家族心理学・家族療法スクール・オンライン

家族心理学・家族療法スクール・オンライン

「家族心理学・家族療法スクール・オンライン」は、家族関係に悩む方や支援職のための学びの場です。家族との距離の取り方や関係性の見直しに役立つ知恵を、心理学の視点から発信していきます。

本ブログは、家族心理学と家族療法の視点から、家庭や職場で起きる困りごとを読み解き、実生活で使える対応策を紹介します。カウンセラー等の支援職から当事者まで、わかりやすく誠実な解説を心がけています。

 

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93. 家族が抱える秘密が与える影響

 

家族の中には、「言わない」と合意していることが少なからずあります。

 

病気、借金、依存症、離婚や不倫、実は養子であること、発達特性、性被害、暴力……。当事者にとっては身を守るための「沈黙」でも、家族全体の心の健康にはさまざまな影響を及ぼします。

 

ここでは、家族心理学・家族療法の視点から、秘密が生まれる背景と影響、そして安全に扱うための具体的なヒントをまとめます。スクールカウンセラーや学び始めの方、家族の中で迷っている方に向けて、やさしく解説します。

 

 


 

1. 秘密とプライバシーはちがう

 

まず大切なのは「秘密」と「プライバシー」を分けて考えることです。

  • プライバシー:個人が自分の情報をどこまで誰に伝えるかを選べる権利。健全な境界を保つために必要。
  • 秘密:恐れ・恥・罪悪感・忠誠心などが背景にあり、「知られるとまずい」という空気で、語る自由が奪われている状態。家族のコミュニケーションを硬直化させます。

 


 

2. 家族内で生まれやすい三つの秘密

  1. 個人の秘密:一人のメンバーだけが抱える。例:摂食の問題、依存行動、性被害の体験。
  2. 連合の秘密:一部の人だけが共有。例:母と長女だけが父の借金を知っている。
  3. 家族全体の秘密:家の「おきて」になっている。例:「家のことは外で話すな」。

 

秘密は家族のホームオスタシス(現状維持の力)に守られ、見直しが先送りされがちです。結果として、三角関係やスケープゴート化(誰か一人に問題が集約される)が起こり、子どもに症状(腹痛、登校しぶり、かんしゃく、過度な「いい子」)として表れやすくなります。

 

 


 

3. 子どもへの影響:言葉にならない「薄い霧」

子どもは大人が思う以上に雰囲気に敏感です。秘密がある家庭では、次のような体験が起こりやすくなります。

  • 過覚醒:「何かが変だ」と常に周囲をスキャン。安心感が育ちにくい。
  • 自己原因化:「もしかして自分のせい?」という誤学習。罪悪感や恥の固定化。
  • 混乱:家での言葉と身体感覚が一致しない(ダブルバインド)。信頼形成が難しくなる。
  • 役割の逆転:親に気を遣う「小さな保護者」(ペアレンティフィケーション)が起こる。
  • アイデンティティの揺らぎ:出自や病気の情報が欠けることで、自分史が穴あきになる。

 


 

4. 事例(フィクション)

 

中学2年のAくんは朝になると腹痛を訴え、遅刻が増えていました。面談で母は「思春期だから」と笑っていましたが、家庭訪問で家の空気はどこか張りつめていました。後日、父の失職と多額のローンが判明。家では「お金の話は子どもの前でするな」と暗黙のルールがあり、親同士も正面から話せていませんでした。
 

スクールカウンセラーはまず安心の場をつくり、Aくんには「家で心配ごとがある感じはする?」と身体のサインに寄り添う言葉かけを継続。保護者面談では非難を避け、問題を外在化して「家計の不安が家族の会話を細くしている」と整理。家族は段階的に情報を共有し、Aくんには年齢相応の範囲で説明。数か月後、腹痛は減り、家では短い家族ミーティングを持てるようになりました。

 

 


 

5. 秘密が続くと何が起こる?

