渡った鬼瓦から年賀状が届いた。

日本製品の小売りをやっているという。
日本の好景気は続いたが、清の弱体化に伴いロシア帝国の圧力が増した。
ロシア帝国が朝鮮半島を手に入れたら、我が国の脅威となる。

要造は再び「鳳凰機関」を名乗って大英帝国の庇護下に入るべき、と政府に送った。
日本政府は日英同盟を締結し、軍備増強を行った。

膨張する三田村興産を支えるため、帝大卒業後は父を助ける要造。
そんな中、父が突然後妻を娶った。

十六歳の芸者「雪崩(なだれ)」を身請け。
ある日夕顔と雪崩がどら焼きを巡って大喧嘩。
たかがどら焼き、と説教を始めた要造。すると妻の顔が・・・・

[38] 「ようこそ自由と悪徳の都へ!」 2020/1/25
激怒する妻は号泣。食べるなと紙に書いてあったという。
ゴタゴタは続き、要造夫婦が家を出ることになった。

1901年春、要造夫婦は上海行きの蒸気船に乗った。

見送りに来た父夫婦と保。
別れ際に雪崩が袋を妻に押し付けて逃げて行った。
船室でそれを開けると、どら焼きが二つ。

「ごめんなさい なだれ」とかろうじて読めるメモ。
あの時書置きが読めず、どら焼きを食べてしまった雪崩。
「人生流転ねぇ・・・」と呟く妻。

もう時を巻き戻すことはない、と思う要造だったが、予感もあって妻との間に子供は作らなかった。時を巻き戻したら子供が消える・・・
上海では鬼瓦が芸者を従えて歓待してくれた。

日本人居留地のある虹口(ホンキュウ)を拠点として
「三田村興産上海支店」を運営する要造。

鬼瓦のツテで日本人会にも迎えられた。

時は過ぎ、1903年も終わろうとしていた。
日本は相変わらずロシアの南下政策に脅かされている。虹口でも軍人の姿が増えた。要造も含め経営者たちは、東郷平八郎を代表とする軍の要請で偽造社員証を作らされた。スパイ活動用。
日本の空気は、清に勝った時の様に、ロシアに勝ったら景気が良くなるとの期待感。

寒い年の瀬の日本人会。新聞記事で盛り上がっている。

蒙古で出世し、騎馬隊の英雄になった日本人だという。その顔はまさに火の鳥調査隊の大滝雪之丞。
彼は1890年にタクラマカン砂漠へ向かったものの、その手前で掴まり、その後族長の娘と結婚した。

四回目の世界では、大滝は火の鳥の首を持ち帰らない。

[39] 「きたか、鳳凰機関よ」  2020/2/1
そうなると火の鳥の首は今も楼蘭王国にあり、王女マリアが守っている。
要造が帰宅すると、妻は鬼瓦宅の芸者たちと麻雀に行ったとの事。
だがその後、家の前に車が止まり、妻が軍人に連れられて来た。何者かに突き飛ばされたところを助けられたという。
礼を言おうとすると、二名のうちの年配者が三田村さん、と呼び、次いで「鳳凰機関 さん?」と重ねた。良く見れば、彼は日本人会で遠目に見た、連合艦隊指令長官 東郷平八郎。


鳳凰機関からの予言の書が届いた十年前から、要造は監視されていた。ロシアとの戦争が起きて、この先究極の選択を迫られた時、鳳凰機関にも軍事協力させる、と東郷。
そこで要造は、探検隊をお借りしたいと持ち出す。

東郷のお付きの若い軍人、高野五十六によって探検隊が編成された。隊長は犬山狼太少尉。知り得る限りの楼蘭王国の情報を伝える要造。
1904年の初めに探検隊はタクラマカン砂漠へ出発。
「エレキテル太郎五号」の製作に取り掛かる要造。苦労の末に完成。
巻き戻しの最大は7年。だから鳳凰機関として手紙を出す前には戻れない。家族を守るため軍事協力するしかない。

