小説 火の鳥 大地編(7) 五章 「ユーラシア」、六章「大東亜共栄圏」 作:桜庭一樹 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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小説 火の鳥  作 :桜庭 一樹 画:黒田 征太郎
             原作:手塚 治虫
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    超あらすじ 1~3


感想
長い長い、要造の告白の「四章」が終わり、五章「ユーラシア」へ。
砂漠から逃げた正人、マリア、猿田博士だが、三年の逃亡の末、マリアが死ぬ。それを乗り越えて正人は鳥の首を見つけ、猿田博士は鋼鉄鳥人形を製作。、
その間にも日本が仕掛けた支那事変が膠着、次いで始めた大東亜戦争も、二発の原爆により終結。それに絶望した正人が時を巻き戻す。
そして六章「大東和共栄圏」
十六回目の世界は1942年。

歴史を繰り返す中で巧みに力を付けて行く緑郎。
皆が鳥の首を求めて楼蘭王国に向かう中、先んじた芳子とルイがマリアを殺して首を手に入れる。
その芳子も緑郎に追われて麗奈に保護を求める。それを知った正人は、連環を断ち切るために兄を毒殺(実行者は麗奈)。
罪の意識に耐えきれず自殺した正人。

その正人を残して時を巻き戻す猿田博士と麗奈。

ざっくりと2つの章が終わってしまった。この間6連載分。

今までのペースから行けば、本文そのものが「超あらすじ」
だがペースは速まったものの、巻き戻しに変わりはなく、このネタしか思いつかない発想の貧しさ。

途中2回も「be」が休載したのはこの作者がトンズラでもしたのか?
次の七章は「広島」。

原爆との関連付けが始まるのなら、まだ見込みはあるのかな?



あらすじ
[61]「ロマンの火は完全に消えた」 2020/7/11
・・・途中から
五章 ユーラシア 
1938年2月。灼熱のタクラマカン砂漠。
設計図を出せ、と迫り、要造の懐から封筒を取り出す緑郎。
後は鳥の首。二つ揃えば世界を支配できる。
鳥の首はお前が隠したんだな?とマリアを睨みつける。
しがみ付く要造に、これはわが父 田辺保工学博士が発明したものだ、と言い放つ緑郎。
いっそ殺してくれーとわめく要造。そこに銃声がして、要造のこめかみに穴があいた。撃ったのは川島芳子。
そこに黒ずくめの男たち二十名ほどが近づいて来る。
芳子にささやくルイ。あれは青幇(チンパン)の追っ手。設計図と、首の隠し場所を知るマリアの身柄を彼らに引き渡さなくてはならない。
そこで芳子は、設計図と首を手に入れて清王朝の復興させると言った。それに従います、とルイ。
青幇の男たちと対峙する緑郎、ルイ、マリアたち。

[62]「マリアの体は砂に変わり、海へと消えた」 2020/7/18
迫って来る男たちを銃で倒す緑郎。川島芳子とルイも応戦。
正人はマリアを連れて青幇の車を奪い、銃撃戦を尻目に砂漠を走り出した。戦闘を終え、マリアと正人が居ないのに激怒する緑郎。
芳子とルイは、清王朝復興を胸に、ひとまず緑郎と行動を共にする事に。
正人は車を飛ばしながら、息子の義務として父の発見を葬る、と決意。二人の車に乗り込んでいた猿田博士。
三人は追っ手を避けて山岳ルートを辿り、三年をかけてインドの港に辿り着いた。

満州国の新京に戻った緑郎は、東條英機と洲桐太を前に状況を説明。鳥人形の設計図を猿田博士が奪い、マリアが首のありかを知っていると嘘を伝えた。
支那事変は長期化。英米が国民党を支援。
日本では「国家総動員法」が公布され、国の統制が強まった。
1939年5月、ノモンハン事件で西方、北方も阻まれ、南方への進出を目指す日本。
同年9月、ナチスドイツのポーランド侵攻により第二次世界大戦勃発。日本はドイツ、イタリアと「日独伊三国同盟」を結び、英米の連合国と対立。
1941年7月。南方のインドシナに進出する日本。


マリアたちが見つからない事に荒れる緑郎は、三田村財閥を半ば乗っ取り、長男の硝子を僻地に飛ばす。それを見て嘆く麗奈。
日本の南方進出は英米を怒らせ、米は石油輸出を停止。

