このブログについて

 高齢親の囲い込みとは、認知症や要介護状態にある親について、一部の家族が「親を守る」という名目で、面会、連絡、医療・介護情報、財産管理、施設との連絡窓口を独占し、他の家族を遠ざけていく状態をいいます。

 

 

 親を守ることは大切です。
 しかし、その言葉が、親本人の意思を見えにくくし、家族を排除し、情報や財産の出入口を一人が握るために使われるなら、それは保護ではなく支配に近づきます。

 

 このブログでは、高齢親の囲い込みを、個人批判ではなく家族内支配の構造として考え、親の尊厳と家族関係を守るために何が必要かを考えていきます。

 

第20回 施設・病院が一人の家族の説明だけで判断する危うさ――介護・医療現場に求められる慎重な視点

 

高齢親の囲い込みは、家族の中だけで完結する問題ではありません。

 

親が施設に入所している場合。

病院に入院している場合。

ケアマネジャーや介護サービスが関わっている場合。

成年後見人や専門職が関わっている場合。

 

そこには、必ず外部の人が関わります。

 

本来であれば、外部の専門職が関わることで、親本人の生活や意思、財産管理、家族関係について、一定の透明性が生まれるはずです。

 

 

ところが、現実にはそう簡単ではありません。

 

施設や病院が、窓口になっている一人の家族の説明だけを聞き、その説明を前提に対応してしまうことがあります。

 

「この家族が主に介護している」

「この家族が入所手続をした」

「この家族が費用を払っている」

「この家族がいつも連絡してくる」

「この家族が親本人の意向を説明している」

 

そのため、施設や病院は、その家族を中心に対応しやすくなります。

 

もちろん、現場には現場の事情があります。

施設や病院は多忙です。

個人情報保護にも配慮しなければなりません。

家族間の対立に巻き込まれることを避けたいという事情もあります。

親本人の安静や安全を守る必要もあります。

 

ですから、施設や病院を一方的に責めることはできません。

 

しかし、それでも考えなければならないことがあります。

 

一人の家族の説明だけで判断してしまうと、他の家族との関係や、親本人の本当の意思が見えなくなることがある、ということです。

 

 

1 窓口になっている家族が、必ずしも中立とは限らない

 

施設や病院にとって、家族の窓口が一人に決まっていることは、実務上は便利です。

 

連絡がしやすい。

説明がしやすい。

緊急時の判断を仰ぎやすい。

書類や費用のやり取りもしやすい。

 

そのため、自然と「この人が家族の代表なのだ」と見られることがあります。

 

しかし、高齢親の囲い込みでは、この「窓口」が問題になります。

 

窓口になっている家族が、本当に親本人の利益を中心に動いているとは限りません。

 

もちろん、本当に親のことを考えて、一生懸命対応している家族もいます。

介護の負担を背負い、施設や病院との連絡を担い、親の生活を支えている家族もいます。

 

その努力は尊重されるべきです。

 

問題は、窓口であることを利用して、他の家族を排除する場合です。

 

親に会わせない。

親の状態を教えない。

施設や病院の情報を共有しない。

他の家族からの問い合わせを拒む。

「親が会いたくないと言っている」とだけ説明する。

自分に都合のよい情報だけを施設や病院に伝える。

 

このようなことが起きると、窓口は単なる連絡係ではなくなります。

 

親と外部世界をつなぐ出入口を、一人で握る存在になります。

 

施設や病院は、そのことに慎重である必要があります。

 

 

2 「親が会いたくないと言っている」は、慎重に扱うべき言葉

 

高齢親の囲い込みで、特によく使われる言葉があります。

 

「親が会いたくないと言っています」

「親が嫌がっています」

「親が混乱するので会わせられません」

「親の体調に悪いので連絡しないでください」

 

これらの言葉は、一見すると親本人を守るための説明に聞こえます。

 

もちろん、本当に親本人が面会を望んでいない場合もあるでしょう。

体調が悪く、面会を控えた方がよい時期もあります。

認知症や精神状態によって、刺激を避ける必要がある場面もあります。

 

しかし、その判断が本当に親本人の意思や利益に基づいているのかは、慎重に確認されるべきです。

 

誰が親の意思を確認したのか。

どのような場面で確認したのか。

親本人は、誰について何を聞かれて答えたのか。

誘導的な聞き方はなかったか。

親の判断能力や認知機能の状態はどうだったのか。

他の家族と会う選択肢を、親本人にきちんと示したのか。

窓口になっている家族の意向が、親本人の意向として扱われていないか。

 

ここを確認しないまま、「親が嫌がっているそうです」とだけ受け止めてしまうと、親本人の意思が見えなくなります。

 

とくに認知症や判断力低下がある場合、親の言葉は周囲の影響を受けやすくなります。

 

強い口調で説明された後に聞かれたのか。

一部の家族について否定的な情報を聞かされた後に答えたのか。

その場に利害関係のある家族が同席していたのか。

親が不安から近くにいる人に合わせて答えた可能性はないか。

 

「親が会いたくないと言っている」という言葉は、重い言葉です。

 

だからこそ、一人の家族の説明だけで処理してはいけないのです。

 

 

3 施設や病院が知らないところで、家族関係が操作されていることがある

 

施設や病院は、家族の長い歴史を知りません。

 

親子関係。

兄弟姉妹関係。

介護が始まる前の関係。

相続をめぐる不安。

過去の対立。

誰がどのように親と関わってきたのか。

 

こうした背景は、外からは分かりにくいものです。

 

そのため、窓口になっている家族が、施設や病院に一方的な説明をすると、それが家族関係の全体像として受け取られてしまうことがあります。

 

「あの家族は親に悪影響を与える」

「あの人が来ると親が混乱する」

「あの人はお金のことばかり言っている」

「あの人とは関わらない方がよい」

「親も会いたくないと言っている」

 

このような説明が繰り返されると、施設や病院は、知らないうちに一方の家族の見方に引き寄せられてしまうことがあります。

 

もちろん、説明が事実である場合もあります。

 

しかし、事実かどうかを確認しないまま、一人の家族の説明だけで他の家族を警戒対象のように扱うことには危うさがあります。

 

高齢親の囲い込みでは、他の家族を悪者化することがよくあります。

 

「親を守るため」

「親の安静のため」

「親が嫌がっているから」

「トラブルを避けるため」

 

そのような言葉によって、他の家族との接点が断たれていくことがあります。

 

施設や病院がその構造に気づかなければ、結果的に囲い込みを強めてしまうことがあります。

 

 

4 個人情報保護が、情報遮断の口実になることもある

 

施設や病院が家族に情報を出すとき、個人情報保護の問題があります。

 

これは当然重要です。

 

親本人の医療情報、介護情報、生活状況、財産に関わる情報は、慎重に扱われるべきです。

 

しかし、高齢親の囲い込みの場面では、「個人情報保護」という言葉が、情報遮断の口実のように機能してしまうことがあります。

 

