3 / cali≠gari | 安眠妨害水族館

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3/cali≠gari

 

1. 破れた電報

2. 新宿ヱレキテル

3. コバルト

4. 君と僕

5. 空も笑ってる

6. 腐った魚

 

cali≠gariのセルフカヴァーミニアルバムの第三弾。

先行的にライブ会場で販売されていた「3」と「4」の良心盤が、2タイトル同時にてリリースされました。

 

本作におけるコンセプトは、Gt.桜井青さんによって歌われていた楽曲を、本職である石井秀仁さんのヴォーカル曲として再構築すること。

当時は、石井さんのクールな歌唱スタイルでは馴染まない青さんの私小説的なナンバーは、青さん自らが歌うこととしていた背景があったようですが、時間が経つにつれて、化学反応を楽しむ余裕が出てきたということかもしれません。

歌い手が変われば、こうも印象が異なるものか。

ある程度、オリジナルを意識したアレンジも多いのですが、ボロボロと新しい解釈が零れ落ちてくるから面白いものですね。

 

ひたすらに陰鬱な空気を垂れ流しつつ、ラストシーンでカオティックに感情が解放される「破れた電報」からの強烈なスタート。

この楽曲に、導入の1曲目を任せるという判断から驚きなのですが、それが効果的にハマっているのだから、目から鱗ですよ。

続く「新宿ヱレキテル」は、ホーン隊のフレーズを中心にリビルド。

ゴージャスさが増すとともに、石井さんが歌うことにより少し小奇麗なイメージが付加され、だいぶパワーアップした印象です。

オリジナルのB級感も魅力的でしたが、こういう一面もあったのだというポテンシャルを引き出す楽しみを見出せたのでは。

 

衝撃的だったのは、「コバルト」かな。

もともとは青さんらしい電波ソングだったはずなのだが、完全に石井さんの色に染め上げられており、プリミティブなテクノナンバーへ進化。

セルフカヴァー作品であれば、ここまでやりきってしまう楽曲もひとつぐらいは必要だろう。

原曲が淡々と歌われるタイプのナンバーでしたから、石井さんが持ち味を出しても良さは消えない。

違う曲のようで、違う曲ではない。

同じ曲のようで、同じ曲でもない。

選曲とアレンジが組み合わせが、絶妙すぎました。

 

逆に、どちらも感情に訴えるタイプの「君と僕」、「空も笑ってる」は、曲調は違えど、青さんを求めてしまう部分があったでしょうか。

音程は外したとしても、心臓をダイレクトに掴みにくる青さんの叫びと、安定性にも気を配りつつ、決め細やかな表現を追求する石井さんの歌唱。

聴き慣れていることも考慮する必要はあるが、特に声が擦り切れるぐらいにエモーショナルだった「空も笑ってる」は、全体的なクオリティの向上は認めつつ、迫力は弱まった気がしないでもありません。

もっとも、どちらがより好みかという話。

ここまでくると、違いを比べるのが楽しくなってきているわけで、選択できる自由も付加価値であると捉えることにしましょう。

 

最後は、名曲「腐った魚」。

この楽曲については、過去に何度か再録されているのだけれど、ようやく石井さんの歌声で聴くことができたな、と。

純粋だった少年が大人になっていく。

そんな郷愁感溢れる情景が、青さんから石井さんに歌い継がれることで、深みを増した。

二人の歌唱スタイルの違いが、まさにそんな感覚なのだもの。

 

シリーズ化した企画モノは、第三弾が正念場。

ネタが尽きて飽きられるか、人気シリーズとして受け入れられるかの評価線上にあるのかと思います。

このセルフカヴァー企画については、誰がなんと言おうと後者。

一気に2作を放出しても、まだまだワクワクさせてくれそうなアイディアが残っていそうだから恐ろしい。

新しい楽曲を生み出しつつ、そこで得たものを過去の楽曲にも還元。

バンドとしての底上げサイクルが効果的に行われているcali≠gariのメソッドは、果たして今後、キャリアの長いバンドのお手本になっていくのでしょうか。

 

<過去のcali≠gariに関するレビュー>

13

汚れた夜

みんなの発狂

憧憬、睡蓮と向日葵
12
2
1
春の日
さよなら、スターダスト
11
ジュウイチジャナイ
続、冷たい雨
9-踏-編
「第2実験室」 改訂予告版

第6実験室

ブルーフィルム
君が咲く山
第5実験室