15 予告版 限りなく透明に近いレモン盤/cali≠gari
DISC 1
1. カリ≠ガリのコマーシャル
2. 腐ったレモン
3. ケセ
4. 鐘鳴器
5. そして誰もいなくなった
DISC 2
1. 「依存」と云う名の病気を治療する病院 (新録ver.)
久しぶりにリリースされた感のあるcali≠gariの"予告版"シリーズ。
制作中のアルバム「15」の先行EPという位置づけ。
"限りなく透明に近い"特殊仕様の"限りなく透明に近いレモン盤"は、歌詞カードやディスクがシースルーになっていてデザイン性が高いことに加え、『「依存」と云う名の病気を治療する病院』を再録したボーナスディスクが付属。
"檸檬版"は、ボーナストラックとしてVo.石井秀仁さんが朗読する梶井基次郎の「檸檬」を収録。
CDが売れなくなって久しい時代に、まだまだCDとして売るためのアイディアが枯渇していないGt.桜井青さんのセンスには、脱帽するしかありません。
近年、過去の楽曲と向き合う機会を増やしている感のあるcali≠gari。
20年前にリリースした「ブルーフィルム」のリバイバル盤を発表し、今回の"予告版"シリーズ復活という流れの中で、音楽性としても当時のスタイルに近接しているような。
むしろネガティブキャンペーンに近い皮肉たっぷりのCM「カリ≠ガリのコマーシャル」から入り、本作のテーマとも言える「腐ったレモン」へ。
サウンド的にはパンキッシュ、歌詞には鋭くシニカルな着眼点もあり、詩的な要素も持ち合わせている、なんともらしいナンバーですね。
グラマラスな「ケセ」についても、石井さんの楽曲の中ではバンド感が強く、やはり当時に近い雰囲気。
だからこそ、より洗練されたアレンジと、挑戦的な構成に、彼らの成長を見て取れるというものでしょう。
「黒死館殺人事件」に登場する楽器を連想させる「鐘鳴器」、アガサ・クリスティの代表作として知られる「そして誰もいなくなった」と、古典派ミステリーのモチーフが続くのは意図的なのかな。
「鐘鳴器」は、Ba.村井研次郎さんと石井さんの共作で、ドリーミーな音像で、浮遊感たっぷりに。
「そして誰もいなくなった」は、リスナーが期待している青さん節。
「腐ったレモン」がパンク調に振り切ったタイプの王道であれば、こちらはフォークをベースにした素朴でノスタルジックな方向性での王道で、この曲のために本作があると言っても過言ではないのでは。
これ、"実験室"シリーズであれば、間違いなくアルバムのトリに持ってくるタイプのキラーチューンでしょ。
出し惜しみしなくて大丈夫か、と無粋な心配をしてしまうほど、グッとくるのですよ。
『「依存」と云う名の病気を治療する病院』は、「再教育」以来、2度目の再録となるのかな。
大幅に印象を変えることはせず、細部をブラッシュアップする「ブルーフィルム」からスタンスは変わっていないリメイク。
少し値は張るものの、"限りなく透明に近いレモン盤"を購入する価値は十分にありました。
温故知新的なアプローチで、更なる進化を遂げるcali≠gari。
本作を受けて制作中のオリジナルアルバムには、否応にも期待が高まります。
<過去のcali≠gariに関するレビュー>
憧憬、睡蓮と向日葵
12
2
1
春の日
さよなら、スターダスト
11
ジュウイチジャナイ
続、冷たい雨
9-踏-編
「第2実験室」 改訂予告版