小説 火の鳥 大地編(3) 三章 「楼蘭」 作:桜庭一樹 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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小説 火の鳥  作 :桜庭 一樹 画:黒田 征太郎
                    原作:手塚 治虫

レビュー一覧

                             終章 超あらすじ

 

マリア        楼蘭国王女。時間の旅を繰り返す
間久部緑郎  関東軍少佐
間久部正人  緑郎の弟。八路軍に所属
猿田博士    緑郎の恩師。満州 大陸科学院付
川島芳子    黄金栄の手下。過去は清国の王女
ルイ         ダンサー。黄金栄の手下
三田村要造  三田村興産社長


感想
マリアが語る、繰り返される時間巻き戻しの旅。元々は、滅びた楼蘭王国の最後の一日を楽しく過ごさせてやろうという火の鳥の好意。それが終わるのがイヤで火の鳥の首を封印。全てはそこから始まった。
楼蘭王国が滅びる時の木彫りのラクダは、ギリシャ神話の「トロイの木馬」が元ネタ。マンガ「火の鳥」のギリシャ編でもそのまんま出て来る。

 

首を取りに来る者が次第に変わったり、また同じ者でも以前の記憶がなかったり、注意して読み進まないと混乱して来るが、結局それは後の伏線になっている。
日本の周辺で起きる戦争が、時間の巻き戻しを繰り返す度に少しづつ変化していくところも、後のために記憶しておく必要があり、こうした記録が欠かせない(やっかいな小説やなー)

しかし首を取られても、風が吹いてマリアが戻り楼蘭王国が復活した時、火の鳥の首も戻っている。

要するに時間が戻るのだから「そこにある」という解釈なのネ。

まあ小説内ルールと考えるしかないか・・・

 

 

あらすじ

[17] 「歴史を変えることは、できないけれど」 8/3

三章 楼蘭

その1 ゾロアスターの神の鳥
楼蘭王の娘マリア18歳、弟ウルス16歳。

その結婚式典は国を挙げての行事になる予定だった。
楼蘭王国はシルクロードの拠点として栄え、栄華を極めていた。
その楼蘭に寄り添うロプノール湖は、場所を移す事はあっても遠く離れることはなく、豊かさを支えた。

式典の前夜、マリアはウルスと口喧嘩をしてしまった。弟が友人ワナントとふざけ合うのを見て、彼女が焼きもちを焼いたのだ。

 

そのいさかいが収まらず翌日を迎えた。

豪華な式典が始まった。御馳走、酒、果物・・・
様々な民族が贈り物の列を組んで入って来る。
夜になり、宴がますます盛んになる中、10メートルほどもある巨大な木彫りのラクダが持ち込まれた。

警備が咎めるが、酔ったウルスは「受け取っておけ・・・」

夜半、ウルスに起こされるマリア。敵襲だという。木彫りのラクダから出て来た敵兵が門を開け、明の兵士が攻め込む。
ウルスが果物の山にマリアを押し込み、これが全部腐るまで出るなと言って、戦いに向かって行った。

 

敵兵たちの動きはしばらく続き、数日経って果物がベタつき始めた頃、外に出たマリア。
倒れている兵士たち。ウルス、ワナント。そして父、母も死んでいた。
廃墟となった王国をさまようマリアは、ウルスとの日々を思い出し、涙する。

とぼとぼと神殿に戻った時、その先に松明の輝きを見つける。
近づくと、それは鳥だった。燃える体を持つ、大きな美しい鳥。
燃える鳥を見るのは三回目。二年前と、半年前にロプノール湖畔で。水浴びをしており、神の鳥だと思っていた。その時、直接心に語りかけられ楼蘭の事、自分が王女であることなどを話していた。

鳥も、少し前まで島国にいたが、休める場所を探してここまで来たと言った。

何があったのか?と聞く鳥に、楼蘭が一夜にして滅んだ事を話し、ウルスとの喧嘩をした事まで話した。
深く同情した鳥は、王国が滅びるような歴史を変えることは出来ないけれど、小さなことなら自分の力で変えられるから、ウルスと喧嘩しない最後の婚礼前日を過ごしなさいと言った。