たとえば、ある家族が親の状態を知りたいと施設に問い合わせる。

すると、施設側は「窓口の方を通してください」と答える。

その窓口の家族に問い合わせると、何も教えてくれない。

結果として、親の状態はまったく分からない。

 

この場合、形式的には個人情報保護に配慮しているように見えます。

 

しかし、実質的には、一人の家族が情報の出入口を完全に握ることになります。

 

もちろん、施設や病院が誰にでも自由に情報を出してよいわけではありません。

親本人の同意や法的な関係、契約上の立場などを確認する必要があります。

 

ただ、それでも大切なのは、情報を完全に一人の家族に集中させないための工夫です。

 

親本人が可能であれば、誰にどの範囲の情報を共有してよいか確認する。

家族関係が複雑な場合は、記録を残す。

他の家族からの申し出を無視せず、内容を記録する。

必要に応じて、地域包括支援センター、成年後見人、弁護士、家庭裁判所などの関与を促す。

 

個人情報保護は、親本人を守るためのものです。

 

一部の家族が親を囲い込むための壁になってはいけません。

 

 

5 面会制限は、本当に親本人の利益のためなのか

 

施設や病院では、面会制限が必要になることがあります。

 

感染症対策。

体調不良。

治療上の必要。

認知症による混乱。

本人の強い拒否。

安全確保。

 

こうした理由で、面会を制限すること自体はあり得ます。

 

しかし、高齢親の囲い込みの場面では、面会制限が一部の家族の意向によって行われていないかを慎重に見る必要があります。

 

本当に医療・介護上の必要があるのか。

親本人が明確に拒否しているのか。

拒否の理由は何か。

面会の方法を工夫する余地はないのか。

短時間、職員同席、オンライン、手紙、写真、音声メッセージなど、別の方法はないのか。

窓口になっている家族だけが強く拒んでいるのではないか。

 

面会制限は、親本人の生活や人間関係に大きな影響を与えます。

 

親が会える人、会えない人を、実質的に決めることになるからです。

 

だからこそ、面会制限は慎重であるべきです。

 

単に「家族間トラブルがあるから会わせない」ではなく、親本人の利益を中心に、具体的な理由と代替手段を考える必要があります。

 

 

6 施設・病院に求められるのは、どちらかの味方をすることではない

 

施設や病院は、家族間の争いの裁判官ではありません。

 

どちらが正しいかを決める立場ではありません。

相続争いの判断をする立場でもありません。

家族の過去の関係をすべて調査する立場でもありません。

 

それはその通りです。

 

しかし、だからといって、一人の家族の説明だけで対応を固定してよいわけではありません。

 

施設や病院に求められるのは、どちらかの味方をすることではありません。

 

親本人を中心に置くことです。

 

親本人の意思はどうか。

親本人の安全はどうか。

親本人の生活の安定はどうか。

親本人の人間関係はどうか。

親本人が孤立させられていないか。

親本人の意思を、誰かが過度に代弁していないか。

 

この視点を持つことが大切です。

 

家族間に対立があるときこそ、施設や病院は「家族の代表者」と「親本人」を同一視しないことが重要です。

 

窓口家族の意向は、親本人の意向そのものではありません。

 

ここを分けて考えるだけでも、対応は大きく変わります。

 

 

7 記録に残すことが、現場を守る

 

施設や病院にとっても、家族間の対立は大きな負担です。

 

どちらの家族にも配慮しなければならない。

個人情報保護にも気をつけなければならない。

親本人の安全も守らなければならない。

職員が責められることもある。

感情的なやり取りに巻き込まれることもある。

 

だからこそ、記録が大切です。

 

誰から、いつ、どのような申し出があったのか。

面会希望はいつ出されたのか。

誰が拒否したのか。

拒否の理由は何だったのか。

親本人の意思は、いつ、誰が、どのように確認したのか。

窓口家族からどのような説明があったのか。

他の家族からどのような反論や要望があったのか。

施設や病院として、どのような対応をしたのか。

 

これを記録しておくことは、家族のためだけではありません。

 

施設や病院自身を守ることにもなります。

 

後から問題になったとき、「誰か一人の言うことをそのまま信じた」のではなく、「親本人の利益を中心に、確認し、記録し、慎重に対応した」と説明できるからです。

 

高齢親の囲い込みでは、記録が非常に重要です。

 

それは当事者にとっても、専門職にとっても同じです。

 

 

8 他の家族からの声を、迷惑扱いしないでほしい

 

親に会えなくなった家族、情報を遮断された家族は、施設や病院に連絡することがあります。

 

親の様子を知りたい。

面会できるか確認したい。

手紙を渡してほしい。

親本人の意思を確認してほしい。

窓口になっている家族の説明だけで判断しないでほしい。

 

そのような連絡を受けたとき、現場は困るかもしれません。

 

家族間トラブルに巻き込まれたくない。

窓口家族との関係が悪くなるのではないか。

どこまで情報を出してよいか分からない。

業務が増える。

 

その大変さは理解できます。

 

しかし、他の家族からの声を、単なる迷惑やクレームとして扱わないでほしいのです。

 

その声の背後には、親に会えない苦しみがあります。

親の状態が分からない不安があります。

親本人の意思が見えない違和感があります。

一人の家族にすべてを握られているという恐怖があります。

 

もちろん、感情的な言い方や過剰な要求には、冷静な対応が必要です。

 

しかし、その声の中に、囲い込みのサインが含まれている可能性があります。

 

「会わせてもらえない」

「情報を教えてもらえない」

「親本人と直接話せない」

「施設名を教えてもらえなかった」

「窓口家族がすべてを決めている」

 

こうした訴えがある場合には、少なくとも記録に残し、慎重に扱うべきです。

 

 

9 親本人の人間関係も、生活の一部である

 

施設や病院では、どうしても身体的な安全や医療的管理が中心になります。

 

転倒しないこと。

薬を飲むこと。

食事を取ること。

治療を受けること。

感染症を防ぐこと。

穏やかに過ごすこと。

 

もちろん、これらは非常に重要です。

 

しかし、人間の生活は、身体的な安全だけで成り立っているわけではありません。

 

誰に会えるか。

誰と話せるか。

誰に近況を伝えられるか。

誰から手紙や写真を受け取れるか。

自分の人生に関わってきた人たちとのつながりを保てるか。

 

これも、親本人の生活の一部です。

 

高齢になったからといって、認知症になったからといって、施設に入ったからといって、その人の人間関係が一部の家族によって管理されてよいわけではありません。

 

親本人の安全を守ることと、親本人を孤立させないこと。

 

この二つは、どちらも大切です。

 

施設や病院には、親本人の身体だけでなく、人間関係にも目を向けてほしいのです。

 

 

10 まとめ

 

施設や病院が、一人の家族の説明だけで判断することには危うさがあります。

 

