高齢親の囲い込みとは、認知症や要介護状態にある親について、一部の家族が「親を守る」という名目で、面会、連絡、医療・介護情報、財産管理、施設との連絡窓口を独占し、他の家族を遠ざけていく状態をいいます。

親を守ることは大切です。
しかし、その言葉が、親本人の意思を見えにくくし、家族を排除し、情報や財産の出入口を一人が握るために使われるなら、それは保護ではなく支配に近づきます。
このブログでは、高齢親の囲い込みを、個人批判ではなく家族内支配の構造として考え、親の尊厳と家族関係を守るために何が必要かを考えていきます。
第24回 囲い込みを防ぐために、親が元気なうちにできること
――判断力があるうちに、意思と情報を家族で共有しておく
高齢親の囲い込みは、親の判断力や体力が弱った後に起きやすくなります。
親が元気なうちは、自分で電話できます。
自分で会いたい人に会えます。
自分で通帳を管理できます。
自分で病院に行き、説明を聞くことができます。
自分で財産や相続について考えることもできます。
家族の誰かが自分の言葉を勝手に代弁しようとしても、本人が「違う」と言うことができます。
しかし、親が高齢になり、体力が落ち、認知症や病気によって判断力が弱ってくると、状況は大きく変わります。
電話が難しくなる。
外出が難しくなる。
病院や施設とのやり取りを一人でできなくなる。
通帳や契約書を管理できなくなる。
自分の意思をはっきり伝えにくくなる。
誰かの説明に影響を受けやすくなる。
そのとき、家族の一人が、親との連絡、施設や病院との窓口、財産情報、介護方針、面会の可否を握ると、囲い込みが起きやすくなります。
だからこそ、親が元気なうちに準備しておくことが大切です。
囲い込みを防ぐために必要なのは、家族を疑うことではありません。
親本人の意思を、あらかじめ分かりやすくしておくこと。
情報を、一人だけに集中させないこと。
連絡体制を、透明にしておくこと。
財産や医療、介護について、最低限の共有をしておくこと。
将来、判断力が低下したときの備えをしておくこと。
つまり、親が元気なうちに、親本人を中心にした「開かれた仕組み」を作っておくことです。

1 囲い込みは、親が弱った後に始まりやすい
高齢親の囲い込みは、突然始まるとは限りません。
最初は、小さな変化です。
「今日は体調が悪いから会わない方がいい」
「電話すると混乱するから控えてほしい」
「施設との連絡はこちらでやる」
「通帳はこちらで預かっておく」
「病院の説明は自分が聞いておく」
「親が嫌がっているから、連絡しないでほしい」
一つ一つは、それなりに理由があるように見えることもあります。
しかし、それが続くと、親への道が少しずつ狭くなっていきます。
会えない。
話せない。
情報が入らない。
親の意思を直接確認できない。
施設や病院との窓口が一人に固定される。
財産や契約の状況も分からない。
こうして、気づいたときには、親をめぐる情報と出入口が、一人の家族に集中していることがあります。
親が元気なうちであれば、本人が説明できます。
「私はこの子にも連絡してほしい」
「施設に入っても、みんなに会いたい」
「通帳はこう管理してほしい」
「病院の説明は、家族全員に共有してほしい」
「もし認知症になっても、一人だけで決めないでほしい」
しかし、親が弱ってからでは、その意思確認が難しくなります。
だからこそ、元気なうちに話しておく必要があります。

2 まず共有すべきは、緊急連絡先と家族の連絡体制
囲い込みを防ぐために、まず整えておきたいのは連絡体制です。
親に何かあったとき、誰に連絡するのか。
病院に入院したとき、誰が知るのか。
施設に入所したとき、誰に情報を共有するのか。
緊急時に、一人の家族だけが情報を受け取る形になっていないか。
ここを曖昧にしておくと、いざというときに、窓口を握った人が情報を独占しやすくなります。
たとえば、親が元気なうちに、次のようなことを決めておくとよいでしょう。
入院や施設入所があった場合は、子ども全員に連絡する。
病状や介護方針に大きな変化があった場合は、メールやLINEで共有する。
緊急時の第一連絡先と、第二連絡先を決めておく。
施設や病院には、連絡してよい家族の範囲を伝えておく。
親本人が望む連絡方法を記録しておく。
大切なのは、一人だけを完全な窓口にしないことです。
もちろん、実務上、代表者が必要になることはあります。
施設や病院との日常的なやり取りを、誰か一人が担当することもあるでしょう。
それ自体は問題ではありません。
問題は、その担当者が、他の家族への情報共有を止めてしまうことです。
代表者はいてもよい。
しかし、情報は閉じない。
この考え方が大切です。

