将棋小説「背徳の棋譜」プロローグ② | 藤井七冠応援ブログ

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 現在の将棋界は、7つのタイトルを4人で分け合うという群雄割拠の状態である。
 タイトルホルダーは、最高峰の名人位、龍将位、十段位の三つを保持している臥龍岡(ながおか) 拓磨三冠。続いて、将王位、馬王位の二冠を保持する君家 太郎二冠。棋将位を保持する橋爪 龍之助。そして、王冠位を保持する長尾 瑞樹の4人である。
 棋界の第一人者は、三冠を保持する臥龍岡 拓磨である。雲母 岳と同い年の35歳で、錬成会時の同期でもある。臥龍岡は、三段リーグを一期で抜け、その後毎年度昇級を重ね、名人戦初挑戦でタイトルを奪取した。雲母とは比べものにならないほどのスター棋士である。 

 羨むほどの存在となった臥龍岡。しかし、彼には大きな欠点があった。それは、一言で言えば「性格が悪い」に尽きる。最悪なことは、自分よりも格下の棋士に対しての振る舞いが、非常に高圧的であることだ。時に目に余るものがあり、長老の棋士から注意されることもあったほどだ。しかし、彼は聞く耳を持たない。横暴な振る舞いは、周囲から疎まれていた。特に、同期の雲母に対しては、辛辣そのもであった。
 12月中旬、雲母は、東部将棋会館での対局を終えて、会館を出ようとしたところだった。運悪く、臥龍岡に呼び止められてしまった。
「おお、雲母じゃないか。お前はまだ外(そと)クラスにいたんだなあ。とっくの昔に将棋 界から去っていたと思っていたよ。まあ、消え去るのは時間の問題だがな。お疲れさんっ て感じだなあ。お前は、名字みたいな「きらきら」した将棋人生なんて所詮無理だったん だよ。才能がないんだからなあ。
 まあ、引退して困ったら就職先くらいなら紹介してやるよ。じゃあ、また何時かな。」
と、嫌みたっぷりに宣うのであった。

 

 

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