家族心理学・家族療法スクール・オンライン

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「家族心理学・家族療法スクール・オンライン」は、家族関係に悩む方や支援職のための学びの場です。家族との距離の取り方や関係性の見直しに役立つ知恵を、心理学の視点から発信していきます。

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講師 白岩俊正、カウンセラー戸塚美幸先生

 

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76.死にゆく親とどう関わるか

 

「最期に、何をしてあげればよかったのだろう」


この問いは、時間が経っても胸の奥に残りやすいものです。

正解がひとつに定まらないからこそ、私たちは迷います。

 

そもそも“関わる”という言葉には、「そばにいる」「触れる」「見守る」「距離をとる」――いくつもの形が含まれています。

どれも、誰かを深く大切に思うからこそ選ばれる姿です。

 

今日は、答えを並べるのではなく、その迷いにそっと灯りをともすように、いくつかの風景をお話しさせてください。

 

 


病室の窓から午後の光が差し込む時間帯がありました。

カーテン越しにやわらかい影が揺れて、白いシーツがうっすら桃色を帯びます。

 

娘のKさんは、母の唇が乾いていないか、綿棒で少しずつ水を含ませながら見守っていました。言葉はほとんど交わされません。けれど、手の甲に触れた温度が、その日の“会話”のすべてでした。
 

「若いころ、桃の缶詰がごちそうでね」
ふいに母がつぶやきました。

Kさんは笑って、「覚えてるよ。誕生日はいつも桃だった」と返します。

たったそれだけで、ふたりは長い時間を往復しました。

 

細かい事情や、積み残した話題や、言えなかったごめんね――それらを無理に詰め込もうとしなかったからこそ、ふたりは同じ景色を静かに見つめることができたのだと思います。

 

最期の関わりは、しばしば“言葉の少ない共同作業”になります。

息づかいに合わせてイスを引き寄せること、毛布の端を直すこと、窓を少しだけ開けること。

小さな身振りが、祈りに変わっていく時間です。

 


誰かの終わりに寄り添うとき、私たちは“いい子”であろうと背筋を伸ばしがちです。

 

涙をこらえ、弱音を飲み込み、笑顔をつくる。

けれど、胸の内側では波が立っています。思い出のやわらかさと、過去のささくれ。よくやったという自分と、あのとき言いすぎた自分。

 

死にゆく親と向き合うとは、実は「自分」というもう一人の相手とも向き合うことなのかもしれません。
 

うまくできなくて大丈夫です。

座り続けられない日があっていいし、席を外して廊下で深呼吸する時間も、りっぱな付き添いの一部です。

泣きたくなったら泣いてかまいません。

涙は、相手ではなく“関係”に向けられた水やりのようなものです。こぼしたからといって壊れるものではありません。

 

 


自宅で最期の時を迎えた父を見送った、Sさんの話も印象に残っています。

 

Sさんは幼いころから父と距離があり、会話はいつも短くて、工具の名前と天気の話で終わるような親子でした。

 

看取りが近づいたころ、Sさんは静かに父の工具箱を磨きました。汚れを拭き、錆を落とし、ラベルを貼り直す。

父はその手元を見つめて、ときどき目を閉じます。
 

「このドライバー、昔よく貸してくれたよね」
Sさんが言うと、父はかすかに笑いました。

折り合いの悪かった年月が、工具の重さを通して一瞬、別の形に並び替わるようでした。

 

二人は和解のことばを選びませんでした。むしろ、選ばないことでやっと近づけたのかもしれません。

未完成のまま受け渡される関係もあります。未完成のままでも、充分に温かい関わりがありえます。

 


「何かしてあげなければ」という焦りはやさしさの裏返しですが、ときに私たちを急がせます。

 

終わりの時間は、砂時計の砂のように均等には落ちません。

濃い瞬間と、長く静かな時間が交互にやってきます。

 

濃い瞬間には、たしかに世界が少し縮むように感じられるでしょう。

手と手の間にある温度だけが現実になり、過去も未来も遠のきます。

 

静かな時間には、まわりの音がよく聞こえます。エアコンの低い唸り、車輪の転がる気配、遠くの笑い声。

それらはすべて、残り時間の背景に流れる“生活の音楽”です。

 

私たちは、その音楽ごと見送ります。うまくいった日だけが記憶に残るわけではありません。

何でもない時間が、あとからそっと支えになります。

 


触れることについても、少し触れておきたいのです。

 

人は弱っていくと、言葉よりも先に身体の記憶に頼ります。

幼いころに背中をさすってもらった感覚、手を握り返すわずかな力、髪を撫でられたときの安心。

その“古い安心”が、終わりの近い時間にふっと蘇ることがあります。

 

