俳句銀河/岩橋 潤/太宰府から

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厚生労働省が毎年発表している「国民生活基礎調査」(リンク)では、年間世帯所得が詳細に分析されている。

 

現在、最新の調査結果は 2024年に行われた調査で分析された 2023年の年間世帯所得(公表日:2025年7月4日)。

 

2023年における年間世帯所得分布のグラフを転載。

 

2023年世帯所得分布グラフ:平均536万円、中央値410万円

 

年間世帯所得の平均は 536万円、中央値は 410万円となっており、いずれも前年を上回ったが、「平均-中央値」は 126万円となり、前年(2022年)の 119万円より 7万円広がった。

 

「平均-中央値」が大きくなるほど一部の高所得世帯による平均の押上げが強くなっていることを示し、前年よりも所得格差が 7万円ぶん拡大したことを意味する。

 

1000万円以上の世帯は前年比 +0.7ポイント(11.6% → 12.3%)、1500万円以上限定でも +0.9ポイント(3.1% → 4.0%)、2000万円以上限定でも +0.1ポイント(1.3% → 1.4%)と、高所得世帯の割合が着実に増えていることが分かる。

 

 

次は世帯の家族構成別年間所得の推移。 

 

世帯所得の年次推移グラフ

 

前年比で「全世帯」で 11万8千円、「児童のいる世帯」で 7万9千円、「高齢者世帯以外の世帯」で 15万6千円、「高齢者世帯」で 9万9千円アップしているが、昨今の物価高騰に対して上げ幅は小さい。

 

 

 

以前の記事

 

 

 

年末年始と2月用のお酒は揃えた(あるいは予約した)が、正月三が日から春分までの間の1か月が空いている。

 

 

 

県外の酒蔵で真っ先に思いついたのは、2024年元日の能登半島地震以来1年余り応援していた(買っていた)数馬酒造

 

今日、ホームページをのぞくと、一部の銘柄では2025酒造年度の新酒が季節限定の無濾過生原酒として既に発売されていた。

 

寒造りの銘柄の新酒は年明けから続々と発売される。

 

 

数馬酒造では能登産の酒米(石川門、五百万石、百万石乃白、山田錦など)を積極的に使っていて、私は石川門を使った大吟醸酒「竹葉 能登大吟」が特に好きなことから、石川門を使った新酒「竹葉 純米 石川門 無濾過生原酒」(12月5日発売、720 mL のみ)に決めた。

 

数馬酒造のホームページより

竹葉 純米石川門 無濾過生原酒

 

ところが、酒蔵のオンラインショップでは既に同品は売り切れていた。

 

同酒蔵の品を取り扱っている酒店でも売り切れているところがあったが、まだ1~数本残っているお店を数か所見つけ、その中の1店(在庫6本)から2本購入した。

 

先に購入した地元・福岡県のお酒があるが、無濾過生原酒はできるだけ早くいただく方が良いので、飲む順番を変えるか。

 

 

<後日追記>

 

17日到着、20日開栓。

 

大吟醸酒「竹葉 能登大吟」に通じて期待通りの美味さ。

 

無濾過生原酒らしいフレッシュな香りと口当たり。

 

フルーティーな要素としてバナナとメロンが優勢で、豊かな甘味をしっかりした酸味と軽い苦味が引き締めている。

福岡市中央区のサンセルコビル地下1階にあった「渡辺通優良運転者免許更新センター」は、ビルの老朽化とセンターの狭さから、昨年11月29日に業務を終え、博多区にある福岡県千代合同庁舎2階へ移転し、千代優良運転者免許更新センターとなった。

 

千代合同庁舎(Google マップより)

福岡千代合同庁舎の免許更新センター

 

千代合同庁舎までは、市営地下鉄箱崎線を千代県庁口駅で降り、4番出口(地図中の ④)の階段を上り、パピヨン通りを百メートルほど進む。

 

Google マップより

免許更新センター周辺地図

 

狭かった旧センターでは、受講者を部屋にぎゅうぎゅうに詰めて講習が行われていたが、新センターは3倍の広さになった。

 

旧センターでは朝一番から並んで先着順に受け付けていたため、先着が多いと待ち時間が非常に長くなっていたが、新センターではすべて予約制に(高齢者講習受講済みの人は予約不要)。

 

私が予約した時は、午前と午後の計8つの時間枠からの選択で、各時間枠の定員は30数名だった。

 

予約完了画面に表示される二次元コードのスクリーンショットを保存するか印刷するかして、更新手続時に使用する。

 

 

受付時間(15分間)になりセンターに入る。

 

一列に並ぶ。

 