二月に日本軍がロシアに奇襲攻撃をかけ、日露戦争が始まった。複雑化する戦況。日本側には英米、ロシア側には独仏が付く世界戦。
ある日、ロシアのバルチック艦隊が日本海に向け出発したとの情報が流れて来る。半年以上の長旅のため、時間の猶予はある。

だが到着すれば日本は危機に陥る。
翌1905年。陸軍は遼東半島の港を落とし、北進を続けた。
高野五十六に連れて行かれる要造。司令官室には東郷平八郎指令長官。「きたか、鳳凰機関よ」

[40] 「緑。赤、いや緑?」 2020/2/8
ロシアとの戦況が一進一退の中、バルチック艦隊との激突。

勝利が必須、と東郷は言う。
日本列島地図の、対馬海峡を抜けて日本海からウラジオストクに向かうコースが赤、太平洋側から津軽海峡を抜けて行くコースが緑で示されている。
バルチック艦隊がどちらからやって来るのか。

情報が何もなければ・・・鳳凰機関に選択させる。
「ななっ!?」声が裏返る要造。

冬が春になり、バルチック艦隊が近づきつつある。食欲をなくす要造。
周りでは、どちらのルートから来るかの噂が飛び交う。
5月24日の夜、突然高野五十六にしょっ引かれる要造。

日本軍のビルで、帰還した火の鳥調査隊の犬山狼太少尉に引き会わされる。ゴロリと出された鳥の首のミイラ。

さあ予言せよと言う高野五十六。

家に帰らないと、と言う要造を馬に乗せて高野が走る。
家に着き、地下室のエレキテル太郎五号に鳥の首を入れ、目盛りを現在に設定。予言に失敗したら目盛りを今の時間に設定する。
そこへ麻雀帰りの妻が姿を見せる。

もし連合艦隊が失敗してバルチック艦隊に負けたら、四日後の正午にこのレバーを引いておくれ、と妻に頼む要造。
その直後、高野に馬で拉致される要造。

旗艦「三笠」に連れて来られた要造。

司令官室には東郷平八郎指令長官。
さあ選べ!出陣の時は迫った」
 赤は対馬海峡ルート、緑は津軽海峡ルート・・・
緑、赤、いや緑? 時を戻せるとはいえ、冷汗が出る。
ついに地図を指さし「バ、バルチック艦隊は、太平洋を進み、そ、そ、そしてっ・・・」


[41] 「死んじゃうよ! 全部忘れちゃう!」 2020/2/15  
津軽海峡を抜ける太平洋ルートを指す要造。
旗艦「三笠」を先頭に船団は津軽海峡に向け北上した。

要造は巡洋艦「日進」に乗り換えさせらえ、船底の藤壺除去名目でドック入りする日進と共に、長崎の佐世保港に送られた。
上海行きの船が出るまでの二日間、高野五十六が気を遣って造船所の見学や食事などの世話をする。
27日、上海行きの船に乗ろうとした時、街中に砲撃を受けて大騒ぎとなる。海軍兵が「バルチック艦隊だ!」と叫ぶ。
対馬海峡ルートに入ったバルチック艦隊は、連合艦隊に出会わなかったため、ウラジオストクと佐世保攻撃の二手に別れた。
今すぐ時を巻き戻さなくてはならない。だが妻にレバーを引くのを頼んだのは、翌日28日の正午。丸一日ある。
ロシア兵が上陸して来る中、逃げ回る要造。

