帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスが原因で発症する病気です。
このウイルスは、子供の頃には水ぼうそうを引き起こし、その後神経節に潜伏します。
加齢やストレス、免疫力の低下などをきっかけに再活性化して、帯状疱疹として発病します。
罹患率は50歳代から上昇し、70歳代で最も高くなります。
帯状疱疹の初期症状は、皮膚のピリピリとした痛みやかゆみです。
数日後、赤い発疹が現れ、水ぶくれへと変化します。
発疹は、身体の片側に沿って帯状に広がるのが特徴で、病名が帯状疱疹と呼ばれるわけです。
痛みは軽いものから激痛まで様々で、人によっては数週間から数ヶ月続くことがあります。
治療には、アシクロビルやパラシクロビルなどの抗ウイルス薬が用いられます。
発疹がでてから72時間以内に服用を開始すると、症状の悪化を防ぎやすくなります。
痛みが強い場合には、鎮痛剤や神経ブロックが処方されます。
後述しますが、予防策としては50歳以上の人に、帯状疱疹ワクチンの接種が推奨されています。
ワクチンは発症リスクを大幅に低減し、重症化を防ぐ効果があります。
また、免疫力を維持するために、規則正しい生活やストレス管理が重要です。
この病気の合併症に、「帯状疱疹後神経痛:PHN」と「ラムゼイ・ハント症候群」があります。
帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹の快復後も長く続く神経の痛みです。
これは、帯状疱疹により損傷を受けた神経が過敏になり、痛みの信号を過剰に送ることで生じます。
鋭い痛みや焼けるような痛みが持続し、軽い刺激でも強く痛むことがあります。
ラムゼイ・ハント症候群(Ramsay Hunt Syndrome)は帯状疱疹が耳の周辺の神経節から起こると生じる疾患です。
主な症状を以下に示します。
・顔面神経麻痺:片側の顔の筋肉が動かしづらくなり、表情が歪みます。
・耳の症状:耳の痛み、耳鳴り、難聴が発生することがあります。
・発疹:耳の周囲や口の中に水疱ができます。
・めまい:内耳神経が影響を受けることで、バランス感覚が乱れ、ふらつきやめまいを生じます。
治療には、抗ウイルス薬やステロイド薬が用いられます。
早期治療が重要で、発症から72時間以内に治療を開始すると、後遺症のリスクを軽減できます。
治療が遅れると、顔面神経麻痺が長期間残ることがあります。
完全に回復しない例では、顔の筋肉の動きが不自然になる「病的共同運動」や、聴覚障害はつづくことがあります。
帯状疱疹のワクチンには、生ワクチンと組織組換えワクチンの2種類があります。
・生ワクチン(弱毒生水痘ワクチン):従来からある子供用の水痘ワクチンと同じものです。
1回の皮下注射で接種されます
成人では、免疫力が低下していない人に適しており、接種後1年の時点で60%、5年間の時点で約40%の予防効果があります。
副作用として、接種部位の晴れや発熱が報告されています。
・組換えワクチン(シングリックス):2回の筋肉注射が必要です。
1回目の接種から、2ヶ月以上の間隔を空けて6ヶ月以内に2回目を接種します。
免疫力が低下している人にも使用可能で、予防効果は接種後1年の時点で90%以上、5年時点で約90%、10年の時点で70%の予防効果があります。
また帯状疱疹後神経痛の予防効果も高く、組換えワクチンでは約90%の予防効果が報告されています。
副反応のして、接種部位の痛みや倦怠感、発熱などが報告されています。
帯状疱疹ワクチンの接種対象者は、50歳以上の人です。
特に、膠原病や治療薬の副作用で免疫力が低下している人は、早期の接種が推奨される場合があります。