監督 降旗康男
脚本 大野靖子
原作 山口瞳
キャスト
藤野英治 - 高倉健
神谷さよ - 大原麗子
藤野茂子 - 加藤登紀子
岩下義治 - 田中邦衛
河原 - 伊丹十三
峰子 - ちあきなおみ
越智 - 平田満
堀江 - 池部良
秋本 - 小松政夫
神谷久太郎 - 左とん平
吉野耕造 - 佐藤慶
井上 - 美里英二
河原洋子 - 中島唱子
相場先生 - 大滝秀治
相場多佳 - 石野真子
小関警部 - 小林稔侍
佐野 - 細野晴臣
松川 - 東野英治郎
アベックの男 - 武田鉄矢
アベックの女 - 伊佐山ひろ子
桐山少年 - 佐野秀太郎
感想
部下の首切りへの加担に耐えられなくなった男が、次の仕事として居酒屋を選んだ。その男を巡る人間模様。
昔結婚まで考えて別れた相手と、同じ街に住んでいるというのが、何とも辛い。
伊丹十三演ずる河原が、ホントいやな奴。
高校野球部の先輩風を延々と吹かせて、英治をネチネチと苛める。
師匠に遠慮して、紹介した土地への移転を拒んでいる事を知って殴りつける河原。
それでもじっと耐えた英治だが、秋本の妻が死んだ事を罵る河原に、とうとう拳を出す。
だが引っ張られた警察では、傷害沙汰よりさよの事を疑われていた。
この辺りの構築は、良く出来ている。
高校の時バッテリーだった岩下。ここでの田中邦衛、ホント暑苦しい。
若大将の時の青大将そのまんまだが、まあそういう役どころだから「しゃーないか」
英治の妻役の加藤登紀子。５年ほど前、我が街でコンサートをやった時のＭＣで、この映画に出演した時の事も話していた。詳細はコチラ
夫が亡くなった時に、高倉健から花が届き、一周忌にも届いた。
映画の撮影でも、休み時間に絶対座らなかったとか、
エピソードには事欠かない。
これは大原麗子のための映画でも、ある。
今は映画の中でしか逢えないが、機会があればもっと観たいものだ。
あらすじ
居酒屋の「兆治」を営む藤野英治は、妻の茂子と朝の仕込みで市場に出掛けていた。それを遠くから見ている神谷さよ。
神谷牧場に戻るさよ。夫の神谷久太郎が「心配した」と言った言葉に「また逃げたと思った？」とさよ。
常連客で賑わう居酒屋「兆治」。
今ここが立ち退きを迫られているらしく、先輩で三光タクシーの幹部 河原が、代わりの土地を世話すると言っているが、煮え切らない英治。
腹を立て、英治を小突く河原。
英治を慰める岩下は、高校時代英治の球を受けたバッテリーの間柄。
その友情が続いている。
プロで活躍する筈だったが、肩を痛めて断念した英治。
その後造船会社に入ったが、永らく勤めた後退職し、居酒屋を始めた。
家に居るさよ。風呂を沸かしている近くで薪が燃え広がろうとしていたが、ただそれを見つめている。
神谷牧場が火事になり全焼。
他の住民と共に見に行く英治と岩下。さよと目が合う英治。
その後さよが失踪する。
客の話。英治がドックを辞めたのは、専務の吉野に刺されたから・・・
過去の、英治と茂子の会話。
ドック辞めたよ・・・総務の仕事、クビ切りもう出来ない・・・
居酒屋を営む松川に押しかけ、弟子入りする英治。
「月給取りはもうたくさん・・・」
河原の紹介する土地が松川の近くになるため、遠慮して断っているというのが事情。
川原のグランドで母校野球部の練習を見る英治。ピッチャーに注目。
そのピッチャー、桐山に声をかけ、大丈夫か？と聞く。
肩を庇っている様に見えた。
人づてに、英治が断る理由を知って怒る河原は、英治を殴り付ける。
とりなして愛想を言う客たちに「冗談とフンドシはマタにしろ！」と捨てゼリフを言って出て行く河原。
