高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。


私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。

 

 

 

 

45.亡き母に会えなかった後悔──事前にできたことは?

 

はじめに

 

「もう一度会いたい」と願っても、二度とかなわない。
 

最期の時、母に会えなかったことを悔やみ続けている方は少なくありません。特に、高齢の親がきょうだいの一人によって囲い込まれ、他の家族が会えなくなってしまったケースでは、その悔いは深く、長く心に残ります。

 

今回は、あるご相談者の体験をもとに、「亡き母に会えなかった後悔」と、もし事前にできたとすればどのような行動だったのかを考えてみたいと思います。

 

 

 

 

1. 亡き母に会えなかった私の体験

 

ご相談者は50代の女性でした。
 

母親が認知症を発症したのは10年ほど前。その頃から、同居していた兄が「母を守る」という名目で、他のきょうだいを母に近づけなくなっていきました。

 

電話をしても取り次いでもらえず、施設に会いに行こうとしても「面会制限中」と言われ、兄に連絡しても「母は会いたがっていない」と突き返されるばかり。

 

それでも「そのうち機会があるだろう」と思い、強く出られないまま数年が過ぎてしまいました。
 

そしてある日、突然「母が亡くなった」と知らされたのです。

最期の顔を見ることも、声をかけることもできなかった。
棺の前で「どうしてもっと早く動かなかったのだろう」と、後悔の涙を止められなかったそうです。

 

 

2. 後悔の正体──「もっとできたのでは?」という思い

 

こうしたケースで多くの方が口にするのが「もっと早く動けばよかった」という後悔です。

 

・もっと早く弁護士に相談していれば…
・家庭裁判所に調停を申し立てていれば…
・施設に直接出向き「母の意向を確認したい」と訴えれば…
・母に手紙を書き続けていれば…

 

後になって思い返すと、できたかもしれない選択肢はいくつも浮かんできます。
 

しかしその時は「迷惑をかけたくない」「波風を立てたくない」という気持ちや、「本当に母が会いたがっていないのかも」という不安が、行動を止めてしまうのです。

 

つまり、後悔の正体は「本当はできたかもしれない行動をしなかった」という自己責めに近い感情なのです。

 

 

 

3. 事前にできたこと──具体的な備えと行動

 

では、同じ後悔を繰り返さないために、事前にどんなことができるのでしょうか。

 

(1) 親の意思を直接確認する努力

 

囲い込みが起きたとき、まず必要なのは「親自身の意思」を確認することです。
 

・電話や手紙で直接やりとりを試みる
・施設に出向いて「面会希望」の意思を伝える
・第三者(ケアマネージャーや地域包括支援センター)に相談する

 

たとえ会えなくても「会いたい」という意思表示を続けることが大切です。

 

(2) 記録を残す

 

後で「本当に親が会いたくなかったのか」が争点になることがあります。
そのため、
 

・送った手紙のコピー
・面会を拒否された記録(日付・状況)
・やり取りしたメールやLINE
 

を残しておくことは重要です。

 

(3) 法的手段を検討する

 

・家庭裁判所に「面会交流」の調停を申し立てる
・弁護士を通じて正式に連絡を試みる

 

これらは「敷居が高い」と思われがちですが、最期に会えずに後悔するよりも、ずっと意味のある行動です。

 

(4) きょうだい間での対話の試み

 

囲い込みをしているきょうだいとの関係は感情的にこじれやすいものです。
しかし「母のために」という視点で、冷静に話し合う努力を早い段階でしておくことが望ましいでしょう。

 
 

 

4. 心のケア──後悔とどう向き合うか

 

最期に会えなかった悔いは、一生消えないかもしれません。
 

しかし、「あの時、自分は精一杯動いた」という実感があれば、その後の悲しみの受け止め方は大きく変わります。

 

心理学的には「行動したけれど叶わなかった後悔」と「何もせずに叶わなかった後悔」とでは、前者のほうが心の回復が早いとされています。

 

つまり、後悔の深さは「行動したかどうか」に大きく左右されるのです。

 

 

5. まとめ──同じ後悔を繰り返さないために

 

亡き母に会えなかったご相談者は、今も心の痛みを抱えています。
 

けれども同時に、「もしこれを多くの人に伝えられるなら、母の死は無駄ではなかった」と語ってくれました。

だからこそ私は、これを読んでいるあなたにお伝えしたいのです。

 