窓口になっている家族が、必ずしも中立とは限りません。

「親が会いたくないと言っている」という説明が、親本人の自由な意思とは限りません。

家族関係が、一方的な説明によって操作されていることもあります。

個人情報保護が、結果的に情報遮断の壁になることもあります。

面会制限が、本当に親本人の利益のためなのか、慎重に確認する必要があります。

 

施設や病院に求められるのは、どちらかの家族の味方をすることではありません。

 

親本人を中心に置くことです。

 

親本人の意思。

親本人の安全。

親本人の生活。

親本人の人間関係。

親本人の尊厳。

 

これらを守るために、一人の家族の説明だけで判断しない慎重さが必要です。

 

高齢親の囲い込みは、家族の中だけで起きているように見えて、実際には介護・医療の現場とも深く関わっています。

 

だからこそ、施設や病院、ケアマネジャー、地域包括支援センター、成年後見人などの専門職には、次の視点を持ってほしいのです。

 

家族の中に力の差はないか。

情報が一人に集中していないか。

親本人の意思確認は十分か。

他の家族の声は聞かれているか。

面会や連絡の制限は、本当に親本人の利益に基づいているか。

記録は残されているか。

 

高齢親を守ることは大切です。

 

しかし、親を守るという言葉のもとで、親の人間関係が狭められ、他の家族が排除され、情報が一人に集中していくなら、それは保護ではなく支配に近づいていきます。

 

施設や病院がその構造に気づくこと。

 

それが、高齢親の囲い込みを防ぐための大切な一歩になるのです。

 

 


 

プロフィール

 

高齢親の囲い込み解放コンサルタント 白岩俊正

白岩会計事務所 代表/公認会計士・税理士/株式会社みらい 代表取締役

〒422-8005 静岡市駿河区池田616-2パレス葵102

お問い合わせはまずはメールで release.advisor@gmail.com

 


 

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 高齢親の囲い込みとは、認知症や要介護状態にある親について、一部の家族が「親を守る」という名目で、面会、連絡、医療・介護情報、財産管理、施設との連絡窓口を独占し、他の家族を遠ざけていく状態をいいます。

 

 

 親を守ることは大切です。
 しかし、その言葉が、親本人の意思を見えにくくし、家族を排除し、情報や財産の出入口を一人が握るために使われるなら、それは保護ではなく支配に近づきます。

 

 このブログでは、高齢親の囲い込みを、個人批判ではなく家族内支配の構造として考え、親の尊厳と家族関係を守るために何が必要かを考えていきます。

 

第19回 「家族の問題だから」で片づけてはいけない ―― 家族内に力の差があるとき、中立は中立ではなくなる

 

高齢親の囲い込みが起きているとき、周囲からよく言われる言葉があります。

 

「家族で話し合ってください」

「ご家族の問題ですから」

「こちらではどちらが正しいか分かりません」

「まずは身内で解決してください」

「きょうだいでよく相談してください」

 

一見すると、これは自然な言葉に聞こえます。

 

家族のことは家族で話し合う。

身内の問題は、できるだけ身内で解決する。

第三者がむやみに口を出さない。

 

たしかに、家族同士で冷静に話し合える状態であれば、それが一番よいでしょう。

 

しかし、高齢親の囲い込みが起きている場面では、そもそも「家族で話し合う」ことができない状態になっていることがあります。

 

 

一部の家族が、親との面会、連絡、施設や病院との窓口、財産情報、介護情報を握っている。

他の家族は、親に会えない。

親の状態を知らされない。

質問しても返事がない。

「親が嫌がっている」と言われるだけで、親本人に直接確認できない。

 

このような状態で、「家族で話し合ってください」と言うことは、本当に中立なのでしょうか。

 

むしろ、情報を握っている側、親との接点を独占している側、説明しない側に有利に働いてしまうことがあります。

 

「家族の問題だから」で片づけてはいけない。

 

それが、今回のテーマです。

 

1 家族内の問題は、外から見えにくい

 

高齢親の囲い込みは、外から非常に見えにくい問題です。

 

暴力のように分かりやすい傷が残るとは限りません。

怒鳴り声が聞こえるとは限りません。

明確な契約書や命令書があるとは限りません。

 

多くの場合、もっと静かに進みます。

 

親への電話がつながらなくなる。

面会を求めても理由をつけて断られる。

施設名や担当者を教えてもらえない。

親の体調や介護状況が共有されない。

通帳や財産管理の状況が分からなくなる。

「親が会いたくないと言っている」と言われる。

 

 

そして、外部の人から見ると、こう見えてしまいます。

 

「家族同士の意見の違い」

「きょうだい間の感情的な対立」

「介護方針の違い」

「相続をめぐる争い」

 

もちろん、そういう側面がまったくないとは言い切れません。

 

しかし、そこに情報遮断や面会遮断がある場合、単なる意見の違いとして扱ってよいのかは慎重に考える必要があります。

 

なぜなら、親に近い側が情報を独占し、親から遠ざけられた側が何も確認できない状態では、対等な話し合いが成り立たないからです。

 

2 「家族で話し合ってください」が通用しない場面

 

家族で話し合うためには、前提があります。

 

お互いに連絡が取れること。

最低限の情報が共有されていること。

親本人の意思を確認できること。

一方が他方を完全に遮断していないこと。

質問に対して、ある程度の説明がなされること。

 

この前提があるからこそ、話し合いは成立します。

 

しかし、高齢親の囲い込みでは、この前提が崩れていることがあります。

 

たとえば、他の家族が親に会いたいと申し入れても、窓口になっている家族が断る。

親本人に直接確認したいと言っても、「親が嫌がっている」とだけ返される。

施設や病院に連絡しようとしても、「こちらを通してください」と言われる。

財産管理について質問しても、「関係ない」と言われる。

介護状況を聞いても、具体的な説明がない。

 

 

このような状態で、第三者が「家族で話し合ってください」と言ってしまうと、実際には何が起きるでしょうか。

 

情報を握っている側は、何もしなくて済みます。

説明しない側は、説明しないままで済みます。

面会を止めている側は、面会を止め続けることができます。

親本人の意思確認は、いつまでも曖昧なままになります。

 

つまり、「家族で話し合ってください」という言葉が、結果的に囲い込みを固定してしまうことがあるのです。

 

3 家族内にも「力の差」がある

 

家族という言葉には、どこか対等な響きがあります。

 

親子。

兄弟姉妹。

親族。

身内。

 

しかし、実際の家族関係は、必ずしも対等ではありません。

 

親の近くに住んでいる人。

親の介護を担っている人。

通帳や印鑑を持っている人。

施設や病院との連絡窓口になっている人。

親の生活費を管理している人。

親の発言を周囲に伝えている人。

 

こうした人は、家族内で大きな力を持ちます。

 

一方、親から遠ざけられている家族は、情報を持ちません。

 

