日本全国の日当たりの良い草原や丘に自生し、毎春紫色の可憐な花を咲かせる多年草が、すみれ(菫)です。
名の由来として花の後ろに突起のある形が、「墨入れ」に似ているから、すみれの名がついたと云う説もあります。
すみれについて、ギリシャ神話に、こんな話が伝わっています。
ある日、川の女神イオとゼウスが草原で愛をささやき合っていました。
そこへ、突然妻のヘラが近づいてきたのでした。
これを見てあわてたゼウスは、イオを仔牛の姿に変えてしまいます。
仔牛をイオと見破ったヘラは、宮殿に連れ帰り、夜も昼も見張りをつけたのです。
イオに会えなくなったゼウスは、イオを慰めるために、庭に咲くすみれの花をつくったのでした。
こんどはイギリスのお話です。
シェークスピアの悲劇ハムレットに、オフェーリアのこんな台詞があります。
ハムレットの心変わりを、敵をあざむくためとは知らず、気が狂ってしまったオフェーリア。
花束をつくりながら、こうつぶやきます。
これが万年草。
私を、ずっと忘れないように。
そして、これはすみれ草。
ものを想ってという意味よ。
あなたには、すみれをあげたいの。
でも、もうみんなしぼんでしまった。
すみれの花言葉は、「誠実」、「控えめ」です。
そして、春の季語でもあります。
最後は、俳句を一句。
山路来て 何やらゆかし すみれ草
芭蕉
補足
万年草
万年草(まんねんそう)はセダムとも呼ばれる、岩や壁に張り付くように生える多肉質の植物です。
乾燥に強く丈夫なため万年草の名がついたといわれています。
5月から6月にかけて写真のような5弁の花が鮮やかに咲きます。