「フラフラ、クラクラ。」「桜、咲くな。」/ 不楽、足る。 | 安眠妨害水族館

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フラフラ、クラクラ。/不楽、足る。

 

1. フラフラ、クラクラ。

 

桜、咲くな。/不楽、足る。

 

1. 桜、咲くな。

 

 

怪人・八目成七目が主催する歌劇な過激団、不楽、足る。

本作は、プロジェクトの始動とともに2曲同時でのリリースとなったデジタルシングルです。

 

総合的なプロデュースを手掛けているのは、[Alexandros]を勇退した庄村聡泰さん。

本来であれば、2020年5月に予定されていたベストアルバムのリリースをもって勇退となるはずが、コロナ禍の影響を受けてリリースともども延期に。

結果的に、休む間もなく次のプロジェクトが展開された形となったので、なんというか"持っているな"と思わずにはいられません。

不楽、足る。は、男性8、女性1、怪人1によるパフォーマンス集団とのこと。

楽曲リリースだけでなく、冬には舞台公演も予定しているようで、停滞しているエンタメ界にどんな風穴を開けてくれるのかと、はやくも想像力が駆り立てられます。

sukekiyoの未架さんがorange名義で監督したMVも、その片鱗が見えるような。

 

楽曲のタイトルは、不楽、足る。という団体名を踏まえて、"〇〇、〇〇。"という形式に揃えているのかな。

「フラフラ、クラクラ。」は、様々なキャラクターを揃えた歌劇団という強みを活かす、攻撃的なアンセム。

団員が交互に歌い繋ぐスタイルをとっており、なかなかどうして各々が個性を出しています。

デスヴォイスもあれば、ラップもあり、台詞調で入ってくる女声ヴォーカルもアクセントとして効いていて、なるほど、確かに舞台映えしそう。

3分強の短い楽曲の中に、ひとりひとりの人生がある。

なんて言うと大袈裟なのかもしれませんが、壮大な群像劇を感じるのですよ。

 

「桜、咲くな。」は、"その手があったか"となんだか悔しくなるほどの上手いタイトル。

女声をメインパートにあてて、その他の団員はコーラスに徹した、不楽、足る。流のアンチ・桜ソングとなるのでしょうか。

ストリングスの音色が、華やかさと儚さを絶妙に表現しており、和メロを用いて広がりを見せていくサビは、とにかく切ない。

エモーショナルな展開も歌詞の内容にハマっていて、声が掠れるまでにリミットを振り切った終盤の叫びは、畏怖の念を抱くほど。

鳥肌が止まらなくなりました。

この楽曲の肝は、メインを持たない「フラフラ、クラクラ。」に対して、はっきりと主役を据えたこと。

内側でぐちゃぐちゃと渦巻いていた気持ちが、やがて、ひとつの言葉に辿り着く。

この感情の推移を同じ人物に歌わせることで、ストーリーがより輪郭を帯びてくるのです。

 

必要以上にミュージカル調に仕上げているわけではなく、様式としては、あくまで邦ロックを踏襲。

BUSTED ROSEの吟さんが作曲を担当し、 9mm Parabellum BulletのGt.滝善充さんが編曲を行っているので、ロックバンドとして聴いても問題ないでしょう。

それでいて、複数人での歌唱が無駄になっていない、むしろ必要性が高いものになっているのが、今回発表された2曲の聴きどころなのかと。

楽器隊も、庄村さんの顔の広さが活きた豪華メンバーが揃っていて、個の強いキャラクターの中でも埋もれることのない攻め気のサウンドを響かせています。

今後は、本作の参加メンバーをベースに連携を深めていくのか、あえて流動的にすることで常に新しいものを提供していくのか。

選択肢を広く持てるのも、特殊な形態だからこそのメリットなのかもしれませんね。

 

なお、庄村さんは、制作総指揮官として、作詞だけでなく、スタイリングや舞台脚本等も手掛けていくそうで。

好奇心の塊で、マルチな才能を持つ彼だからこそ出来た、音楽シーンへのスピード復帰。

なんなら、必ずしも音楽だけという制約もなくなって、余計にパワーアップした気さえしてきます。

次の展開が(音源とも限らないのだけれど)待ち遠しい楽曲たち。

しばらくはヘヴィーローテーションになりそうだな。