  • 信頼の低下:気配に気づきながら誰も触れないことで、互いへの信頼がじわじわ薄れる。
  • 症状化:睡眠・食欲・身体症状、不登校、依存行動、ネット過多など。
  • 時間の停止:家族ライフサイクル(進学・独立・介護など)の課題が後回しに。
  • 世代連鎖:語られなかった出来事は、感情の形で次世代へ伝わりやすい。

 


 

6. 安全に「開示」するための7原則

  1. 安全優先:DV・加害者がいる場合や“アウティング”がリスクになる場合は、無理に開示しない。避難・法的相談が先。
  2. 段階的:すべてを一度にではなく、少しずつ。「今日はここまで」でOK。
  3. 年齢相応:子どもには比喩や図を使い、事実と感情を分けて説明。
  4. 必要なだけ十分に:詳細の暴露ではなく、理解に必要な最小限を。
  5. 第三者の同席:カウンセラー・スクールカウンセラー・医療ソーシャルワーカー等が場を支える。
  6. 役割の守り直し:親の負担は大人が受け持ち、子どもを“相談相手”にしない。
  7. 整える儀式:話した後のケア(散歩、お茶、好きな音楽、手紙)で神経系を鎮める。
 

 


 

7. 学校現場・支援者向けスキル

  • ジェノグラム(家系図):3世代を簡単に描き、語られていない空白に気づく。
  • タイムライン:出来事と症状の流れを可視化し、「話さない」が強くなった時期を見つける。
  • 感情の言語化:「怖さ」「恥ずかしさ」「守りたい気持ち」を同時に並べる。
  • 外在化の質問:「“沈黙”が家族の力を小さくしているとしたら、どんな時?」
  • 共同ルール作り:「家の外で話さないこと」と「専門家には話してよいこと」を峻別する。

 


 

8. 文化的背景も大事に

 

日本では世間体や「家の名誉」が重要視されやすく、沈黙が“美徳”として扱われることがあります。これは家族を守る機能にもなりえますが、恐れからの沈黙になっていないかを丁寧に見極めたいところ。尊重しつつ、小さな共有からはじめるのが現実的です。

 


 

9. 伝えるときの言葉がけ例

  • 親から子へ(中学生)
     「最近、お金のことで大人が心配している。あなたのせいではないし、学校に行く権利は変わらない。詳しい数字は大人が管理するけれど、不安な時は聞いてね。」
  • パートナー間
     「あなたを傷つけないように避けていたけれど、結果的に距離ができた。ここからは少しずつ、必要なことは開いていきたい。」
  • 支援者から保護者へ
     「“話さない”ことが家族を守ってきた面もあります。同時に、お子さんの不安は増えています。安全を守りながら、年齢相応の共有を一緒に設計しませんか。」

 


 

10. 家庭でできるミニワーク

  1. 秘密の地図を描く:家族全員/一部/個人だけが知っていることを三つの円で表す。
  2. できていること探し:沈黙があっても続いている良い習慣(食卓、挨拶、睡眠)を列挙。回復の土台になります。
  3. 5分ミーティング:週1回、5分だけ“今週の心配ごと・助かったこと”を交互に話す。責任追及はしない。
  4. 合図を決める:話し合いの途中でつらくなったら使う合図(休憩サイン)を家族で共有。

 


 

11. 相談の目安

  • 子どもの身体症状や不登校が続く
  • 家族の会話が“必要連絡”だけ
  • 誰か一人が過度に責められる/守り役を担い続けている
  • 重要な事実を知った時のショックが大きい

 

こうした時は、地域の相談機関(学校、子ども家庭支援、保健師、精神保健福祉センター、民間カウンセリングなど)につながってください。一人で抱えないことが何よりの安全策です。

 


 

おわりに

 

秘密は、誰かを守るために始まることが少なくありません。けれど、語られない物語は、やがて家族全体の息苦しさに変わります。大切なのは、安全を最優先にしながら、必要なことを必要な人と、必要な分だけ共有していくこと。たとえ一歩が小さくても、沈黙の向こうにある“関係の回復”へ確実に近づいています。

 

もし今、家族の「話せないこと」に直面しているなら、一緒に話し方の設計図を考えましょう。段階・範囲・ことば選び——あなたの家族の物語に合ったやり方があります。

 

 

 

 

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73.老々介護の実態と心の問題 —家族心理学・家族療法の視点から、やさしく整える—

 