「親に会いたい」と思ったら、迷わず行動してください。
小さな一歩でもいいのです。手紙一本でも、記録を残すことでも構いません。
その積み重ねが、未来の自分を後悔から救ってくれるのです。

 

 

 

おわりに

 

親は家族みんなのものです。

一人のきょうだいによって会えなくなるのは、不自然で、不幸なことです。
だからこそ、早い段階で「会いたい」という意思を形にし、行動に移していただきたいと思います。

 

後悔は、未来を変えるヒントになります。
あなたの一歩が、大切な親との時間を守る力になるのです。

 

 

 

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44.家族調停でわかった“きょうだいの本音”

 

「親に会いたいのに、きょうだいが面会を拒む」。
 

そんな現実に直面し、胸を締めつけられるような思いをしている方は少なくありません。

 

家庭裁判所における「家族調停(家事調停)」は、こうした状況を解決するための一つの手段です。私がこれまで相談を受けた中にも、「調停にまで発展するのは辛い」「でも他に方法がなかった」という方が多くいらっしゃいました。

 

そして、実際に調停の場に臨んだとき、そこで初めて知る“きょうだいの本音”があるのです。今日は、そのリアルな一端をお伝えしたいと思います。

 

 

1.家族調停とは何か

 

家庭裁判所の調停は、中立の調停委員が間に入り、当事者同士の話し合いをサポートする制度です。
 

「親に会わせてもらえない」「財産管理に不安がある」といった争いごとを、裁判にする前に冷静に話し合う場として機能します。

 

特徴的なのは、直接顔を合わせて言い争うのではなく、調停委員を通じて双方の意見を伝える“シャトル方式”が基本となる点です。これにより、感情的な衝突を最小限にしつつ、それぞれの主張を聞き取ってもらえます。

 
 

 

2.調停で明らかになる“本音”

 

私が支援したあるご家族では、長女が親を自宅に引き取り、他のきょうだいには一切会わせない状況が続いていました。次女と長男は「せめて顔だけでも見たい」と訴え、ついに家族調停を申し立てたのです。

 

調停が始まると、次女と長男の思いはシンプルでした。
 

「母の笑顔を見たい」
「元気かどうか確認したい」

 

しかし、長女側の主張は違いました。
 

「親は疲れている。会えば混乱する」
「相続のことばかり気にしているのではないか」

 

表面上は“親を守るため”という理由が強調されていましたが、やり取りが進むにつれて、次のような本音が見えてきました。

  • 「自分が一番親の面倒をみてきた。だから他のきょうだいに口を出されたくない」
  • 「親の財産管理を疑われるのが嫌だ」
  • 「昔から私ばかり損な役回りだった。その不満が積もっている」

つまり、“親のため”という大義名分の裏側には、自分自身の負担感・不安・過去の確執が絡んでいたのです。

 
 

 

3.きょうだいの心理的背景

 

調停の場で本音が出ると、依頼者である次女や長男は衝撃を受けます。
 

「そんなことを思っていたのか」
「結局、親のことより自分の気持ちが優先なのでは」

 

しかし心理的にみれば、囲い込みをしてしまうきょうだいにも理解すべき背景があります。

  • 長年の介護負担による“報われなさ”
  • 親の財産を管理する責任の重圧
  • 子ども時代から続く“きょうだい間の力関係”

これらが複雑に絡み合い、「誰にも渡したくない」「信用できない」という強い感情につながるのです。

 

 

4.調停がもたらす効果

 

調停で本音が出ることは、決して悪いことではありません。
 

むしろ「言葉にすることで、初めて相手に理解される」可能性があります。

 

前述のケースでも、長女の本音を調停委員を通じて知った次女と長男は、ただ怒るのではなく「では、あなたの負担を軽くするにはどうしたらいいか」と視点を変えることができました。

 

最終的には、

  • 面会は月1回、施設の職員立ち会いで実施
  • 財産の状況は定期的に開示
    という合意に至り、関係は完全に修復されたわけではないものの、少なくとも「絶縁状態」からは抜け出すことができました。
 
 

 

5.調停を考える際の注意点

 

もちろん、調停は魔法の解決策ではありません。
きょうだいの関係が深くこじれている場合は、調停でも平行線のまま終わることがあります。

 

