音楽をデジタル信号で扱う時代になっても、アナログレコードは一部で根強い人気を維持している。
統計によると、音楽ソフトに占めるレコードのシェアは小さいが、売り上げは伸びている。
オーディオメーカーも、かつてのアナログ―ディオの時代からレコードプレーヤーを生産し続けてきたメーカーだけでなく、いったん撤退したものの再び生産を始めたところも出てきた。
それでも、現状における販売見込み台数の制約もあって、かつての全盛期と比べると 「価格対性能比」 はかなり下がっているのは否めない。
かつてのアナログオーディオ時代を知らないデジタル音楽世代がレコードを聴いてみたいと思えば、現行機種を買ってもいいが、是非とも往年の名機たちも購入候補として考えてみて欲しい。
もちろん、経年劣化は生じているので、きちんとメンテンナンスや修理を受けたものに限られるが。
アナログ時代の機器は、デジタル時代の機器と比べて色々手間がかかる。
現行機種を買えば取扱説明書が付いているが、中古機だと付いていないことも多い。
そうなると、プレーヤーを買っても、何をどうすれば聴けるようになるのか分からないことも。
水平の調節に関してだけでも、いくつかチェック箇所がある。
チェックに使用するのは水平器/水準器。
(5)で述べるが、水平器は出来るだけ小さく軽いのがあると良い。
私が使っているのは直径 11 mm の丸型気泡管。
(1) プレーヤーのキャビネットの歪み
まさか床の上に直置きはしないだろう。
振動対策が重要なので、しっかりしたラック、台、ボードの上に設置する。
キャビネット (プレーヤーのボディ) 上の四隅に順に水平器を置き、傾き具合を調べる。
場所ごとに傾きの方向がバラバラならば、キャビネットが歪んでいる。
中古機、特に木製キャビネットでは、経年で歪んでいるものがある。
(2) ターンテーブルの水平
ターンテーブル上のシートを外し、むき出しのターンテーブル上に水平器を置く。
置く場所は、再生時に針が到達する位置が良い (図のターンテーブル上の青線の位置)。
気泡が水平器に記されたラインからはみ出していれば、プレーヤー底部四隅の脚 (インシュレーター) の高さを調節 (下図のように回転させるタイプが多い) して、気泡がラインの内側になるよう調節。
滅多にないことだが、調節後に水平器の置き場所を替えて、もし気泡がラインからはみ出していれば、ターンテーブルが歪んでいる。
<YAMAHA GT-750 の取扱説明書より抜粋>
(3) アームの水平
アンチスケーティングの目盛をゼロに合わせる (ダイヤル式の場合)。
アームの先端にヘッドシェル、リード線 (4本)、カートリッジを取り付け、アームの後端にウェイトを取り付ける。
アームをアームレスト (固定器) から外し、宙ぶらりん状態にする (何かにぶつけないように、そっと扱う)。
目視または測定しながら、アームが水平になるようにウェイトの位置を前後に移動させて調節。
水平になったら、ウェイトが動かないようにして針圧設定の目盛りをゼロに合わせる。
カートリッジに適した針圧およびアンチスケーティングの設定を行う。
(4) アームの高さ調節
停止しているターンテーブルにレコード盤を載せ、針を静かにレコード盤上に下ろす。
目視または測定しながら、アームが水平になるように高さを調節する。
「針を下ろす → 水平チェック → 針を上げる → 調節 → 針を下ろす →」 を水平になるまで繰り返す。
GT-750 では図のようにツマミを緩めて調節するが、アームの台座部分 (アームベース) のネジを緩めて調節する機種も多い。
注意: メーカーあるいは機種によっては (3)(4) の順が逆で、まずアームの高さ調節を行ってからアームの水平を取り、針圧・アンチスケーティングの設定を行うので、取扱説明書を確認するように。
1980年代に発売されたダイレクトドライブの機種を調べたところ、KENWOOD、PIONEER、TECHNICS、YAMAHA は (3)➔(4) で、DENON、VICTOR は (4)➔(3)。
(5) ヘッドシェル/カートリッジの左右水平
針先がレコード盤に垂直に接触していることも音質上重要。
例えば、わずか1度の傾きでも、それは 1 m 先では 17.5 mm のズレに相当する。
家の床面が1度傾いていると、自律神経や内耳の三半規管に影響し、頭痛・めまい・吐き気・睡眠障害・疲労の蓄積などの健康被害が起こる。
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」では、新築住宅の傾きの許容範囲は 1 m あたり 3 mm 未満とされている(中古住宅でも 6 mm 未満が目安)。
つまり、わずか1度の傾きでも、新築住宅に求められる基準の約6倍もの大きな傾きなのである。
傾きはインサイドフォースやクロストークにも影響する。
一部のヘッドシェルには、付属の六角レンチまたはドライバーで左右水平が調節出来るものがある。
また、ズレがわずかな場合は、ヘッドシェルとアームとのかみ合わせで調節可能。
この調節は、ヘッドシェルを着脱出来るS字/J字アーム (ユニバーサルアーム) で可能。
しかし、ヘッドシェルが固定されているストレートアームでは、カートリッジとヘッドシェルとの間にスペーサーを挟んで調節するしかない。
アームのヘッドシェルコネクターのすぐ後ろの下部に1~2個のネジがあり、ネジ穴との間に遊びがあるアームではそれを利用して調節できるが、遊びがまったくないアームもある。
しかし、本来、遊びがあるのは振動対策上好ましくない。
ストレートアームに固定されたヘッドシェルは、経年劣化で左右いずれかに大きく傾いているものがあるので、中古のストレートアームを購入する際には必ず出品者に確認する。
・ ヘッドシェルの上面が平らでカートリッジ取付面と平行であれば、水平器で調整が可能。
ヘッドシェルの上に水平器を置いたまま、針を停まっているレコード盤上に下ろす。
水平器の気泡がヘッドシェルの左右方向で中心になるように調節。
水平器を載せているので、水平器の重さによってはシェルの前後方向で前下がりになり、気泡がラインから後方にはみ出ることもある (それを避けるためにも、水平器は出来るだけ軽いのが良い)。
その場合は、ヘッドシェルの指かけ部分を指で下からそっと上げて、ある高さの時に気泡が水平器のライン内の真ん中に来るようにする。
「針を下ろす → 水平チェック → 針を上げる → 調節 → 針を下ろす →」 の操作を、シェルの左右方向が水平になるまで繰り返す。
・ ヘッドシェルの上面が平らでない、あるいは平らでもカートリッジ取付面とは平行になっていない場合は、目視で水平確認するしかない。
DENON DL-103 シリーズのように、カートリッジの正面に縦のラインが記してあれば、レコード盤に針を下ろした時に、カートリッジに記されたラインと盤に映るラインとが一直線に見えるように調節する。
針がレコード盤の溝から適切に音を拾えるように、水平チェックはきちんと行う。
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