「気づけば、夫婦ふたりとも“高齢”で、介護する側もされる側も体力がない」。
 

これが老々介護の現実です。ここでは、家族心理学・家族療法の視点から、心のつらさを言葉にし、今日からできる整え方をやさしくまとめます。スクールカウンセラーや対人支援職の方、そして家族の悩みの只中にいるあなたにも届く内容にしました。

 

 


 

老々介護とは――“がんばり”だけでは支えきれない段階

 

老々介護は、主に高齢の配偶者やきょうだいが、同じく高齢の家族を支える形を指します。
 

特徴は次の3つです。

  1. 体力・認知・視力聴力の低下が“両側”にある
    「これくらいできたはず」がズレやすい。
  2. “夫婦の歴史”が介護に持ち込まれやすい
    長年の役割(家事・お金・決定権)が固定化しやすい。
  3. 社会的孤立が起きやすい
    人に頼るより、家の中でなんとかしようと抱え込みがち。

 


 

心の問題:名前をつけると、少し楽になる

 

老々介護では、次のような感情が“同時多発”で起こりやすいです。まずは名前をつけて可視化しましょう。

  • あきらめ疲れ:「どうせ今日も思い通りに進まない」
  • 罪悪感:「イライラしてしまう私は冷たいのでは」
  • 恥の感情:「家の事情を見せたくない、弱みを知られたくない」
  • 曖昧な喪失(ambiguous loss):そこにいるのに、昔のその人ではない感触
  • 役割逆転の戸惑い:親・配偶者に指示を出す自分への抵抗
  • 関係の悪循環:疲れて強く言う→相手が不安・混乱→さらに疲れる

家族療法では、“誰が悪いか”よりも“何が起きているか(相互作用)”に注目します。悪循環の輪を小さくすることが、第一目標です。

 

 


 

ケース(架空):Aさん夫婦の場合

 

78歳妻Aさんが、83歳の夫Bさん(軽度認知症+足腰の弱り)を在宅で介護。
 

Aさんは家事全般と服薬管理を担うが、夜間のトイレ介助で睡眠が分断。日中にうたた寝してしまい、食事が遅れ、Bさんが不安定に。焦ったAさんが小言を増やす→Bさんの抵抗が強まり転倒…という悪循環に。

 

介入ポイント(家族心理学)

  • ジェノグラム(家系図)で役割整理:Aさんが「頑張る長女役」を背負いやすい歴史に気づく
  • 行動連鎖の見立て:睡眠不足→イライラ→小言→不安→徘徊増→さらに睡眠不足
  • 再配置(リ・オーガナイズ)
    • 夜間の福祉用具(ポータブルトイレ・手すり)とショートステイの定期利用
    • 服薬・食事時間を“ゆるく固定”(完璧より「だいたい」でOK)
    • Aさんの昼寝を“予定化”(罪悪感の軽減)
  • 言い換え練習(リフレーミング)
    • ×「何度言わせるの」→○「一緒にゆっくり確認しようね」
    • ×「もうできないのね」→○「今日は手伝わせてね」

 

「Aさんが休むこと」が治療的介入の“最初の薬”になりました。

 


 

今日からできる7ステップ

  1. 体調のスクリーニング:朝晩、脈・排便・睡眠時間をメモ。崩れたらSOSの合図。
  2. 15分の“介護しない時間”を毎日:新聞、音楽、ベランダの空…“なにもしない”を予定に入れる。
  3. 言葉の力を使う
    • 「できない日があっていい」
    • 「助けを呼ぶのは賢さ」
    • 「私が壊れたら介護は続かない」
  4. 三箇所ルールで頼る
    • 家族・親戚の誰か
    • 地域包括支援センター/ケアマネジャー
    • かかりつけ医・訪問看護
  5. 制度は“全部少しずつ”使う:デイサービス、ショートステイ、訪問介護・看護、福祉用具。試して合うものを残す。
  6. 安全の3点セットを玄関に:緊急連絡先リスト/薬リスト/“受診バッグ”(保険証・お薬手帳・着替え)。
  7. 記録は“雑でよい”:転倒や夜間覚醒は日付だけ。医療やケア会議で大きな助けになります。
 

 


 