[18] 「あなたに逢いたくて」 8/2
鳥が言うその方法は、鳥の首を切り落とし、それをウリとブドウと柳の葉で包んで祭壇に供えるというもの。
言われた通りにしたマリアが神殿を出ると、滅びたはずの楼蘭王国は元通りになっており、行きかう人々が賑わう婚礼前日の朝になっていた。急いでウルスを見つけ出したマリアは、安堵でへたり込む。
喧嘩を封印し、楽しい一日をゆっくり過ごしたマリア。

 

夜になり、鳥と約束した通り神殿に向かうマリア。
約束は、祭壇の鳥の首を、燃える松明にくべること。そうする事で鳥が復活し、元の時間軸・・つまり王国が滅びた後の世界に戻る。

言われた通り首を火に投げ込むと、鳥は火の粉を撒き散らし、復活してマリアの元に降り立った。


感謝の気持ちを伝えるマリアだったが、その直後隠し持っていた剣で鳥の首を刎ねた。
その首をまた葉で包み、神殿に捧げたマリア。
外に出ると、再び婚礼前日の朝になっていた。
ウルスの元に駆け寄るマリア。 「あなたに逢いたくて、逢いたくて・・・」
神の鳥を裏切り、神の火を盗んだ罪人となったマリア。

その日から、楼蘭は婚礼前日を毎日繰り返すようになった。

マリアは18歳のまま何年も、楼蘭という永久機関に籠り続けた。
時々はロプノール湖畔で人に会い、外界の変化を察していたマリア。

 

ある日見慣れない大柄の男が訪れた。

同じ毎日の繰り返しで、部外者だとすぐ判った。
「誰!」と追いかけるマリアに向かって発砲する男。腹に激痛。
男は祭壇から鳥の首の包みを持って逃げて行った。
血を流しながら追うマリアだが、振り返ると楼蘭が消えて行くところだった。
鳥の首を取られたための滅亡。ロプノール湖畔で座り込むマリア。

マリアは村人に助けられ、手当てを受けて助かった。

マリアの話す言葉は大昔のウイグル語なので、皆が驚いた。

 

傷が癒えて何度も楼蘭を訪ねるが廃墟のまま。
生きるために都市を目指し、成都で中国語を覚えて食堂で働き始めた。
この時が1904年。楼蘭が滅ぼされてから400年近く経っていた。
町にもなじめず、親しい人も作れず年を経て、10年経ったマリアは28歳になっていた。年齢なりの顔には苦労が刻まれている。
客の話で「世界大戦」なるものが起こったと聞いた。

 

それから数年後、どこかの国で革命が起き、また、その「指導者のレーニンという男が外国人に殺されたらしい」とも聞いた。

その翌年、突然草原にいる様な突風を受けて気を失ったマリア。
目覚めた時、婚礼前日の楼蘭王国にいたマリア。

顔かたちも18歳に戻っていた。


[19] 「あの男は“日本人”だぜ」 8/31
婚礼前日には戻ったが、マリアの心は28歳。その変化にウルスは心配する。
王国を守りたいという一心で、あの男を警戒していると、再び現れた男がまた鳥の首を奪う。

 

ワナントが気付いて、剣で男の左腕を刺すが、胸を撃たれて絶命。
ラクダに乗って逃げる男を追うマリアだが、背後の楼蘭王国が消えて行った。
数日の追跡もむなしく、男は自動車に乗って逃げてしまった。

町の人の話では、あの男は日本人。
それまで楼蘭と成都しか知らなかったマリアは、急速に知識を得て世界の事を知る。
この時楼蘭の外の世界は1915年になっていた。ロシア帝国で革命が起きた事も聞いたが、「指導者のレーニンとスターリンがいる建物に日本軍が砲弾を撃ち込み、二人が辛くも脱出した」という噂も聞いた。前

回と少し違う・・・
マリアは男を追って三年間中国の東北地方をさまよったが、ある朝、突然草原を吹くような突風に遭い気を失う。

 