それでも、次のようなメリットがあります。

  • 相手の本音を知るきっかけになる
  • 中立的な第三者が介入してくれる安心感がある
  • 書面記録が残ることで、その後の裁判や交渉に活かせる

 

一方で注意すべきは、感情的にぶつけすぎると逆効果になる点です。調停は“相手を打ち負かす場”ではなく、“歩み寄りの糸口を探す場”であることを忘れてはいけません。

 

 

6.まとめ ― 家族の本音をどう受け止めるか

 

家族調停で明らかになる“きょうだいの本音”は、ときに耳を塞ぎたくなるほど辛い内容かもしれません。
 

しかし、その本音を受け止めることで、初めて見えてくる現実があります。

 

「親は家族みんなのもの」――
 

この原則を守るために、調停という制度をどう活かすか。
それが、囲い込みからの解放への大切な一歩になるのです。

 

 

 

 

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43.面会拒否から家庭裁判所に申し立てた体験談

 

高齢の親に会いたいのに、きょうだいの一人が「会わせない」と拒否し続ける。そんな状況が続くと、親の健康や意思確認もできず、心が引き裂かれるような思いをします。

 

今回は、実際に面会を拒否されたことから家庭裁判所に申し立てを行った体験談をもとに、その流れと学びを整理してみたいと思います。

 

 

 

 

1.突然の「面会拒否」

 

私の場合、母が施設に入所したのをきっかけにトラブルが始まりました。
 

入所当初は私も自由に面会できていたのですが、ある時から兄が施設に対して「母に会わせるのは自分だけにしてほしい」と指示を出し、私の面会が拒否されるようになったのです。

 

施設側も「ご家族間の意見が一致していないので…」と対応を避け、私がどれだけ面会を求めても「お兄様の意向で」と門前払い。
 

母と会えない日々が続くなかで、病状がどうなっているのかすら分からず、不安と怒りと悲しみが入り混じりました。

 

 

2.直接の話し合いは決裂

 

私は兄に電話やメールで「母に会わせてほしい」と何度も伝えました。
しかし兄から返ってくるのは、
 

「母が望んでいない」
「あなたが来ると混乱する」
 

という一方的な主張。

 

母が本当にそう思っているのか確認もできず、結局、直接の話し合いでは埒があきませんでした。むしろ感情的な口論になり、きょうだい関係はさらに悪化してしまいました。

 
 

 

3.弁護士相談から家庭裁判所へ

 

追い詰められた私は、弁護士に相談しました。
弁護士はこう助言しました。
 

「親御さんに会えないこと自体は、家族間の話し合いで解決できれば一番良い。しかし話し合いが決裂しているなら、家庭裁判所に調停を申し立てる方法がある。」

 

家庭裁判所では「面会交流」や「親族間の紛争解決」のための調停制度が利用できます。私も藁にもすがる思いで、申立書を作成し、家庭裁判所に提出しました。

 

 

4.家庭裁判所の調停手続き

 

調停では、調停委員(弁護士や経験者などの第三者)が入り、中立の立場から話を整理してくれます。

 

私の場合、最初の調停では、兄と私は別々の待合室に通され、調停委員が双方の言い分を順番に聞いては行き来しました。
 

兄は相変わらず「母は会いたくない」と主張しましたが、私は「直接母に確認できない限り、その言葉を鵜呑みにできない」と訴えました。

 

調停委員は、「親御さんの意思をどう確認するかが大切」と整理し、施設側からも母の様子をヒアリングするよう促してくれました。

 
 

 

5.母の意向確認と一歩前進

 

調停の過程で、施設の職員が「お母様は娘さん(私)のことをよく話題にしている」と証言してくれました。
 

これにより、兄の「母は会いたがっていない」という主張に疑問が生じ、調停委員からも「一定の面会を認める方向で考えるべきではないか」と意見が出ました。

 

最終的に、

  • 月に1回は私が施設で母と面会できる
  • 面会の日時は施設と直接調整する
    という合意に至りました。
 

 

6.調停を経験して感じたこと

 

調停を通して感じたのは、

  • 家族内だけでは感情が先立ち、話し合いが進まない
  • 第三者(裁判所や調停委員)が入ることで冷静な議論が可能になる
    ということです。

もちろん、裁判所に申し立てること自体は大きなエネルギーが要ります。申立書の準備や手続き、そしてきょうだいと法的に対立するという精神的負担もありました。
 

それでも「母に会いたい」という思いを叶えるためには、必要な一歩だったと今では思います。

 
 

