※登場する人物・団体名等は、架空のもので実在しません。
「話は変わるけれど、岳ちゃん、あと何勝で上がれるの?」
凛子は一番気になっていることをストレートに聞いた。雲母は、とびきり明るい声で言った。
「あと三勝だよ。正確に言えば、三連勝しかない。」
「人ごとのように明るい声ねえ。まあ、それが岳ちゃんの持ち味でもあるけれど。でも、厳しいわねえ。」
「うん。正直言って、無茶苦茶厳しいよ。相手は、七段・八段の大先輩たちばかり。気が重たいよ。」
「岳ちゃん、上がったら、とびっきりのプレゼントをするわ。とにかく耐え抜いて。」
凛子は、心の底から雲母が上がることを願っていた。雲母も、凛子の気持ちは痛いほどに理解していた。
「とびっきりのプレゼント!何かなあ。ワクワクしてきたよ。」
「ひ・み・つ!」
凛子は、敢えて茶目っ気たっぷりに言った。
雲母は、敢えて、明るく振る舞う凛子の気遣いを、心の底からありがたいと感じた。同時に、何が何でも這い上がらねばと、自らを鼓舞するのだった。
【これまでの登場人物】
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雲母 岳 35歳独身 ランキング外棋士四段 ランキング外所属10年目で引退が迫る |
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町田 凛子 30歳独身 女流棋士 雲母とは、錬成会の同期 雲母のランキング昇格を心から願う存在 居酒屋「凜」の女将 |
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臥龍岡 拓磨 名人位、龍将位、十段位の三つを保持している棋界の第一人者 雲母とは錬成会の同期 |
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