上手に振る舞う必要はありません。ぎこちなくても、そっと、短くで十分です。

触れることが難しいと感じるなら、視線や声のトーンもまた“触れる”方法です。

名を呼ぶ、目を合わせる、うなずく。

 

からだの外側に置けるやさしさは、思っているよりたくさんあります。

 

 


そして、距離をとる選択について。

 

世話をしてきた時間が長い人ほど、ギリギリのところまで頑張り続けてしまいます。

けれど、ときには離れて眠る夜も必要です。

 

離れることは冷たさではなく、最後までそばにいるための準備です。

自分の体と心に戻る時間を持てる人は、ふたたび相手のもとへ戻る力を取り戻します。

 

看取りとは、交代で灯りを守る作業に似ています。誰かが灯心を整え、誰かが油を注ぎ、誰かが外の風を見張る。

そのどれもが「関わる」こと。

 

あなたが灯りの番を離れるとき、他の誰かが必ずつないでくれる――そう信じてよいのです。

 


「ありがとう」や「ごめんね」を言えなかったことが、あとから心に残ることもあります。

けれど、言えなかった言葉があったからといって、関係の価値が減るわけではありません。

 

言葉は間に合わなくても、願いは届いていることがあります。

 

息が浅くてうなずけない人でも、耳は最後まで世界に開いていると信じられています。

 

あなたが迷いながら座った椅子、夜明け前にそっと閉めたドア、帰り道の空の色――それらは静かに、確かに、二人の間に残ります。

 

遺された人がそれらを覚えている限り、関わりは形を変えて続いていきます。

 

 


ときどき、「最期の瞬間に間に合わなかった」と悔やむ方がいます。

大切な人の旅立ちの場にいられないことは、たしかに胸を裂きます。

 

でも、人生は“最期の瞬間”だけでできてはいません。

日々の無数の瞬間が、最期を囲む大きな輪を作ります。

 

あなたが差し入れたスープ、送迎のハンドル、待合で読んだ雑誌、廊下の自販機で買ったあたたかい飲み物。

そのどれもが、見えない環の一部です。

 

輪が充分に温かければ、中心にたどり着かなくても、愛はちゃんと届きます。

 


死にゆく親とどう関わるか――答えは、いつもその人とあなたの間柄の数だけあります。

 

昔話を重ねる人もいれば、静かな沈黙を分け合う人もいる。

笑いが多い看取りもあれば、ほとんど眠っている顔を眺めるだけの日々もある。

どれも、まちがいではありません。

 

あなたが選んだその形が、その関係にとっての最善だったと、どうか信じてください。

 

もし、いま目の前にベッドがあり、そこにあなたの親が眠っているなら、深く息を吸って、あなたの背中をやさしく支えてください。

 

できることは思っているより少なく、しかし思っているより深いのです。

手を置く。名前を呼ぶ。窓の外の雲を一緒に見上げる。

うまく言えない思いは、そっと自分の胸の上に置いておく。それで十分です。


そして、たとえ旅立ちの後に悔いが顔を出しても、その悔いさえも含めて、あなたがつくってきた関係の歴史です。

 

悲しみは時間をかけてかたちを変え、やがて日常の色の中に溶けていきます。

あなたがこれからも生きる日々の歩幅に合わせて、思い出は歩き直してくれるでしょう。

 

最期の関わりは、いつも“完成”ではなく“継続”のかたちをしています。

見送ったあとも続いていく対話のはじまり。

その静かな始まりを、大切に抱えて歩いていけますように。

 

 

 

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51.「夫婦の会話がない」問題の心理構造

 

「最近、家でほとんど話さなくて。」
そう打ち明けられるとき、声はたいてい少し小さくなります。

 

恥ずかしさでも、怒りでもなく、うまく言葉にできない“空気”をそのまま持ってきている感じ。

 

夫婦の沈黙は、単なる無言ではなく、長い時間をかけて編まれた関係の織り目です。

 

今日はその織り目を、やさしくほどくように眺めてみたいと思います。

解決策を並べるのではなく、なぜそうなるのかという心の働きに耳を澄ませてみます。

 

 


「話さない」には、いつも理由がある

 

会話は、情報のやり取りだけではありません。

安心や不安、期待や失望、力加減や距離感――目に見えないものを運ぶ“管”でもあります。

 

この管が詰まりやすくなるとき、背景にはいくつかの心理が重なっています。

 