関係の悪循環をほどくミニワーク

 

  • 循環質問:「あなたが疲れたとき、相手はどう振る舞う? そのとき、あなたはどう返す?」
    →矢印で書くと“輪”が見えます。輪のどこを小さくできるか一緒に考える。
  • 外在化:「怒り」や「物忘れ」を“敵役”として紙に描く。「今日はどっちが勝ってる?」と話題化。
  • 境界の見直し:できない家事は“家の外”へ。買い物は配達、掃除はスポット家事代行へ“越境”させる。

 


 

スクールカウンセラー・対人支援職の方へ

 

老々介護は、ヤングケアラー予備群を生みやすい家庭背景でもあります。
学校で見えやすいサイン:遅刻・居眠り・課題未提出・イライラの増加・家の話題の回避。

 

面談の切り出し例

「おうちのことで手伝っていること、ある? どんな時がいちばん大変?」
「家族に相談したいこと、学校から一緒に伝えてもいい?」

 

連携のポイント

  • 保護者面談では“非難より共通目標”:「お子さんの安心と学びの継続を一緒に守りたい」
  • 地域包括支援センター・ケアマネ・保健師と三者以上で“小さな合意”を重ねる(例:週1回の見守り、福祉用具の試用)。
 

 


 

ケアする人のメンタルヘルス

  • うつ・不安の兆し:食欲・睡眠の大幅変化、興味喪失、自責の強まり。
    →兆しが続くときは、迷わず医療へ。受診は“弱さ”ではなくケア能力を守る行為です。
  • 怒りの扱い方:怒りは“疲労のアラーム”。まず休む→次に助けを呼ぶ→最後にやり方を見直す。順番を守ると破綻を防げます。

 


 

よくある質問(簡潔版)

  • Q. 施設を考えるのは裏切り?
    A. いいえ。「安全と尊厳を確保する」ための選択肢の一つ。在宅と施設を“行き来”する発想もあり。
  • Q. 兄弟姉妹と役割が不公平
    A. 作業を「時間・金銭・意思決定」に分けて再配分。金銭担当も立派な役割。
  • Q. 本人が“助けを拒む”
    A. 「できることを奪わない」配慮を示しながら、安全と休息の必要性を具体的に提案(“試しに一週間”方式が有効)。

 


 

まとめ:あなたが楽になることが、ケアの質を上げる

 

老々介護は、個人の根性で乗り切る段階を越えています。家族心理学の視点は、「悪循環を見つけて、輪を小さくする」「歴史に縛られた役割をゆるめる」「外の力を混ぜる」こと。
 

そして最重要は、ケアラーの休息を最優先に置くことです。うまく頼る・少しずつ手放す・言葉をやさしくする――その小さな3歩が、関係をゆっくりと回復させます。

 

ひとりで抱えないで。
 

今日の15分の“介護しない時間”から、始めましょう。必要なら、文章のどこからでも一緒に具体化していきます。

 

 

 

 

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はじめに

 

私たちが人と関わるとき、そこには目に見えにくい「労働」が生じています。そのひとつが「感情労働」です。

 

もともとは社会学者アーリー・ホックシールドが提唱した概念で、接客業や医療・教育など「人と人とのやりとりを通じて感情を調整し、相手にふさわしい態度を示すこと」を指します。

 

しかし近年では職場に限らず、家庭やパートナー関係など私的な領域でも「感情労働」の不均衡が問題になることが増えてきました。

 

このブログでは、感情労働が家庭や人間関係にどう作用するのか、そしてその不均衡がもたらす影響について、心理学と家族療法の視点から考えてみたいと思います。

 

 


 

 

感情労働とは何か

 

感情労働とは、単に「感情を表現すること」ではありません。自分の内側に湧いた感情をそのまま出すのではなく、状況に応じて「望ましい感情」を表に出す努力を指します。たとえば、

  • 保護者対応をするスクールカウンセラーが、不安を抱えた親に安心感を与えるように振る舞う
  • 医師や看護師が、患者に対して冷静かつ丁寧に接する
  • 親が子どもに対して、疲れていても笑顔で「大丈夫だよ」と声をかける

