卯年から辰年へ向かう弐年参りの夜。

除夜の鐘まであと半刻余り、外に出れば昼間よりも暖かな空気に包まれる。

はめていた手袋を外し、吐いても白くならないひと息を確かめて、夜空を見上げる。

雲隠れしている月がぼんやりと瞬いている。

乗り込んだ車の車外気温計が示す温度は9℃。

昼間とほとんど変わらない。

 

あと45分ほど。

新年をまたぐ参道の5列目に並ぶことができ、今年も何とかここまでたどり着いた、とほっとする。

一番前は去年と同じ老夫婦だ。

年に一度会う姿をまた記憶に刻み付ける。

深夜の暖かさに、並んでいる若者の服装はかなりの軽装。

この待ち時間さえ祭り気分のようにスマホでライブ配信している。

 

40代を過ぎるまで、初詣と言う言葉とは無縁に過ごしてきた私にすれば、彼らの弐年参りの姿は不思議なイベントとしかいいようがない。

 

和太鼓の音とともに社殿に灯がともされ、昼間は反射して見にくい神鏡が目前にくっきりと浮かび上がる。

今年も弐年参りでおめもじ叶いましたね、と思いつつまた参道から夜空を見上げる。

雲隠れしていた月がぼんやりと丸い輪郭を見せ、これもまた夜半の月かな、とひと心地する。

 

夫と共に並んでの参拝は、毎年この一日だけ。

参拝を済ませれば、境内はもう人々の長い列が龍の尾のように延び続けている。

 

夜の甲州街道を東に走らせ、家路へと向かいながら、また夜空を見上げる。

ひときわ小さくなった月を見つけようと目を凝らしたが、もう月はどこに隠れたのか、その位置さえも探すことができなかった。