15/cali≠gari
1. 一つのメルヘン
2. ハイ!
3. 嗚呼劇的
4. ケセ
5. 裂け目の眼
6. 腐った檸檬
7. ニンフォマニアック
8. 鐘鳴器
9. 100年の終わりかけ
10. この雨に撃たれて -死すれども冠を捨てず篇-
11. そして誰もいなくなった
12. 四畳半漂流記
13. 光と影 -His Master's Voice-
cali≠gariによるニュウアルバム。
当初は10曲入りの予定でしたが、13曲にボリュームアップしてのリリースとなりました。
初回盤には、「PV撮影直前様々な申請と認可の壁に阻まれすべて白紙となり怒りに燃える担当が広過ぎるスタジオを調達しここで何とかしてくれと云う為別段驚きもせず何とかするキャリアの貫禄の違いを見せつけるスタジオセッションDVD」が付属。
タイトルがすべてを語ってくれているので、経緯や内容については解説要らず。
「ケセ」、「嗚呼劇的」、「四畳半漂流記」の3曲が収録されています。
音楽性やコンセプトは流動的に変化するも、歌詞や曲のセンス、演奏クオリティなど、平均点以上で当たり前。
"キャリアの貫禄"も伊達ではない彼らですが、ともすれば、新たに突き抜けた1枚を作り出すのも難しい立ち位置でもあるのでしょう。
トップバッターの「一つのメルヘン」は、Gt.桜井青さんと秀仁さんの共作。
タイトルから象徴的ではあるのですが、過去と未来を同時進行で展開される、従来からのcali≠gariらしさと新機軸に向かう実験性が同居したキラーチューン。
ニューウェイブ色を強めつつも、80年代歌謡曲~90年代ポップスの懐かしさを帯びたキャッチー性でまとめていて、Ba.村井研次郎さんによるベースプレイは、1曲目からブーストがかかりっぱなしです。
そこからは、「ハイ!」、「嗚呼劇的」、「ケセ」と秀仁さんの楽曲が続くのですが、作曲者の色がくっきりと分かれていた加入当初とは異なり、すっかり、誰が作ってもcali≠gariの音楽として響くようになりましたね。
圧巻だったのは、「100年の終わりかけ」からの終盤5曲。
お約束的に言えば、"アルバムの最後に入っている歌モノ"を、直接的なパターン被りに気を付けてバランスをとりながら、出し惜しみせずに送り込んでくるのです。
フォーキーなノスタルジック歌謡「100年の終わりかけ」、終盤の疾走感を強化してシングルヴァージョンよりも切なく心を駆り立てる「この雨に撃たれて -死すれども冠を捨てず篇-」、素朴なメロディがノスタルジーをくすぐる「そして誰もいなくなった」。
「四畳半漂流記」は、青さんお得意の歌謡パンクで、正真正銘のラスト、「光と影 -His Master's Voice-」は7分超の哀愁バラード。
いちいち心がぎゅっと摘ままれるようで、余韻に浸る間もなく名曲が押し寄せる贅沢さ。
何回でも聴いていたくなりますよ。
驚いたのは、「100年の終わりかけ」の作詞・作曲は、秀仁さんが担当していること。
クレジットを見るまで、青さんだと信じて疑わなかったな。
本作が素晴らしさは、ある種、この曲に集約されているのだけれど、原点回帰を試みることと、青さんに作曲のイニシアティブを戻すということをイコールにしなかった点。
中盤では研次郎さんの楽曲も採用されているし、作曲者のバランスは、むしろ平準化された印象。
その結果がこの滑らかなグラデーションなのであれば、個性が強いメンバーたちが、同じ方向を目指してアルバム制作を行ったことを意味しているし、cali≠gariが無敵になったということもあるわけです。
先行してアルバム曲を公開していたと思ったら、リリースとともに、サブスクリプションサービスでの配信も開始。
いつになく、多くのリスナーに聴かれることを前提としていますが、この内容であれば納得だという1枚。
<過去のcali≠gariに関するレビュー>
憧憬、睡蓮と向日葵
12
2
1
春の日
さよなら、スターダスト
11
ジュウイチジャナイ
続、冷たい雨
9-踏-編
「第2実験室」 改訂予告版