ドックの元同僚が、専務の吉野は食道ガンだという話を英治にする。
札幌ススキノのバーで働くさよ。
「兆治」を訪れる桐山。いつでも食べに来いと言ってあった。
だが急に逃げ出す桐山。事情を聞くと、突然投げられなくなったと言う。医者からは一年投げられないと言われた。
自分の経験を話す英治。４０度近い熱が出た。
右がだめなら、と左の投球練習を始めた。祖母が左用のグロープを買ってくれた。右の倍の値段。今でも宝物。
だがその結果は遠投で３７ｍ。それで断念した。
小学校の時の校長だった相場先生を訪れる英治と岩下。
最近、３０歳以上も若い娘と結婚した。先生は不在。
妻の多佳が、世間は表面しか見ない、と呟く。
身寄りがないのを先生が幼い頃から助けていた。
「兆治」で行う同窓会に訪れた相場先生。
岩下が若い嫁の事を冷やかすと「朝食に卵が３個出る時がある、月に１～２度」 それをはやし立てる岩下。
若い女房もらっても、他人が思うようなことはない。残酷、悲惨だよ・・・
仲間の新築祝いに出掛けている英治に、取次ぎの電話があった。
相手はさよだが応答がない。「・・・さよちゃんか？」
その様子を陰から盗み聞きする河原。
「兆治」の常連客 秋本の妻が、急に頭が痛いと言い出す。
暑いからだと扇風機を回す秋本だが、そのまま気絶する妻。
秋本の妻の葬儀が終わり、家を訪れる英治と茂子。立派な仏壇。そこに置いてある金属バット。息子のものだが、今まで一人で寝たことがなく、絡ませる足がないからバットを抱いて寝る。時々冷たいんだ・・・・
秋本は仏壇の金を河原から借金した事もあり、彼のタクシー会社で働く事になった。
店でその話を吹聴する河原は、ああいう病気に扇風機なんか当てたらだめだと、秋本をバカにする。
帰った河原を追い駆けて、あんな事は言わないで欲しいと言う英治を殴り付ける河原。
渾身の力で一発だけ河原の腹を殴る英治。
警察に拘留される英治。河原は脾臓破裂で入院。
この手で殴っちゃだめ、あなたは我らの青春のシンボル・・・
だが小関警部の行う取り調べは傷害についてではなく、行方不明のさよに関する事。英治とさよが過去に恋愛関係だった事を知っており、なぜ結婚しなかった？と聞く。
あの時は貧しく、身を引く事で相手が幸せになるならと思った、と言う英治。
だが小関の考えでは、当時夫の久太郎は結核であり、早死にしたら財産を手に入れて一緒になるつもりだっただろう、と迫る。
捜索願いが出た後、会っていると決め付けた。
新築祝いの日に電話をしている。証人もいる。
四日ぶりに釈放された英治を迎える茂子。
吉野専務が入院している病院を訪ね、花束だけを言づけて帰ろうとする英治に声をかける、会社で顔見知りだった越智。
手術したけどダメだった。
今は意識もなく、時々様子を見に来てるだけ。
あの人に憎まれたおかげで店を持てた。
総務課長としての、首切りの仕事は辛かったが・・・と話す英治。
「兆治」の向かいの小料理屋「若草」の店主峰子が、ススキノでさよを見たという客の話を伝えに来た。
さよの写真を持ってススキノを回る英治。そこで偶然越智と会う。
いつか英治の事を聞いた、サリーというホステスに惚れている、との話を聞いてさよの写真を見せる英治。
サリーが居るというアパートに駆け付ける英治。
血を吐いて、こと切れていたさよを抱きしめる英治。
青年団によって行われたさよの葬儀。
さよを恨む気持ちはないと言う久太郎。
英治をやさしく扱う茂子は、店じまいを任せて先に帰る。
暗い店で、さよが握っていた、英治と写った写真を燃やす英治。