幻のラジオ体操第さーん
梅雨とは名ばかりの6月のある日、アタシ、そろそろミニテニスをやめようかな、と母が思春期の女学生のように呟いた。もうそろそろ、というよりすでに欠席が6回も続いているので、多分、お仲間は「○○さん、とうとういっちゃったのかねぇ」なんて噂されていると思うよ、とも言えず、そろそろっていつ? と訊けば、もうこのまま行かなくていいかな、とすでに気持ちは行く気ゼロ。「最後の挨拶はしなくていいの?」と訊けば、誰かがやめるときは大抵、自然にこなくなるだけだから、改まって挨拶なんて大げさだよ、と礼儀にうるさい母にしてはすこぶる後ろ向きな発言でまとめてきた。とはいえ、最年長の90歳、皆さんに色々お付き合いしていただいたのだから、やはり、言い回しは違えど「立つ鳥、跡を濁さず」的に最後の挨拶はしたほうがいいんじゃないの、と言えば、それもそうね、とあっさりの心変わり。人との争いを好まない母。いつでも相手の気持ちを優先、する人であった。今や、あーいえば、こーゆう、そんなこといってない、あんなことはしてない、と娘や息子に言いたい放題である。老後の趣味であった民舞、セラバンドを引退し、とうとうミニテニスともさよならするということは、週に一度の外出もなくなる。不安的中。ここ数カ月で、テキメンに母の細胞は急速老化中である。このままでは、テキメンにボケっと症候群が急速に進みそうである。午前も午後もながら見しつつの転寝時間が増え、息をしているのか、していないのか。時々、おかーさん、今、あっちの世界で伯母さんや伯父さんたちとスイカ食べてるんじゃない? と耳元でささやきたくなる。どこかに、良きご老人たちの輪はないか、どこかに年頃の母の話し相手が集う輪はないかと、市の広報を見たり、包括センターに尋ねる。いくつかこれは、と思う輪を見つけたものの、結局、当の当人が全く行きたがらない。高齢者に無理強いは禁物です、と相談員にも言われている。さて、どうすべきか。そんな時に、母の懐に飛び込んできたのが同い年である草笛光子氏のナイスディの姿。ナイスディ、覚えやすい商品名であるが、それがステッパーを連想するとは思えないのだが、とにかくナイスです。母が、これ使ってみたい、とかなり前向きに興味津々の目つきなのである。限定30分のお電話をかけてしまいそうだったが、その時は慌てて止めた。ショップジャパンでの買い物では何度も痛い目にあっている母、またお蔵入りとなりそうで怖い。まずは、時々やらせていたラジオ体操が毎日の習慣となるか、で試すことにした。だが、NHKのラジオ体操、なぜか、面白みがないらしい。ということで、見つけた動画がこのおじさんの被り物シリーズなのだが、どうやら母のツボにはまったらしく、幻の第三まで、何とかサマになってやり遂げていた。第62回😁ラジオ体操第1・第2・第3😁 笑顔で楽しく元気よく!毎日体操していきましょう~!!ラジオ体操第1第2第3シリーズ第62回です。こんにちは、6月に入ってますます雨の日が多くなってきましたね~😁天気はどんよりしてますが、気持ちは晴れやかに笑顔で楽しく元気よく体をうごかしていきましょう~😁いつでも・どこでも・だれでもできるラジオ体操です!運動不足解消・ストレス解消に毎日10分元気よく体を動かしま...www.youtube.comミニテニスに変わっての母の新しい日課事変が、入浴前の被り物おじさんとのラジオ体操。そんなナイスディ、果たしていつまで続くのやら、いや続いてほしい、卒寿の細胞、なのである。