枯渇する日本。東條が首相に就任。条件要求のハル・ノートは受け入れられず、英米との開戦を決意する東條内閣。
同年12月、日本軍はマレー半島を奇襲し、大東亜戦争が始まった。
最初の半年は快進撃で、各拠点の油田を占領。
洲桐太と電話で話す緑郎。兵力がアメリカに遠く及ばないと言う洲に、もって半年、と同意する緑郎。
麗奈が家を出ると言った。伯母の朝顔が亡くなり、家を残してくれたので広島へ行くという。

来年は、どちらかが相手を殺すと言われた1943年でもある。

そこにマリアを発見したという知らせが入る。インドから香港へ向かう商船。
急ぎ香港に飛び、その商船に乗り込んだ緑郎。猿田博士を撃った銃弾の前に、マリアが飛び出して被弾。マリアは砂と化して海へと消えた。
火の鳥の首を知る者が・・・・消えたぁっ!

[63]「日付が変わるころ、降伏すると決まった」 2022/7/25
1942年8月。ガダルカナル島陥落。

二万人以上の犠牲を出したが、この大敗を大本営は秘匿。
アリューシャン列島にも米軍が上陸し、日本兵の多くは玉砕。
1944年3月。大本営は、長引く支那事変決着のためインパールに出兵。補給のない中、約三万人の兵士が死に、道は「白骨街道」と呼ばれた。


6月には米軍がサイパン島を攻略。同7月。東條英機内閣総辞職。

逃げる正人と猿田博士は、南京に向かい火の鳥の首を見つけていた。マリアが生前、孫文の墓の話をしていた事を思い出し、正人が見つけた。猿田博士は設計図の記憶を元に鋼鉄鳥人形を作る。

首は正人が持ち、静かに暮らした。
使ってみたくなる誘惑があるから、離れ続けてくれと頼む猿田博士。
そんな二人を追う川島芳子とルイが、上海を探し回る。
同10月からは、神風特攻隊が編成され、体当たり戦法によりそれなりの戦果を得た。お褒めの言葉を述べる大元帥の天皇陛下。
1945年2月。米軍は硫黄島に上陸。

本土決戦を前に、約二万人の日本兵はほぼ全滅。

3月。満州国の北で、三田村硝子が号泣。ついに石油を掘り当てた。要造が20年探して果たせなかった夢。
硝子からの電話を受けた緑郎は、手遅れだ!と悔しがる。
サイパン島からのB-29大編隊による爆撃。

東京、大阪、名古屋は焼け野原となった。
”一億玉砕”を目指す軍部。沖縄に米軍が上陸。

兵士、住民20万近くが犠牲となる。
だが降伏を認めない軍部は、7月の連合国による「ポツダム宣言」も黙殺。
8月6日、広島に原子爆弾が落とされ、9日には長崎にも落とされた。
15日。玉音放送が流され、日本は降伏。
東條英機が、戦争犯罪人として連行される。東條は突然「猫だまし!」と言って両手を叩き、MPから銃を奪って胸を撃ち絶命。

同じ頃、上海の隠れ家で、猿田博士は虹色の光が部屋に溢れるのを見た。そこに聞き覚えのある「フェニックス・フライ・・・」という言葉。
「あ、あんたは!なぜあんたが・・・巻き戻すな!やめろーっ!」

[64]「何もかもまだ終わっちゃいない」 2020/8/1

六章 大東亜共栄圏
雨が叩きつける上海の舗道に、猿田博士が立っている。

新聞の日付は1942年4月。三年以上戻った、
ここは十六回目の世界。火の鳥の話は本当だった!
今は大東亜戦争が始まって間がなく、快進撃の日本。
雨の中、間久部正人と再会する猿田博士。

正人こそ今回の巻き戻しの張本人だった。
大空襲、原爆投下の現実に耐えられなくなって、発作的にやってしまった。
この世界で前の記憶を持っているのは間久部緑郎と洲桐太、博士と正人、川島芳子とルイの六人。

マリアは楼蘭王国に戻って永遠の一日を繰り返している。
マリアと話すためタクラマカン砂漠に向かう博士と正人。
一方緑郎は、フィリピンの戦場にいた。

戦いの中で部下から聞いた年は皇紀2602(1942)年。
時間が巻き戻された事を知り、合流した洲桐太と共に策を練る緑郎。
今後数ケ月の予言を「鳳凰機関」と称して大本営に送り、東條の心証を得る。彼は前の世界で死んでおり、以前の記憶はなし。