こうした場面で求められるのは、相手を思いやるだけでなく、自分の感情を抑えたり調整したりする「内的な努力」です。

 


 

 

家庭における感情労働の不均衡

 

職場だけでなく、家庭においても感情労働は大きな役割を果たします。特に夫婦や親子関係では「誰がどれだけ感情の調整を担っているのか」が不均衡になることが少なくありません。

 

夫婦関係の例

  • 妻が常に夫の機嫌をうかがい、怒らせないように振る舞う
  • 夫が家庭内の不満を抑え込み、笑顔で家族を支える

このように片方だけが感情をコントロールする役割を過度に引き受けると、その人の心身に大きな負担がかかります。

 

親子関係の例

  • 子どもが親の気分を察して、気をつかって過ごす
  • 親が子どもの感情をすべて受け止め、常に調整役になる

子どもに過度の感情労働を課すと「親の顔色をうかがうこと」が習慣化し、自分の感情を表現する力が弱まります。逆に親ばかりが感情調整を担う場合も、疲弊や燃え尽きにつながります。

 

 


 

 

感情労働の不均衡がもたらす影響

 

感情労働そのものは、人間関係を円滑にするために欠かせないものです。しかし、それが不均衡になり、一方だけが担い続けると次のような影響が現れます。

  1. 慢性的な疲労感・消耗感
    常に相手に合わせる役割を引き受けると、心が休まらず「無理に笑顔を作る」「不満を飲み込む」といった状態が続きます。これが長期化すると、抑うつ感や燃え尽きに結びつきやすくなります。
  2. 関係性の歪み
    一方が「支える側」、もう一方が「支えられる側」と固定化すると、対等な関係が崩れます。とくに夫婦では、どちらかが「私ばかりが我慢している」という感覚を抱きやすく、関係悪化の火種になります。
  3. 自己表現の困難
    感情を抑えすぎると「本当の自分の気持ちがわからない」「何を感じているのか自覚できない」という状態に陥ります。これはアレキシサイミア(失感情症)的な傾向につながり、自己理解や他者理解を妨げます。
  4. 次世代への影響
    家庭における感情労働の不均衡は、子どもにも受け継がれやすいものです。親が常に我慢している姿を見た子どもは「感情を表すことは迷惑になる」と学び、同じように自分の気持ちを抑えるパターンを作ってしまいます。

 


 

 

不均衡を見直すための視点

 

感情労働の負担を均等にするには、まず「目に見えにくい働き」を言葉にして可視化することが大切です。

  1. 自分がどんな感情労働をしているか意識する
    「相手の機嫌を取るために笑顔を作った」「疲れていたけど愚痴を聞いた」など、小さなことでも振り返ってみましょう。
  2. 負担の共有を話し合う
    家庭で「私ばかりが感情を調整している」と感じたら、その思いを冷静に伝えることが必要です。「あなたも少し手伝って」とお願いするように、感情の面でも分担を求めることができます。
  3. 境界線を意識する
    相手の感情をすべて引き受けるのではなく、「ここまでは自分の責任、ここからは相手の責任」と線を引くことも大切です。相手の不機嫌をすべて自分が解決する必要はありません。
  4. 外部のサポートを活用する
    カウンセリングや家族療法では、感情労働の不均衡を整理し、バランスを整える手助けが可能です。第三者を交えることで、見えにくい構造が浮かび上がりやすくなります。

 


 

 

感情労働の価値を認め合う

 

感情労働は「ただの気遣い」や「自然なこと」と軽視されがちですが、実際には大きなエネルギーを要する重要な営みです。もし誰かがそれを担っているなら、その人の努力を認め、感謝することが関係の安定につながります。

 

また、すべてを均等にすることが理想ではありません。ある時期は親が子に多くを注ぎ、別の時期は子が親を支えることもあるでしょう。大切なのは、その役割が固定化されず、対話を通じて調整できる柔軟さです。

 


 

 

まとめ

 

感情労働は人間関係を支える見えない土台ですが、不均衡になると心身の消耗や関係性の歪みを引き起こします。家庭や職場で「誰が感情の調整を担っているのか」を振り返り、負担を分かち合うことが健全な関係の第一歩です。

 

