3分読書、読んで頂き、ありがとうございます。

これまで書いた作品も、読んで頂ければと思います。

都市伝説探偵↓

都市伝説探偵 

時間を失うビル

消えゆく文字のタイプライター

忘れられたSOS 

影を潜む真実の都市伝説 

消えたペットを探して 

消えた建築家の邸宅 

終わらない夜の物語 

記憶を食べるカフェ 

時間を売る店 

愛するペットへの天空の手紙 

忘却のカフェ 

百年目の訪問者 

忘れられた地下道の住人

午前三時の子守歌

影を失った男

迷子の時間を探す時計屋

星空の下で

運命のベンチ

毒ガスの森

消えたマンションの住人

消えゆく電車の謎

消えた学校の秘密

山奥の足跡

閉ざされたゲート

爆 笑爆笑爆笑


とある小さな町のパン屋で、不思議な噂が広がっていた。夜中になると、妖精たちが現れてパンを作り、朝には美味しいパンが並んでいるというのだ。そのパンは普通のパンと一味違い、どこか心温まる美味しさがあると評判だった。さらに、妖精たちは自分たちの作ったパンをこっそり食べることもあると言われていた。


「妖精がパンを作るなんて、そんな馬鹿げた話があるか?」町の人々は口々に噂を信じることなく笑っていたが、そのパン屋に訪れるたびに、噂の真偽が気になって仕方がなかった。


そんな中、一人の男がこの噂に興味を持った。彼は都市伝説探偵として知られる人物であり、数々の怪奇事件を解決してきた実績を持っていた。妖精たちの噂が広まり、町の人々が興味津々で語る姿を見た探偵は、この都市伝説を解明しようと決意した。


探偵はまず、パン屋の店主について情報を集めることにした。店主は町の外れにある小さな家で、細々とパンを作って生活しているという。噂によれば、彼はとても優しい人で、貧しい者や困っている者に対しても惜しみなくパンを分け与えることで知られていた。


探偵はその噂を確かめるため、パン屋を訪れた。店主は優しい笑顔で迎え入れてくれ、彼が作るパンはどれも美味しそうに見えた。探偵は店主との会話の中で、妖精たちの話を切り出してみた。


「妖精たちが夜中にパンを作っているという噂を聞きましたが、それは本当ですか?」


店主は一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐに穏やかな笑顔に戻った。「そうですね、その噂は町中に広がっていますが、本当かどうかは私にもわかりません。ただ、毎朝目が覚めるとパンが出来上がっているのは確かです。」


探偵は店主の言葉に興味を持ち、さらに詳しく話を聞くことにした。店主はある日、体調を崩してしまい、パンを作ることができなかった。その夜、店主は夢の中で小さな妖精たちがパンを作る光景を見たという。その夢が現実なのかどうかを確かめるため、探偵は夜中にパン屋に潜入する計画を立てた。


探偵はパン屋の店主と協力し、夜中に店を見張ることにした。深夜、パン屋の灯りが消えた後、探偵は隠れ場所から店の中を観察した。しばらくすると、店の中から微かな光が漏れ始めた。探偵は驚きと期待を胸に、その光の正体を見極めるために慎重に店内へと足を踏み入れた。


店内では、小さな妖精たちがパンを作っている光景が広がっていた。妖精たちはキラキラと輝きながら、楽しそうにパン生地をこね、焼き上がるパンに笑顔を浮かべていた。探偵はその光景に心を奪われ、しばらくの間ただ見つめていた。


「これは夢じゃないのか…」探偵は自らの目を疑いながらも、妖精たちが実在することを確認した。妖精たちは楽しげに作業を続け、焼き上がったパンを並べていった。その中には、妖精たちがこっそりと自分たちで食べるための小さなパンも含まれていた。


探偵は店主に問いかけた。「この妖精たちは、どうしてあなたのためにパンを作るんですか?」


店主は静かに微笑みながら語り始めた。「それは、私がかつてお腹を空かせた妖精にパンをあげたことから始まったんです。その妖精はとても感謝してくれて、それ以来、夜になると仲間を連れてきて、私のパン作りを手伝ってくれるようになったんです。」


探偵はその話に感動し、妖精たちの優しさと友情に胸を打たれた。店主が体調を崩してパンを作れなくなったとき、妖精たちは自ら進んで店主の代わりにパンを作り続けたのだ。彼らの絆が生み出した不思議で心温まる物語に、探偵は深く感銘を受けた。


朝になると、パン屋の棚には焼き立てのパンがずらりと並んでいた。町の人々が店に訪れ、美味しいパンを手に取るたびに、妖精たちは満足そうに微笑んでいた。探偵もそのパンを口にしてみると、涙が出るほどの美味しさに驚いた。




「これが妖精たちの愛と友情の味なのか…」探偵はそう呟きながら、心から感謝の気持ちを抱いた。妖精たちの存在は、ただの噂ではなく、本当に人々に幸せをもたらしていることを確信した。


探偵はその後、書斎に戻り、事件の報告書をまとめるために文字の消えるタイプライターの前に座った。カチャカチャと響くタイプライターの音が部屋に広がり、探偵は一文字ずつ丁寧に書き記していった。


しかし、ふと手を止めて考えた。この物語は、ただの報告書に収めるにはあまりにも特別なものであり、自分の心に刻んでおくべきだと感じた。探偵はタイプライターを静かに閉じ、心の中にこの素晴らしい物語を刻むことに決めた。


こうして、パン屋の妖精たちの物語は、探偵の心に深く刻まれた。都市にはまだ多くの謎が待ち受けているが、今日のような心温まる事件を解決することで、彼の探偵人生に新たな意義が与えられるのだ。探偵は次なる挑戦に向けて立ち上がり、新たな冒険に胸を躍らせた。


最後まで読んで頂き、ありがとうございます。