このブログについて
高齢親の囲い込みとは、認知症や要介護状態にある親について、一部の家族が「親を守る」という名目で、面会、連絡、医療・介護情報、財産管理、施設との連絡窓口を独占し、他の家族を遠ざけていく状態をいいます。
親を守ることは大切です。
しかし、その言葉が、親本人の意思を見えにくくし、家族を排除し、情報や財産の出入口を一人が握るために使われるなら、それは保護ではなく支配に近づきます。
このブログでは、高齢親の囲い込みを、個人批判ではなく家族内支配の構造として考え、親の尊厳と家族関係を守るために何が必要かを考えていきます。
第25回 高齢親の尊厳を取り戻すために
――家族の勝ち負けではなく、親本人の意思・自由・人間関係を守る
高齢親の囲い込みについて、このシリーズではさまざまな角度から考えてきました。
面会を止める人は何を守っているのか。
「親が会いたくないと言っている」は本当なのか。
情報を握る人が、家族を支配する構造。
施設・病院・ケアマネとの連絡窓口を独占する問題。
認知症と囲い込み。
通帳、印鑑、財産管理の不透明さ。
公正証書遺言や相続との関係。
囲い込みをする人の心理構造。
家族内で起きる情報の非対称性。
記録、証拠、時系列の重要性。
調停、訴訟、成年後見制度の利用。
判決で家族の事実を記録する意味。
そして、高齢親の囲い込みを社会問題として考える必要性。
ここまで見てくると、はっきり分かることがあります。
高齢親の囲い込みは、単なるきょうだい喧嘩ではありません。
誰が正しいか。
誰が親孝行か。
誰が親の近くにいるか。
誰が財産を管理するか。
誰が相続で有利になるか。
もちろん、現実にはそうした問題も絡みます。
しかし、この問題の中心に置くべきなのは、きょうだいの勝ち負けではありません。
中心に置くべきなのは、親本人の尊厳です。
親本人の意思。
親本人の自由。
親本人の人間関係。
親本人の生活。
親本人の財産の透明性。
親本人が、一部の家族の都合によって孤立させられないこと。
高齢親の囲い込みを考える最終目的は、誰かを攻撃することではありません。
親の尊厳を取り戻すことです。
1 囲い込みで失われるのは、親の尊厳である
高齢親の囲い込みというと、まず思い浮かぶのは、親に会えない家族の苦しみかもしれません。
親に会えない。
親の声を聞けない。
親の状態が分からない。
施設や病院の情報が入らない。
親本人の意思を確認できない。
それなのに、自分たちが悪者にされる。
これは、残された家族にとって大きな苦しみです。
しかし、もっと深いところで失われているものがあります。
それは、親本人の尊厳です。
親が誰と会うか。
誰と話すか。
誰から手紙を受け取るか。
誰に自分の気持ちを伝えるか。
自分の財産をどう管理するか。
自分の最期をどう迎えるか。
本来、これらは親本人の人生に関わることです。
ところが、高齢や病気、認知症、施設入所によって、親が自分で動けなくなると、周囲の家族がその出入口を握るようになります。
そのとき、親本人の意思を尊重する形で支援されるなら、それは保護です。
しかし、一部の家族が、親の面会、連絡、情報、財産、意思確認の出入口を独占し、他の家族を排除していくなら、それは保護ではなく、支配に近づきます。
親の尊厳とは、単に安全に暮らすことだけではありません。
自分の人生の主人公であり続けることです。
たとえ高齢になっても、病気になっても、認知症になっても、施設に入っても、親本人の意思や人間関係が、一部の家族の都合で消されてよいわけではありません。
2 「親を守る」と「親を閉じ込める」は違う
親を守ることは大切です。
高齢の親には、守られる必要がある場面があります。
詐欺や悪質商法から守る。
体調に配慮する。
無理な面会を避ける。
感染症対策をする。
医療や介護の支援を整える。
財産管理を手伝う。
施設や病院との連絡を担う。
これらは、親の生活を守るために必要なことです。
しかし、親を守ることと、親を閉じ込めることは違います。
親を守るという言葉を使って、親に会える人を一人の家族が決める。
親に連絡できる人を制限する。
施設や病院との窓口を独占する。
親の意思を一人で代弁する。
財産管理を説明しない。
他の家族を悪者にする。
このような状態になったとき、「親を守る」という言葉は、本来の意味から離れていきます。
本当に親を守るなら、親の世界を狭めるのではなく、親の安心を保ちながら、人間関係を守る方法を考えるはずです。
短時間なら会えるのか。
職員同席なら会えるのか。
オンラインなら話せるのか。
手紙や写真なら届けられるのか。