逃げながら夜を凌ぎ、翌日もひたすら正午を待つ。
逃げ込んだ墓地へ、どんどん人が入って来る。

そこに近づくロシア兵たち。
赤子が泣きそうになり、うろたえる母親。回りは「黙らせろ」との脅迫。

思わす赤子を抱いて墓地から飛び出した要造。
そこにロシア兵が来る。

怒鳴られるが、言葉は判らない。銃を向けるロシア兵。
正午の鐘が鳴り始める。

時が巻き戻る、と笑いを浮かべる要造だが何も変化しない。
ロシア兵が引き金を引き、胸に熱を感じてばったり倒れる要造。

[42] 「これが無敵のバルチック艦隊か・・・」 2020/2/22
要造が倒れた直後に母親も撃たれて死に、赤子が泣いている。

時差に気付く要造。上海との時差は一時間。

妻にとっての正午まであと一時間、何とか生きなくては・・・

その5 敵艦見ゆ!
要造が我に返ると、そこは馬の上。高野にしがみ付いている。

時は巻き戻り、今は五回目の世界。妻が鋼鉄鳥人形を操作してくれた。バルチック艦隊はまだ来ていない。
地下室に行き、再び現在に目盛りをセット。帰って来た妻にまた四日後レバーを引く約束を交わし、高野の馬に乗せられて走る要造。

旗艦「三笠」で東郷平八郎指令長官に、今度は赤の対馬海峡ルートだと進言する要造。
だが巡洋艦「日進」に戻ったものの、艦隊に同行するという。

藤壺取らなくていいの?と聞く要造を不審がる高野。
そして27日の明け方「敵艦見ゆ」の打電。攻撃の準備を整えた艦隊だが、敵位置の情報に誤報が混じり、三笠は砲撃の餌食となった。


六回目の世界で目覚めた時は地下室の階段の途中。

地下室で鋼鉄鳥人形のセットをし、再び妻に教えてから馬に飛び乗る。手際の良さに驚く高野。
前回同様、対馬海峡ルートルートを進言し、誤報が入る事も予言した。
そして敵艦を発見し、誤報も回避してバルチック艦隊を確認。
だが敵艦隊は水雷を撒いて連合艦隊の進行を止め、悠々とウラジオストクに向かった。

[43] 「必ず、負ける。必ずだ!」 2020/2/29
次の七回目の世界で再び妻に約束させた要造。
旗艦「三笠」での進言は赤の対馬ルート。誤報と水雷の情報も加えた。
だが戦いでは、東郷指令長官が破片の直撃を受けて即死。連合艦隊が一斉砲撃を受けて降伏。
そして再び八回目の世界。対馬ルートと共に誤報、水雷、破片の直撃を予言。
敵艦隊との距離が縮まった時、強風が吹き荒れ風下で不利の連合艦隊は攻撃を受け、更にロシア兵の侵入を許した。
サーベルで刺される高野五十六。

目覚めたのは共同租界のシャンハイ・クラブ舞踏会。

惨状の三笠から何とか九回目の世界へ逃れた要造。
妻に聞くと今は明治37(1904)年十月。

日本海開戦の7ケ月前に戻ってしまった。
惨状の記憶に毎夜うなされたが、日本人会で高野五十六の無事を確認して安堵。
ただ、火の鳥調査隊の犬山少尉が行方不明だという。
この世界で失敗しても、時を巻き戻せないかも知れない。

祖国のためにしっかりしなくては。

時は巡り5月24日を迎え、東郷指令長官に進言する要造。対馬ルートから先の誤報、水雷攻撃などを予言。
そして5月27日の実戦。次々に予言が当たる。
そして「神風も吹くのか?」と聞く東郷。

本当なら大巾な作戦変更が必要であり、迷っている。
次の瞬間、要造の中でスイッチが入り「神風は吹く。進路を変えねば必ず負ける」と断言。
要造を見つめた後、取舵いっぱーい!の指示を出す東郷。

[44] 「やがて思いだすことも減って」 2020/3/7
無敵のバルチック艦隊を前に、次々と撃沈して行く連合艦隊。

大日本帝国の圧倒的勝利。
ロシアと講和を結び、満州に向かう大陸鉄道の権益も得て、国防面での成果を上げたが、賠償金は手に入らず経済は厳しかった。
高野五十六との再会。東郷指令長官の頭から要造の事が抜け始めているという。この男には大きな借りがある、と考える要造。

