※登場する人物および団体名等は、全て架空のものであり実在しません。
プロローグ
雲母 岳。(きらら がく)
財団法人「全日本将棋連合会」所属のプロ棋士だ。プロ棋士と言えば聞こえはいいが、ランキング外クラス所属の四段。10年前、25歳という退会ギリギリで、錬成会の三段リーグを次点2回という規定で、辛うじて四段に昇段した、正に、卯建の上がらない存在だ。
彼の置かれている現状は、実に厳しいものである。ランキング外クラス所属の棋士は、次のような厳しいルールがある。
第一条 ランキングEクラスの棋士が降級点を三回とるとランキング外クラスに降級する。 第二条 錬成会三段リーグで次点を二回取った者は、ランキング外クラスに編入され、同時に四段昇段の権利を得る。 第三条 ランキング外クラス棋士はランキング戦を対局できない。 第四条 ランキング外クラスからランキングEクラスへの昇級規定は次の成績を収めた場合とする。 ・良い所取りで、30局以上の勝率が6割5分以上。 第五条 ・前項の復帰規定に該当する成績を取れずに、編入後十年間経過、もしくは満六十歳の誕生日を迎えた年度が終了した場合は引退となる。 |
雲母 岳は、ランキン外クラス編入後、10年が経過しており、今年度が最後のチャレンジだ。このまま、昇級規定に達しなければ引退しなければならない。彼にとって、棋士人生が終わるのか、それとも踏みとどまれるのか、正に人生をかけた大勝負の年度なのだ。
非常に厳しい現状ではあるが、幸か不幸か、今年度残された対局5局に全て勝つことができれば、第四条規定でEクラスに昇級できるところまできていた。
引退という言葉が重くのしかかる中、果たして残り5局を全勝できるのであろうか。彼自身、半ば諦めの境地に居たことは容易に想像できた。
しかし、引退迫るランキング外クラス棋士 雲母 岳は、想像すらできない立ち回りを見せることになるのだ。そして驚くべきことに、棋界第一人者にまで上り詰めてしまうのだ。
いったい彼に何が起こったのであろうか。奇想天外な快進撃が始まろうとしている。
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