 

7.同じ悩みを抱える方へのメッセージ

 

親に会いたいのに会わせてもらえない――これは想像以上につらい状況です。
 

「自分が悪いのか」と自責に陥ったり、「兄弟と争いたくない」と我慢したりしてしまいがちですが、親の幸せと自分の心を守るためには、行動が必要なときもあります。

 

もし話し合いが決裂してしまったら、弁護士への相談や家庭裁判所の調停という手段があることを知ってください。
それは“争うため”ではなく、“親の意思を確認し、家族の関係を少しでも修復するため”のプロセスでもあります。

 

 

まとめ

 

「面会拒否から家庭裁判所に申し立てた体験談」を振り返ると、

  • 家族間の感情的な対立では解決できない
  • 第三者が入ることで初めて前進することがある
  • 親の意思を尊重するために、制度を活用することは大切
    という学びがありました。

同じように悩んでいる方へ、「あなたには行動できる道がある」ということを伝えたいと思います。

 

 

 

 

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42.「手紙」から始めて親と再会したケース

 

はじめに

 

高齢の親が、きょうだいの一人によって「囲い込み」状態に置かれてしまう。つまり、特定の子どもが親を自宅や施設に入れたまま、他のきょうだいに会わせない状況が続く。この問題は近年、深刻化しています。

 

「親に会いたいのに、電話もつながらない。施設に行っても断られる。どうすれば…」
 

そうした相談を日々受ける中で、実際に突破口となったのが「手紙」だった、というケースがあります。

 

今回は、“手紙から始まった再会の物語”を取り上げ、そのプロセスや注意点、そして学べることを整理してみたいと思います。

 

 

 

ある相談者のケース

 

Aさん(50代女性)は、5年間も母親に会えないまま時を過ごしていました。きっかけは、兄による囲い込み。母親を兄の家に住まわせてから、他のきょうだいには住所も知らせず、電話もつながらず、連絡手段をすべて遮断してしまったのです。

 

Aさんは何度も「会わせてほしい」と兄に頼みました。しかし返ってくるのは「母は会いたがっていない」「お前は母を混乱させるだけだ」といった言葉でした。やがて兄は連絡にすら応じなくなり、Aさんは孤独感と無力感に苛まれました。

 

弁護士に相談しても

 

Aさんは一度、弁護士に相談し、内容証明を送りました。ところが「母の意思に基づいて会わない」という兄の返答により、法的な強制力を持たせることはできませんでした。成年後見人も選任されていなかったため、裁判の手も取りにくい状況。Aさんはますます途方に暮れました。

 

 

転機となった「手紙」

 

そんなとき、Aさんが思い出したのは、かつて母が「やっぱり手紙は心が伝わる」と話していたことでした。

そこでAさんは、「直接会うことを求めるのではなく、まず母への思いを言葉にして届けよう」と決意します。

 

書いた内容

 

Aさんが心がけたのは次の点です。

  1. 自分の寂しさを正直に伝える
     「お母さんに会えない日々がとても寂しい」
     「声を聞くだけでも安心できる」
  2. 兄への批判は書かない
     囲い込みの状況について不満は山ほどありましたが、それを書けば母は苦しむだけ。あえて一切触れませんでした。
  3. 母の安心を願う言葉で締める
     「お母さんが元気でいてくれることが、私の一番の願いです」

 

届け方

 

住所は分からなくても、兄の家を突き止めて投函することはできました。直接渡そうとすれば拒絶される可能性が高いため、普通郵便で送りました。

 

 

 

再会までの道のり

 

最初の手紙に返事はありませんでした。しかし、Aさんは諦めず、月に一度、短い手紙を送り続けました。

 

3通目を出したころ、ある日突然、兄からメールが届きました。
 

「母がお前に会いたがっている。短時間なら来てもいい」

 

Aさんは半信半疑でしたが、指定された日時に兄の家を訪れると、そこには少し痩せた母が座っていました。母は涙ぐみながら「手紙を読んで、本当に会いたくなった」と言ったのです。

 

