都市の郊外、古びたマンションが静かに佇んでいる。そのマンションは「消えたマンション」として近隣住民に恐れられていた。何故なら、一つの晩を境に、このマンションの住人たちが全員、跡形もなく消え去ったという都市伝説が囁かれているからだ。空っぽの部屋が並ぶこの建物は、訪れた者に異様な気配と、時折、かすかな人の声や生活の音を感じさせる。

都市伝説探偵は、このマンションの謎に挑むため、重い扉を押し開けて足を踏み入れる。彼は録音機器を持ち、消えた住人たちの声を捉えることを試みる。建物の中は冷たい空気が漂い、静寂が支配していたが、階段を上がるごとに、うっすらと人の話し声や物音が聞こえてくるようになった。



探偵がエレベーターを使って最上階に到達した瞬間、異常現象が起こり始めた。壁の向こうから明らかに幼い子供の笑い声が聞こえ、その後に急な静寂が訪れる。ビデオカメラは不可解な光を捉え、温度計は急激に温度が下がるのを示した。

探偵がこのマンションの過去を調べる中で、建物が建てられた土地がかつて古い墓地であったことが明らかになる。地元の図書館で得た情報によると、この土地は古くから「霊の渦」と呼ばれる場所で、多くの霊が集まるとされていた。その霊たちが、建物の住人を異次元へと引き込んだ可能性が高いことが判明した。



この発見に驚愕し、同時に霊たちとの対話を試みるため、探偵はこのマンションで一夜を過ごす決心を固める。彼は、この場所の怨霊たちとコンタクトを取り、何とかして消えた住人たちを現実の世界に戻す方法を探求するのであった。

深夜、探偵はマンションの地下室で儀式を開始した。彼は古代の儀式を模倣し、霊たちに住人たちの帰還を求める呪文を唱えた。空気は震え、地下室は幽玄な光に包まれた。突如として、部屋の隅で霧が形成され、その中から住人たちの声が聞こえてきた。彼らは異次元の間隙に閉じ込められており、その声は希望と絶望が混じり合ったものだった。

探偵は霊たちに交渉を試み、住人たちを解放する条件として彼らの未解決の願いを成就させることを提案した。霊たちは長い沈黙の後、条件を受け入れ、住人たちの解放を約束した。探偵は霊たちの願いを叶えるため、古い墓地を再整備し、そこに眠る霊たちに敬意を表する儀式を執り行った。



数日後、消えていた住人たちは一人ひとりこの世に戻り始めた。彼らは異次元での体験によって大きな心の傷を負っていたが、家族や友人との再会により徐々に平穏を取り戻していった。探偵はこの驚異的な事件の全てを「消えゆく文字のタイプライター」に記録した。記録が完了すると、文字は徐々に消えていき、最終的には何も残らなかったが、探偵の心にはこの事件から得た教訓と、霊たちとの新たな理解が刻まれた。

この事件を通じて探偵は、霊との対話の重要性と、異次元の存在が及ぼす影響の深さを痛感した。そして彼は、都市伝説探偵として次の未解決の謎に向かう決意を新たにした。