東條に火の鳥探検隊の派遣を要請する緑郎。
満州北部から油が出ると進言して当て、緑郎は陸軍大将に出世。


三田村財閥も制して、緑郎は鋼鉄鳥人形の製作を始めた。

それは秘密を守るため妻との寝室に置かれたが、危惧する麗奈。

砂漠の楼蘭王国に辿り着いた芳子とルイ。

芳子たちを見つけたマリアは、記憶がないまま彼らをもてなす。
その夜、好きだけど裏切るの・・・・とルイがマリアを刺し殺した。

その間に芳子が祭壇の、火の鳥の首を奪い去る。
王国の出口で探検隊に遭遇。車を盗んで逃げだす芳子とルイ。
追いかける探検隊の背後で王国は崩れ去った。

[65]「そこで正人は長い物語をし始める」 2020/8/22
満州国の司令部で、火の鳥調査隊の失敗を知り激怒する緑郎。

早速川島芳子狩りを指示する。
そこに言い寄る洲桐太。洲を商工大臣、自らを総理と夢見る緑郎。
楼蘭王国に辿り着いた正人と猿田博士だが、廃墟になっているのを見て、首が持ち去られた事を知る。
猿田博士に決意を話す正人。この16回目の世界で、兄が権力を手に入れてしまった。兄を殺し、時を巻き戻せば兄の記憶は消える。

それには協力者が必要・・・

川島芳子とルイは、三田村家に辿り着き、麗奈に助けを求めた。
驚きながらも二人を地下室に匿う麗奈。

すぐ寝始めた芳子の抱えている、土の塊のようなもの。

1942年の大晦日。三田村家の屋敷でパーティを楽しむ緑郎と洲。

二階で荷物をまとめる麗奈。

来年は彼女か緑郎どちらかが相手を殺す・・・
そこに正人と猿田博士が乗り込んで来た。大人びた正人に驚く麗奈。


火の鳥の話をするが信じない麗奈。だが、伯母 朝顔の遺産を託された話を知っていたため、その後正人の長い話を真剣に聞き始めた。
夜明けまで話は続き、麗奈はその、鳥の首と思われるものは地下室の芳子が持っていると話す。

早速計画を実行に移さなくてはならない。

パーティも終わった広間に、二つのグラスを持って姿を現した麗奈。

酒を注いで渡すと、警戒した緑郎は渡された反対のグラスを取り飲み干した。だが毒はそちらに入っていた。

それが正人の狙い。苦しんだあげく暖炉の火に包まれる緑郎。
次いで猿田博士が地下室で芳子から包みを奪う。

上がって来る芳子に、扉を閉めて閉じ込める麗奈。

[66]「十七回目の世界が始まっている」 2020/8/29
三階の寝室で、絶命している正人を抱き寄せる猿田博士。

遺書を読んでいるところへ麗奈が来る。
遺書には、事情があるとはいえ兄を死に追いやった事への悔いが。
もう一人分残された毒薬を飲もうとする麗奈を止める猿田博士。

託された次の世界へ一人で行くのは怖い・・・
それを受けて、博士と共に鋼鉄鳥人形に首をセットしレバーを握る麗奈。

同じ頃洲桐太が広間に戻り、部屋の火事と緑郎の死を知る。高笑いする洲。山本五十六と石原莞爾は自分がやったが、これは誰の仕業か。
満州国は自分のものだと呟いた時、地下室の扉を破ってルイが飛び出した。銃を向ける洲に、芳子を庇ってルイが被弾。

撃ち返した芳子の跳弾が当たり、洲は絶命。
ルイは芳子に次の世界を託した。

次の世界でも見つけてくれたら、あなたに仕えると言って絶命。

銃声を聞いて麗奈が一階を見下ろすと洲の死体が見える。

誰にやられたかは分からない。
もう時間がない、と博士に促され共にレバーを引く麗奈。「フェ、フェニックス・・・」「フ、フ、フライじゃーっ!」

全身が炎に包まれる緑郎。熱い!虚空に手を伸ばす。

緑郎、と呼ぶ声。
母さんかい?  おや、誰だい?  緑郎、すべて忘れるのです。

さぁ眠りなさい。わたしの子、地球の子・・・ 

い、や、だぁ・・・