親がどこにいるのか分からない。

体調が分からない。

判断能力の状態が分からない。

誰と会っているのか分からない。

どのような契約や手続が進んでいるのか分からない。

親本人が本当に何を望んでいるのか分からない。

 

この差は、とても大きいものです。

 

高齢親の囲い込みでは、この力の差が問題の中心にあります。

 

それなのに、周囲が「家族同士で話し合ってください」とだけ言うと、力の差が見えなくなります。

 

情報を持つ側と、情報を遮断されている側を、同じ立場として扱ってしまうのです。

 

しかし、それは本当の意味での中立ではありません。

 

力の差がある場面で、何も介入しないことは、力を持つ側をそのまま有利にすることがあります。

 

 

4 「どちらが正しいか分からない」という言葉の危うさ

 

専門職や周囲の人が、家族間の対立に巻き込まれたくないと感じるのは自然なことです。

 

施設職員、病院、ケアマネジャー、地域包括支援センター、親族、近所の人。

誰であっても、家族間の争いに深く関わることには負担があります。

 

そのため、次のように言いたくなることがあります。

 

「どちらが正しいか分かりません」

「こちらでは判断できません」

「家族間のトラブルには関与できません」

 

もちろん、第三者が簡単に善悪を決めつけるべきではありません。

 

しかし、「どちらが正しいか分からない」ことと、「何も確認しなくてよい」ことは違います。

 

本当に親本人の意思なのか。

面会制限の理由は具体的なのか。

誰が親の意思を確認したのか。

他の家族の話を聞く機会はあったのか。

情報が一人に集中していないか。

財産管理や施設対応が不透明になっていないか。

 

こうした点を確認することは、誰か一方の味方をすることとは違います。

 

親本人の利益を守るために必要な確認です。

 

高齢親の囲い込みでは、「どちらが正しいか分からない」という中立的な態度が、結果として親本人の意思を見えなくしてしまうことがあります。

 

大切なのは、どちらかの家族に肩入れすることではありません。

 

親本人を中心に置くことです。

 

 

5 放置すると、囲い込みは強くなる

 

高齢親の囲い込みは、時間が経つほど強くなることがあります。

 

最初は、少し連絡が取りにくくなる程度かもしれません。

次に、面会に理由が必要になります。

そのうち、施設や病院への連絡窓口が一人に固定されます。

他の家族が問い合わせると、迷惑そうに扱われます。

「親が嫌がっている」という説明が繰り返されます。

財産や遺言の話が、知らないところで進むこともあります。

 

囲い込みは、突然完成するとは限りません。

 

少しずつ、親への道が狭くなっていきます。

 

そして、周囲が何も確認しないまま時間が過ぎると、囲い込みをしている側にとっては、その状態が既成事実になります。

 

「ずっと自分が窓口だった」

「他の家族は関わってこなかった」

「親もそれを望んでいた」

「いまさら何を言っているのか」

 

このような説明がされることがあります。

 

だから、放置は危険です。

 

高齢親の囲い込みでは、何もしないことが中立とは限りません。

 

何もしないことによって、情報を握る側の状態が固定され、親本人の意思確認がますます難しくなることがあります。

 

 

6 専門職に必要なのは「家族を見る目」

 

介護、医療、福祉、法律の専門職には、ぜひ持ってほしい視点があります。

 

それは、家族を一枚岩として見ないことです。

 

「ご家族」とひとくくりにすると、その中の力関係が見えなくなります。

 

家族の中には、親の近くにいる人もいれば、遠ざけられている人もいます。

情報を持つ人もいれば、情報をもらえない人もいます。

親の意思を代弁する人もいれば、その言葉を確認できない人もいます。

財産管理をしている人もいれば、何も知らされていない人もいます。

 

専門職が見るべきなのは、単なる「家族間トラブル」ではありません。

 

誰が情報を持っているのか。

誰が窓口になっているのか。

誰が親本人に会えているのか。

誰が会えなくされているのか。

親の意思はどのように確認されているのか。

他の家族の声は聞かれているのか。

 

この視点があるだけで、対応は変わります。

 

一人の家族の説明だけで、すべてを判断しない。

面会制限の理由を具体的に確認する。

親本人の意思確認の方法を慎重に考える。

他の家族からの申し出も記録に残す。

必要に応じて、地域包括支援センター、成年後見、家庭裁判所、弁護士などにつなぐ。

 

これらは、家族の争いに巻き込まれることとは違います。

 

親本人の尊厳を守るための慎重な対応です。

 

 

7 当事者も「家族の問題だから」と自分を責めなくてよい

 

囲い込みに苦しむ人自身も、「家族の問題だから」と自分を責めてしまうことがあります。

 

裁判所に相談するなんて大げさではないか。

弁護士に相談するなんて、家族を壊すことではないか。

施設に記録を求めるなんて、迷惑ではないか。

親に会いたいと求め続ける自分が、しつこいのではないか。

 

そう思ってしまう人もいます。

 

しかし、親に会いたいと思うことは、おかしなことではありません。

 

親の状態を知りたいと思うこと。

親本人の意思を確認したいと思うこと。

介護や医療の情報を共有してほしいと思うこと。

財産管理が不透明なら説明を求めたいと思うこと。

 

これらは、異常な要求ではありません。

 

もちろん、感情的に相手を攻撃することは避けるべきです。

親本人の体調や生活を無視して、無理な要求をすることも望ましくありません。

 

しかし、冷静に、記録に基づいて、親本人の利益のために説明や面会を求めることは、正当な問題提起です。

 

「家族の問題だから」と一人で抱え込まなくてよいのです。

 

家族の中で解決できないからこそ、第三者を入れる意味があります。

 

 

8 必要なのは、対立の拡大ではなく、透明化

 

高齢親の囲い込みに対して外部の手続を使うというと、すぐに「対立を深める」と思われがちです。

 

しかし、本当に必要なのは、対立を深めることではありません。

 

透明化です。

 

親本人の意思を透明にする。

面会制限の理由を透明にする。

介護や医療の情報共有を透明にする。

財産管理を透明にする。

施設や病院との連絡体制を透明にする。

家族間で何が問題になっているのかを透明にする。

 

透明になれば、誤解が解けることもあります。

 

本当に親本人が望んでいることが分かるかもしれません。

面会方法を調整できるかもしれません。

情報共有のルールを作れるかもしれません。

財産管理の不安が減るかもしれません。

一人の家族に負担や権限が集中していた状態を見直せるかもしれません。

 

逆に、透明化を拒み続ける場合には、そのこと自体が問題を考える手がかりになります。

 

なぜ説明できないのか。

なぜ親本人に確認させないのか。

なぜ情報を共有しないのか。

なぜ第三者の関与を嫌がるのか。

 

囲い込みの問題では、透明化を求めることが非常に重要です。

 

 

9 「家族の問題」ではなく「親の尊厳の問題」

 

高齢親の囲い込みを考えるとき、忘れてはいけないことがあります。

 