たとえば、話すとぶつかるのが怖いから口を閉じる。

あるいは、どうせ分かってもらえないという学習で、言葉を節約する癖がつく。

 

言葉を出すコストと、得られる見返りの計算が、いつの間にか「出さない」が正解を指してしまうのです。

 


エピソード①:焼き目の話が合図になった

 

夕食の食卓で、Aさん夫婦はときどき小さな火花を散らしていました。

 

ある日も、トーストの焼き目が少し濃かったことで、夫が「焦げてる」と眉をひそめ、妻が「あなたはいつも細かい」と溜息をつく。

 

ほんの一言二言で、空気が硬くなります。

二人ともそれをよく知っているから、翌日から食卓に言葉が減りました。
 

後で話を聴くと、二人とも本当に言いたかったのはトーストのことではありませんでした。

 

夫は職場での不安定さ、妻は家事と育児の負担感。

どちらも「弱いところ」を先に見せるのが怖くて、代わりに安全そうな話題に引火してしまう。

だから、沈黙は“防火材”として置かれたのです。

 

話さないことは、ぶつからないための賢いやり方でもあったのでした。

 

 


連絡はあるのに、会話がない

 

多くの夫婦に起きるのは、連絡や指示は飛び交っているのに、会話が痩せていく現象です。

 

連絡は「タスクの言語」、会話は「心の言語」。

 

子どもや仕事、親の介護が始まると、タスクの言語が圧倒的に優勢になります。効率を上げるには合理的ですが、心の言語は少しずつ縮んでいく。
 

気づけば、二人のあいだを行き来するのは“必要事項”ばかりで、「今日のあなたはどんな気分?」と尋ねる余白がなくなります。

 

すると、自分の内側にある揺れをどこにも置けなくなって、口を閉じる方が安定する。

こうして沈黙は、家の中の“いちばん安全な選択”になっていきます。

 


「権力」と「責任」のバランスが会話を冷やす

 

もう一つ、沈黙を生みやすい構造があります。

決める人と引き受ける人が分離すると、会話は冷たくなります。

 

誰かが方針だけを示し、別の誰かが実務を背負う。見えない不公平感は、言葉を出す意欲を奪います。

 

話し合っても変わらないと感じれば、話し合う意味自体が目減りしていく。沈黙は、抗議でもあり、身を守るための“最小の抵抗”でもあります。

 


エピソード②:子が巣立った後に残る“橋脚”

 

Bさん夫婦は、長いあいだ子どもの学校行事や習い事の話でつながっていました。

 

週末の予定を合わせ、弁当の中身を相談し、進路の資料を並べる。

会話はたくさんありましたが、その多くは子どもという“共通の橋”の上に乗っていたのです。
 

子が巣立ったある春、二人は気づきました。

橋だけが先に遠くへ行ってしまい、残ったのは向かい合う岸と、間に流れる静かな水音。

 

テレビの音量が少しずつ大きくなり、家の中に“代わりの声”を置くようになりました。

寂しさを言葉にするより、音で満たす方が簡単だったからです。


やがて、夜のドラマに同時に笑えた日、Bさんは小さく驚いたそうです。

「橋脚はまだある」と感じた、と。会話は、ゼロか百かではなく、たしかに残っているものの上に、少しずつ板を渡す作業に似ています。

 

恥と恐れ――言葉を外に出すときの痛み

 

日本語の「恥ずかしい」は、実はとても広い意味を持つ言葉です。

 

弱さを見せる恥、相手の時間を奪う恥、怒りをさらす恥――どれも、二人の距離を測りながら生きてきたからこそ芽生える繊細さです。

けれど、恥はやがて恐れに変わり、恐れは口数を減らします。
 

怒りもまた、沈黙の裏にあります。

怒ると相手が離れてしまうのでは、という恐れ。あるいは、怒る自分が嫌いになるのが怖い。だから表に出さない。

 

出さない怒りは、静かに沈殿して、言葉の通り道を曇らせます。

二人の沈黙は、感情を“無害化”するための工夫でもあるのです。

 


スマホと疲労という“無意識の避難所”

 

一日の終わり、ベッドやソファで無言のまま画面を見ていると、関係が悪いように感じるかもしれません。

けれどそれは多くの場合、単なる怠慢ではなく、体が選ぶ避難所です。

 

脳が疲れているとき、言葉を選んで相手に届ける作業は、とてもエネルギーを使う。

安全に刺激をもらえる画面は、安価な鎮静剤になります。


この避難所が長引くと、相手は“自分は選ばれていない”と感じて距離を取る。その距離がさらに画面を呼び、悪循環に入る。

 