「気をつかうこと」「相手を安心させること」は尊い営みですが、それを一人が抱え込みすぎると関係のバランスは崩れます。感情労働の価値を正しく理解し、互いに支え合える関係を築いていきたいものです。

 

 

 

 

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23. 子どもが不登校になった時の家族の対応

 

はじめに

 

学校に行けなくなった子どもを前に、家族は大きな戸惑いを抱えます。

 

・朝になると布団から出られない

・体調不良を訴える

・学校の話題を避ける

 

こうした兆候に出会うと、多くの親は「怠けているのでは?」「将来はどうなるのだろう」と不安と焦りを募らせます。
 

しかし、不登校は単なる怠けではなく、子どもの心身の限界を知らせるサインであることが少なくありません。ここでは、子どもが不登校になったときに家族がどのように対応すべきか、心理学的視点から整理していきます。

 

 


 

不登校の背景を理解する

 

文部科学省の調査によれば、小中学生の不登校は年々増加傾向にあります。その背景は一様ではなく、いくつかの要因が絡み合っています。

  • 学校での人間関係の不安:いじめ、友人関係のトラブル、教師との相性など。
  • 学業のプレッシャー:勉強についていけない、テストが怖いといった学習面での不安。
  • 家庭内の影響:親子関係の緊張、夫婦不和、過度な期待。
  • 発達特性や心の不調:HSP(繊細さ)、発達障害、うつ傾向など。

 

不登校は、これらが複雑に絡み合う「氷山の一角」です。表面に見えるのは「学校に行けない」という行動ですが、その下には多層的な背景が存在します。家族がこの構造を理解しようとすることが、第一歩になります。

 


 

家族が陥りやすい反応

 

子どもが不登校になると、家族はさまざまな感情に振り回されます。典型的な反応には以下のようなものがあります。

  • 叱咤して登校を促す
    「甘えるな」「学校に行かないと将来困る」と強く迫る。
    → 子どもは追い詰められ、さらに動けなくなる。
  • 過度に心配しすぎる
    「うちの子はもうだめかもしれない」と先回りして悲観する。
    → 子どもは「迷惑をかけている」と自己否定を強める。
  • 問題を学校や子どもに丸投げする
    「先生に任せる」「子ども自身が解決すべき」と距離を置く。
    → 子どもは孤立感を深め、安心できる場所を失う。

 

こうした反応は、意図せずして子どもの負担を大きくしてしまう危険があります。

 

 


 

家族にできる基本的な対応

 

1. 子どもの心の声に耳を傾ける

 

不登校の子どもは「学校に行けない理由」を言葉でうまく説明できないことが多いものです。まずは答えを急がず、子どもの気持ちを聴く姿勢が大切です。
 

「行きたくないのには、きっと理由があるんだね」
「今は話せなくても大丈夫。聞く準備はいつでもあるよ」
 

といった言葉は、子どもに安心感を与えます。

 

2. 安心できる居場所を家庭に作る

 

不登校の子どもにとって、自宅は「避難所」です。家庭で安心できなければ、子どもはますます追い詰められます。無理に外に引っ張り出すよりも、まずは家でリラックスできる環境を整えることが重要です。

 

3. 親自身の不安を整える

 

「このままでは受験は?」「社会に出られなくなるのでは?」といった将来への不安は、親として自然な感情です。ただし、その不安を子どもに直接ぶつけてしまうと逆効果になります。親が相談機関やカウンセラーに話を聴いてもらい、心を整えることも大切です。

 

4. 学校や専門機関と連携する

 

学校にはスクールカウンセラーやソーシャルワーカーなど、相談できる窓口があります。また、地域の教育センターや不登校支援NPOも力になります。家庭だけで抱え込まず、外部の専門家と連携することで子どもへの選択肢が広がります。

 

 


 

きょうだいへの影響を考える

 

不登校は家庭全体のテーマとなります。兄弟姉妹がいる場合、「お兄ちゃんばかり心配されている」「私も見てほしいのに」といった気持ちが生まれることもあります。
 

きょうだい一人ひとりに目を向け、「あなたも大切だよ」というメッセージを伝えることが、家族の安定を守る上で欠かせません。

 


 

家族システムの視点から

 