それは、この問題の中心にいるのは、親本人だということです。

 

きょうだいの勝ち負けではありません。

相続の取り分だけの問題ではありません。

誰が親孝行かを競う問題でもありません。

 

親本人が、自分の意思を尊重されているか。

会いたい人に会える可能性が残されているか。

必要な医療や介護を受けているか。

財産が適切に管理されているか。

一部の家族の都合で孤立させられていないか。

親の人間関係が、不当に狭められていないか。

 

ここが中心です。

 

「家族の問題だから」と言ってしまうと、親本人の姿が消えてしまうことがあります。

 

しかし、本当は逆です。

 

家族の問題としてではなく、親本人の尊厳の問題として見る必要があります。

 

親を守るとは、親を誰か一人の管理下に置くことではありません。

 

親の意思、生活、人間関係、財産、尊厳を、できるだけ透明で公正な形で守ることです。

 

 

10 まとめ

 

高齢親の囲い込みを、「家族の問題だから」で片づけてはいけません。

 

たしかに、家族のことは家族で話し合えるのが理想です。

 

しかし、家族内に力の差がある場合。

一部の家族が情報を握っている場合。

親との面会や連絡が遮断されている場合。

施設や病院との窓口が独占されている場合。

親本人の意思確認が不透明な場合。

財産管理の状況が分からない場合。

 

その状態で「家族で話し合ってください」と言うことは、問題の解決にならないことがあります。

 

むしろ、囲い込みをしている側に時間と既成事実を与えてしまうことがあります。

 

必要なのは、誰か一方に肩入れすることではありません。

 

親本人を中心に置くことです。

情報を透明にすることです。

面会や連絡の遮断理由を確認することです。

家族内の力の差を見ることです。

必要に応じて、第三者を入れることです。

 

高齢親の囲い込みは、単なるきょうだい喧嘩ではありません。

 

親の尊厳、介護、認知症、相続、財産管理、施設対応、法的手続が絡み合う問題です。

 

だからこそ、周囲も専門職も、そして当事者自身も、「家族の問題だから」という言葉で思考停止してはいけません。

 

家族の中で起きているからこそ、見えにくい。

見えにくいからこそ、記録が必要になる。

記録が必要だからこそ、第三者の目が必要になる。

 

高齢親を本当に守るためには、家族の中に閉じ込められた問題を、静かに、冷静に、社会に開いていく必要があります。

 

 

 


 

プロフィール

 

高齢親の囲い込み解放コンサルタント 白岩俊正

白岩会計事務所 代表/公認会計士・税理士/株式会社みらい 代表取締役

〒422-8005 静岡市駿河区池田616-2パレス葵102

お問い合わせはまずはメールで release.advisor@gmail.com

 


 

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このブログについて

 高齢親の囲い込みとは、認知症や要介護状態にある親について、一部の家族が「親を守る」という名目で、面会、連絡、医療・介護情報、財産管理、施設との連絡窓口を独占し、他の家族を遠ざけていく状態をいいます。

 

 

 親を守ることは大切です。
 しかし、その言葉が、親本人の意思を見えにくくし、家族を排除し、情報や財産の出入口を一人が握るために使われるなら、それは保護ではなく支配に近づきます。

 

 このブログでは、高齢親の囲い込みを、個人批判ではなく家族内支配の構造として考え、親の尊厳と家族関係を守るために何が必要かを考えていきます。

 

第18回 高齢親の囲い込みを社会問題として考える ― それは、単なるきょうだい喧嘩ではない

 

高齢親の囲い込みという問題は、外から見ると、単なる家族のもめごとのように見えることがあります。

 

「きょうだい喧嘩でしょう」

「親の介護方針の違いでしょう」

「相続をめぐる争いでしょう」

「家族の中で話し合えばいいのではないですか」

 

そう言われることがあります。

 

しかし、本当にそうでしょうか。

 

高齢の親に会えない。

親の状態を教えてもらえない。

施設や病院の連絡先を共有してもらえない。

通帳や財産管理の状況が分からない。

「親が会いたくないと言っている」と言われるが、親本人に直接確認できない。

親の意思、生活、財産、人間関係が、一部の家族の説明だけで動いていく。

 

これは、単なるきょうだい喧嘩なのでしょうか。

 

私は、そうではないと思います。

 

高齢親の囲い込みは、家族の中で起きる問題でありながら、そこには介護、認知症、相続、財産管理、施設対応、成年後見、法的手続など、さまざまな社会的問題が重なっています。

 

 

だからこそ、これは個別家庭の内輪もめとして片づけてはいけない問題です。

 

高齢親の囲い込みは、社会全体で考えるべき問題なのです。

 

1 「家族の問題」と言われることで、問題が見えなくなる

 

高齢親の囲い込みが難しいのは、家庭内で起きることです。

 

外部の人からは、何が起きているのか分かりにくい。

親本人が本当に何を望んでいるのか分かりにくい。

誰が親の意思を正確に伝えているのか分かりにくい。

誰が親の情報を握っているのかも、外からは見えにくい。

 

そのため、周囲はついこう言いがちです。

 

「家族で話し合ってください」

「身内の問題ですから」

「どちらが正しいかは分かりません」

「親御さんのことを一番分かっている人が決めればよいのでは」

 

もちろん、家族で話し合えるなら、それが一番よいでしょう。

 

しかし、高齢親の囲い込みが起きている場面では、そもそも話し合いが成立していないことがあります。

 

 

一方が情報を持っている。

一方が親との接点を握っている。

一方が施設や病院との窓口になっている。

一方が親の言葉を代弁している。

他方は、親に会えず、情報も得られず、質問しても答えてもらえない。

 

この状態で「家族で話し合ってください」と言われても、それは現実的ではありません。

 

情報を持っている側と、情報を遮断されている側では、力の差が大きすぎるからです。

 

「家族の問題」という言葉は、ときに問題を見えなくします。

 

本当は、支配や排除、情報独占が起きているかもしれない。

本当は、親本人の意思が見えなくされているかもしれない。

本当は、財産管理や介護方針に不透明な点があるかもしれない。

 

それなのに、「家族のことだから」として外部の目が入らない。

 

ここに、高齢親の囲い込みの大きな問題があります。

 

2 介護の問題として見る

 

高齢親の囲い込みは、介護の問題と深く関係しています。

 

親が元気なうちは、家族関係に問題があっても、親本人が自分で判断し、自分で連絡を取り、自分で会いたい人に会うことができます。

 

しかし、病気や加齢によって体力が落ちる。

認知症によって判断力が低下する。

施設に入所する。

病院に入院する。

電話や手紙のやり取りが難しくなる。

 

 

そうなると、親本人の生活は、周囲の家族や介護関係者に大きく依存するようになります。

 

このとき、誰が連絡窓口になるのか。

誰が施設に説明するのか。

誰が面会の可否を調整するのか。

誰が医療や介護の情報を受け取るのか。

 