3 医療・介護方針について、親本人の希望を聞いておく
親が元気なうちに、医療や介護についての希望を聞いておくことも重要です。
どこの病院にかかっているのか。
持病は何か。
飲んでいる薬は何か。
主治医は誰か。
介護が必要になったら、自宅で暮らしたいのか、施設も考えるのか。
延命治療について、どのような考えを持っているのか。
誰に医師の説明を聞いてほしいのか。
誰に介護方針を共有してほしいのか。
こうしたことを、親が元気なうちに話しておくと、後で家族が迷いにくくなります。
高齢親の囲い込みでは、医療や介護の情報が一人の家族に集中することがあります。
「自分が病院に付き添っている」
「自分が医師から説明を聞いた」
「自分が介護方針を決めた」
「他の家族には知らせなくてよい」
こうなると、他の家族は親の状態を確認できません。
また、窓口になっている家族が「親はこう望んでいる」と説明しても、それが本当に親本人の意思なのか、確認が難しくなります。
だからこそ、親が元気なうちに、親本人の希望を記録しておくことが大切です。
完璧な文書でなくてもかまいません。
ノートでもよい。
家族間のメールでもよい。
話し合いのメモでもよい。
親本人が書いた簡単な希望書でもよい。
大切なのは、後から一人の家族だけが「親はこう言っていた」と言い張る状態を防ぐことです。

4 面会や連絡について、親本人の希望を確認しておく
意外に大切なのが、面会や連絡についての希望です。
将来、施設に入ったとき、誰に会いたいのか。
子どもたちには定期的に会いたいのか。
孫や親族とも会いたいのか。
電話や手紙、写真、オンライン通話などを望むのか。
体調が悪いときでも、誰には連絡してほしいのか。
家族の一人だけが面会を決める形でよいのか。
こうしたことを、親が元気なうちに聞いておくことが大切です。
高齢親の囲い込みでは、「親が会いたくないと言っている」という言葉が使われることがあります。
もちろん、本当に親本人が会いたくない場合もあるでしょう。
しかし、問題は、その確認方法です。
誰が聞いたのか。
どのような場面で聞いたのか。
親は本当に自由に答えられたのか。
他の家族のことをどう説明されたのか。
利害関係のある家族が同席していなかったか。
親が弱ってからでは、この確認が難しくなります。
だからこそ、元気なうちに聞いておくのです。
「もし施設に入ったら、誰に会いたい?」
「子どもたちには連絡してよい?」
「面会を一人の家族が決める形でよい?」
「手紙や写真を受け取りたい?」
「体調が悪いとき、誰に知らせてほしい?」
こうした問いは、親の自由を守るためのものです。
親本人の希望を共有しておけば、将来、誰かが「親が会いたくないと言っている」と言ったときにも、慎重に確認する手がかりになります。

5 財産情報を、完全に一人に握らせない
親の財産情報は、とても繊細な問題です。
預貯金。
不動産。
保険。
年金。
証券口座。
借入金。
通帳。
印鑑。
権利証。
契約書。
これらは、親本人の大切な財産です。
子どもだからといって、当然にすべてを知る権利があるわけではありません。
親が元気で判断能力があるなら、財産を誰にどこまで知らせるかは、親本人が決めることです。
ただし、将来の囲い込みを防ぐという意味では、財産情報が一人の家族だけに集中しないようにしておくことが重要です。
特に、親の判断力が低下した後に、次のような状態になると危険です。
通帳を誰が持っているのか分からない。
年金がどう使われているのか分からない。
施設費や医療費の支払い状況が分からない。
不動産が売却されていた。
保険金の受取人や契約内容が分からない。
遺言がいつの間にか作られていた。
財産管理をしている家族が説明しない。
こうなると、親本人の財産が適切に使われているのか、確認が難しくなります。
親が元気なうちに、最低限の情報整理をしておくとよいでしょう。
どの金融機関に口座があるのか。
不動産はどこにあるのか。
保険契約は何があるのか。
年金の入金口座はどこか。
重要書類はどこに保管しているのか。
将来、誰が管理を手伝うのか。
その場合、他の家族への報告はどうするのか。
すべての金額を今すぐ共有する必要はないかもしれません。
しかし、親が判断できなくなった後に、一人しか情報を知らない状態は避けるべきです。
財産情報の透明性は、親本人を守るためのものです。