家族心理学では、家族は「システム」として機能していると考えます。不登校は子ども一人の問題ではなく、家族全体の関係性の中で意味を持つ現象です。

 

例えば、

  • 夫婦の不和を背景に子どもが不登校になることで、夫婦が協力せざるを得なくなる。
  • 親の過剰な期待を調整する役割を、子どもが「登校拒否」という形で担っている。

 

こうした視点を持つと、「不登校=家族全体の課題」として捉えることができます。すると、親も「子どもを治そう」ではなく「家族のあり方を見直そう」と発想を転換しやすくなります。

 

 


 

回復のプロセス

 

不登校からの回復は、直線的に「行けるようになる」ものではありません。
多くの場合、「休息期 → 小さな挑戦 → 挫折と後退 → 再挑戦 → 安定」といった波を繰り返します。
このプロセスを「一歩進んで半歩下がる」と理解しておくと、親も焦らずに見守れるでしょう。

 


 

家族ができる言葉がけの例

  • 「今日は起きられたね。無理しなくていいけど、頑張ったね」
  • 「あなたがここにいてくれるだけで安心するよ」
  • 「行けるようになる日は必ず来る。その時まで一緒に考えよう」

大切なのは「結果」よりも「過程」を認めることです。小さな変化を家族が喜び合うことで、子どもは再び自己肯定感を取り戻していきます。

 


 

おわりに

 

子どもの不登校は、家族にとって大きな試練です。しかし、それは同時に「家族のあり方を見直すチャンス」でもあります。
 

叱責でも放任でもなく、安心と信頼に基づいた関わりを積み重ねることで、子どもは必ず再び歩み出す力を取り戻します。

 

家族全員が学び、支え合うプロセスこそが、子どもの未来を守る最良の道といえるでしょう。

 

 

 

 

 

 

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―――――

 

008.家族の発達段階って?ライフサイクルで見る家族の課題

 

はじめに

 

「家族」という言葉はとても身近ですが、その内実は常に変化しています。夫婦二人だけのときと、子どもが誕生したとき。子どもが巣立ち、老夫婦だけになったとき。ライフサイクルに応じて、家族が直面する課題はまったく異なります。
 

この家族の時間的な変化を体系的に整理したものを「家族ライフサイクル」と呼びます。心理学や家族療法の領域では、この視点をもとに「いまこの家族がどんな課題を抱えやすい時期にあるか」を考えることが多いのです。

 

この記事では、家族ライフサイクルの基本的な段階を紹介しながら、それぞれに潜む心理的課題や対人関係上のポイントを分かりやすく解説していきます。

 

 


 

 

家族ライフサイクルの基本的な段階

 

家族ライフサイクルは研究者によっていくつかの分類がありますが、代表的なのは次のような段階です。

 

  1. 独立期(親元を離れて独り立ちする時期)
  2. 夫婦形成期(結婚・パートナーシップの確立)
  3. 子育て期(子どもの誕生から思春期まで)
  4. 子どもの独立期(青年期・巣立ち)
  5. 老年期(夫婦二人・単身での生活)

それぞれの段階で「成長課題」があり、乗り越えられない場合は次の段階に進むときにひずみが生じやすくなります。

 


 

 

1.独立期 ― 自分自身をつくる

 

多くの人にとって最初の家族発達段階は「独立期」です。学生や社会人として親の家を出ることが多く、心理的にも「親からの自立」が大きなテーマになります。

  • 経済的自立:生活費を自分で稼ぐ
  • 情緒的自立:親の価値観に過度に縛られず、自分の意思で選択する
  • 社会的自立:友人や恋人、職場の人との新しい人間関係を築く

この段階で課題が残ると、後の夫婦関係や子育てに影響します。例えば、親に依存したまま結婚すると、配偶者との距離感が安定せず、トラブルの火種になりやすいのです。

 

 


 

 

2.夫婦形成期 ― 「二人の家族」をつくる

 

結婚や事実婚など、パートナーとの同居を始める時期です。ここで重要なのは**「出身家族」からの独立と、新しい家族の文化を築くこと」**です。

  • お金の使い方
  • 家事や役割分担
  • 休日の過ごし方
  • 親との距離(実家との関わり方)

