私のレコード洗浄法(2020年改訂 Ver.4) | 俳句銀河/岩橋 潤/太宰府から

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新品のレコード盤は言うまでもなく、中古盤でもノイズが少ないものは、ナガオカ Stat-Ban 562 と乾式クリーナー ナガオカ ARGENTO 118 (後継品は ARGENTO 120) で磨くだけで完璧。

しかし、中古でノイズがひどいものや汚れているものは洗浄しなければならない。

洗浄用の機器も売られており、吸入式 (Keith MonksLoricraft)、バキューム式 (i-qualVPI)、超音波洗浄などのクリーニング機があるが、私は手洗い。
中古盤の販売店/出品者の中には、盤をクリーニングしてから発送してくれるところもあるが、クリーニングの方法はそれぞれ違うし、ノイズの点で不満な時もあり、そんな時は自分で手洗いしている。

 

この手洗い洗浄法の効果は、溝の中の塵の除去においては超音波洗浄には敵わないが、バキューム式・吸入式に勝るとも劣らない

そして、盤の表面や溝の中の脂溶性汚れの除去においては、最高の除去効果がある (特にバキューム式・吸入式に比べて、洗浄液の使用量が圧倒的に多いことによる)。

 ・ 新品盤、シール未開封 ・ ・ ・ 洗浄液はまったく濁らない

 ・ 中古盤、水溶性の汚れ ・ ・ ・ 洗浄液がわずかに濁る (湿気への暴露、スプレー剤など)

 ・ 中古盤、脂溶性の汚れ ・ ・ ・ 洗浄液が茶色に濁る (タバコのヤニ、皮脂など)

何より、安上がり

バキューム式・吸入式のメーカー製洗浄液は、成分は安価なものばかりなのに高価過ぎる。

また、古い盤を聴いていて、盤が一回転するたびに 「プチッ」 「パチッ」 とノイズが繰り返される時は、溝の中の塵ではなく溝を何周か跨ぐ 「固着性の汚れ」 か 「盤面の傷」 が原因である。

固着性の汚れに対しては、機械式洗浄では落としきれないので、手洗いに限る

中古盤で、以前のオーナーが帯電防止スプレーを頻繁に使用したことによるボソボソノイズも消える。

手洗い洗浄法の唯一の欠点は、終始手作業であり続けて処理できる枚数は体力・気力次第なこと。

 

溝の中の塵の除去: 超音波洗浄 > この方法 ≧ バキューム式、吸入式

脂溶性汚れの除去: この方法 > バキューム式、吸入式 > 超音波洗浄

固着性汚れの除去: この方法 > 超音波洗浄 > バキューム式、吸入式

安価: この方法 >> 超音波洗浄、バキューム式、吸入式

 

用意するもの
ニトリル製ディスポ手袋 (パウダーフリーで指にぴったり合うサイズ。 ビニル製手袋は不可)
キムワイプ (繊維くずが出ないものであれば別の物でもよい)
温水も使えるキッチンのシンク (レコード盤が入る広さ)

蛇口直結型カートリッジ式浄水器 (クリンスイ、トレビーノなど)

エタノール (イソプロパノールでも良いが、頭痛などの吸入毒性はエタノールより強く長く続く)

食器用洗剤 (「ジョイ・バレンシアオレンジの香り」 を使用)

   脂溶性汚れの除去において、「ジョイ」 は試した洗剤中最高の効果

洗浄液容器 (洗浄2で使用)

洗浄専用に使うベルベットのレコードクリーナー

洗浄専用に使うゴム製ターンテーブルシート

 

  洗浄1   (水溶性・脂溶性・固着性の汚れの除去)

キッチンのシンクの内側を軽く洗い、食品のカスなどの汚れを除く。
37~40℃ の温水をシンクに 10 cm ほどの深さに溜め、食器用洗剤を 1,000 ~ 2,000 倍希釈 (目分量でよい) になるよう加え、洗浄液とする。

洗剤の効果は温度が高いほど向上するので、温水の設定温度は 37~40℃ が良い。

それ以上高くすると、盤 (ビニル樹脂製) が変形するおそれがある。

 

盤を洗浄液に浸す。
私はレーベル部分を保護していないが、モノラル録音時代のものなど一部のかなり古い盤の中には、レーベルに使われた紙や接着剤が濡れるとダメージを受けるものがあるそうで (私が持っている盤では今まで1枚もない)、保護器具の使用が必要な盤もあるだろう。

洗浄中、レーベルが濡れた感じになるが、乾かすと元通りになる。

 

