百日咳 ・・・ 感染症・速報
百日咳は、ボルデテラ・パータシスという細菌によって引き起こされる感染症で、主に呼吸器に影響を及ぼします。この疾患の特徴は、咳が長く続くことから、百日咳と命名されました。乳幼児は重症化しやすく、適切な治療と予防が大切です。百日咳の病態は初期、中期、回復期の3段階に分けられます。初期には風邪に似た、鼻水、軽い咳、発熱が見られます。このため、初期診断は難しいのが実情です。中期にいると、特徴的な激しい咳発作が現れます。この咳は、「吸気性笛声」と呼ばれる、息を吸う際の音を伴うことがあります。また、咳発作によって嘔吐や全身の衰弱が生じることも少なくありません。回復期では、咳の頻度が減少し、徐々に症状が改善します。百日咳は感染力が非常に強く、飛沫感染により広がります。感染者が咳やくしゃみをすることで、細菌が空気中に拡散され、近くにいる人がそれを吸い込むことで感染します。乳幼児は、免疫力が未熟なため重症化しやすく、感染予防について特別な注意が必要です。百日咳を防ぐ最も効果的な方法は、予防接種です。(ジフテリア・百日咳・破傷風・不活性化ポリオ・Hib)の5種混合ワクチンが標準的に使われており、生後2ヶ月からの接種が推奨されています。ワクチンの効果は永続的ではなく、10代や成人では免疫が低下することがあるため、追加接種が必要な場合もあります。治療では、感染初期に抗生物質を投与することで、症状の進行を抑えることができます。ただし、中期に入り咳発作が始まってしまうと,抗生物質の効果は限定的で、症状の緩和には支持療法が中心となります。感染拡大を防ぐには、早期診断と患者の適切な隔離が重要です。近年、抗生物質に対する耐性を持つ百日咳菌が報告されています。特に、第一選択薬として使用されることの多い、マクロライド系抗生物質(クラリスロマイシン・アジスロマイシン)への耐性菌が増加しています。今回の流行でも,、死亡した乳児は耐性菌による感染、と報道されていました。罹患すると重症化し易い乳児を守るための、新たな予防法としてコクーン戦略があります。百日咳に対するコクーン戦略とは、乳児が百日咳に感染するリスクを減らすために、乳児の周囲にいる家族や近親者に、ワクチンを接種すると云うものです。周囲の人々が防御壁となって、重症化し易い乳児を感染から防ぐ役割を果たすのです。まず、妊婦がワクチンを接種することで、乳児に移行抗体を提供し、生後数ヶ月間の乳児を守る効果があります。また、父親や兄弟姉妹、祖父母などもワクチンを接種することで、乳児への感染リスクをさらに低減できます。残念ながら、日本では乳幼児への定期接種は行われていますが、コクーン戦略を普及しているとは云えません。海外では妊婦へのワクチン接種が一般的ですが、日本では任意接種として扱われています。コクーン戦略の課題としては、費用と手間がかかることが挙げられます。少子化対策が喫緊の課題とされている日本。私見ですが、自公政権も寝たきり老人の延命に、膨大な医療費をかけるよりも、乳児を守るワクチンのコクーン戦略にお金を出したらどうですかね。脚注コクーン( Cocoon )とは、蚕の繭の事で、対象の周りを優しく包んで守るものの事です。