飲食品を買うのに、店頭で買う場合とネット販売・通信販売で買う場合の2つに大別される。
店頭で買う場合は、商品を手に取って製造年月日を確認出来る。
しかし、ネット販売・通信販売では確認できないことが多い。
日本酒を買う場合、日本酒業界独特の表示のために、他の飲食品よりもややこしくなる。
一般に、製造年月日といえば、その飲食品が製造された日そのものを指す。
牛肉を例にすると、肉牛が屠畜されて枝肉になり、食品会社が処理・加工した日が製造年月日。
ところが、日本酒の製造年月(日は普通表示しない)は、出荷に向けて瓶詰めされた年・月を指す。
製造年月については瓶のラベルに必ず表示しなければならない(酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律)。
追記: 2023年1月の酒税法改正により、製造年月の表示が任意になった。 しかし、流通や消費において混乱が生じると予想されるため、多くの酒造ではこれまで通り表示している。
2022年10月1日から31日までの間に瓶詰めされて出荷された日本酒の瓶のラベルには、製造年月 22.10 のように記されている。
製造年月が2022年10月の表示
もうひとつ、日本酒業界独特な表示が酒造年度(醸造年度ともいう。BYと略記)。
酒造年度には表示義務がないので、表示している蔵元は少数派。
暦で年度といえば4月1日~3月31日だが、酒造年度は7月1日~6月30日。
秋に米を収穫して酒造りが始まり、多くの酒蔵では寒造りで1月~2月頃に醪(もろみ: 生のどぶろく)が出来上がる。
醪を搾り、濾過のありなし、火入れのありなしなど様々な状態のお酒として出荷される。
新酒と聞くと、「醪が出来たばかりの頃に出荷されたお酒のこと」と思っている人が多いが、少し違う。
新酒とは、その酒が造られた酒造年度内に瓶詰めされたお酒のこと。
なので、酒造年度の最後の日である6月30日までに瓶詰めされたお酒はすべて新酒。
今日(2022年10月29日)、私は地元のスーパーで日本酒のコーナーを見てみた。
ある酒蔵の商品が4本あり、ラベルの製造年月を見ると、22. 4、22. 7、22. 8と3つに分かれていた。
瓶詰めされたのが今年の4月、7月、8月に分かれているという事。
陳列棚では、4月のものが手前に、7月と8月のものが後ろに置かれていた。
スーパーとしては、製造年月が早いものから売りたくなるのは当然だろう。
「お酒なんだから、4月も7月もそんなに変わらないんじゃないの?」と思った人は要注意。
それは、酒造年度を表示している蔵元は少数派ということと関係がある。
日本酒は、熟成するにつれて風味が変わっていく。
同じ新酒でも、醪が出来上がってすぐの頃(新年や春先)と、酒造年月の終わりである6月とでは風味に違いがある。
夏を越して秋になると、各蔵元から熟成した風味を楽しんでもらうためのひやおろし(生詰め酒に分類される)も出荷される。
その頃には新たな酒造年度の酒造りが始まる。
しかし、前酒造年度のお酒の出荷は続き、冬になり、正月を越して新酒造年度のお酒が新酒として登場する。
こうして、前酒造年度と新酒造年度のお酒が出荷され併売されることになる。
前酒造年度と新酒造年度のお酒のどちらにも、例えば製造年月22.04と記されていても、混同しないように新酒の瓶には「新酒」のシールが貼られている。
新酒造年度のお酒は6月30日までは新酒として瓶詰め・出荷され、前酒造年度のお酒は7月1日からは古酒になる。
<酒造年度が2021年度のお酒(寒造り)の製造・出荷>
今日スーパーで見た製造年月が22. 4のものは酒造年度2020年度のお酒で、22. 7と22. 8のものは酒造年度2021年度のお酒である。
22. 4のものは1年以上の熟成期間を経たものであり、それを酒造年度2021年度のお酒と勘違いしないように。
また、冒頭で述べたように、ネット販売・通信販売では製造年月が確認できないことが多く、量販店から製造年月がずいぶん前の在庫品が発送される場合があるので要注意。
量販店の長期在庫品は、一貫して適切な温度管理の下で保管されていたかの保証もない。
直近の製造年月のを入手する確実な方法は、蔵元から直接購入(蔵元のネット販売サイトからでも良い)するか、酒販店のネット販売サイトで「(蔵元からの)お取り寄せ」となっているもの。
酒販店の店主と顔馴染みになって、入荷情報を聞くのも良い。