けれど、これは依存だけの問題ではなく、「休む」ことが下手になった社会全体のリズムも映しています。

 

責めるより先に、「ここまで来るのに、よく頑張ってきたね」と、自分たちに言ってあげたい場面です。

 

 


「沈黙の役割」を見つけたとき、糸口が現れる

 

沈黙は敵ではありません。

多くの夫婦にとって、それは関係を壊さないための装置として置かれてきました。

だから、いきなり壊そうとすると、別のところが痛みます。

 

まずは、沈黙が何を守っているのかを見つけること。

争いを避けたいのか、恥を避けたいのか、疲労から守りたいのか。

 

役割が見えると、不思議と空気が少しやわらぎます。
 

そして、沈黙がずっと続くわけではないと知ること。季節のように、関係にも巡りがあります。

忙しさや心配ごとが減ったとき、ふっと言葉が戻る夜が来る。

 

その夜の手前で、ただ「ここにいる」という身体のぬくもりを残しておく――それだけでも十分に意味があります。

 


「正しい会話」を目指さなくていい

 

よく、「話し合いは落ち着いて」「アイメッセージで」「結論を出して」などの“正解の形”が語られます。

もちろん役に立つこともありますが、正しさを目指すほど、言葉は緊張します。

 

会話は、結果よりも“通った”という感触が残るかどうかが大切です。

 

言い方が拙くても、話題が散らかっても、そこに「あなたに触れたい」という動機があれば、関係は少し温まります。
 

完璧な対話ではなく、未完成の交流。できあがらないまま一緒にいる練習。その不器用さが、そのまま二人の歴史になります。

 

 


それでも、孤独に耐えてきたあなたへ

 

「話してくれない」「聞いてくれない」と感じる時間は、長いほど胸が痛みます。

 

自分だけが努力しているような気がして、ふと、何もかも投げ出したくなる夜もあるかもしれません。

 

そんなとき、あなたがしてきたことは、確かに二人の時間を守ってきた営みです。

言葉にならない思いを抱えながら、毎日の生活を回し続けたこと自体が、静かな勇気でした。


もし明日、何かが少しだけ動くとしたら、それはきっと“大きな一言”ではありません。

湯気の立つカップを差し出す手、帰宅の音に振り向く視線、同じ景色に同じため息をこぼす瞬間。

 

会話の前にある“気配の交換”が、言葉の通り道を温めてくれます。

 


おわりに

 

「夫婦の会話がない」という言葉は、関係の終わりを告げる鐘のように聞こえるかもしれません。

 

でも実際は、多くの場合、関係が自分を守るために選んだ休止符です。

休止符は、曲の一部。音が戻ってくるための、必要な間です。


私たちは、話せない時間を生き延びるたびに、少しずつ“聴く耳”を育てていきます。

やがて、ほんの短い一言が、思いがけず深く届く日が来る。

 

その日まで、どうか自分をせめず、二人の沈黙を“敵”ではなく“合図”として扱ってみてください。
 

言葉は、やさしく扱われる場所に帰ってきます。あなたの家にも、きっと。

 

 

 

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26.子どもの問題行動は家族全体の“メッセージ”か

 

「うちの子、またやってしまって……」
そんな相談を受けるたびに、私はまず深呼吸を一緒にします。怒りや不安で胸がいっぱいのままでは、見えるものも見えなくなるからです。
 

そして、そっと問いかけます。「その行動は、家族全体に何を伝えようとしているのかな?」

 

――今日は、子どもの“困った行動”を、家族みんなへのメッセージとして読み解く視点をやさしくお話しします。

責めるためではなく、ほどける糸口を見つけるために。

 

 


「問題」ではなく「サイン」として見てみる

 

もちろん、暴力や重大な非行、健康を損なう行為は早急な対応が必要です。

 

でも、日常で繰り返される「登校しぶり」「忘れ物が多い」「噓をつく」「きょうだいげんか」「ゲームやスマホにのめりこむ」といった行動の多くは、心の温度計のようなもの。

 

子どもは言葉で言い切れない“ムズムズ”を、行動で示します。

 

家族にはそれぞれ役割や距離感があり、季節のように変化します。

バランスが崩れたとき、いちばん敏感に反応するのが子どもです。

 

つまり「症状の運び手(シンボルベアラー)」になって、家族に「今、どこかが苦しいよ」と知らせてくれているのかもしれません。

 


エピソード①:おなかの痛みが教えてくれたこと

 

小学校3年生のMくんは、月曜の朝になると必ず「おなかが痛い」と言って登校をしぶりました。病院では異常なし。お母さんは「サボりだ」と叱り、お父さんは「母親が甘やかすからだ」と責める……家の空気はどんより。