再び婚礼前日の楼蘭王国で目覚めるマリア。
復活した楼蘭で注意深く毎日を過ごすマリア。

回りの兵士に警備を頼んだ。
何日も過ぎたある夜、男が神殿に入るのが見えた。見張りは居眠り。
北京語で「待ちなさい!」と叫ぶマリア。
中国語を聞いて思わす立ち止まる男。日本人よね?と聞くと、犬山だと答えて鳥の首を掴み、去ろうとする。だが鳥の首が何だかは知らない。なぜ何回も来るのかと聞いても、初めてだと言って話が合わない。
逃げる男を追うマリア。再び楼蘭は崩れ去った。

 

三回目の世界は1916年。世界大戦の最中。しかしレーニンとスターリンは殺されず、ロシアに革命政府「ソビエト連邦」が出来ていた。
歴史が毎回変わっている。
前と同じく中国の東北地方をさまよった後、長春で働き始めたマリア。
いつか風が吹いて楼蘭に戻ると思っていたが、今度はずっと吹かない。
この時代に生きる覚悟をして満州族の男と結婚したマリアは、男女三人づつの子供を儲け、22年の歳月を経て40歳となった。時代は1938年。
長男が所帯を持つことになり、孫の期待をするある朝。
突然草原に吹き荒れるような突風が吹いた。

 

目覚めた時は再び楼蘭王国で18歳のマリアに戻っていた。
ついに帰れた! だが今までの家族、夫、子供たちは?・・・
城門を飛び出すマリア。


[20] 「あなたの部下を殺すわ! 」 9/7
マリアは中国東北地方の長春を目指した。1916年から1938年までの22年間を暮らしたはず。
旅の途中で確認した今の年代は1931年。楼蘭王国に戻るたび、そこから出た時の年代が少しづつ進む。
長春の我が家では、別の家族が長く住んでいた。

夫の職場から本人の存在を確認し、その自宅を訪ねるが、夫は別の女性と所帯を持ち、その子供もいた。
物乞いをしながら、毎日子供たちの名を呼ぶマリア。

そうした一ケ月が過ぎた9月10日、突然日本の軍隊が攻め込んで長春を制圧。「九一八事変」(満州事変の中国呼称:1931年)
だが三回目の世界では1938年まで平和に暮らしていた。毎回歴史が変わっている・・・
マリアは旅をして楼蘭に戻った。鳥の首が奪われたわけではないので、王国は毎日同じ一日を繰り返していた。

ある日、背中に若い男を乗せたラクダを湖畔で見つけたマリアは、王宮に運び込んで男を手当てした。うなされる男は判らない言葉を呻いていた。
目覚めた男は訛りのある北京語で「楼蘭に行かなくてはならない!」と言った。
ここが楼蘭だと教えると、美男子ながら悪い表情をよぎらせる男。
マリアがいないわずかなスキに男は逃げ出し、神殿から鳥の首を奪って逃げ出した。
ラクダを盗んで逃げる男を追うマリア。背後で再び楼蘭は崩れ去って行く。

 

四回目の外界は1934年になっていた。再び長春を訪れるマリア。
中国東北地方一帯は、日本の関東軍が支配する満州国になっていた。日本に有利な様に歴史が変わり続けている。
犬山の言葉を思い出すマリア。上官の命令で来たと言っていた。神の鳥の首を欲しているのが日本の軍隊?
男と関東軍の情報を探るスパイ活動を進めるマリア。
だが一年あまりで再び草原の様な風が吹き、楼蘭王国に戻ったマリア。
はっきりと敵の存在を意識したマリアはワナントに頼んで戦い方を学ぶ。女でも扱える鉄製の笛。永遠の一日を利用して上達して行くマリア。
そしてようやく敵、あの若い男が再び現れた。

相手は二人でやって来た。もう一人は線が細い部下。部下を羽交い絞めにして刃物を突き付け、名を名乗れと男に言った。
間久部緑郎、大日本帝国から来たと言った男は、君たちの大事な火の鳥とやらの力を頂くと重ねた。
そうはさせない、と人質にした部下の首に刃物を食い込ませると、男は川島と呼んだその部下の額を、素早く抜いた銃で撃ち抜く。

 

さらに続く銃撃を避けて飛び回るマリア。
皇軍の士気高揚のため火の鳥が必要、と言い、鳥の首を握って去る間久部。
追いかけるが逃げられる。再び崩れて行く楼蘭王国・・・