体調のよい時間なら可能なのか。
第三者を入れれば実現できるのか。
こうした工夫をせず、ただ「親のために会わせない」「親のために知らせない」と言うだけなら、それは本当に親のためなのか、問い直す必要があります。
親を守ることは、親を一人の家族の管理下に置くことではありません。
親本人の意思と尊厳を守ることです。
3 親本人の意思を、誰がどのように確認しているのか
高齢親の囲い込みで、最も重要な問いの一つはこれです。
親本人の意思は、誰が、どのように確認しているのか。
「親が会いたくないと言っている」
「親が嫌がっている」
「親が全部こちらに任せると言っている」
「親が他の家族には知らせなくてよいと言っている」
このような説明がされることがあります。
もちろん、本当に親本人がそう言っている場合もあるでしょう。
しかし、大切なのは、その確認方法です。
いつ聞いたのか。
誰が聞いたのか。
どのような聞き方をしたのか。
親本人は十分に理解していたのか。
認知症や判断力低下の影響はなかったのか。
利害関係のある家族が同席していなかったか。
他の家族について一方的な説明を受けていなかったか。
第三者が確認したのか。
記録は残っているのか。
親の意思を尊重することは、とても大切です。
しかし、「親の意思」という言葉が、一人の家族の口からしか語られない場合、そこには慎重さが必要です。
親本人の意思を守るためには、透明性が必要です。
一人の家族が親の意思を独占しないこと。
親本人に直接確認する機会をできるだけ持つこと。
第三者の関与を検討すること。
記録を残すこと。
面会や連絡の制限があるなら、その理由を明確にすること。
親本人の意思を尊重するというなら、その意思がどのように確認されたのかも、できるだけ明らかにされるべきです。
4 親の人間関係を守ることも、尊厳を守ること
高齢になると、人の世界は少しずつ狭くなります。
仕事を引退する。
友人が減る。
外出が難しくなる。
病院や施設で過ごす時間が増える。
自分から電話をかけることが難しくなる。
手紙を書くことも難しくなる。
だからこそ、家族や親しい人とのつながりは、とても大切になります。
誰かが会いに来てくれる。
声をかけてくれる。
写真を見せてくれる。
手紙をくれる。
昔の話を聞いてくれる。
自分を一人の人間として扱ってくれる。
これは、単なる気分転換ではありません。
その人がその人であり続けるための大切なつながりです。
高齢親の囲い込みでは、この人間関係が狭められることがあります。
会える人が限られる。
連絡できる人が限られる。
施設や病院に来られる人が限られる。
親の近況を知れる人が限られる。
親本人が誰を思っているのか、外から分からなくなる。
これが続くと、親は孤立します。
たとえ身の回りの世話がされていても、人間関係が一部の家族によって管理されているなら、親の尊厳は傷つきます。
親の尊厳を守るとは、親の身体だけを守ることではありません。
親の人間関係を守ることでもあります。
5 財産の透明性も、親の尊厳に関わる
高齢親の囲い込みでは、財産管理の問題も避けて通れません。
通帳。
印鑑。
年金。
不動産。
保険。
施設費。
医療費。
契約。
遺言。
これらが一部の家族に集中し、他の家族には何も説明されない場合、疑問や不信が生まれます。
もちろん、親の財産は親本人のものです。
子どもたちが当然にすべてを知る権利があるわけではありません。
親本人のプライバシーも尊重されるべきです。
しかし、親の判断力が低下している場合や、一部の家族が事実上財産を管理している場合には、透明性が必要になります。
年金は親本人の生活のために使われているのか。
通帳や印鑑は適切に管理されているのか。
施設費や医療費はきちんと支払われているのか。
不動産や保険、遺言について、親本人は理解していたのか。
重要な手続の経緯は明らかか。
一部の家族の利益のために、親の財産が動いていないか。
財産の透明性は、相続人の利益だけの問題ではありません。
親本人の尊厳の問題です。
親の財産が、親本人の生活、医療、介護、安心のために使われているか。
そこを確認できる状態にしておくことが、親を守ることにつながります。
6 囲い込みの問題は、家族の勝ち負けではない
高齢親の囲い込みが裁判や調停に発展すると、どうしても「勝ち負け」の問題に見えます。
どちらの主張が認められるのか。
損害賠償が認められるのか。
面会が実現するのか。
財産管理が問題になるのか。
遺言の有効性が争われるのか。
もちろん、法的な手続においては、判断が示されることがあります。
