ブルーフィルム / cali≠gari | 安眠妨害水族館

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ブルーフィルム/cali≠gari
¥2,940
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1. エロトピア

2. ミルクセヰキ

3. ポラロイド遊戯

4. 音セックス

5. 真空回廊

6. 原色エレガント

7. ブルーフィルム



古いのか、新しいのか。時代を先取りしすぎていたバンド、カリガリ。

どの音源が一番好きか、っていうと難しいのですが、今回はあえて実験室シリーズではなく、「エロアルバム」をコンセプトに製作された「ブルーフィルム」を紹介させていただきます。


このアルバムの製作中に、前任ボーカルだった秀児さんが脱退というアクシデント。

新ボーカルに秀仁さんを迎えて、予定通りに無理やり発売したといういわくつきのアルバムです。

本当に突然の脱退&加入劇だったので、驚いたガリストも多かったですね。

また、どちらのボーカルも「しゅうじ」さんっていうのも、ネタとしては充分でした。


そんなパッツンパツンのスケジュールで作成されたCDのため、秀仁さんが満足のいく歌入れができなかったとのこと。

そのせいで、2ndプレスではボーカルが全てリテイクされているという、珍しい形でのリリースになりました。

しかも、「真空回廊」の別バージョンと、「ブルーフィルム」のPVが追加されて、価格は安くなるという。

初回盤を買った僕涙目。


秀仁さん加入後のカリガリは、ニューウェーブの要素を取り入れた、デジタルサウンドに遊び心のある歌詞を乗せるスタイルが中心になっていましたが、それまでのカリガリは、「奇形メルヘン音楽隊」をコンセプトに、フォークソングに電波チックな歌詞やフレーズを融合させたような独特の音楽性で、いわゆる密室系という言葉を作った立役者。

このアルバムは、奇形メルヘン音楽隊時代のカリガリを、秀仁さんが歌う、最初で最後のオリジナル・アルバムであったと思います。

(再教育や、第2実験室改訂版は、一応再録という形なので・・・)


青さん作曲の電波系ソングの代表曲、「エロトピア」からはじまり、同じく青さんの、今度はフォークソング系の代表曲、「ブルーフィルム」で締めるこの作品。

その後のカリガリの片鱗を見せてくれる「 ミルクセヰキ」や、アダルティーな空気感がお洒落な「ポラロイド遊戯」などなど、バラエティに富んでいるし、何より、秀仁さんの歌唱力は、カリガリの歌モノの曲に幅を持たせました。

やや、電波系のキ○ガイロックには吹っ切れていない部分も見え隠れしていましたが、それでも問題ないほどの爽やかで甘い歌声は、カリガリの武器をひとつ増やしたといっても過言ではないでしょう。


特に好きなのは、やはり「ブルーフィルム」。

青さん王道の、ノスタルジックなヴィジュアル・フォークは、単純に耳触りが良いし、歌詞の深さも秀逸。

「青春が死んで大人に落ちていっちゃった」、「何気ない優しさはぼんやりと腰を下ろし」などなど、青さんの言葉の選び方は、斬新でありつつも、すっと受け入れられる、作詞家としてはトップレベルの表現力だったと思います。


ただ、ひとつだけ残念なのは、やはり突然のボーカル交代によって、「エロアルバム」というコンセプトの強烈さが薄れてしまったことでしょうか。

秀仁さんも、なんとかエロい歌詞を書こうと頑張ったのはわかりますが、無理があるというか、もともと得意分野じゃないんだなっていう感じで。

本当は収録されるはずだった秀児さん作詞の「幼児体型子猫」のような、もうタイトルからドギツさが伺えるような変態っぷりが、本来ならばこのアルバムの核だったんですよね。

そういう意味では、もったいない気がします。

秀児さんも、せめてこれを作り終えてから脱退してくれればよかったのに(笑)


とはいえ、それまで影に隠れていたボーカリスト、秀仁さんを発掘した功績は大きいアルバム。

満足行かなかったという初回盤でさえ、充分上手いと思いましたしね。

高校生くらいのときによく聴いていた、大好きな一枚です。