ヒトメタニューモウイルス感染症 ・・・ 医学豆知識
中国で新しい呼吸器感染症が大流行。インドや東南アジアでも感染拡大。日本での流行も時間の問題か?と、ここ数日大きく報道されているのが、ヒトメタニューモウイルス感染症です。聞き慣れない名前のウイルスで、中国で感染爆発と云うことから、新型コロナ感染症と同じ、新種のウイルス発生か?と、誤解してパニクっている方も多いようですね。今回は、このヒトメタニューモウイルス感染症について解説します。結論から先にお話しします。実は、ヒトメタニューモウイルス感染症は、昔からある風邪なんですよ。まずは、風邪の説明から。ブリタニカ百科事典では。感冒ともいう。鼻、のど、気管支などの粘膜に起こる炎症性の病気の総称、風邪症候群と呼ぶほうが正しい。ウイルスの上気道感染によるものが多いが、症状の重いインフルエンザとは区別されている。疲労、寒冷などのストレス刺激も関係しており、頭痛、発熱、上気道炎、鼻炎などの症状と呈する。時には胃腸障害を伴うものもある。肺炎などの二次感染がなければ安静だけで改善する。と、記載されています。さて次は、症候群の定義です。いくつかの症候が、常に相伴って認められるが、その原因が不明のとき、または単一でないときに、病名に準じたものとして用いる医学用語(日本国語大辞典)風邪症候群も、この定義の通り。風邪という共通の症候を呈する、複数の病因による感染症と云う意味です。20世紀には、風邪の病因はマイコプラズマ、クラミジアの2種の細菌を除き、残りの9割はライノウイルス、RSウイルス、コロナウイルス、アデノウイルスなどのウイルスと考えられていました。しかし、風邪を起こすウイルスの1割は、原因不明で未発見だったのです。不明の風邪ウイルスの中で、最初にみつかったのが、2001年にオランダの研究チームより発見されたヒトメタニューモウイルスでした。このウイルスは、風邪症状を示す小児の鼻粘膜より分離されました。また、1958年に採取された血清中からも発見され、少なくとも43年前から、人の間で流行していたこともわかりました。このウイルスはパラミキソウイルス科に属し、風邪症候群を起こすRSウイルスに構造も臨床症状も類似しています。現在では、ウイルス性の風邪の中で小児では5~10%、成人では2~4%はヒトメタニューモウイルスと推測されています。乳幼児、高齢者、免疫不全状態の患者では重症化のリスクがあります。流行のピークは春(3~6月)です。一回の感染では終生免疫を得ることは難しく、幼少期には何度も感染を繰り返すと考えられています。以上から、今年の冬から春にかけて、日本でもパンデミックが起こる可能性が高いと思われます。診断法として現時点では、抗原検査などはなく、新型コロナの時と同じ様にPCR法で行うことになります。ワクチンも特効薬もありませんので、風邪症候群として対症療法が行われます。人以外では、サル、イタチ、ネズミ、ハムスターなどに感染します。鳥類や犬、猫などのペットには感染しないようです。接触、飛沫で感染しますので、予防はインフルエンザや新型コロナと同じ、マスクと手洗いなります。