東京ステーションギャラリー「ジョルジョ・モランディ 終わりなき変奏」! | とんとん・にっき

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東京ステーションギャラリーで「ジョルジョ・モランディ 終わりなき変奏」を観てきました。


困った時の神頼み、ではなくて、高階秀爾の「近代絵画史」に載っているかなとみてみたら、なんと下巻の「キリコと形而上派」に、僅かにモランディが触れられていました。「シュルレアリスムが新しいイメージを育て上げたように、未来派の激しい伝統否定のなかから、やがて形而上派の静謐な不安に満ちたイメージが生まれてくるのである」として、「1914年の未来派展にはじめて参加した若いジョルジオ・モランディの場合もそうであったといえるであろう」と。


「モランディが絵画を志した20世紀初頭は、西洋絵画の転換期。モランディはセザンヌに私淑しつつも、キリコらの「形而上絵画」や未来派などの前衛的な活動にも影響を受けた。しかし、その後はイタリアの古典絵画に目を向け、同時代の芸術の源流から距離を置いて静物を描き続けたとされる。」と、朝日新聞の西岡一正は述べています。


実は5年前にも「モランディ展」は計画されていましたが、東日本大震災で中止となりました。それが1989年―90年の「モランディ展」、1998―99年の「モランディ―花と風景展」に続き、本邦3度目の「ジョルジョ・モランディ展―モランディとの対話」でした。それに合わせて岡田温司の「モランディ 人と芸術」(平凡社新書:2011年3月31日初版第1刷発行)が発売されたわけです。


僕はその本を発売と同時に購入し、半分ほど読んだ時点で東日本大震災が起き、展覧会が中止されたことを知り、読むのを途中で止めてしました。正確には、第7章まであるなかで第3章まで読みました。鉛筆で線が引いてあるので、それはわかりました。岡田は、美術史に埋没しかかっていたイタリアの一都市ボローニャの画家を、20世紀の二大巨匠ピカソとデュシャンを横並びに位置づけて論じています。

モランディの絵画は、白、灰色、ベージュの淡い色調が画面を支配しています。見慣れたはずの瓶や水指が、少しずつ位置をずらして並んでいます。モランディは、同じような静物ばかりを描いています。モランディのアトリエには、長年にわたってモチーフとなった瓶や壺がそのまま残っているという。今回の展覧会、出展作約100店のうち、8割はテーブルの上のモチーフを描いた油彩と版画です。しかもそのほとんどが「静物」と題されています。


だが、「同じような」は必ずしも「同一」を意味しない。瓶やつぼは時には微妙な間合いで配置され、時には一列に並べられる。さらには、画面の一方に偏り、年度の塊のようにひしめくこともある。反復と見えた光景は、実は差異をはらみつつ、抽象絵画に近似した眺めへと変容していく。と、朝日新聞の西岡一正は述べています。


成相肇(東京ステーションギャラリー学芸員)は「モランディはモチーフの配置によって、量感や空間の構成に工夫を重ねた。静物を描きながら、独自の前衛的な表現を追求したのではないか」と語る。


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「ジョルジョ・モランディ 終わりなき変奏

20世紀最高の画家の一人、ジョルジョ・モランディ(1890~1964)。世界中の絵画ファンが熱烈に愛するこの画家の、日本では3度目、17年ぶりとなる待望の本格的な個展を開催します。若い頃から高い評価を受けながらも、人生のほとんどの時間を生まれ故郷のボローニャの自宅兼アトリエで過ごしたモランディは、静物画という主題に専心したことで知られます。淡い色彩でまとめられた慎ましい画面に動きのある要素は登場せず、誇張もなく、一見して簡素そのもの。にもかかわらずモランディが「20世紀最高の画家」の称号を与えられているのは、描かれた事物が画面の中に織り成す複雑な空間をコントロールする、その巧みな手腕のゆえに他なりません。一点一点の作品において、色と形が緊密に対話し合い、スリリングなほどの均衡を保っています。絵画というもののあらゆる魅力を凝縮したといっていい画面は圧倒的な説得力を持ち、私たちの目をつかんで離すことがありません。本展は、「終わりなき変奏」のサブタイトルの通り、モランディに特徴的な手法である「ヴァリエーション=変奏」に焦点を当てます。モランディの作品には、しばしば同一の瓶や箱、壺、水差しなどが登場します。いったん完成した組合せを崩し、要素を入れ替えて別の完成形を見出すことは、思えば困難な方法でもありますが、モランディは嬉々として果てしない組み替えの作業に徹し、色調や構図を変化させつつ無数の傑作を生みだしました。モランディにとって卓上の瓶や容器は、作品のモティーフであるとともに、絵画の潜在力を試す恰好の相手でもあったのです。今回はボローニャのモランディ美術館の全面的な学術協力のもと、イタリア各地および国内から集まった油彩画約50点、水彩、素描、版画約50 点が彩る贅沢な空間が実現します。うっとりするほどの気品と絵画のエッセンスを間近に堪能できる、まさに眼福の語がふさわしい至高の体験の機会を、ぜひともごゆっくりお楽しみください。

「東京ステーションギャラリー」ホームページ

mora1 「ジョルジョ・モランディ 人と芸術」

平凡社新書

発行日:2011年3月31日初版第1刷発行

著者:岡田温司

発行所:株式会社平凡社