東京ステーションギャラリーで「吉村芳生―超絶技巧を超えて」を観てきました。会期末は1月20日です。観に行こうとは思っていましたが、いつの間にか会期末が迫ってきて、大慌てで観に行ってきました。
僕は、この作家のことはこの展覧会を観るまで、まったく知りませんでした。しかし、凄い、凄い。いや、驚きました。単なる写実ではありません。観なければわかりません、彼の作品の凄さは。いや、作品というより、吉村芳生という人間のことを。ここまで人はやれるということを…。
「僕は小さい頃から非常にあきらめが悪かった。しつこくこだわってしまう。僕はこうした人間の短所にこそ、すごい力があると思う」(朝日新聞:2010年12月4日より)
展覧会の構成は、以下の通りです。
・ありふれた風景
・自画像の森
・百花繚乱
以下、ホームページよりの引用
超絶技巧? それとも?
新聞紙の上に鉛筆で描かれた自画像。よく見ると、じつは新聞紙そのものが、鉛筆で一字一字描かれている! 吉村芳生の代名詞とも言うべき〈新聞と自画像〉シリーズです。花や風景をテーマにした作品でも、吉村の緻密な描写は一貫しています。一見すると、徹底的に対象に肉迫する超絶技巧の写実主義かと思えますが、吉村の作品は、単純に対象を熟視して描かれたわけではありません。超絶技巧を超える制作のヒミツとは。ぜひ会場で発見してください。
金網は続くよ、どこまでも
これは絵画と言えるのでしょうか?金網だけを延々と忠実に写し取った作品。どこか破れているとか、蜘蛛の巣がかかっているとか、そんな変化は一切なし。ただひたすら金網が続きます。その長さ何と17メートル!なぜ17メートル?じつは、この作品を発表した画廊の壁の長さが17メートルだったのです。もっと大きな会場だったら、おそらくもっと長くなっていたことでしょう。また、自画像シリーズの中には、365点組のものがいくつかあります。これもなぜ365点だったのか、と問われれば、吉村は1年で区切りが良かったから、と答えたことでしょう。意味があるのか、ないのか、よくわからないこの不思議な継続は、吉村作品の大きな魅力です。
2007年、57歳で現代アート・ シーンに再登場した奇跡の画家
1950年、山口県に生まれた吉村芳生は、版画のフィールドで内外の美術展に出品を重ね、いくつかの美術館に作品が収蔵されるなど、高い評価を得ましたが、その評価は一部にとどまっており、決して知名度の高い作家ではありませんでした。1990年代以降は、山口県展や画廊での個展が中心の地道な活動を続けていました。それが一変したのは2007年のこと。吉村が57歳のときのことです。この年、森美術館で開催された「六本木クロッシング2007:未来への脈動」展に出品された作品群が大きな話題を呼びます。その後、各地の美術館で作品が展示され、特に山口県立美術館で開催された個展には多くの観客が押し寄せました。遅咲きの花として、快進撃を続けていた吉村はしかし、2013年に突然亡くなってしまいます。
・ありふれた風景
・自画像の森
・百花繚乱
「吉村芳生―超絶技巧を超えて」
超絶技巧?そんな単純な言葉で説明することはできません。延々と17メートルにわたって描かれた金網、1年間毎日描き続けた365枚の自画像、1文字1文字をすべて書き写した新聞紙――。吉村芳生(1950-2013)が生み出した作品は、どれも超絶リアルでありながら、見る者の度肝を抜く凄味を感じさせます。本展は東京初となる回顧展で、初期のモノトーンによる版画やドローイング、後期の色鮮やかな花の作品、生涯を通じて描き続けた自画像など、600点を超える展示品によって吉村の全貌を伝えます。ただ上手いだけの絵ではない、描くこと、生きることの意味を問い直す真摯な作品の数々を、ぜひその眼で目撃してください。
「東京ステーションギャラリー」ホームページ
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/
「吉村芳生―超絶技巧を超えて」
図録
監修:冨田章(東京ステーションギャラリー)
企画:株式会社アートワン
編集:株式会社アート碗
羽鳥綾(東京ステーションギャラリー)
発行:株式会社アートワン©2018