両手にニトリル製ディスポ手袋を付け、片手で盤を持ちながら洗浄液に浸し、もう片手の人差し指・中指・薬指の3本の指先を盤面に当て、溝の方向に沿って素早く左右に動かしながら擦る (水溶性および脂溶性の汚れが洗浄液中に溶け出す)

指先に何か当たる感触があれば、それがなくなるまで擦る (固着性の汚れが取れるが、盤面の傷であれば無理)。
これを溝部分の内周側から外周側まで、盤をすこしずつ回して一周行う。
盤の反対側の面に対しても同様に。

 

洗浄1は、溝内部の塵・埃を次の洗浄2で除去しやすくするための下準備を兼ねている。

洗浄1で、盤は多量の洗浄液に数分間浸かるため、それが効果を挙げる。

 

  洗浄2   (溝内部の塵・埃などの除去)

盤の音溝に触れずに作業出来るのであれば、ニトリル製ディスポ手袋は使わなくて良い。

容器に次の組成の洗浄液を調製する (LP 1枚につき 40 mL)。

 ・ 浄水 (蛇口直結型カートリッジ式浄水器でじゅうぶん)

 ・ 25% (v/v) エタノール

 ・ 1/1000 (v/v) 食器用洗剤

 

水平な場所にゴム製ターンテーブルシートを置き、盤を乗せる。

洗浄液を片面 (レーベル部分を除く) に 4 mL くらいずつ5回に分けて掛け足す毎に、洗浄盤2周おこなう面にベルベットのレコードクリーナーをしっかり押し当てて、円周方向に小刻みに前後させて進みながら擦る)。

片面で合計10周ほど洗浄することになる。

力を入れずに撫でる程度では洗浄効果は格段に下がる。

ベルベットのクリーナーで私が薦めるのは、ベルベット繊維の密度が高く方向性がある audio-technica AT6012 またはその後継品 AT6012a

もう片面も同様に洗浄する。

A面B面を交互に洗浄しても良い。

 

両面の洗浄が終わったら、温水 (シャワーモードがお奨め) を勢いよく当てて盤面をよくすすぐ。

冷水に切り替え、両面を浄水 (蛇口直結型カートリッジ式浄水器) でよくすすぐ。
水をよく切って、盤面に浮かんだ水滴はキムワイプを上から押し当ててすべて吸い取る

レーベル部分の水も拭き取ることを忘れずに。

盤を立てて乾燥させる。

乾くのはレーベル部分が一番遅いが、冬でも2時間あれば完全に乾く (レーベル部分を濡らさずに洗浄した場合は1時間でじゅうぶん)。

これで洗浄は終了。

 

一度この洗浄法を行った盤は、もし再びノイズが気になり出した時は、洗浄2だけで良い。

使用後のレコードクリーナーは、洗剤をよく洗い落としてから乾かす。

ベルベット繊維に摩耗が見られるようになった時は交換する。

 

  仕上げ  

手洗いでも機械式洗浄でも、洗浄した盤は帯電しやすく潤滑性も落ちている。

まず、乾燥中に付いた塵・埃を除くため、ARGENTO 118 で両面を軽く拭く。
Nagaoka Stat-Ban 562 (帯電防止と潤滑効果の両方あり) をメーカー指定量よりも多めにスプレーして、ARGENTO 118しっかり磨き上げる

 

Stat-Ban 562 の説明に、「スプレー後直ちに乾式のレコードクリーナーで溝に沿って全体にムラなくこするように磨いてください」 とあるように、しっかり磨くこと。

Stat-Ban 562 に限らず、スプレーした後、レコードクリーナーを軽く当てて拭いている人がいるが、間違った使い方である。

どんなにうまくスプレーしたつもりでも盤面にムラが出来ており、ムラを放置しておくと再生中ずっとボソボソと聴こえるノイズになる。

レコードクリーナーを盤にしっかり押し当て、レコードクリーナーまたは盤を回転させ、スプレー剤を溝全体に均一に伸ばす

 

洗浄効果の確認

 

Luxman L-505u の出力メーターがピーク時に -20 dB 以上を示す音量でリスニング

 

 

  収納  

せっかく洗浄したレコード盤を綺麗に保つには、帯電を防ぎ、外気の接触を極力減らすことが重要。

レコード盤を入れる内袋には帯電防止タイプを用い、ジャケットにはビニルカバーをする。

内袋・ジャケット・ビニルカバーそれぞれの口の向きにも注意する (以下リンク記事)。