※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。
将棋検討ソフト「スーパー水蓮」
雲母は、取材を受けるために会館の応接室にいた。隣には、師匠でもある中根会長が座っていた。
「雲母君、今日の取材はTBC放送だよ。」
「えっ、テレビ局なんですか!」
「うん、放送局の社長が将棋の大フアンでね。連盟もお世話になっているんだよ。名人戦の スポンサーでもあるんだ。そういうことで、断れなくてねえ。すまん、付き合ってくれよ。」
「そうでしたか。承知しました。」
程なくして、ドアがノックされて、会館の職員が入ってきた。
「中根会長、テレビ局の方々がお見えになりました。」
「そうですか。お通してください。」
すると、テレビ局の放送ディレクターの田中が入ってきた。
「中根会長、お久しぶりでございます。」
「やあ、田中さん、久しぶりですねえ。お元気そうで何よりです。」
「今回は、無理なお願いをお受けいただき、ありがとうございます。」
「雲母先生、TBC放送の田中でございます。ご多忙の中、取材をお受けいただきありがとうございます。本日は、どうぞよろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。一つお願いが・・・」
「何でございましょうか。」
「その『先生』という呼び方は・・・普通に『さん』でお願いします。」
「いや~、中根会長どうしたものでしょうか。」
「ははは、雲母君の望み通りで頼みますよ。」
「承知いたしました。それでは、失礼だと思いますが、『さん』で進めさせていただきます。これから、撮影のセットを組みますので、少しお時間をいただきます。」
すると、撮影スタッフがぞろぞろと入ってきて、セッティングを始めた。背景やら何やらで、応接室はあっという間にスタジオへと変わってしまった。雲母は、これからどういう形の取材となるのか、やや不安な気持ちになったのだった。
【これまでの主な登場人物】
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