これらは、とても重要です。

 

介護の現場では、実際に親の近くにいる家族、施設とのやり取りをしている家族が、自然と窓口になることがあります。

 

それ自体が悪いわけではありません。

 

問題は、その窓口が閉じた窓口になってしまうことです。

 

他の家族に情報を共有しない。

面会を制限する。

施設や病院に一方的な説明をする。

親本人の意思確認を自分だけで行ったことにする。

「親のため」と言いながら、親の人間関係を狭めていく。

 

こうなると、介護は支援ではなく、支配の道具に近づいてしまいます。

 

介護は、本来、親本人の生活と尊厳を支えるためのものです。

 

しかし、家族内の力関係が歪んでいると、介護の名目で、面会や情報の出入口が一人に握られてしまうことがあります。

 

だから、高齢親の囲い込みは、介護問題として考える必要があります。

 

3 認知症の問題として見る

 

高齢親の囲い込みでは、認知症や判断力低下が大きな要素になることがあります。

 

認知症があると、親本人の意思確認は難しくなります。

 

昨日言ったことと今日言ったことが違う。

相手によって返事が変わる。

強く言われると、その場で同意してしまう。

不安から、近くにいる人に依存しやすくなる。

自分の財産や契約内容を十分に理解できないことがある。

 

このような状態では、親の言葉をどう受け止めるかが重要になります。

 

 

たとえば、ある家族がこう言ったとします。

 

「親が会いたくないと言っている」

「親があなたのことを嫌がっている」

「親が財産は全部こちらに任せると言っている」

「親が遺言を作りたいと言っている」

 

これらが本当に親本人の自由な意思なのか。

誰かに誘導されていないか。

親が十分に理解しているのか。

他の家族の存在や意向を知ったうえで判断しているのか。

その場に、利害関係のある家族だけがいなかったか。

 

慎重に確認する必要があります。

 

認知症の親の言葉を尊重することは大切です。

 

しかし、「親がそう言った」という言葉だけで、すべてを終わらせてしまうのは危険です。

 

なぜなら、その言葉を誰が聞いたのか、どのような場面で聞いたのか、どのような説明のもとで言ったのかによって、意味が変わるからです。

 

認知症や判断力低下がある場合、親本人の意思を守るためには、むしろ透明性が必要になります。

 

一人の家族だけが親の意思を代弁するのではなく、第三者の関与、記録、複数人による確認、専門職の視点が必要になることがあります。

 

だから、高齢親の囲い込みは、認知症問題としても考えなければなりません。

 

4 相続・財産管理の問題として見る

 

高齢親の囲い込みは、相続や財産管理の問題とも結びつきます。

 

親の通帳を誰が持っているのか。

年金はどのように使われているのか。

施設費や医療費はどのように支払われているのか。

親の不動産が売却されていないか。

保険や預金の手続はどうなっているのか。

遺言が作られていないか。

その遺言は、どのような経緯で作られたのか。

 

こうした情報が一部の家族に集中すると、他の家族は状況を確認できません。

 

もちろん、親の財産は親本人のものです。

 

子どもたちが当然に管理できるものではありません。

相続人予定者だからといって、親の財産を自由に知る権利が常にあるわけでもありません。

 

 

しかし、親の判断能力が低下している場合や、一部の家族が親の財産管理を事実上担っている場合には、不透明さが問題になることがあります。

 

とくに、面会遮断、情報遮断、財産管理の不透明化が同時に起きている場合には、慎重に見なければなりません。

 

親に会えない。

親本人に確認できない。

財産状況も分からない。

遺言や契約の経緯も分からない。

 

このような状態では、親本人の意思や財産が、本当に適切に守られているのか確認できません。

 

高齢親の囲い込みは、単に「会わせる、会わせない」の問題ではありません。

 

財産管理、相続、遺言、契約の問題と結びつくことで、より深刻な問題になります。

 

だから、社会問題として考える必要があるのです。

 

5 施設・病院対応の問題として見る

 

高齢親の囲い込みでは、施設や病院の対応も重要になります。

 

施設や病院は、日々の介護や医療に追われています。

その中で、家族間の争いに深く関わることは簡単ではありません。

 

そのため、実際に連絡を取っている家族、入所や入院の手続をした家族、費用を支払っている家族の説明を中心に対応せざるを得ない場面もあるでしょう。

 

しかし、そこに危うさがあります。

 

もし窓口になっている家族が、他の家族を意図的に遠ざけていたらどうなるでしょうか。

 

 

施設や病院に、他の家族について一方的な説明をしていたら。

「会わせると親が混乱する」と説明していたら。

「親が嫌がっている」とだけ伝えていたら。

他の家族からの問い合わせを拒むよう求めていたら。

親本人の意思確認が十分でないまま、面会制限が続いていたら。

 

施設や病院が一人の家族の説明だけで判断してしまうと、結果的に囲い込みに加担してしまう可能性があります。

 

もちろん、施設や病院を責めるだけでは解決しません。

 

現場には現場の制約があります。

個人情報保護の問題もあります。

親本人の安全や安静を守る必要もあります。

家族間トラブルに巻き込まれたくないという事情もあるでしょう。

 

それでも、介護・医療の現場には、家族の一人の説明だけで親の人間関係を決めてしまうことの危うさを知ってほしいのです。

 

親本人の意思は、誰が、どのように確認したのか。

面会制限は、本当に親本人の利益のためなのか。

他の家族の言い分を聞く機会はあったのか。

窓口になっている家族に、情報や権限が集中しすぎていないか。

 

こうした視点が必要です。

 

高齢親の囲い込みは、施設・病院対応の問題でもあります。

 

6 成年後見制度の問題として見る

 

高齢親の囲い込みが深刻になると、成年後見制度が関係することがあります。

 

成年後見制度は、判断能力が不十分な人の権利や財産を守るための制度です。

 

親の判断能力が低下し、財産管理や契約、施設対応などに不安がある場合、成年後見人などの第三者が関与することで、一定の透明性が生まれることがあります。

 

しかし、成年後見制度も万能ではありません。

 

 

後見人が選任されても、家族間の感情的対立がなくなるわけではありません。

面会問題が自動的に解決するわけでもありません。

親本人の生活や意思が、すべて理想的に守られるとは限りません。

 

それでも、少なくとも、一部の家族が親の財産や契約を完全に握り続ける状態を見直すきっかけにはなり得ます。

 

高齢親の囲い込みでは、家族の一人が「自分が親を守っている」と主張しながら、財産情報、施設対応、医療情報、親族関係の出入口を握ることがあります。

 

このようなとき、成年後見制度は、親本人の利益を中心に置き直すための一つの制度的手段になります。

 

ただし、成年後見制度を利用するかどうかは、慎重に考える必要があります。

 

親本人の状態。

財産管理の必要性。

家族関係の状況。

後見人に何を期待するのか。

費用や手続の負担。

本人の生活への影響。

 

