高齢親の囲い込み解消コンサルタント 白岩俊正、公認会計士・税理士です。
高齢になって子どもの介護を受けるようになった親を、子どもたちの一人が囲い込み、他の子どもたち(きょうだい)に会わせないようにしている方(高齢親の囲い込み)でお困りの方のご支援をしています。
自己紹介など
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2.高齢親の囲い込み問題について体系的な説明(ChatGPT DeepResearchより)
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22.面会交流権に法的な権利はあるのか?――親に会えない40〜50代のあなたへ
1. はじめに:会えない時間が心を蝕む
「元気にしているだろうか」
「何を食べているのだろう」
「私のことを忘れてしまったのでは…」。
大人になってから、しかも40代・50代という年齢になって、実の親と会うことができない――。この現実は、多くの人にとって想像以上に深い心の痛みを伴います。
親が高齢であればあるほど、「もしかしたら、これが最後のチャンスかもしれない」という焦りが募ります。
しかし現実には、きょうだいの一人や親の配偶者、親の施設関係者などが“会わせない”状況を作ってしまうことがあります。こうしたケースは「高齢親の囲い込み」と呼ばれ、近年社会問題化しつつあります。
ここで気になるのが「面会交流権」という言葉。
果たして、親に会う権利は法律で守られているのでしょうか。
2. 面会交流権は誰のための権利か
法律上、「面会交流権」という用語が明確に定義されているのは、主に離婚後の親と未成年の子どもの関係においてです。
民法766条では、離婚時に「子どもと離れて暮らす親が、子どもと会ったり交流したりする権利」が定められています。
つまり、一般的な法体系では「面会交流権=未成年の子どものための権利」とされ、大人の子どもと親の間で直接適用される規定はありません。
このため、40代・50代のあなたが「法律に面会交流権があるから、会わせろ」と主張しても、そのままでは法的根拠にはなりにくいのです。
3. 高齢親との面会は「法的権利」として認められるのか
現行法では、大人の子どもが高齢の親に会う権利について、明文での規定はありません。
しかし、いくつかの法制度や判例の中で、間接的に認められる余地があります。
(1) 成年後見制度との関係
親が認知症や判断能力の低下により、成年後見制度の対象になっている場合、後見人が財産管理や身上監護を行います。
このとき後見人が面会を制限することがありますが、家庭裁判所に申立てを行い、面会制限の是非を判断してもらうことが可能です。
(2) 施設入所中の面会
親が介護施設や病院に入っている場合、施設は感染症対策や本人の体調を理由に面会制限をすることがあります。
ただし、これは原則として「本人の利益」のためであり、他の親族の意向による恒常的な遮断は、本来の施設運営方針に反します。
施設への文書照会や、行政(市区町村の高齢者福祉課など)への相談が有効な場合があります。
(3) 憲法上の権利
日本国憲法13条(個人の尊重、幸福追求権)や14条(法の下の平等)を根拠に、「家族としての交流は人間の基本的権利である」と主張することも理論的には可能です。
ただし、裁判での立証や具体的な命令にはハードルが高く、弁護士による戦略が必要です。
4. なぜ「法的権利」として争うのが難しいのか
現行制度の課題は、「親子間の交流」が未成年を想定しており、高齢親と成人子の交流は制度の想定外になっていることです。
また、民事的な争いに発展すると、証拠(面会拒否の経緯や親の意思など)の収集が難しいという現実もあります。
さらに、親が明確に「会いたくない」と意思表示している場合、本人の自己決定権が優先されるため、外部からの介入は一層難しくなります。
このため、「法的権利」だけで戦うよりも、複数のアプローチを組み合わせた方が現実的です。
5. 取れる可能性のあるアプローチ
40〜50代で親に会えない状況から抜け出すには、法律・制度・心理の3つの視点から行動するのが有効です。
(1) 法律面
- 成年後見人や保佐人が関与している場合は、家庭裁判所への申立て
- 弁護士を通じた内容証明郵便での面会要請
- 面会制限の正当性に関する行政への相談(地域包括支援センター、福祉課など)
(2) 制度面
- 介護施設の運営規程・面会方針を確認
- 行政や第三者機関(介護相談センター、人権擁護委員)による介入依頼
- 成年後見制度の利用状況や後見人の業務報告の閲覧請求
(3) 心理面
- 面会の目的を「本人の安否確認と安心感の提供」と明確化
- 感情的対立を避け、記録に残る形で冷静な交渉を続ける
- 会える日を少しでも増やすための“小さな成功”を積み上げる
6. 感情と現実のバランスを取る
会えない日々が続くと、怒り・悲しみ・焦りが渦巻きます。
しかし、感情だけで動くと、相手側は「やはり会わせない方がいい」と判断し、状況が悪化しかねません。
ここで必要なのは、
- 自分の感情をしっかり受け止める
- 行動計画を事実と記録に基づいて立てる
という二段構えです。
具体的には、日記や時系列記録を作り、いつ・誰が・どんな理由で面会を拒否したのかを整理しておきましょう。これは後に法的措置を取る際にも重要な証拠となります。
7. 「会うこと」がゴールではない
面会交流の目的は「会うこと」だけではありません。
親の生活環境や健康状態を把握し、必要ならサポートすることも大切です。
また、短時間の面会でも、写真や動画を残すことで記録になり、将来的に「自分ができることをやった」という心の支えになります。
ゴールを「親と再び安全で安心な関係を築くこと」と定めると、焦りや無力感が少し和らぎます。
8. 今後の社会への期待
高齢化社会が進む中、成人した子どもと親の面会交流に関する法整備は急務です。
欧米の一部では、家族間の面会拒否に関して裁判所が調停や命令を行う制度があります。日本でもこうした仕組みが導入されれば、親子の断絶を防ぐ大きな助けになるでしょう。
9. まとめ
- 面会交流権は原則として未成年の子どものための権利
- 高齢親と成人子の交流は明文規定がなく、直接的な法的権利としては弱い
- しかし、成年後見制度や施設規程、行政介入などを通じて面会の可能性を広げられる
- 感情的衝突を避け、事実と記録に基づく冷静な交渉が鍵
- 社会全体での制度整備が望まれる
親に会えないことは、心の奥深くに重い影を落とします。
しかし、あなたが今日から一歩を踏み出すことで、その影を少しずつ薄くすることは可能です。
法的権利の限界を知った上で、できる行動を積み重ねる――その努力は、必ず未来の自分の支えとなります。
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