しかし、この問題の本質を、家族の勝ち負けだけで見てはいけません。
本当に問われているのは、親本人の尊厳です。
親は孤立させられていなかったか。
親の意思は適切に確認されていたか。
親の人間関係は不当に狭められていなかったか。
親の財産は透明に管理されていたか。
親が一部の家族の都合の道具にされていなかったか。
ここが中心です。
きょうだいの一方が勝ち、もう一方が負けるという話だけにしてしまうと、親本人が見えなくなります。
高齢親の囲い込みは、親をめぐる家族内の力関係の問題です。
だからこそ、最後に立ち返るべきなのは、親本人です。
7 記録は、親の尊厳を取り戻すためにある
このシリーズでは、何度も記録の重要性を伝えてきました。
時系列表を作る。
メールやLINEを保存する。
手紙を残す。
面会申入れを記録する。
施設や病院とのやり取りを残す。
財産管理について質問した記録を残す。
相手の回答、または回答がなかったことを残す。
親本人の意思確認の経緯を記録する。
なぜ、ここまで記録が必要なのでしょうか。
それは、家族内で起きる囲い込みは、外から見えにくいからです。
「親が会いたくないと言っている」
「親のために会わせない」
「こちらで全部やっている」
「他の家族は関わらない方がいい」
こうした言葉だけでは、何が起きているのか分かりません。
だから記録が必要になります。
記録は、相手を攻撃するためだけのものではありません。
親本人の意思を確認するため。
親の人間関係が遮断されていないか確認するため。
情報が一人に集中していないか明らかにするため。
財産管理の透明性を確保するため。
第三者に状況を説明するため。
そして、親の尊厳が見えなくされないようにするため。
記録することは、冷たいことではありません。
むしろ、親本人の人生を、曖昧な言葉や一方的な説明の中に消さないための行為です。
8 第三者を入れることは、家族を壊すことではない
高齢親の囲い込みに直面したとき、調停、訴訟、成年後見制度、地域包括支援センター、弁護士、司法書士、社会福祉士など、第三者の関与が必要になることがあります。
これを「家族を壊すこと」と感じる人もいるかもしれません。
しかし、第三者を入れることは、必ずしも家族を壊すことではありません。
すでに家族内で情報が遮断されている。
話し合いが成立していない。
一部の家族に権限が集中している。
親本人の意思を確認できない。
説明を求めても回答がない。
財産管理や面会制限が不透明になっている。
このような場合、第三者を入れることは、問題を開くための手段です。
誰かを一方的に責めるためではありません。
親本人を中心に戻すためです。
情報を透明にするためです。
面会や連絡の方法を整理するためです。
財産管理の不安を確認するためです。
家族内の力の差を外部の目で見るためです。
家族内で解決できるなら、それは望ましいことです。
しかし、家族内で解決できない状態になっているなら、外部の手を借りることは必要な選択肢です。
親の尊厳を守るために、家族の外に問題を開く。
それは、責めるためではなく、守るための行動です。
9 親を一人の家族の所有物にしない
高齢親の囲い込みの根本には、親を一人の家族の管理下に置いてしまう危うさがあります。
親の言葉を一人が代弁する。
親に会える人を一人が決める。
親の情報を一人が握る。
親の財産管理を一人が説明なく行う。
親の人間関係を一人が調整する。
施設や病院との窓口を一人が独占する。
こうなると、親はまるで、一人の家族の所有物のように扱われてしまいます。
しかし、親は誰かの所有物ではありません。
親には、親自身の人生があります。
たとえ高齢になっても。
たとえ体が弱っても。
たとえ認知症になっても。
たとえ施設に入っても。
親本人の尊厳は失われません。
家族は、親を支える存在であって、親を支配する存在ではありません。
親を守るとは、親を囲い込むことではありません。
親本人を中心に、必要な支援、必要な情報共有、必要な人間関係、必要な財産管理の透明性を整えることです。
10 同じ問題で苦しむ人へ
もし今、あなたが高齢親の囲い込みに苦しんでいるなら、伝えたいことがあります。
親に会いたいと思うことは、おかしなことではありません。
親の状態を知りたいと思うことは、身勝手なことではありません。
親本人の意思を確認したいと思うことは、自然なことです。
情報の透明性を求めることは、攻撃ではありません。
面会や連絡の方法を話し合いたいと思うことは、家族を壊すことではありません。
ただし、感情だけでぶつかると、問題は見えにくくなります。