これらは「育ってきた家族」で身につけた習慣が違うため、摩擦が起きやすいところです。「うちの家ではこうだった」という常識を押しつけるのではなく、「新しい我が家のやり方」を一緒に模索していく柔軟さが求められます。

 


 

 

3.子育て期 ― 小さな命を育む

 

子どもが誕生すると、家族は大きく変化します。夫婦二人の関係に「親」という新しい役割が加わるのです。

  • 夫婦関係の再調整(「恋人」から「親」としての協力体制へ)
  • 子育ての価値観の違い(しつけ・教育方針など)
  • 社会的負担の増加(仕事と育児の両立、経済的プレッシャー)

ここで重要なのは、夫婦の関係性を見失わないことです。子育てに集中するあまり、夫婦としてのつながりが希薄になると、子どもが成長した後に「共にいる意味がわからない」と感じやすくなります。

 

 


 

 

4.子どもの独立期 ― 親から子へ、そして別々の人生へ

 

子どもが思春期を経て成人し、やがて巣立つ段階です。親にとっては「手を離す」勇気が必要となります。

  • 子どもの自立を尊重する
  • 干渉しすぎず、しかし無関心にもならないバランス
  • 空の巣症候群(子どもが出ていった後の喪失感)

とくに母親に多いのが「子育てが自分の存在意義そのものになっていた」ケースです。この場合、子どもが独立した後に虚しさや抑うつを感じやすくなります。ここでは、自分自身の新しい生き方を再発見することが大切になります。

 


 

 

5.老年期 ― 人生の総仕上げとしての家族

 

子どもが独立し、夫婦二人、あるいは単身で生活する時期です。配偶者の病気や死、介護、孤独といった課題に直面しやすくなります。

  • 健康問題への対応
  • きょうだいや子どもとの関係の再調整
  • 社会的なつながりをどう持つか

心理学的に重要なのは「人生の統合感」です。これは、エリクソンの発達理論でいう「人生を振り返り、肯定できる感覚」を意味します。
 

「いろいろあったけれど、悪くない人生だった」と思えるかどうか。ここに至るまでに家族の課題にどう向き合ってきたかが、大きな影響を与えます。

 

 


 

 

発達段階は“流れ”でつながっている

 

ここまで5つの段階を見てきましたが、実際の家族は必ずしも教科書どおりに進むわけではありません。離婚、再婚、未婚、事実婚、子どもをもたない選択など、多様なあり方があります。

 

しかし重要なのは、それぞれの段階で「何が課題になるのか」を理解しておくことです。そうすれば、自分の家族がどこでつまずいているのかを見つけやすくなります。

 

例えば、夫婦形成期に十分に話し合わずに「なんとなく」進んでしまうと、子育て期に価値観の違いが大きな摩擦を生むことがあります。あるいは、子どもの独立を受け入れられないと、老年期に孤独感が強まることもあります。

 


 

 

支援職の方へのヒント

 

カウンセラーやコーチ、医師、ナースといった対人支援職の方にとって、家族ライフサイクルの視点は非常に有効です。
 

クライアントが抱える悩みを「個人の問題」としてではなく「家族の発達段階に伴う自然な課題」と捉え直すことで、安心感を与えることができます。

 

たとえば、

  • 「子どもが反抗的で困る」という親に対しては、思春期という発達課題を踏まえて説明できる
  • 「夫婦関係が冷めた」と嘆くケースでは、子育て後の夫婦再調整の必要性を伝えられる

こうした視点を持つだけで、問題の見え方が大きく変わります。

 

 


 

 

まとめ

 

家族は生まれてから死ぬまで、ライフサイクルに応じて姿を変え続けます。独立、夫婦形成、子育て、子どもの独立、老年期――それぞれに課題があり、その課題をどう乗り越えていくかが家族の成熟を左右します。

 

「自分たちは今どの段階にいるのか」
「この時期にはどんな課題が自然に生じるのか」

 

この視点を持つだけで、家族の悩みを少し客観的に捉え直すことができます。家族の問題に直面している方も、支援する立場の方も、この家族ライフサイクルの枠組みをぜひ役立てていただければ幸いです。

 

 

 

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