タクラマカン砂漠。戦勝後の日本は、アジア一の帝国への道を歩み始めた・・・日清、日露両戦争に勝利したのは、あのマシンのおかげ。
マリアの記憶に残る最初の時間軸に、要造の話が追いついた。
「続きを聞こうよ」とルイ。

その後の要造は仕事に忙殺され、戦時下での事を思い出すことも減っていた。
子供を持つことに決めた要造夫婦。1911年に長女の汐風、1913年に長男の硝子、1915年に次女の麗奈が誕生。
田辺保が1907年に結婚。妻は「讃美歌」といった。

[45] 「なんと、犬山少尉が・・・」 2020/3/14
保夫婦にも二人の子が生まれ、時を戻すなど二度と嫌だと考える要造。
この時期の大日本帝国は、世界の中でも存在感を増し、順風満帆だった。
そうした中で1914年、欧州で世界大戦が勃発。この機に乗じて日本は中国に出兵し、権益増強を図った。
年号が大正に変わった頃から、軍部の強化が目立ち始める。
ある時、森漣太郎君の息子を憲官から取り戻すのに、高野改め山本五十六の力を借りた要造。
その礼をするため山本を訪れると、行方不明になっていた犬山少尉が亡くなったという。
そして遺品の中にあったという鳥の干し首を要造に渡した。
それを家に持ち帰ったものの、地下室の箪笥にしまい込んだ要造。

世界大戦は総力戦の様相を呈し、一向に終わらなかった。そんな中ロシア革命が起き、革命家レーニンが暗殺される。革命が起きて、社会主義政権になるのを嫌った日本の仕業だという憶測で、立場をなくす日本。
そこで鳳凰機関の力を再び借りたい、と迫る山本五十六。
いつか返さなくてはならない恩がある・・・ 要造は千里眼と言われるものの秘密を彼に話し始める。

[46] 「命というのは何だろうか?」 2020/3/21
山本は、おかしな話だと言いつつも千里眼の事実もあり悩む。
急造の「エレキテル太郎六号」に鳥の首を入れ、一年だけ時を戻すと宣言してレバーを引く要造。

その6 大震災の日
ギャーッ!という妻の絶叫を聞いて、二年前である1915年夏、次女の麗奈誕生の時に戻った事を知る要造。それが十回目の世界。
夜半に山本五十六からの電話。昨年死んだ愛猫が生きているのを見て、命というのは何だろうかと涙声の山本。
山本は再び火の鳥調査隊を派遣した。隊長は犬山狼太の弟の虎治。
十ケ月後、調査隊は無事帰還し、山本が首を持って来た。
レーニン暗殺事件阻止のためロシアに向かった山本。
1917年十一月。モスクワで、レーニンとスターリンが襲われたが助かったという。だが戦車で突っ込んだ男が日本の軍人との事で、再び外交問題になろうとしていた。
簡易型の「エレキテル太郎七号」に鳥の首を入れ、レバーを引く要造。

麗奈を抱いた要造が、ミルクを掛けられる。

十一回目の世界は1916年の秋。
山本五十六に連絡を取ると、この時代では犬山虎治は砂漠へ行った歴史が消えているという。指示を受け、調査隊として旅立った虎治少佐。

山本はロシアへ。

翌年の1917年十一月。レーニンたちへの暗殺計画は阻止され、外交問題の報道もなかった。
二年後、世界大戦はようやく終結。だがシベリア出兵でロシア革命に干渉した日本は、その財政負担で不景気に襲われていた。

朝を迎えたタクラマカン砂漠。
川島芳子が言う。つまり日本は、失敗しちゃやり直していた・・・
マリアの述懐。九回目が私にとっての一回目。あれが犬山の兄の方で、十回目は弟。
ルイが続ける。その次の十一回目で、ボクらの知るロシア革命が成功した。
隣り合って座る緑郎と正人の様子がおかしい。