だから、記録してください。
いつ、何があったのか。
誰に、何を求めたのか。
どのような返事があったのか。
返事がなかったのか。
親本人の意思を、どのように確認しようとしたのか。
施設や病院とのやり取りはどうだったのか。
財産管理について、何を尋ねたのか。
記録は、あなたの怒りを社会に伝わる言葉に変えてくれます。
そして、必要であれば第三者に相談してください。
一人で抱え込まないでください。
高齢親の囲い込みは、家族の中だけで抱えるには重すぎる問題です。
11 社会に必要なのは、「家族だから」で止まらない視点
高齢親の囲い込みは、社会全体で考えるべき問題です。
施設や病院。
ケアマネジャー。
地域包括支援センター。
成年後見人。
弁護士。
司法書士。
家庭裁判所。
親族。
地域社会。
メディア。
多くの人が、この問題に関わる可能性があります。
そのとき、「家族の問題だから」とだけ言ってしまうと、囲い込みは見えなくなります。
家族の中に力の差がないか。
情報が一人に集中していないか。
親本人の意思確認は十分か。
他の家族の声は聞かれているか。
面会や連絡の制限は、本当に親本人の利益に基づいているか。
財産管理に不透明な点はないか。
この視点が必要です。
高齢親の囲い込みは、家族の内部で起きるからこそ、外から見えにくい。
だからこそ、社会の側に、見抜く力が必要です。
12 まとめ――取り戻すべきものは、親の尊厳である
高齢親の囲い込みの問題は、家族の勝ち負けではありません。
誰が正しいか。
誰が親孝行か。
誰が相続で有利か。
誰が主導権を握るか。
そこだけに目を奪われると、中心にいるはずの親本人が見えなくなります。
本当に取り戻すべきものは、親の尊厳です。
親本人の意思。
親本人の自由。
親本人の人間関係。
親本人の生活。
親本人の財産の透明性。
親本人が、一部の家族の都合によって孤立させられないこと。
親を守ることは大切です。
しかし、「親を守る」という言葉が、他の家族を排除し、情報を独占し、親本人の意思を見えなくするために使われるなら、それは保護ではなく支配に近づいていきます。
高齢親の囲い込みに対して必要なのは、怒鳴ることではありません。
記録すること。
透明にすること。
第三者を入れること。
親本人の意思を確認すること。
親の人間関係を守ること。
財産管理を不透明にしないこと。
そして、親を一人の家族の所有物にしないこと。
高齢親の囲い込みは、単なる家族喧嘩ではありません。
親の尊厳、家族関係、介護、認知症、相続、財産管理、法的手続が絡み合う社会問題です。
だからこそ、言葉にする必要があります。
記録する必要があります。
社会に開いていく必要があります。
親を本当に守るとは、親を囲い込むことではありません。
親本人の尊厳を、最後まで守ることです。
プロフィール
高齢親の囲い込み解放コンサルタント 白岩俊正
白岩会計事務所 代表/公認会計士・税理士/株式会社みらい 代表取締役
〒422-8005 静岡市駿河区池田616-2パレス葵102
お問い合わせはまずはメールで release.advisor@gmail.com
~ 他ブログのご紹介 ~
当ブログ主宰 しらいわ は他のブログも作成しています。併せてご覧ください。
ー 更新中 ー
1. 高齢親の囲い込み 解放アドバイザー ~ 介護が必要になった高齢親が自分以外のきょうだいに囲い込まれて会えなくなった方へ~
2. きょうだいモラハラ ~大人になっても兄弟姉妹からいじめ、嫌がらせを受けていませんか?
3. リフレーミングの魔法 ~ 生きることが24倍軽くなる考え方のこつ ~ 出来事を変えずに“見方”をそっと入れ替え、心の自由度を高めるブログ。
4. ごみ拾い日記 Toshi Shiraiwa【静岡】~週に1~2回、ひとり or グループで静岡市内のごみ拾いをしています。その様子、心境など
ー 休止中ー
1. 自己愛性ハラスメント対策室 ~ 感情的な人に振り回されている方向け~
2. 家族心理学・家族療法スクール オンライン ~ 家族関係に悩む方や支援職のための学びの場。家族との距離の取り方や関係性の見直しに役立つ知恵を、心理学の視点から発信
3. あなたのメンタルを守りたい (休止中)~心が少し軽くなるメンタルケアの情報を発信中~
4. インナーチャイルド解放コーチ しらいわとしまさ (休止中)幼少期の心の傷が未処理のため大人になっても生きづらさを感じる方へ
5. 感情の地図 〜EQナビゲーターが届ける“心の航海術”(休止中)~感情と向き合う「心の航海術」を発信中