再会が実現した理由

  • 母は「会わせてもらえない」ことを受け入れざるを得なかったが、娘の気持ちを知ることで自分の意思を表に出せた。
  • 手紙は兄を介さず母に届いたため、母自身の反応を引き出すことができた。
  • 兄も「母が本当に望んでいる」と分かったことで、拒みきれなくなった。
 

 

専門家の視点からの考察

 

1. 手紙は「静かな対話」

電話や直接訪問は、拒絶やトラブルに発展しやすい方法です。対して手紙は、受け取った側が自分のペースで読めるため、感情的な摩擦を避けやすい。特に高齢者には、何度も読み返せる安心感があります。

 

2. 批判や要求を避けることが大切

手紙は「武器」にもなります。感情的に相手やきょうだいを非難する内容は逆効果です。大切なのは、親に寄り添う気持ちを素直に書くこと。相手の心を動かすのは、要求や論理よりも、温かい情です。

 

3. 「積み重ね」が信頼を生む

1通で効果を期待するのではなく、継続することが鍵です。短くてもよいので、定期的に送る。これが「忘れていないよ」という安心につながります。

 

 

 

注意すべきリスク

 

もちろん、すべてのケースで手紙が有効とは限りません。

  • 親の認知症が進んでいて、内容を理解できない場合
  • 囲い込むきょうだいが手紙を隠す場合
  • 「しつこい」と受け止められて逆効果になる場合

こうしたリスクを踏まえたうえで、慎重に取り組むことが必要です。

 

 

まとめ

 

「親に会いたい」と願っても、きょうだいの壁に阻まれる。そんなとき、直接的な要求ではなく、静かで誠実なアプローチ=手紙が突破口となる場合があります。

 

今回のケースのように、手紙を通じて親の心が動き、再会が叶うこともあるのです。

 

もし同じように悩んでいる方がいれば、手紙という方法を一つの選択肢として思い出してください。そこから始まる小さな一歩が、大きな再会につながるかもしれません。

 

 

 

 

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41. 親に3年会えなかった私がやったこと

 

「最後に親と会ったのは、もう何年前だろう?」
 

そんな問いを胸の奥で繰り返しながら、時間だけが過ぎていく。

 

きょうだいの一人が高齢の親を囲い込み、他の家族に会わせてくれない。電話をしてもつながらない。施設に行っても「ご家族の意向ですので」と断られる。こうした体験をしている人は、決して少なくありません。

 

私自身も、3年間ものあいだ親に会えなかった経験があります。
 

この3年は、ただの月日の流れではありません。会えない間に親の老いは進み、病気のリスクも高まります。そして私の心も、「怒り」と「悲しみ」と「無力感」に揺さぶられ続けました。

 

しかし、この体験を通して「会えないときに、できること」が少しずつ見えてきました。本記事では、私が実際に取り組んだことをお伝えします。今まさに同じ苦しみを抱えている方にとって、一つの道しるべになれば幸いです。

 

 

 

1. 「会えない事実」を直視する勇気

 

最初にしたことは、現実を否定しないことでした。

 

「そのうちきょうだいが考え直してくれるかもしれない」
「施設も柔軟に取り計らってくれるはず」

 

そう自分に言い聞かせても、状況は変わりません。時間だけが過ぎ、会えない日々が積み重なっていきます。

 

私は専門家としても、現実を見つめることの大切さを痛感しています。「いま会えない」という事実を受け止めることで初めて、次の一歩を考えることができるのです。

 

 

2. 手紙を書き続ける

 

直接会えない以上、「親に自分の思いが届く方法」を模索しました。その一つが手紙です。

 

封筒に「お母さんへ」と丁寧に書き、近況や思い出を綴りました。施設に送っても、必ず渡してもらえる保証はありません。けれども、
 

「届いているかもしれない」
「もし渡されなくても、記録として残る」
 

そう信じて、月に一度は手紙を書きました。

 

この行動は、親のためであると同時に自分の心を守るためでもありました。「私はできることをしている」という感覚が、無力感に押し潰されるのを防いでくれたのです。

 

 

 

3. 面会交渉を「冷静に」重ねる

 

3年間の間に、私は何度も施設を訪ね、担当者に会いました。

 

ただし、その際に肝に銘じたのは「感情をぶつけない」こと。
「なぜ会わせてくれないんだ!」と怒鳴れば、施設はますます防御的になります。

 