[47]「一体誰です? 思いだせない!」 2020/3/28
緑郎はそっぽを向き、正人はうつむく。そして要造の話は続く。
国内の不景気をよそに、三田村興産の経営は順調だった。
巨大化する上海支店。田辺保の家族との親交は続き、東京に戻った折りには食卓を囲んだ。
田辺家には二人の息子。要造には長女、長男、次女の三人。

子供たちも成長した1923年夏。商用で東京に居た要造は後頭部に衝撃を受けて倒れる。それは関東大震災。

ショックで記憶が飛び、自分の事が思い出せない要造。
要造さーん!との声で女に呼ばれるが判らない。継母の雪崩。猛勉強で寺を覚え、本社の副社長を務めていた。
周囲は人で溢れ、火災もあちこちで起こっている。
そんな時に少年が要造を見つけて駆け寄る。田辺緑郎です、と言う子供に雪崩が、この人は頭を打って何も判らないと諭す。

再びタクラマカン砂漠。緑郎という名に驚く猿田博士。

その少年が十五年前の間久部緑郎だとしたら、火の鳥の首を使って時を巻き戻す装置を作った張本人の息子・・・
話を続ける要造。

緑郎少年が泣きながら要造にすがる姿を見て、雪崩が田辺保さんの息子じゃないかと聞くと頷く少年。
父は本郷の職場に居る筈だと言った。

[48]「悪魔に魂をくれたっていいぜ」 2020/4/4
本郷は判らないが、本所深川の方はこの世の終わりのような光景。
家に帰ると言って、弟正人を連れて行こうとする緑郎少年に付き添って歩く要造と雪崩。
大揺れが来た時、母親が先に逃げてと言って笑ったのだと話す緑郎。
上野公園での待ち合わせを信じて探し回っていたが、見つからなかった。
燃え残った橋を探して、ようやく田辺家に着いたのは夕方。

家は焼け落ちていた。そこに母親と思われる黒焦げの遺体。

お母さん!と抱き上げる緑郎。
雪崩が、その遺体の下半身が潰れているのを見て声を上げた。

柱に挟まれて動けなかったから、笑って嘘をついた・・・


母の頭を抱きしめ、緑郎は叫ぶ。
どれだけ地面が揺れたって、お母さんを助けられる人間になる。

悪魔に魂をくれたっていい、軍事国家の最高司令官になってやるぞぉぉぉーっ!」

震災の被害は死者、行方不明者十万人以上、消失家屋二十万棟以上。
要造の生家も町ごと燃えた。父はその後の捜索も空しく不明で、諦めた雪崩は三田村興産の再興に奔走を始めた。
記憶をなくしたまま上海に戻った要造。部下に支えられて何とか仕事には復帰。だが妻子のことも忘れ、空虚な家庭生活。

幼なじみの田辺保は、危うく助かった。

だが妻を亡くし、実家も消失して人格も変わってしまった。
息子たちは妻の実家の間久部家へ養子に出された。
研究に明け暮れていた保は突然辞職し、牛鍋屋を始めた。
商用で東京に行くたび、保の店を訪れた要造。

震災から三年ほど経って、緑郎と弟正人が引き取られた間久部家を訪れる要造。弟夫婦に引き取られていると聞いたが、その息子と思われる少年にいじめられていた正人。
そこに駆け付けた、すらりとした青年。緑郎君のようだ。
「もっと強くならなきゃだめだ」

[49] 「殺気立つ満州で」 2020/4/11
兄の緑郎にハッパをかけられる正人。

そんな兄を後ろ姿に「兄さんには僕がいるから大丈夫だ・・」
と謎と言葉を呟くのが不思議だった要造。

大日本帝国はその頃、シベリア出兵後の関東大震災で疲弊。

満州鉄道を使い、石炭の採掘で多忙な毎日の要造。

満州の大地で初老の身にみなぎる活力。
危険な土地でもあった満州。

日本人は日本陸軍の部隊、関東軍に守られていた。
1927年に行われた愛新覺羅顯㺭と蒙古族の将軍の息子との婚儀が開かれた。その末席に並ぶ要造。
顯㺭は川島芳子という通称も持ち、息を飲むほどの美貌。
この宴席で大滝雪之丞という老人に出会う要造。