[21] 「芳子といっしょにいたくても…きっとまた」 9/14
マリアにとって五回目の外の世界。時代は三年後の1937年7月。
満州国に向かい、間久部という日本人を探す。

中国東北地方の関東軍に少佐として居ると判明。
だが日本軍は「支那事変」の「形勢不利となったところ」で混乱状態であり、見つからず。
間久部少佐が三田村財閥の末娘との縁談がある事を知って上海に向かうマリア。
上海語を覚えつつ娼婦となって間久部を探すマリアだが、夜会の席で会えそうなところでまたもや草原の様な風が。

 

再び楼蘭に引き戻されたマリア。
神殿で一人過ごすマリアのところへほどなくやって来た間久部少佐。今度は少佐と似た顔の青年と美貌の青年を連れている。美貌の青年に武闘笛を叩きつけて倒し、もう一人の首をへし折ったマリア。
男を間久部緑郎と名指した事を驚く緑郎。会うのは三回目だと言い、うなされていた時母の事を言っていた事も知られている。
隙を突かれ、ナイフで頬を刺されたマリア。

その間に緑郎は鳥の首を持って神殿から飛び出す。
ああ、また消えてしまう。

このまま城門から出なければ自分も消えるのか。
消えてしまってもいいと一時は思ったものの、結局外に出たマリア。

それは敵たる間久部緑郎がいたから。

緑郎を追い、上海まで来た時の時代は1937年9月。
華やかな都だった上海は日本軍の侵攻で戦場になっていた。そこからロシア租界に逃れたマリアは日系露人に化けて情報を集めた。
ある日、日本軍の建物から出る男性用中国服姿の断髪美女を見て、間久部少佐が二回目の時に殺した部下だった事を知るマリア。

女だったのか。
この川島芳子に、旧ロシア貴族令嬢を装って近づいたマリア。
芳子は関東軍に騙されて利用されている事を嘆いた。親密な関係になる芳子とマリア。
上海の軍事状況は緊迫化。この年の10月「日本軍は上海制圧に失敗、中国大陸から撤退した。日本は支那事変(日中戦争)に負けた」。
日本に協力し続けた芳子は、南に逃れて余生を送ると言う。君も来ないかという言葉に驚くマリアに「キミの国も、もうないんだから」
楼蘭王国を思い、涙するマリア。
だが予感があった。「日本は今日、戦争に負けた」。必ず歴史を変えようとする力が働く・・・
びゅっと風が吹いた。運命に対抗する様、風に向かったマリア。


[22] 「事情がまーったくわからんな」 9/21
また楼蘭王国で目覚めたマリアは、もうここに居てはいけないと悟った。楼蘭王国がある限り、間久部緑郎が神の鳥の首を奪って歴史の改変を行い続ける。
自分は神の火の力を盗んだ罪人。

だが更に悪い事をしている者がいる。
一日かけて王国の皆に別れを告げたマリアは、神殿に入り自らの手で祭壇から神の鳥の首を持ち出して、王国の外に出た。
砂塵と共に消えて行く楼蘭王国。それが今見ている遺跡。

南に進む途中の町で、神の首を安全な場所に隠した。

そして上海へ向かう。
外の世界は前と同じ1937年7月。今回も日中戦争のさなかだったが、日本軍が有利な状況で、上海を制圧、次いで南京も陥落していた。
1938年1月、キャセイ・ホテルの楽隊員となり、大夜会に潜り込んだマリア。
軍服姿で勝ち誇り「中国なんて、揚子江の水まで日本のもんさ、アーハハハ!」と笑う男。
とうとう見つけた!関東軍の間久部緑郎少佐を。


その2 廃墟の七人
夜のタクラマカン砂漠。マリアの声を茫然と聞く緑郎、猿田博士、芳子、正人とルイ。
大日本帝国が火の鳥を使って歴史を修正している・・・関東軍は「時間旅行軍」・・と猿田博士。
否定する緑郎だが、自白剤の効果は確かだ、と博士。マリアの言う、めいめいの過去の状況について勝手に話し合うみんな。


