- 11(初回限定盤)(DVD付)/cali≠gari
- ¥4,200
- Amazon.co.jp
1. 吐イテ棄テロ
2. JAP ザ リパー
3. 娑婆乱打
4. コック ア ドゥードゥル
5. その斜陽、あるいはエロチカ
6. アイアイ
7. 初恋中毒
8. すべてが狂ってる ~私は子供が嫌いです 編~
9. 暗中浪漫
10. 最後の宿題
11. 東京、40時29分59秒
消費期限が切れたはずなのに、なんだかんだで活動が続いているcali≠gari。
再結成後、2枚目となるフルアルバムです。
先行シングルの楽曲を含む、11曲を収録。
角がとれて、丸くなった。
バンドを評価する際に、この言葉が出てくるとすれば、普通は批判的な文章です。
初期衝動の勢い、爆発寸前の個性、それらが薄まり、普遍的になったことを意味してしまうから。
しかしながら、この「11」におけるcali≠gariは、進化の過程として、角がとれて、丸くなっている。
石井秀仁さんの加入後、デジタルテイストが強い、ニューウェーブサウンドが主流になった彼ら。
一方で、従来より軸となっていた桜井青さんの作曲する、フォークで、パンクで、だけど素朴な楽曲たちと、個性がぶつかってしまい、アルバムとしてはバランスの悪いものになっていたのが、実験室シリーズ。
「8」くらいからは、そこを改善すべく、統一感、バランス感は整えられていくのですが、それは、青さんの個性を抑えるというアプローチであり、古くからのファンは、確かに格好良い、だけど、物寂しい・・・
そんな葛藤を抱えることになっていました。
しかし、本作は、一味違う。
秀仁さんの作る楽曲は、相変わらずデジタル色が強く残るものの、80's、90'sのレトロ感を押し出すことで、タイトでスタイリッシュな中にも、懐かしさを演出。
「娑婆乱打」、「暗中浪漫」というシングル曲がそれを象徴しており、ナンセンスでありながら、耳に残るノスタルジーも存在します。
秀仁さん、研次郎さんの共作である、「コック ア ドゥードゥル」も、非常に良い。
昔のカリガリっぽいアングラ感に、ニューウェイブテイストが織り込まれたことで、懐メロとも呼べるレトロポップの出来上がり。
バラバラの個性を活かそうとした長い試行錯誤が、ようやくここに結実しました。
そして、ここに来て、青さんについても本領発揮。
全体観を意識して封印していた桜井青節を、これでもかと注ぎ込んでいる。
マニアックで、抑揚がない「その斜陽、あるいはエロチカ」、甘酸っぱいポップナンバー、「初恋中毒」、キャッチーなフレーズで毒を吐く「すべてが狂ってる ~私は子供が嫌いです 編~」、郷愁、切なさ、疾走感の三拍子、「最後の宿題」、そして、これぞ青さんといったフォークバラード「東京、40時29分59秒」。
近年の作品の中でも、青さんの楽曲が多く採用されていますね。
そうそう、カリガリってこんなヘンテコで、だけど沁みる曲を歌うバンドだった!
「初恋中毒」は、シングルバージョンでは青さんがボーカルを執っていましたが、本作では秀仁さんが歌い直している。
これが意外ではあるのだけれど、不思議にハマっています。
秀仁さんの楽曲が、カリガリに馴染んできたことで、青さんも素直になったとでも言いましょうか、本質的な音楽を持ってきても、アルバムの中で浮かなくなった。
秀仁さんが作曲をして、青さんが歌詞を書いた「JAP ザ リパー」も、彼らの音楽がひとつになった証明として、攻撃性と、ウィットに富んだ歌詞が、上手くフィットしている。
個人的にハマったのが、「最後の宿題」。
ノスタルジックで、深みのある歌詞に、ひたすら胸を打たれる。
流れるように進んでいく疾走感のある構成が、青春時代の短かさ、焦燥感、憧れと回顧・・・いろいろな感情を連れて来ては、押し流していきます。
『青春とは罪無き犯罪の日々です。』
大人になるということを、こう言い替えるセンスに、鳥肌が立ちました。
再結成してまで、リリースした意味は、確かにあった。
昔の財産を食いつぶすのではなく、ここまでクオリティを上げて、進化を見せつけてくれるとは。
青さんが自ら語るように、飛ばすことなく、長く深く聴ける作品。
まさに、最高傑作です。
ちなみに、初回盤、通常盤を同時に購入すると、ドラマー、武井誠さんが歌う「11」が付いてくる。
これ、ユーザー側してみたら、アルバム2枚を買ったと思えばお金も出せるし、セールス的には1枚として換算されるわけだから、商業的には上手い手法と言えなくもない。
通常盤は、DVDが付いていないだけで、ボーナストラック等はなし。
間違いなく、中古市場に溢れることになると思われますので、ライトユーザーは、中古で値崩れしたのを待ってみてもいいのかも。
<過去のcali≠gariに関するレビュー>