13 / cali≠gari | 安眠妨害水族館

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13/cali≠gari

 

1. 0’13” I

2. ゼロサムゲーム

3. トカゲのロミオ

4. 汚れた夜 -暗夜行路篇-

5. トイレでGO!

6. 色悪

7. 0’13” II

8. 三文情死エキストラ

9. 一切を乱暴に

10. ファニソン

11. 落花枝に帰らず破鏡再び照らさず

12. 0’13” III

13. 深夜、貨物ヤード裏の埠頭からコンビナートを眺めていた

 

摩夜峰央先生のイラストが印象的なcali≠gariのフルアルバム。

メジャーデビュー15周年という節目を飾る作品となります。

 

「13」という忌み数にちなんで、cali≠gariの歴史の中でも、一、二を争うダークなアルバムになったとのこと。

と言っても、そこはcali≠gari。

ヴィジュアル系の王道的なダークナンバーが並ぶわけではなく、レトロなダークポップあり、意味深なダウナーチューンあり、逆にあっけらかんと歌い上げる狂気炸裂の楽曲もあり。

全体的にアダルトな雰囲気は出しつつも、アングラ方面にバラエティに富んだ1枚になっていました。

 

本作の特徴は、ピアノやサックスといったゲストミュージシャンによる雰囲気作りが更に自由度を増していること。

ドラムレスの布陣になったことへの開き直り、というわけでもないのだろうが、良い意味でメンバーの手を離れた自分勝手さが感じられる。

ジャズピアニスト林正樹さんによる即興風の演奏が、気怠い楽曲にスリリングさを加えた「ゼロサムゲーム」が最たる例。

不協和音が絶妙すぎて、格好良いというほかないのです。

 

配信シングルとして先行リリースされていた「汚れた夜」も、ガラッと趣向が変わったな。

サックスやティンパニの陽気なサウンドが夜の空気と混ざり、ダークなラテンという珍しいタイプの楽曲に進化しました。

また、先行的に発表されていたという意味では、「トイレでGO!」も忘れてはいけないところ。

生々しくグロテスクな歌詞を明るく朗らかに歌う、奇形メルヘン音楽隊時代を彷彿とさせるアプローチ。

真性の闇とはこういうことだ、と言わんばかりの強烈さがありますね。

 

インパクトが大きい楽曲が序盤~中盤にかけて並んだ形。

ただし、後半の流れも、ダークアルバムとして成立させるために1曲たりとて欠かすことができない粒ぞろい。

お洒落なサウンドで隙がない「三文情死エキストラ」、石井さんの新境地とも言える「落花枝に帰らず破鏡再び照らさず」、そして桜井青節をとにかくディープな方向に煮詰めた「深夜、貨物ヤード裏の埠頭からコンビナートを眺めていた」。

いつもアルバムの終盤に挿入されるようなノスタルジックな歌謡ナンバーは見当たらないのだけれど、楽曲に重力があるかのように胸にずっしり重く響きます。

 

13秒のSEを随所に差し込んで、トラック数を13曲にするギミックもさすが。

戻ったり、進んだり、立ち止まったり。

なんだかんだで色々と変わっていく彼らの音楽性ですが、毎回最新作が一番cali≠gariらしいな、と思わせてくれる。

実験室シリーズの空気を持ち込んだうえ、1枚の作品としての完成度も求めた傑作。

こんなに格好良く気が狂れた作品は、他にありません。

 

<過去のcali≠gariに関するレビュー>

汚れた夜

みんなの発狂

憧憬、睡蓮と向日葵
12
2
1
春の日
さよなら、スターダスト
11
ジュウイチジャナイ
続、冷たい雨
9-踏-編
「第2実験室」 改訂予告版
ブルーフィルム
君が咲く山
第5実験室