代わりに私は、

  • 「親の意思を確認したい」
  • 「面会が叶わない場合、その理由を文書でいただけますか」

と、あくまで冷静に言葉を選びました。
 

こうした交渉は一度でうまくいくことは少なく、何度も同じことを繰り返さねばなりません。しかし、その積み重ねが「会いたいという思い」を形として残すことになります。

 

 

4. 弁護士を通じて連絡を試みる

 

やがて私は、弁護士を通じた連絡を試しました。

 

直接きょうだいに話しても平行線に終わるため、第三者を介することで交渉の土台を整える必要があったのです。もちろん、弁護士費用は決して安くありません。しかし「会えない苦しみ」を抱え続けるコストの方が大きいと考えました。

 

弁護士の文書をきょうだいがどう受け取るかは別として、「会いたい意思を法的な記録として残す」こと自体に意味があります。これは後々、成年後見や遺産分割といった場面でも大切な証拠となり得ます。

 
 

 

5. 行政機関への相談

 

私は地域包括支援センターや市役所の高齢福祉課にも足を運びました。

「親に会えない」という問題は、決して個人だけのものではなく、社会の支援が必要なケースでもあります。相談に行ってすぐ解決するわけではありませんが、「記録が残る」ことに意味があります。

行政の担当者に話すことで、自分の気持ちを整理する効果もありました。「私は孤立しているわけではない」と感じられたのです。

 

 

6. 「心の支え」を持つ

 

3年という時間は、心をじわじわと蝕みます。孤独感、怒り、嫉妬、自己否定…。

 

その中で私が意識したのは、専門的な心の支えを持つことでした。心理カウンセリングを受けることもあれば、信頼できる友人に定期的に話を聞いてもらうこともありました。

 

「親に会いたいのに会えない」という体験は、周囲の人にはなかなか理解されません。だからこそ、安心して吐き出せる場を持つことが、何よりの支えになります。

 

 

 

7. それでも「親は家族みんなのもの」

 

3年の間に、私は何度も自問しました。
 

「自分だけが苦しんでいるのではないか」
「親はもう自分を忘れてしまったのではないか」

 

それでも、最後に行き着いたのは「親は家族みんなのもの」という信条でした。

 

きょうだいの一人が独占することもできない。自分だけの所有物でもない。親は親自身であり、そして子どもたちみんなにとっての存在です。

 

その思いを胸に持ち続けたことで、私は3年の空白を生き抜くことができました。

 
 

まとめ

 

親に会えない3年間、私が取り組んだことを振り返ると、次のようになります。

  1. 現実を直視する
  2. 手紙を書き続ける
  3. 面会交渉を冷静に重ねる
  4. 弁護士を通じて連絡を試みる
  5. 行政機関へ相談する
  6. 心の支えを持つ
  7. 「親は家族みんなのもの」という信条を忘れない

これらはすぐに状況を変える魔法の方法ではありません。しかし、会えない時間を「ただの空白」にせず、自分なりの行動と思いを積み重ねることができます。

 

もしあなたが今、同じように親に会えず苦しんでいるなら、まずは「自分にできること」を一つ選んでみてください。小さな一歩が、やがて大きな道につながるはずです。

 

 

 

 

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4.無料オンライン相談(30分)を受付しております(2025/7時点)。詳しくは以下のホームページをご覧ください。

 

ブログのご紹介

ブログ主宰 しらいわ は以下のブログも作成しています。併せてご覧ください。

1. 自己愛性ハラスメント対策室  ~ 感情的な人に振り回されている方向け~

2. 高齢親の囲い込み 解放アドバイザー  ~ 介護が必要になった高齢親が自分以外のきょうだいに囲い込まれて会えなくなった方へ~

3. 家族心理学・家族療法スクール オンライン ~ 家族関係に悩む方や支援職のための学びの場。家族との距離の取り方や関係性の見直しに役立つ知恵を、心理学の視点から発信

 

4. あなたのメンタルを守りたい (休止中)~心が少し軽くなるメンタルケアの情報を発信中~

5. インナーチャイルド解放コーチ しらいわとしまさ (休止中)幼少期の心の傷が未処理のため大人になっても生きづらさを感じる方へ

6. 感情の地図 〜EQナビゲーターが届ける“心の航海術”(休止中)~感情と向き合う「心の航海術」を発信中

7. 女性起業家×アドラー心理学(準備中)