緑郎が話の整理に入る。
楼蘭王国は425年前、明に滅ぼされたが火の鳥の力で、滅びる一日前を永遠に繰り返す様になった。
1904年に犬山という日本の軍人が鳥の首を盗んだ。何者かが火の鳥の力を悪用して時を撒き戻している。
博士が後を引き継ぐ。マリアの経験した世界は、繰り返すたびに変化している。レーニンは一回目で殺され、二回目では日本軍に砲撃された。
三回目では殺されずソビエト連邦を樹立している、と続ける緑郎。
満州事変も初めは失敗し、四回目でソ連の様に満州国が樹立した。
更に五回目では支那事変が形勢不利となり、六回目では上海戦で敗退し大陸進出を諦めた。
そこで七回目である今は、中国大陸を次々と制圧して西、南へと進撃している。


[23] 「誰にも言うなと脅されて」 9/20
「時間を撒き戻している黒幕は誰だッ!」と怒る緑郎。

知らない歴史の中で捨て駒にされた。
心当りがある、と芳子。調査隊に雇われるため三田村家へ行った時、地下の秘密部屋に入った。
地下の部屋には「鳳凰機関」とあり、中の部屋に居た三人の会話を障子越しに聞いた芳子。
一人目のロイド眼鏡。

正人が「関東軍 参謀長 東條英機じゃないか」
二人目は黒マントの小男。甘党。

同じく正人が「参謀副長 石原莞爾か?」
三人目は背の高いおじさんと言った芳子。官僚かも知れない・・・
話の断片を伝える。鳳凰が飛ぶ・・・あの男なら帰還してくれる・・・
鳳凰は火の鳥、あの男は緑郎か・・・

 

遺影の話も続ける。一人は麗奈そっくり。麗奈の母だろうと言う緑郎。数年前に亡くなった。
もう一人の山本五十六閣下。昨年客死したという話。

三田村家の地下にある「鳳凰機関」という組織が、火の鳥の力を使って世界情勢を日本有利に導いている・・・
だが七回目の今回は今までと違う。

マリアが先回りして鳥の首を隠した
火の鳥の首をどこに隠した?と恐ろしい顔でマリアを見下ろす。
正人がマリアを庇い「三田村要造氏も関わっているんだね」と話をそらす。
それには同意せざるを得ない緑郎。

 

そこで芳子が得意げに、リマの飛行場で三田村氏に会ったと言った。
皆に責められ「だって、誰にも言うなと脅されて・・」
そこに銃声。芳子の帽子に穴が明いた。闇から現れたがっちりした体躯の老人。
「口外するなと言ったはずだぞ。愛新覺羅顯㺭(あいしんかくら けんし)」 とたんに震え出す芳子。


[24] 「洗いざらい吐くのは貴様の方だ!」 10/5
その老人は三田村要造。
犬山元帥から調査隊の記録写真を見て追って来た。

楼蘭の笛吹き王女。今回は変則的な時空のようだ。
猿田博士が、この七回目の世界は貴殿が首謀者か?と訊ねる。
要造が、正しくはこの世界は15回目の世界だという。

哀れな王女は9回目以降の記憶しかない・・・
更に問いを重ねる博士に、説明する必要はない、時を巻き戻せばここにいる者たちは皆消える。

ユーラシア大陸を手中に収める。

新たな16回目の世界が来るのだと言う要造。

 

要造が緑郎に、マリアへの自白剤注入を命じた。

火の鳥の首のありかを吐かせるため。
緑郎が従順に頷き、注射器の準備を始めるが、手が震え何度も薬瓶を落とす。
注射の準備が出来、マリアの腕を取った緑郎。
次の瞬間立ち上がって要造の背後に回り、首ロックをかけて銃口をそらす緑郎。
だが老人とも思えない怪力で緑郎の体が浮く。
正人、芳子も加勢して押さえ付ける。

ルイが刀を要造に振り降ろそうとするのを緑郎が止めた。
要造の腕に注射器を刺す緑郎。「これまでの事を全部話せーっ!」
呻きながら話し出す要造。

 

48年前の1980年。病で休学している時に、秘境探検隊を率いる大滝雪之丞という男に会った。
猿田博士がその名を知っていた。