 

ある日、家族の一週間をホワイトボードに書き出してみました。すると、月曜朝だけ家族の会話がゼロに近いことがわかりました。

 

日曜の夜にお父さんが遅く帰り、お母さんは月曜から在宅勤務でピリピリ。Mくんは、週末にたまった“寂しさ”や“緊張”を、身体の痛みで表現していたのです。

 

そこで家族はルールを一つだけ決めました。月曜の朝は10分だけ“なにもしない時間”を一緒に過ごす。好きな音楽を流し、三人でその週の楽しみを一つずつ話す。

 

たったこれだけで、Mくんの腹痛は徐々に減り、二か月後には「今日は音楽、僕が選ぶね」と笑える朝が増えました。
 

症状は、「いっしょにいて」という小さなSOSだったのです。

 

 


エピソード②:嘘とゲームの裏側にあったもの

 

中学1年のYさんは、課題をやっていないのに「提出した」と嘘をついたり、許可なく課金したりして、親子関係が険悪になっていました。

 

叱っても改善せず、家庭内はピリピリ。話を丁寧に聴くうちに見えてきたのは、夫婦がお金のことでずっと揉めているという背景でした。

 

「節約して」「いや必要だ」の応酬を毎晩のように聞きながら、Yさんは“お金=不安の種”と学びました。

 

嘘や課金は、不安に触れないように避けるための拙い工夫でもあり、「ぼくのこと見て」の叫びでもあったのです。

 

そこで家族は、

  1. 家計の話は週1回・30分だけ、子どものいない場所でする
  2. Yさん専用の小さなおこづかい口座をつくり、月々の上限と使い道を本人が記録する
  3. 嘘を責める前に、「本当は何が心配?」と気持ちを先に言葉にする

    を試しました。三か月後、課金の衝動は落ち着き、「今月は貯める」と自分で決められるように。嘘が減ったのは、嘘で身を守らなくてよくなったからでした。
     

行動の“機能”をやさしく仮説立てする

 

子どもの行動には、たいてい機能(役割)があります。責める前に、やさしく仮説を立ててみましょう。

  • 距離調整の機能:家族がぶつかりそうなとき、症状で話題をそらす
     
  • 注目集めの機能:必要としている時間やまなざしを得るため
     
  • 安心の再確認:不安な出来事の後に、儀式のように繰り返す
     
  • 自己主張の代替:NOと言えない代わりに、忘れ物や遅刻で抗議する
     
  • 役割の固定からの離脱:良い子/お笑い担当をやめたいサイン

仮説は当たっていても外れていてもOK。大事なのは、行動の裏にある“願い”を探そうとする姿勢です。

 


3つのレンズで観る(個人・関係・環境)

 

  1. 個人のレンズ
     眠れている?食べられている?体調や発達特性は?“その子自身”の楽さを第一に確認。
     
  2. 関係のレンズ
     誰といるときに強まる?親子・きょうだい・学校の友人――組み合わせで変わらないか観察。
     
  3. 環境のレンズ
     時期や時間帯、行事前後、引っ越し、クラス替え、親の仕事の変化など、場の変動をチェック。

三つのレンズをくるくる回しながら、「今のうち」でできる小さな調整を見つけます。

 


今日からできる“やさしい解凍ステップ”

  • 名づける:「困った行動」ではなく「合図(サイン)」と呼んでみる
     
  • 短く確かめる:「そのとき、体のどこがいちばんムズムズ?」と感覚に寄りそう
     
  • 時間で区切る:話し合いは最長15分。終わりに「助かったこと」を一つずつ言う
     
  • 選べる余地を渡す:完全なYES/NOではなく、A案・B案・休憩の三択に
     
  • 儀式をつくる:朝の3分ハイタッチ、帰宅後の1分お茶――小さな一定が安心をつくる


家族ミニ会議のコツ(週1回/15分)

  1. よかったことを先に(各自1つ)
     
  2. 困っていることを1つだけ(責め言葉は使わない)
     
  3. 今週の“試すこと”を1つ(誰が・いつ・どれくらい)
     
  4. 感謝と終了の合図(ハイタッチや「おしまい」の言葉)

“完璧な解決”ではなく、“小さな実験”。失敗したらやり直せばいい。家族は長距離走です。

 


大人のセルフケアも“メッセージ”の一部

 

大人の余裕は、子どもの安心に直結します。
「寝不足の親は、怒りっぽい」――当たり前ですが、とても大きい。

 