1.自動受付機(3台)のカード挿入口に免許証を挿入し、画面に表示される個人情報を確認

  旧センターでは係員が手作業でやっていたのに比べると、非常にスマート

2.自動受付機に接続されている二次元コードリーダーに予約時のコードをかざす

  プリンターから出来上がった更新申請書と質問票が出てくる

3.記帳台で質問票に答える(はい・いいえのいずれかに ✔)

4.窓口(2つ)で更新手数料を支払う

5.視力検査(2台)でランドルト環を4つ答える

6.写真撮影(1台)

  手続きが終わると、交付番号などが記された紙(感熱紙)を渡される

7.講習部屋へ

  席は交付番号順に最前列の端(1番の席)から割り当てられる

8.説明(5分ほど)と優良講習(30分)

9.交付番号順(席番号順)に新しい免許証が渡される

 

センター出口に向かうと手前に安全協会の窓口があり、係員が入会の呼びかけを行っていたが、ほとんどの人は通り過ぎていた。

 

私はずっと入会しているので手続き(5年分)。

 

会員証は、前回入会時のものはクレジットカード並みのサイズと厚さだったが、今回はデザインが変わり、トランプカード並みに薄くなった。

 

前回入会時にもらった会員証

しぐまる会員証 福岡県交通安全協会

 

描かれている交通安全のキャラクターは、信号機の妖精「しぐまる」。

 

今回の入会でもらった会員証(前回までの会員証が印刷されている)

交通安全協会の会員証 こぐまる

 

受付開始時刻からセンターを出るまで50分ほど。

お米の価格急騰は日本酒造りにも大きく影響し、全国の酒蔵が商品の値上げを余儀なくされた。

 

好きな銘柄のうち、大吟醸酒の多くは税込みで 3000円を超えてしまい、催事・慶事の日以外は買えなくなったので、普段飲みは吟醸酒や特別純米酒が多くなった。

 

今日の自宅の冷蔵庫には、未開栓の 720 mL 瓶が2本ある。

 

三輪酒造(岐阜県)「白川郷 純米にごり酒 新酒」製造年月 25.10.24(2025酒造年度)

大賀酒造(福岡県)「大吟醸 筑紫野 原酒」製造年月 25.10(2024酒造年度)

 

 

これから1週間ほどかけて「白川郷 純米にごり酒 新酒」をいただくが、「大吟醸 筑紫野 原酒」は年越し・正月用にとっておくことにした。

 

その間2週間ほどあるので、喜多屋(福岡県)から吟醸酒(720 mL)を2本買った。

 

左)純米吟醸 寒山水 55%磨き

右)純米吟醸 蒼田

日本酒 寒山水 蒼田 筑紫野

 

喜多屋には特に好きな「純米大吟醸 寒山水 45%磨き」があるが、値上げで普段飲みに出来なくなり、代わりに初めて「純米吟醸 寒山水 55%磨き」にしてみた。

 

「純米吟醸 蒼田」は数年前に買ったことがあり、大変美味かった記憶が。

 

 

 

「大吟醸 筑紫野 原酒」とともに、いい年越しが出来れば。

 

少し先になるが、2月4日は「立春朝搾り」の日だ。

 

 

 

<後日追記>

 

「純米吟醸 寒山水 55%磨き」

すっきりした風味でキレがあり、フルーティな要素としてはライチとメロンが強く、それにバナナやイチジクが絡む。

苦味がしっかりあって、魚料理は刺身や焼き魚よりも煮魚やフライが合う。

「純米大吟醸 寒山水 45%磨き」とは酒米の酒類が違い、風味も大きく異なる。

 

「純米吟醸 蒼田」

まだ開栓前で、開栓後追記する予定

 

 

(参考)私の好きな地元・福岡県の酒蔵と一押しの品

 

大賀酒造(筑紫野市) 純米大吟醸「菅公の酒」リンク

太宰府天満宮の御神木「飛梅」から分離された花酵母を使用

代表銘柄「大吟醸 筑紫野」と双璧をなす品

値上げで私の普段飲み用の上限価格を超えたため、特別な日にしか買えなくなった

 

喜多屋(八女市) 純米大吟醸「寒山水 45%磨き」リンク

この品も値上げで私の普段飲み用の上限価格を超えたため、特別な日にしか買えなくなった

喜多屋には主要銘柄として「喜多屋」「寒山水」「蒼田」がある

 

小林酒造本店(糟屋郡宇美町) 純米吟醸生原酒「立春朝搾り」

日本名門酒会が毎年立春の日に開催している「立春朝搾り」(リンク)には、全国40あまりの酒蔵が参加し、福岡県からは小林酒造本店が参加

インフルエンザワクチンは、World Health Organization(WHO; 世界保健機関)が北半球向けにはその年の2月(南半球向けには9月)に選定した複数の推奨株をもとにして、各国で複数の株の増殖性や抗原収量などを評価して製造株(ワクチン株)を決定する。

