東京ステーションギャラリーで「大津絵 もうひとつの江戸絵画」を観た! | とんとん・にっき

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「大津絵 もうひとつの江戸絵画」チラシ

 

「東京ステーションギャラリー」ファサード

 

東京ステーションギャラリーで「大津絵 もうひとつの江戸絵画」を観てきました。観に行ったのは、9月23日のことでした。

 

僕が最初に観た大津絵は、日本民藝館の柳宗悦が蒐集した大津絵でした。観たのは少しずつでしたが、やはり、量・質ともに、群を抜いていました。とはいえ、その頃は、他の美術館でも蒐集していたかどうか、そこまではわかりませんでしたが…。そして、大津絵と言えば、浅井忠を調べたいと思い来日した、マルケさんの大津絵の克明なる調査と、それをまとめた著作ですね。

 

江戸時代初期から東海道の宿場、滋賀県の大津周辺で量産された土産物だった大津絵は、主に歴史資料・民俗資料として扱われ、その展覧会は博物館や資料館で開催されることが多かった。今回の展覧会は、大津絵を美術としてとらえ直し、狩野派、琳派、若冲ら奇想の系譜や浮世絵でもない、もうひとつの江戸絵画としての魅力に迫っています。

 

今回の展覧会は、近代日本の名だたる目利きたちによる旧蔵歴が明らかな、名品ぞろい約150点が展示されます。

 

みどころ 
その1 
文化勲章を受章した洋画家・小絲源太郎が秘蔵した大津絵を、笠間日動美術館がまとめて収蔵。そのコレクション35点を一挙初公開!
その2 
初の本格的な工芸論『工藝の道』(1928年)の著者にして民藝運動の父・柳宗悦が創設した日本民藝館が所蔵する、大津絵の名品52点をまとめて公開!
その3 
丹念な調査と所蔵先などの協力により判明した、近代日本の文化人が旧蔵したことが明らかな大津絵のみを、日本各地、および一部フランスからも借用して展示!
その4 
大津絵の名品を入手した所蔵家たちは、表装にも贅を凝らしました。旧蔵者のこだわりを示す掛軸の表装もみどころのひとつ!

 

大津絵を「民画」の代表と位置づけたのは、柳宗光でした。

その特徴とは、①作者名が記されていない、②実用性がある、③大衆の需要に応じ、繰り返し描くために図柄が様式性を帯びている、④安価で提供するため、絵に省略がある、⑤時に分業的で家族も制作に加わる、というもの。

 

時代とともに、描く内容や形式は変化し、当初は描表装の仏画が中心だったが、鬼や動物、七福神など親しみやすい画題が増え、さらに道歌(教訓的な短歌)を入れるようになった。

 

形状は二枚をつなげた縦長の紙に描かれたものが、やがて一枚となり、小型化。百種以上に増えた画題は、最後には十種(鬼の念仏、藤娘、雷公、瓢箪鯰、座頭、やり持ち、鷹匠、弁慶、矢の根、長頭翁)に絞られ、護符としても使われた。

(以上、朝日新聞「展覧会広告」による)

 

整理すると、大津絵は最後には

十種(鬼の念仏、藤娘、雷公、瓢箪鯰、座頭、やり持ち、鷹匠、弁慶、矢の根、長頭翁)

に絞られました。

 

展覧会の構成は、以下の通りです。

第Ⅰ章 受容のはじまり~秘蔵された大津絵~

第Ⅱ章 大津絵ブーム到来~芸術家のコレクション~

第Ⅲ章 民画としての確立~柳宗悦が提唱した民藝と大津絵~

第Ⅳ章 昭和戦後期の展開~知られざる大津絵コレクター~

資料

 

共に板に描かれていたもの
左:「雷と太鼓」笠間日動美術館蔵
右:「鬼の念仏(看板)」笠間日動美術館蔵
北大路魯山人

 

第Ⅰ章 受容のはじまり~秘蔵された大津絵~

 

「瓢箪鯰」日本民藝館蔵
富岡鉄斎→柳宗悦

 

「猫と鼠」笠間日動美術館蔵
富岡鉄斎→小絲源太郎

 

「提灯釣鐘」日本民藝館蔵
浅井忠→柳宗悦

 

「鬼の行水」日本民藝館蔵
渡辺霞亭→山村耕花
→大原孫三郎
→大原總一郎→柳宗悦

 

第Ⅱ章 大津絵ブーム到来~芸術家のコレクション~

 

「鬼の念仏」笠間日動美術館蔵
山内神斧→小絲源太郎

 

「傘さす女」笠間日動美術館蔵
梅原龍三郎→(益田孝)
→益田義信→小絲源太郎

 

「長刀弁慶」個人蔵
梅原龍三郎

 

「座頭」日本民藝館蔵
三浦直介→大阪・個人→
池田金太郎→大原總一郎
→柳宗悦

 

「藤娘」

 

「外法梯子剃」

 

第Ⅲ章 民画としての確立~柳宗悦が提唱した民藝と大津絵~

 

「頼光」滴翠美術館寄託
山村耕花→山口吉郎兵衛

 

「長刀弁慶」大津市歴史博物館蔵
(吉川観方)→柳宗悦→内田六郎

 

 

「槍持鬼奴」個人蔵
秦秀雄

 

第Ⅳ章 昭和戦後期の展開~知られざる大津絵コレクター~

 

「青面金剛」
静岡市立芹沢銈介美術館蔵
芹沢銈介

 

「青面金剛」日本民藝館蔵
水谷良一→棟方志功

 

「鷹」大津市歴史博物館蔵
白洲正子

 

「鬼の念仏」
神奈川県立近代美術館蔵
(麻生三郎コレクション)

 

資料

大津絵旧蔵者の相関図「大阪・京都」

 

大津絵旧蔵者の相関図「東京」

「大津絵 もうひとつの江戸絵画」

これまで大津絵の展覧会は、博物館や資料館で開催されることが多く、美術館で開かれたことはほとんどありませんでした。それは大津絵が、主として歴史資料、民俗資料として扱われてきたからですが、本展では、大津絵を美術としてとらえ直し、狩野派でも琳派でもなく、若冲など奇想の系譜や浮世絵でもない、もうひとつの江戸絵画としての大津絵の魅力に迫ります。
大津絵は江戸時代初期より、東海道の宿場大津周辺で量産された手軽な土産物でした。わかりやすく面白みのある絵柄が特徴で、全国に広まりましたが、安価な実用品として扱われたためか、現在残されている数は多くありません。
近代になり、街道の名物土産としての使命を終えた大津絵は、多くの文化人たちを惹きつけるようになります。文人画家の富岡鉄斎、洋画家の浅井忠、民藝運動の創始者である柳宗悦など、当代きっての審美眼の持主たちが、おもに古い大津絵の価値を認め、所蔵したのです。こうした傾向は太平洋戦争後も続き、洋画家の小絲源太郎や染色家の芹沢銈介らが多くの大津絵を収集しました。
本展は、こうした近代日本の名だたる目利きたちによる旧蔵歴が明らかな、いわば名品ぞろいの大津絵約150点をご覧いただこうというものです。

 

「東京ステーションギャラリー」ホームページ

http://www.ejrcf.or.jp/gallery/index.asp

 

「大津絵 もうひとつの江戸絵画」

図録

監修:森谷美保

2020年5月19日発行

発行:

東京ステーションギャラリー

福島県立美術館

 

「大津絵 民衆的風刺の世界」

角川ソフィア文庫

クリストフ・マルケ

楠瀬日年=絵

平成28年7月25日初版発行

発行:KADOKAWA

 

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