6 遺言は「秘密にする」より「争いを減らす」視点で考える
相続争いを防ぐために、遺言を作ることがあります。
遺言は、親本人の意思を残す大切な手段です。
しかし、高齢親の囲い込みの場面では、遺言が不透明に作られることが問題になることがあります。
親が誰と一緒に公証役場に行ったのか。
誰が内容を考えたのか。
親本人は内容を理解していたのか。
他の家族の存在や関係を十分に考慮していたのか。
認知症や判断力低下の影響はなかったのか。
一部の家族に誘導されていなかったか。
遺言そのものが悪いわけではありません。
問題は、不透明な経緯です。
だからこそ、親が元気なうちに、遺言についても、できるだけ本人の自由な意思が分かる形で準備することが大切です。
誰か一人の家族だけが関わるのではなく、専門家に相談する。
親本人が自分の言葉で意思を説明できる時期に作成する。
作成時の判断能力や経緯が後から分かるようにしておく。
必要に応じて、家族に大まかな考え方を伝えておく。
遺言は、争いを生まないために作るものです。
それなのに、遺言の作成経緯が不透明であれば、かえって争いの火種になります。
大切なのは、誰かを有利にすることではありません。
親本人の意思を、できるだけ明確で、自由で、後から疑われにくい形にしておくことです。

7 任意後見という選択肢も知っておく
親が元気なうちに考えておきたい制度の一つに、任意後見制度があります。
任意後見制度は、本人に十分な判断能力があるうちに、将来判断能力が不十分になった場合に備えて、任意後見人になる人や委任する事務の内容を、公正証書による契約で定めておく制度です。
この制度の重要な点は、親本人が元気なうちに、自分で備えを決めることです。
将来、誰に財産管理を任せたいのか。
誰に施設入所や医療・介護の契約を手伝ってほしいのか。
どの範囲の事務を任せるのか。
家族の中で誰か一人に集中させるのか、専門職に関与してもらうのか。
任意後見人が動き始めた後、他の家族への報告をどうするのか。
こうしたことを、親本人が判断できるうちに決めておくことができます。
もちろん、任意後見制度を使えばすべてが解決するわけではありません。
制度には費用も手続もあります。
誰を任意後見人にするかも慎重に考える必要があります。
家族関係によっては、専門職を含めて検討した方がよい場合もあります。
それでも、親の判断力が低下してから、家族の一人が事実上すべてを握ってしまうよりは、あらかじめ親本人の意思で備えておく方が、透明性を保ちやすくなります。
任意後見は、囲い込みを防ぐための一つの選択肢として知っておく価値があります。

8 親本人の希望を「文書化」しておく
家族で話し合っても、口約束だけでは後から曖昧になります。
「あのとき、親はこう言っていた」
「いや、そんなことは言っていなかった」
「自分にはこう話していた」
「親の本心は違った」
このように、後から解釈が分かれることがあります。
だからこそ、親本人の希望は、できるだけ文書化しておくことが大切です。
たとえば、次のような項目です。
緊急時の連絡先。
入院や施設入所時に知らせてほしい家族。
面会や連絡についての希望。
医療や介護についての考え方。
財産管理を誰に手伝ってほしいか。
通帳や重要書類の保管場所。
遺言についての考え方。
任意後見や成年後見についての希望。
亡くなった後の葬儀や供養についての希望。
これらを、親本人の言葉で残しておく。
形式は、最初は簡単なメモでもかまいません。
家族会議の議事録でもよいでしょう。
専門家に相談して正式な文書にしていく方法もあります。
大切なのは、親本人が元気なうちに、自分の意思を残すことです。
それは、子どもたちを縛るためではありません。
将来、親の意思をめぐって家族が争わないためです。