 

ワクチン製造には時間がかかる。

 

日本には皮下接種用不活化ワクチンと点鼻スプレー用弱毒生ワクチンが使用されているが、いずれも発育鶏卵を用いて製造されている。

 

海外では、培養細胞を用いて製造するワクチンや遺伝子組み換えワクチンも実用化されている。

 

インフルエンザウイルスに対する mRNA ワクチンが実用化されれば、流行株の遺伝子配列決定後1か月程度で流通するだろう。

 

日本ではワクチンが本格的に医療機関に供給されるのは10月になり、WHO が推奨株を選定してからワクチン供給まで8か月近くかかることは、進化(変異)速度が速いインフルエンザウイルスに対して不利。

 

今シーズン(2025/2026シーズン)、その影響が A型インフルエンザウイルスの H3N2 亜型に対して出た。


WHO が北半球の国々に対して発育鶏卵を用いて製造する H3N2 のワクチン株に推奨したのは A/Croatia/10136RV/2023 およびその類似株、培養細胞を用いて製造するワクチンや遺伝子組換えワクチンに推奨した株は A/District of Columbia/27/2023 およびその類似株。

 

2つの株は、抗原タンパク質の1つである HA の遺伝子系統解析において、サブクレード J.2 に属する。

 

サブクレード J.2 の株は昨シーズンも H3N2 の流行株の主力で、サブクレード J.2.1、J.2.2、J.2.3、J.2.4 が次々に派生した。

 

国立感染症研究所が WHO 推奨株を比較評価し、Croatia/10136RV/2023 の類似株である A/Perth/722/2024(サブクレード J.2.2)が他の株よりも増殖性においてやや優れており、抗原収量や生産性についても問題がなかったことから、製造株に決まった。

 

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A/H3N2 のサブクレード分類とは

 

GISAID に登録されている株のゲノム配列から、HA 遺伝子と NA 遺伝子それぞれに生じた変異の数・位置(影響)に応じて株を系統的にグループ化した最小単位。

サブクレードは HA と NA に関して別々に系統化される。

この記事で取り上げるのは HA に関するサブクレード。

サブクレードより1つ上位のグループ単位はクレード。

A/H3N2 ついて GISAID 登録株の系統解析図が Nextstrain のサイトで見られる(リンク)。

 

A/H3N2 の HA に関して現在までに分類されたサブクレードリンク

A、A.2、A.3、(A.3.1 は C に改称された)、A3.2、

B(A.2 から派生)、B.1、B.1.1、B.1.2、B.1.2.1、B.1.2.1.1、B.2、B3、B.4、

C(A.3 から派生)、C.1、

D(B.1.2.1 から派生)、

E(B.1.2 から派生)、E.1、E.2、

F(E.1 から派生)、F.1、F.1.1、

G(E.1 から派生)、G.1、G.1.1、G.1.1.1、G.1.1.2、G.1.2、G.1.3、G.1.3.1、G.1.3.2、G.2、G.2.1、G.2.2、G3、G4、

(H、H.1、H.2、H.3、H.4 は亜型名との混同を避けるため、それぞれ J、J.1、J.2、J.3、J.4 に改称された)

(I はフォントによっては数字の 1 と区別しにくいために用いられなかったのかもしれない)

J(G.1.3.1 から派生)、J.1、J.1.1、J.2、J.2.1、J.2.2、J.2.3、J.2.4、J.2.5、J.3、J.4、

K(J.2.4 から派生)

 

A/H3N2 の NA に関して現在までに分類されたサブクレードリンク

A、A.1、A.2、A.2.1、A.2.2、A.2.2.1、A.2.2.2、

B(A.2.2.から派生)、B.1、B.1.1、B.2、(B.2.1 がない理由は不明)、B.2.2、B.3、B.4、B.4.1、B.4.2、B.4.2.1、B.4.2.2、B.4.2.3、B.4.3、B.4.4

 

例)A/Croatia/10136RV/2023 は HA のサブクレードが J.2 で NA のサブクレードが B.4.2

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新たなサブクレードの派生は、HA タンパク質にアミノ酸置換を含む変異が生じた株の出現を意味する。

 

アミノ酸置換が抗原部位(エピトープ;抗体が結合する部位)に生じた株では抗原性が変化する。

 

こうして、派生が進行するに従って少しづつ抗原性が変化する。

 

 

今秋、世界中で新たなサブクレードの株が急速に、かつ、優勢に感染を広げている。

 

その株はサブクレード J.2.4 から派生し、初めて検出されたのは6月(欧州において)で、当初はサブクレード J.2.4.1 とされたが、抗原性に関係する重要な変異が生じていた(後述)ことにより、サブクレード K と改称された。

 