これらを総合的に考える必要があります。

 

大切なのは、制度を使う目的を見失わないことです。

 

目的は、相手を攻撃することではありません。

親本人の権利、財産、生活、意思を守ることです。

 

7 「親を守る」という言葉を社会で問い直す

 

高齢親の囲い込みで、もっとも難しいのは、「親を守る」という言葉です。

 

親を守ること自体は、とても大切です。

 

高齢の親が病気になったり、認知症になったり、体力が落ちたりすれば、周囲の家族が支える必要があります。

 

危険な人から守る。

詐欺や悪質商法から守る。

体調に配慮する。

無理な面会を避ける。

穏やかな生活環境を整える。

 

これらは必要なことです。

 

しかし、「親を守る」という言葉が、他の家族を排除するために使われることがあります。

 

 

親を守ると言いながら、親の人間関係を狭める。

親を守ると言いながら、親の意思確認を一人で独占する。

親を守ると言いながら、財産情報を開示しない。

親を守ると言いながら、施設や病院との連絡窓口を握る。

親を守ると言いながら、他の家族を悪者にする。

 

このとき、「親を守る」という言葉は、保護ではなく支配に近づいていきます。

 

社会は、この違いを見分けなければなりません。

 

本当に親を守っているのか。

それとも、親を通じて家族を支配しているのか。

親本人の意思は確認されているのか。

他の家族との関係を断つことは、本当に親の利益なのか。

情報や財産が一人に集中していないか。

 

この問いを、家庭の中だけに閉じ込めてはいけません。

 

8 当事者だけに背負わせてはいけない

 

高齢親の囲い込みに苦しむ人は、孤立しやすいです。

 

親に会えない。

情報が得られない。

相手に説明を求めても答えない。

周囲に話しても「家族の問題」と言われる。

専門職に相談しても、すぐには動いてもらえない。

自分が騒ぎすぎなのかと悩む。

 

この孤立は、とても深刻です。

 

囲い込みの問題は、当事者だけに背負わせてはいけません。

 

介護関係者。

医療関係者。

法律関係者。

成年後見関係者。

行政。

地域包括支援センター。

家庭裁判所。

メディア。

そして、これから親の介護や相続に向き合う一般の人たち。

 

社会全体が、この問題を知る必要があります。

 

高齢親の囲い込みという言葉が広がれば、今まで「自分の家だけの異常な問題」だと思っていた人が、少し救われるかもしれません。

 

 

これは構造の問題なのだ。

同じように苦しんでいる人がいるのだ。

記録してよいのだ。

相談してよいのだ。

第三者を入れてよいのだ。

親本人の意思確認を求めてよいのだ。

 

そう思えるだけでも、当事者にとっては大きな支えになります。

 

9 社会問題として見ることで、解決の道が開ける

 

高齢親の囲い込みを社会問題として見ることには、大きな意味があります。

 

第一に、当事者の苦しみが言語化されます。

 

「親に会えない」

「情報をもらえない」

「悪者にされる」

「親の意思が分からない」

 

これらの苦しみは、単なる感情ではありません。

 

面会遮断、情報遮断、親の意思確認の不透明化、財産管理の不透明化という構造的問題です。

 

第二に、専門職の視点が変わります。

 

家族の一人の説明だけで判断してよいのか。

親本人の意思確認は十分か。

他の家族の声を聞く必要はないか。

情報や権限が一人に集中していないか。

 

こうした視点を持つことで、囲い込みを見逃しにくくなります。

 

第三に、制度利用の必要性が見えてきます。

 

調停。

訴訟。

成年後見制度。

地域包括支援センターへの相談。

弁護士、司法書士、社会福祉士などへの相談。

施設や病院への記録に基づく申し入れ。

 

家族だけで抱え込まず、外部の手段を使うことが選択肢になります。

 

 

第四に、予防につながります。

 

親が元気なうちに、介護方針、財産管理、連絡体制、面会の希望、遺言、任意後見などについて話し合っておく。

 

これにより、将来、一人の家族がすべてを握る状態を防ぎやすくなります。

 

社会問題として見ることは、当事者を救うだけでなく、将来のトラブルを防ぐことにもつながります。

 

10 まとめ

 

高齢親の囲い込みは、単なるきょうだい喧嘩ではありません。

 

親に会えるかどうか。

親の情報を知れるかどうか。

親の財産管理が透明かどうか。

親本人の意思が確認されているかどうか。

施設や病院との連絡窓口が一人に独占されていないかどうか。

 

これらは、家族の中だけで片づけてよい問題ではありません。

 

介護の問題です。

認知症の問題です。

相続の問題です。

財産管理の問題です。

成年後見制度の問題です。

施設・病院対応の問題です。

そして、親本人の尊厳の問題です。

 

「親を守る」という言葉は、大切な言葉です。

 

しかし、その言葉が、他の家族を排除し、情報を独占し、親本人の意思を見えなくするために使われるなら、それは保護ではなく支配に近づいていきます。

 

高齢親の囲い込みを、個別家庭の恨みや感情の問題として終わらせてはいけません。

 

これは、社会全体で考えるべき問題です。

 

 

同じ問題で苦しむ人が、孤立しないために。

介護や医療の現場が、一人の家族の説明だけで判断しないために。

法律や制度が、親本人の尊厳を中心に機能するために。

そして、高齢の親が、一部の家族の都合によって孤立させられないために。

 

高齢親の囲い込みは、言葉にする必要があります。

記録する必要があります。

社会に開いていく必要があります。

 

それは、家族を壊すためではありません。

 

親本人の尊厳を守り、家族関係を透明にし、同じ苦しみを抱える人に道を示すためです。

 

 


 

プロフィール

 

高齢親の囲い込み解放コンサルタント 白岩俊正

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第17回 判決で家族の事実を記録する意味 ――裁判は、勝ち負けだけのためにあるのではない

 

高齢親の囲い込みが起きたとき、周囲からはこう見られることがあります。

 

「家族のもめごとでしょう」

「きょうだい喧嘩でしょう」

「相続の争いでしょう」

「お金の問題でしょう」

「裁判までしなくてもいいのではないですか」

 

たしかに、外から見れば、そう見えるかもしれません。

 

親に会えるかどうか。

施設や病院の連絡先を共有するかどうか。

通帳や財産管理を誰がしているのか。

遺言がどのように作られたのか。

親本人が本当は何を望んでいたのか。

 

これらは、一見すると、家族の内部問題に見えます。

 

しかし、高齢親の囲い込みの本質は、単なる家族喧嘩ではありません。

 

 

親をめぐる情報、面会、財産、介護、意思確認の出入口を、一部の家族が握り、他の家族を遠ざけていく問題です。

 

そして、その状態が長く続くと、何が起きていたのかが見えにくくなります。

 

誰が親に会えていたのか。

誰が会えなくされていたのか。

誰が施設や病院と連絡を取っていたのか。

誰が親の意思を代弁していたのか。

他の家族が何を求め、どのように拒まれたのか。

親本人の意思は、本当に確認されていたのか。

 