親の休息は育児そのものです。

10分の昼寝、好きな飲み物、誰かに話す時間。自分を満たすことは、子どもに「ここは安全だよ」と伝える強いサインになります。

 


「境界線」と「期待」の調整

 

子どもは親の期待を受け取るアンテナがとても鋭いもの。
「できるはず」「こうあるべき」が強すぎると、境界線(バウンダリー)がじわりと侵食され、子どもは“自分であること”を守るために逆方向へ引っ張ります。


期待は“今のその子”に合わせてちょっとだけ下げる。成功の幅を広げて「できた!」を増やす。これも立派なメッセージ調整です。

 


迷ったときの合言葉

  • 「うちの子は、いま何を守ろうとしている?」
  • 「この行動の“おかげで”避けられている不安は何?」
  • 「やめさせる前に、代わりの安心を先に渡せる?」

この三つを胸に、焦りそうなときに立ち止まってみてください。

 


おわりに:メッセージを“受け取れた日”から

 

子どもの問題行動を家族全体のメッセージとして見ることは、親を責める考え方ではありません。

 

むしろ、誰のせいでもない“いま”を一緒に整える視点です。


Mくんの腹痛が少しずつ和らいだように、Yさんの嘘が減っていったように、メッセージに気づけた日から、家は少しずつ温度を取り戻します。

 

もし今、目の前で困っている子がいたら、どうかこう声をかけてあげてください。
「気づかせてくれて、ありがとう。いっしょに、少しずつ楽にしていこうね。」

 

そして大人である私たち自身にも、同じ言葉を。
家族は、ゆっくり育ち直せる場所です。

 

 

 

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告知:オンライン勉強会(参加無料)

2024~2025年にかけて静岡市にてリアル開催していた「家族心理学・家族療法」の勉強会をオンラインで開催します(当面参加費無料)。お気軽にご参加ください!

 

 

 

日時 2025/10/19(日)10:00~11:00頃
会場 Zoom
      https://us02web.zoom.us/j/8197402180 
  ZoomID 819-740-2180、パスワード なし

定員 8名(先着順)

会費 無料

申込 メール family.psychology.family.therapy@gmail.com / お名前、申し込む旨をお書きください。

    (当日飛込参加も歓迎しますが定員ですとお断りする可能性もあります)

講師 白岩俊正、カウンセラー戸塚美幸先生

 

静岡市リアル開催の様子は戸塚美幸先生のブログでご覧ください

 

 

 

11.家族における「権力」と「責任」のバランス

 

家族の中には、目に見えない「力の向き」があります。
 

誰が決めるのか(権力)。

誰が引き受けるのか(責任)。

 

この二つが離ればなれになると、家の空気は少しずつ苦しくなります。逆に、権力と責任がセットで回りはじめると、不思議と安心感が戻ってきます。

 

今日は、そのバランスの整え方をやさしく考えてみます。

 

 


「権力」とは?「責任」とは?

 

ここで言う権力は、家族に影響を与える決定権や発言力のこと。お金の使い道、住まい、介護や進学の方針、親戚づきあいの仕方などに効いてきます。
 

責任は、決定の結果を引き受けること。段取り、実務、必要な時間や費用、気力体力の消耗も含まれます。

 

本来は、決める人=引き受ける人が重なるか、チームとして納得ずくで分担されているのが健康的。

 

けれど現実には、「口だけ出す人」と「体だけ動く人」に分裂しがちです。

 


エピソード①:決めるのは兄、動くのは妹

 

Aさん(妹)は、父の介護の中心を担っていました。

通院の同行、書類の手続き、食事の手配。

兄は遠方で、帰省のたびに「施設はここにしよう」「面会は月1で」と方針を示します。
 

決定の権力は兄、日常の責任は妹。数か月のうちにAさんの表情は疲れていきました。

 

ある日Aさんは、兄にこう伝えました。

「私が実務を担うなら、面会頻度のルールは私が決めたい。逆に兄が決めるなら、週1回のオンライン面会と、月1回の通院同行を分担してほしい。」

 

「決める権利」と「引き受ける責任」をセットにする提案でした。

 

最初はぎくしゃくしましたが、やがて“決めるなら、関わる”が合言葉になりました。

ルールが変わると、Aさんの心にすこし余白が生まれたのです。

 

 


エピソード②:最後の「ダメ」はだれのもの?

 

Bさん夫婦は、子どもの進学先を話し合っていました。資料を集め、学校見学に付き添い、願書の締め切りを管理していたのは主に妻。

 

ところが、夫のひと言「やっぱりここは無しで」で全てが振り出しに戻ることが重なり、妻はふっと涙が出てしまいました。

 

二人は「決定プロセスを見える化」しました。

  • 情報集め(だれ?)
  • 候補の整理(だれ?)
  • メリット・デメリットの共有(全員)
  • 最終決定(誰がいつどうやって?)

