3分読書、読んで頂き、ありがとうございます。

これまで書いた作品も、読んで頂ければと思います。

都市伝説探偵↓

都市伝説探偵 

時間を失うビル

消えゆく文字のタイプライター

忘れられたSOS 

影を潜む真実の都市伝説 

消えたペットを探して 

消えた建築家の邸宅 

終わらない夜の物語 

では、「記憶を食べるカフェ・都市伝説探偵」を読んでみてください。

爆 笑爆笑爆笑


都市の隠れた隅に位置するカフェ「レムニス」は、その存在がほとんど知られていないにも関わらず、奇妙な噂で静かに話題を集めていた。この小さなカフェは、訪れた人々の記憶が不思議と変化する場所として知られ、客はカフェを出た後、過去の苦しみや悲しみを忘れ去り、心に暖かな幸せな記憶を新たに抱いているという。この摩訶不思議な現象の背後にある真実を暴くべく、「都市伝説探偵」がそのひっそりとしたカフェへの一歩を踏み出した。


カフェ「レムニス」の外観は、その周囲の古びたビルと溶け込むように存在し、一見すると他の多くのカフェと何ら変わりはない。しかし、その扉を開けると、温かな照明が訪れる人々を優しく包み込み、穏やかな音楽が心地よい空間を作り出していた。店内は、アンティークな家具が配置された落ち着いた雰囲気で、壁には様々な時代の絵画が飾られ、訪れる者を遠い過去へと誘うようだった。


探偵が「レムニス」の噂の真相を追求する中で、カフェの客たちとの会話が重要な手がかりを提供した。一人一人の証言を聞き、彼らがカフェで何を食べたか、どのような体験をしたかを詳細にメモしていくうちに、ある共通点が浮かび上がってきた。それは、訪れた全ての人が特別なコーヒーを飲んでいたことだった。食べ物については人それぞれ異なる選択をしていたが、彼らが口をそろえて絶賛するそのコーヒーだけが、記憶に変化をもたらす鍵である可能性が高まった。


この新たな発見により、探偵は「レムニス」のカフェを再訪する。今回は、その神秘的なコーヒーに焦点を絞って調査を行うことに決めた。カフェに入ると、以前と変わらず温かな照明と穏やかな音楽が探偵を迎え入れる。探偵はカウンターに座り、迷うことなくその特別なコーヒーを注文した。


コーヒーが運ばれてくると、探偵はその香り、色、温度を注意深く観察し、一口飲んでみる。確かにこのコーヒーは普通のものとは異なり、飲んだ瞬間から心が落ち着き、温かな感情が湧き上がるのを感じた。探偵はこの瞬間を逃さず、コーヒーのサンプルを採取し、成分分析のために持ち帰った。



後日、専門の研究所で行われた成分分析の結果、コーヒーには記憶に影響を与える特殊なハーブが含まれていることが確認された。このハーブは、脳の神経伝達物質に作用し、記憶の再構成を促す効果があることが判明する。つまり、客たちが感じた記憶の変化は、このコーヒーが原因であったのだ。


探偵は再度、カフェ「レムニス」を訪れた。カフェのオーナーに真実を確かめるため。カフェには地下に向かう階段が存在した。そして、探偵は足を進めた。


探偵がカフェ「レムニス」の奥深くにある、古びたが落ち着いた研究室で科学者と対峙すると、部屋は書籍と古い記録装置で溢れかえっていた。科学者は長年、記憶という脳の不思議に魅せられ、その研究に人生を捧げてきた。彼は探偵に向かって、このカフェ「レムニス」がただのカフェではなく、人々の心を癒やし、彼らを過去の苦痛から解放するための実験場であったことを打ち明けた。コーヒーに混ぜられた特殊なハーブは、科学者が数十年にわたって研究し開発したもので、人々が心の負担を少しでも軽くできるよう願っていた。


しかし、探偵はその理念に疑問を投げかける。「記憶を操作することで得られる幸せは、本当の幸せと言えるのでしょうか?過去の苦しみや悲しみも、人が成長し、強くなるために必要な試練ではないでしょうか?それらをすべて消し去ってしまうことは、人としての経験を否定し、真の自分を見失うことにつながりかねません。」


科学者は当初、探偵の言葉に反発しつつも、徐々にその意味を理解し始める。科学者自身も、研究を進める中で自分の過去の失敗や苦痛から目を背けてきたことに気づかされた。探偵の論理と、カフェを訪れた客たちが本当に求めていたものが、ただの忘却ではなく、苦しみを乗り越えた先にある成長と理解であることを理解するに至った。


その夜、科学者は深い思索の末、カフェ「レムニス」での記憶操作を停止することを決意する。彼は探偵に感謝の意を表し、「真の幸せとは、過去を受け入れ、それに立ち向かう勇気から生まれるものだ」と認めた。そして、科学者はこれからは、人々が自分自身と向き合い、内なる力を見出す手助けをする新たな方法を探求することを誓う。



事件の解決後、探偵は「消えゆく文字のタイプライター」でこの一連の出来事を記録した。タイプライターがカチカチと音を立てる中、『記憶を食べるカフェ』の物語が文字として紙上に現れ、やがて静かに消えていった。この物語は、過去の未練を手放し、前に進む勇気、そして人間の経験の価値を伝える教訓として、探偵を通じて世に伝えられることとなった。