要造父には世話になったという。

日本の不況が続く中、大陸ブームで賑わう満州だが、不穏な空気も高まった。
1928年、張作霖が爆殺される事件が起こる。

関東軍の暴走による暗殺事件だとの噂。
南満州鉄道の座席で、うたた寝をしながら兵士たちの話を聞く要造。
鳳凰機関、千里眼・・・・山本五十六という名にも聞き覚えがある。
何年か前、上海の自宅を訪れたその男が、鳥の首のミイラを持って来た。要造の事を鳳凰機関と呼び、記憶を失った事を残念がっていた。
「その話をもっと聞かせろ」と身を乗り出した男。

石原中佐と呼ばれ、黒マントに食べかけの大福。
話を聞かせるために席を譲る要造。

上海では妻の容体が悪くなっていた。記憶のない要造にとってはただの年配女性。父の後妻の雪崩が看病に駆け付けた。
最初の数日が過ぎてから、あのどら焼きの事を悔やむ夕顔に泣き出す雪崩。

[50] 「ぼくら日本人とは、何者なのか」 2020/4/18
1931年の夏、三田村夕顔が死んだ。

危篤の報で駆け付けたものの家に入ることが出来ず、死に目に会わなかった事に、長男の硝子が怒った。

この年に、南満州鉄道の線路が爆破される事件が起きる。

これを咎めて関東軍が起こした「満州事変」
だがこの作戦は国民革命軍に察知されており、すぐに鎮圧された。

首謀者の石原莞爾は左遷され、川島芳子がスパイとして国民革命軍に捕らえられ、獄中死したという。

その後日本国内の景気はますます悪化。

国力を増しているアメリカの脅威。
長女の汐風は結婚、長男硝子は三田村興産に入り修行、次女の麗奈は不良ながらも何とか女学校を卒業。
田辺保の長男緑郎は陸軍士官学校を経て軍務に就いたと聞いた。

ある冬の夜に黒マントの男が押しかけて来る。満鉄の車両で会った石原中佐。満州事変の話を始めたので、やはり彼が石原莞爾か。
鳳凰機関の事を話し出し、連れて来た大男 山本五十六を差し出す。
記憶をなくす前の要造が話した、時間巻き戻しの力。
地下室に放置してあった鳥の首を山本が持って来るが、思い出せない要造。怒りの後、憔悴する石原。
あと三日早く実行していれば、満州事変は成功していたという。
そして川島芳子の遺影を取り出し、出来ることなら時を戻してこの娘を生き返らせ、満州事変も成功させたいと呟く。
肩を落として去って行く石原。

時は巡り、1938年夏。保の牛鍋屋「間久部」で牛鍋を食べている要造。店内で学生が国家についての議論をしている。
日本によるアジア統一。

いつだったか、石原莞爾から聞いた話に似ている・・・
一方、別の男がドイツを模倣すべきだ、と反論。
その話もかつて保や森君と議論した話題。日本はいつもどこかの国の模倣をしているのか。なら日本人とは、いったい何者なのか。
保、森君、檸檬会館・・・議論って・・・・?
そうだ!遥か昔十九歳の春・・・要造の記憶が突然戻った。


[51] 「妻こそが人間そのものだった」 2020/4/25
目の前にはお爺ちゃんになったタモっちゃん。

もう七年も前にお夕ちゃんは・・・
次々に蘇える記憶の中で、火の鳥の力は七年前まで時を巻き戻せる事も思い出す。
上海支店に指示して「エレキテル太郎八号」を製作させ、戻って早々に鳥の首を探し出す要造。
そして硝子、麗奈や召使いの前で機械にまたがった。
「フェ、フェニックス」と言いかけた時、我が名は鳳凰機関・・・との言葉が口をつく。
それどころじゃない。そして「フ、フライーっ!」