話し合いの終わりに「誰が最終のOK/NGを出すか」を明確にし、その人がその後の実務も一定割合で引き受けることを約束。

 

半年後、「最後のダメ」が減っただけで、家の雰囲気は軽くなりました。

 


家庭版RACIで、もやもやを減らす

 

ビジネスの枠組みをやわらかく家族に応用すると整理しやすくなります。

  • R(Responsible/担い手):実務をする人
  • A(Accountable/決定責任者):最終決定と結果の説明をする人(基本は1名)
  • C(Consulted/相談相手):決める前に意見を聞く人
  • I(Informed/連絡先):決まったら知らせる人

家族のテーマ(家計・進学・介護・住まい・行事)ごとに、R/A/C/Iを一度だけ紙に書き出す
 

「お金は出さないが口は出す」「やっていないのに査定だけする」などの不公平が見え、権力と責任のペアリングが進みます。

 

 


バランスが崩れているサイン

  • 「いつも私だけ謝っている(説明責任だけ私)」
  • 「LINEグループの大事な話題から外される(情報の権力がない)」
  • 「決めた人が、翌日の段取りは“知らない”」
  • 「実務を担う人に、予算の裁量がない」
  • 「“みんなが言ってる”を盾に、だれも顔を出さない」

どれか一つでも当てはまったら、権力と責任が離れている可能性があります。

 


回復のためのやさしい言い方

 

責めずに、具体的に、交換条件ではなく“整える提案”として伝えます。

  • 「この役割を私が続けるなら、決定の最終OKも一緒に担わせてください。」
  • 「最終決定はあなたで大丈夫。その代わり、面会日の同行を月1回お願いします。」
  • 「今回はあなたがA(最終決定)で、私はR(実務)ね。次回のテーマは交代してみよう。」
  • 「“ダメ”を出すときは、代案と必要な手伝いもセットにしよう。」

ポイントは、“お願い+具体”。抽象的な不満はぶつかりやすく、小さな交換を積み重ねるほうが関係は傷つきにくいのです。

 

 


シーン別のヒント

 

介護

  • 施設選びを決める人=主治医・施設との窓口も担う(A=R)
  • 実務担当者に、予算の裁量断る権利をセットで渡す

子育て・進学

  • 情報集めと見学はR、最終出願はA。ただしAは締切・費用・通学の現実を自分の言葉で説明(説明責任)
  • 「最後のダメ」を使うときは、代替案自分の負担引き取りを明確に

家計

  • 使途を決める人=支出後の家計調整(固定費見直しや残業・副収入の検討)も担う
  • 家族会議は時間・回数を決めて短く。プロセスの見える化が不信感を減らします
     

境界線(バウンダリー)と権力・責任

 

境界線とは、「ここから先は相手の領域」という見えない線。
権力が線を越えやすい人は、相手の生活や選択にまで口を出してしまいがち。

 

境界線の尊重=権力の節度です。

 

反対に、責任感が強い人は、相手の領域まで背負い込みやすい。“ここは相手の責任”と返す勇気も、バランスを保つ大切な力です。

 

 


緊急時の特例と、事後の説明

 

命や安全に関わる場面では、一時的な権力集中が必要なこともあります。


その後、事後の説明責任を丁寧に果たすこと(なぜそうしたか、他の案は何だったか、次はどうするか)が、信頼を守ります。

 


小さな実験:1週間だけ「役割と権限」を交換

 

いきなり全部を変えなくて大丈夫。

まずは一つのテーマで、役割(R)と権限(A)を1週間だけ交換してみる。

 

必要な予算・時間・情報もセットで渡す。終わったら、「良かった点・困った点・次回の工夫」を3つずつ出し合う。
 

これだけでも、「決めるって重いね」「動くって時間がかかるね」と、お互いへの理解が進みます。

 


おわりに:完璧でなくていい

 

家族は、仕事のチームよりも感情が近く、歴史も長い。だからこそ、権力と責任のズレは生まれやすいし、直すにも時間がかかります。
 

大切なのは、“気づいたら、少し直す”を繰り返すこと。三歩進んで二歩下がっても、最後に一歩、家族の安心が増えていれば十分です。

 

もし今、「私ばかり背負っている」と感じているなら、どうかここに書いた小さな言い方1週間の実験から始めてみてください。
 

そして、あなたが誰かに権力を手渡すときは、責任という重さも一緒に受け取りやすい形に整えてあげてください。

 