9 家族会議は「財産の分け方」だけを話す場ではない
親が元気なうちに家族会議をするというと、相続や財産の話を想像するかもしれません。
もちろん、財産の話も重要です。
しかし、囲い込みを防ぐための家族会議では、財産の分け方だけを話すのでは不十分です。
むしろ、次のようなことを話す必要があります。
親がどのように暮らしたいのか。
介護が必要になったら、どこで暮らしたいのか。
誰に連絡してほしいのか。
子どもたちにどの程度関わってほしいのか。
施設に入った場合、面会についてどう考えるのか。
医療や介護の説明を誰が聞き、どう共有するのか。
財産管理を誰が手伝い、どう報告するのか。
一人の家族に負担や権限が集中しないようにするにはどうするのか。
家族会議の目的は、誰が主導権を握るかを決めることではありません。
親本人の意思を中心に、情報共有のルールを作ることです。
たとえば、代表窓口を一人決めるとしても、月に一度は家族全員に状況を共有する。
重要な医療・介護方針の変更があったときは、全員に連絡する。
財産管理を手伝う場合は、支出の記録を残す。
面会制限が必要な場合は、理由と期間を明確にする。
親本人の意思確認には、可能な限り第三者の視点も入れる。
このようなルールがあれば、将来の囲い込みを防ぎやすくなります。

10 親のプライバシーと家族の透明性を両立させる
ここで注意したいことがあります。
囲い込みを防ぐために情報共有が大切だと言っても、親のプライバシーを無視してよいわけではありません。
親の財産、病歴、医療情報、生活上の悩みは、非常に個人的なものです。
子どもたちがすべてを知るべきだ、という話ではありません。
大切なのは、親本人が誰に何を共有したいのかを、元気なうちに確認することです。
医療情報は、誰に伝えてよいのか。
財産情報は、どこまで共有してよいのか。
施設入所時の連絡は、誰にしてほしいのか。
面会希望は、どう扱ってほしいのか。
家族に知られたくないことはあるのか。
親本人のプライバシーを尊重しながら、必要な透明性を確保する。
これが重要です。
情報共有は、子どもたちのためだけではありません。
親本人の意思が歪められないため。
誰か一人が親の言葉を独占しないため。
親の財産や生活が不透明にならないため。
親が孤立させられないため。
そのための情報共有です。

11 親が元気なうちの準備は、家族への最後の思いやりでもある
親にとって、自分が弱った後のことを話すのは、気が進まないかもしれません。
介護。
認知症。
施設。
財産管理。
遺言。
葬儀。
亡くなった後のこと。
どれも、簡単に話せるテーマではありません。
子ども側も、親に切り出しにくいでしょう。
「縁起でもない」
「まだ早い」
「お金の話をしているようで言いにくい」
「親を不安にさせたくない」
そう感じるのは自然です。
しかし、親が元気なうちに話しておくことは、家族への思いやりでもあります。
親の意思が分からないまま、子どもたちが判断を迫られる。
誰か一人が窓口になり、他の家族が不信感を持つ。
財産情報が不透明になり、疑いが生まれる。
面会や連絡をめぐって争いになる。
遺言や相続で家族関係が壊れる。
こうしたことを防ぐために、親本人が元気なうちに、自分の考えを残しておく。
それは、残される家族への大切なメッセージです。
「自分のことで、家族が争わないように」
「自分の意思が、誰か一人に都合よく使われないように」
「自分が弱っても、家族とのつながりが切れないように」
そのための準備なのです。

12 まとめ
高齢親の囲い込みは、親の判断力や体力が弱った後に起きやすくなります。
だからこそ、親が元気なうちに準備しておくことが大切です。
緊急連絡先を共有する。
医療・介護方針について話しておく。
面会や連絡についての希望を確認する。
財産情報を一人に集中させない。
遺言を不透明な形で作らない。
任意後見などの制度を知っておく。
親本人の希望を文書化しておく。
家族会議で情報共有のルールを作る。
親のプライバシーと家族の透明性を両立させる。
これは、家族を疑うための準備ではありません。
親本人の意思を守るための準備です。
親の尊厳を守るための準備です。
家族関係を閉じさせないための準備です。
将来、誰か一人が親をめぐる情報と出入口を握ってしまわないための準備です。
親を守ることは、親を一人の家族の管理下に置くことではありません。
親本人の意思、自由、人間関係、財産の透明性を守ることです。
そのためには、親が元気なうちに、親本人の言葉で、親本人の希望を残しておくことが大切です。
高齢親の囲い込みを防ぐ第一歩は、親が弱ってから始めるものではありません。
親が元気なうちに、家族で静かに話し合うこと。
情報を整理すること。
意思を記録すること。
一人に権限を集中させない仕組みを作ること。
それが、将来の親本人を守り、家族を守ることにつながります。

プロフィール
高齢親の囲い込み解放コンサルタント 白岩俊正
白岩会計事務所 代表/公認会計士・税理士/株式会社みらい 代表取締役
〒422-8005 静岡市駿河区池田616-2パレス葵102
お問い合わせはまずはメールで release.advisor@gmail.com
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