サブクレード K はサブクレード J.2 およびそれから派生した J.2.1、J.2.2、J.2.3、J.2.4、J.2.5 と同じクレード 3C.2a1b.2a.2a.3a.1(略称 2a.3a.1)に属する。

 

次の図を見ると、2025年の後半からはクレード 2a.3a.1 の株ばかりになり、中でもサブクレード K の株が急激に割合を増していることが分かる。

 

図:この3年間の A/H3N2 の HA に関するサブクレードの推移(Nextstrain より)

A/H3N2株のサブクレード変遷図

 

 

H3N2 亜型の HA タンパク質には5か所の抗原部位(A~E)があり、HA タンパク質は3量体を形成するので、3量体には各抗原部位が3か所ずつある。

 

図:H3N2 亜型の HA タンパク質3量体の構造と抗原部位 A~E

Analytical and Bioanalytical Chemistry (2022) 414:2841–2881 より

H3N2 HAタンパク質構造と抗原部位A-E

 

European Centre for Disease Prevention and Control(ECDC; 欧州疾病予防管理センター)が11月20日に発表した Threat Assessment Brief(リンク)によれば、サブクレード K の基準株 A/Norway/8765/2025 の HA タンパク質において、A/Croatia/10136RV/2023 と比べて以下の9か所のアミノ酸置換が生じている。

 

K2N   リジンからアスパラギンへ置換

T135K  トレオニンからリジンへ置換

S144N  セリンからアスパラギンへ置換(N-結合型糖鎖付加)

N158D  アスパラギンからアスパラギン酸へ置換

I160K  イソロイシンからリジンへ置換

Q173R  グルタミンからアルギニンへ置換

K189R  リジンからアルギニンへ置換

T328A  トレオニンからアラニンへ置換

S378N  セリンからアスパラギンへ置換

 

S144N の置換はサブクレード J.2.4 の株が変異を続ける中で獲得したもので、アスパラギンの側鎖に糖鎖が付加されるようになった。

 

この位置は抗原部位 A に含まれているため、抗体が抗原部位 A に結合するのを糖鎖が阻害し、ワクチンの効果が減弱する原因になる。

 

N158D、I160K、K189R は抗原部位 B に含まれ、これら3か所の置換によって抗原部位 B の抗原性が大きく変化し、ワクチンの効果が減弱する原因になる。

 

また、N158D と I160K のアミノ酸置換はサブクレード J.2.4 からサブクレード K が派生した重要な変異である。

 

上図で抗原部位 A と B は HA タンパク質の頭部先端に位置し、空間配置的に抗体が特に結合しやすい場所にあるが、サブクレード K はそれらの部位に生じたアミノ酸置換によりワクチンの効果をかなり低下させると想像される。

 

 

多くの国で A/H3N2 ワクチン株に選ばれた A/Croatia/10136RV/2023 とサブクレード K の系統上の位置を Nextstrain のサイトで調べて記入したのが次の図。

 

図には日本で A/H3N2 ワクチン株に選ばれた A/Perth/722/2024 は含まれていない。

 

図には代わりに同じ都市(Perth)で同じ年の少し後の日に分離されたサブクレード J.2.2. に属する A/Perth/836/2024 が含まれており、その HA には A/Croatia/10136RV/2023 と比べて2か所のアミノ酸置換(T65K、S124N)があるだけで、A/Norway/8765/2025 の HA とは上記の9か所でアミノ酸が異なる。

 

国内の報道では専門家のコメントでも「サブクレード K に対してもワクチンの効果は変わらない」としているが、図の系統上の位置関係から考えても効果はあまり期待できない。

 

系統図(Nextstrain より転載、記入)

サブクレード J.2 の株は青色、J.2.1 の株は水色、J.2.2 の株は緑色、J.2.3 の株は黄緑色、J.2.4 の株は黄色、J.2.5 の株は赤色、K の株はオレンジ色の ○

H3N2ウイルス系統樹 A/Croatia/10136RV/2023

 

クレード 2a.3a.1 を抜き出し

H3N2サブクレードKの系統樹図

 

上図中の はこれまでにワクチン株に選ばれた株。

 

サブクレード J.2 において、A/Croatia/10136RV/2023 から見て左にある  は A/District of Columbia/27/2023

 

サブクレード J.2.4 の2つの は WHO が南半球での 2026年用ワクチン株に推奨している株で、右が A/Singapore/GP20238/2024(発育鶏卵用)、左が A/Sydney/1359/2024(培養細胞用および遺伝子組換え用)。

 

 

2012年からの13年間に、A/H3N2 の HA に関するサブクレードは K までになった。

 

このままのペースで行けば、今後20年ほどで Z に達する。

 

アルファベットが一巡した時、新しいサブクレードは 2A になるのだろう。

 

 

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