決める人が、支える人になる。その循環が生まれたとき、家はもう一度、安心して息ができる場所になります。

 

 

 

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140.「家庭内格差」が子に与える影響

 

こんにちは。
「家族心理学・家族療法スクール」ブログをお読みいただき、ありがとうございます。

 

今回は、少し耳慣れないかもしれないテーマ――
「家庭内格差」について考えていきます。

 

 


家庭の中の「見えない格差」

 

「格差」というと社会的な貧富の差をイメージするかもしれません。
けれども家庭の中にも、目に見えにくい「格差」が存在することがあります。

  • 兄弟姉妹で待遇に差がある
  • 親の愛情や関心が偏っている
  • 経済的な事情で進学や習い事に差がつく

こうした差は、子どもにとって強い影響を与えます。

 


兄弟姉妹間の「扱いの差」

 

よくあるのは、兄には厳しく妹には甘い、あるいは逆に妹には期待をかけすぎる、といったケースです。

 

子どもは「自分ときょうだいを比べて」親の愛情を測ろうとします。
そして差を感じたとき、

  • 「自分は愛されていないのでは」
  • 「もっと頑張らなければ」
  • 「きょうだいばかり得をしている」

といった気持ちを抱きます。
これは自己肯定感や兄弟姉妹関係に長期的な影響を残すことがあります。

 


経済的な格差が生むもの

 

家庭の経済状況によって、子どもが受けられる教育や経験に差がつくこともあります。

  • 長男は大学に行けたけれど、次男は進学を諦めた
  • 習い事を続けられた子と、我慢した子がいた

親としては「そのときの状況で最善を尽くした」つもりでも、子どもからすれば「なぜ自分だけ違うのか」という思いが残ることがあります。

 


「家庭内格差」が子どもに与える心理的影響

 

1. 不公平感と怒り

「どうして自分だけ?」という思いは、親や兄弟姉妹への怒りとなって蓄積します。

 

2. 劣等感

「自分はあの子より劣っている」という感覚が根付き、自己評価を低くします。

 

3. 優越感

逆に「自分は恵まれている」という優越感が強まり、兄弟姉妹間に溝をつくることもあります。

 

4. 家族への不信感

「家族は公平であるべき」という信頼が崩れると、家族全体への不信感が芽生えます。

 


親の意図と子どもの受け止め方のギャップ

 

親の立場からすれば、決して差別しているつもりはないことも多いのです。

  • 「上の子には厳しくするのが当たり前」
  • 「下の子は甘やかしても大丈夫」
  • 「経済的に仕方なかった」

けれども子どもにとって大切なのは「事実」よりも「どう感じたか」です。
親の意図と子どもの受け止め方の間にギャップが生じることで、心の傷となるのです。

 

 


家族療法の視点から

 

家族療法では「家族の中での役割」と「関係のバランス」に注目します。

  • 誰かが「特別扱い」されると、他の子が犠牲になりやすい
  • 「公平さ」を意識することで、家族全体の安心感が高まる
  • 子ども同士を比べないことが、信頼関係を育てるカギになる

つまり、「家庭内格差」に気づき、調整していくことは、家族システム全体を健全にすることにつながります。

 


回復のためにできること

 

1. 子どもの気持ちを聴く

「そのとき、どう感じた?」と聞くだけでも、子どもは救われます。

 

2. 不公平を認める

「たしかに差があったね」と認めることは、親子の信頼を回復する一歩です。

 

3. 今から埋め合わせる

大人になった子どもに対しても、「あなたを大切に思っている」と伝えることは遅すぎません。

 


大人になった「子どもたち」へ

 

もしあなたが「家庭内格差」を経験してきたなら――。
そのときの怒りや寂しさを「なかったこと」にする必要はありません。

  • その思いを言葉にする
  • 信頼できる人に共有する
  • 「自分は大切にされる価値がある」と確認する

こうしたプロセスを通じて、過去の格差の影響から少しずつ自由になっていけます。

 


まとめ

 

家庭内格差は、子どもの心に長く影を落とします。
しかしそれを「なかったこと」にせず向き合うことで、親子関係も兄弟姉妹関係も、回復していく可能性があります。

  • 不公平を認める勇気
  • 子どもの気持ちを聴く姿勢
  • 「今からできること」を積み重ねる希望

これらがあれば、格差の傷は癒えていきます。

「家族は完璧でなくてもいい」。
ただ、お互いを尊重し合える関係に近づいていければ、それが大きな力になるのです。

 

 

 

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