家族の中で起きたことは、放っておくと、時間とともに曖昧になります。

 

だからこそ、裁判には大きな意味があります。

 

裁判は、単に勝つためだけのものではありません。

お金を請求するためだけのものでもありません。

相手を責めるためだけの場所でもありません。

 

裁判には、家族の中で見えにくくされてきた事実を、公的な手続の中で記録するという意味があります。

 

 

1 家庭内の出来事は、外から見えにくい

 

高齢親の囲い込みが難しいのは、その多くが家庭内で起きるからです。

 

家の中で何が話されたのか。

親に誰が何を説明したのか。

親が誰と会いたいと言ったのか。

本当に会いたくないと言ったのか。

財産管理について、どのような説明があったのか。

通帳や印鑑を誰が持っていたのか。

施設入所や遺言作成に、どのような経緯があったのか。

 

こうしたことは、外部の人には見えません。

 

しかも、高齢の親が認知症や病気、体力低下を抱えている場合、本人の意思確認はさらに難しくなります。

 

その結果、親の近くにいる人、親の世話をしている人、施設や病院との窓口になっている人の説明が、そのまま「親の意思」として扱われてしまうことがあります。

 

「親が会いたくないと言っています」

「親が混乱するので会わせられません」

「親の体調に悪いので連絡しないでください」

「こちらで全部対応しています」

「他の家族は関わらないでください」

 

こう言われたとき、外部の人は判断に迷います。

 

本当に親本人の意思なのか。

それとも、誰かが親の意思を代弁しているだけなのか。

親を守るためなのか。

他の家族を排除するためなのか。

 

この境界は、とても見えにくいものです。

 

だからこそ、記録が必要になります。

 

 

2 裁判では、感情ではなく事実が問われる

 

高齢親の囲い込みに苦しむ家族は、深い怒りや悲しみを抱えます。

 

親に会えない。

親の様子が分からない。

親の言葉を直接聞けない。

情報を求めても返事がない。

それなのに、自分たちが悪者のように扱われる。

 

この苦しみは、非常に大きいものです。

 

しかし、裁判で問われるのは、怒りの強さそのものではありません。

 

問われるのは、何が起きたのかです。

 

いつ、誰が、何をしたのか。

どのような連絡をしたのか。

どのような返答があったのか。

どのような拒否があったのか。

親本人の意思確認は、どのように行われたのか。

施設や病院との連絡は、誰が担っていたのか。

財産や契約について、どのような説明があったのか。

 

裁判は、感情を否定する場所ではありません。

 

しかし、感情をそのままぶつけるだけでは、事実は残りません。

 

怒りを記録に変える。

悲しみを時系列に変える。

違和感を証拠に変える。

家族内の不透明な出来事を、第三者に伝わる言葉に変える。

 

裁判には、その作業を促す力があります。

 

 

3 判決は、家族の歴史に対する一つの公的な整理になる

 

裁判の最終的な結果として、判決が出ることがあります。

 

もちろん、判決にすべての事実が書かれるわけではありません。

当事者が大切だと思っている出来事のすべてを、裁判所が取り上げてくれるわけでもありません。

また、こちらの思いどおりの判断が出るとも限りません。

 

それでも、判決には大きな意味があります。

 

判決は、裁判所が、提出された主張や証拠に基づいて、一定の事実関係を整理し、判断を示すものです。

 

家族の中で長く曖昧にされてきたことについて、第三者である裁判所が、一定の形で言葉にする。

 

そこに意味があります。

 

たとえば、面会がどのように制限されていたのか。

連絡がどのように遮断されていたのか。

情報共有がどのように不足していたのか。

一部の家族に権限や情報が集中していなかったか。

他の家族がどのような対応を求めていたのか。

それに対して、どのような対応がなされたのか。

 

こうした経過が、判決の中で整理されることがあります。

 

それは、単なる家族の思い出話ではありません。

 

「何が起きたのか」を、家族の外にある手続の中で確認することです。

 

 

4 判決は、沈黙してきた側にも説明を求める

 

高齢親の囲い込みでは、説明がなされないことが大きな問題になります。

 

なぜ会わせないのか。

なぜ親本人と直接話せないのか。

なぜ施設の情報を共有しないのか。

なぜ財産管理を説明しないのか。

なぜ「親が嫌がっている」と言うだけで、具体的な確認方法を示さないのか。

 

家族内の話し合いでは、相手が沈黙すれば、それ以上進まないことがあります。

 

質問しても答えない。

メールを送っても返事がない。

説明を求めても無視される。

都合の悪いことには触れない。

 

このような対応が続くと、問題はさらに密室化します。

 

しかし、裁判では、主張に対して反論する機会が与えられます。

証拠に対して説明する機会があります。

争うなら争う、認めるなら認める、分からないなら分からないと述べる場面が出てきます。

 

もちろん、裁判でも相手が十分に説明しないことはあります。

 

それでも、説明しないという態度自体が、手続の中に残ります。

 

どの点について答えたのか。

どの点について答えなかったのか。

何を争い、何を争わなかったのか。

どの証拠にどう反応したのか。

 

こうした経過もまた、記録の一部になります。

 

家族内では見えなかった沈黙が、裁判の中では「説明の有無」として見えるようになるのです。

 

 

5 「自分たちはおかしくなかった」と確認する意味

 

高齢親の囲い込みに苦しむ人は、長い時間をかけて、自分の感覚を疑わされることがあります。

 

自分たちが騒ぎすぎなのだろうか。

本当に親は会いたくないのだろうか。

こちらが悪者なのだろうか。

家族なのに裁判を考える自分が間違っているのだろうか。

ここまで記録することは、冷たいことなのだろうか。

 

情報を持っていない側は、不安になります。

 

一方で、情報を握っている側は、堂々と振る舞うことがあります。

 

「自分が親を守っている」

「自分が全部やっている」

「他の家族は分かっていない」

「親のためだから仕方ない」

 

このような言葉の前で、排除された側は、自分の感じている違和感を言葉にできなくなっていきます。

 

だからこそ、判決には、心理的な意味もあります。

 

裁判所がすべてを分かってくれるわけではありません。

判決がすべての苦しみを癒してくれるわけでもありません。

 

それでも、事実関係が整理され、一定の判断が示されることで、少なくとも次のように思えることがあります。

 

自分たちは、何もないところで騒いでいたわけではなかった。

会わせてほしいと求めたことは、おかしなことではなかった。

情報を求めたことは、身勝手なことではなかった。

親の意思を確認したいと思ったことは、当然のことだった。

家族内で起きていた不透明さには、やはり問題があった。

 

これは、とても大きな意味を持ちます。

 

 

6 判決は、同じ問題で苦しむ人への道しるべにもなる

 

高齢親の囲い込みは、どの家庭にも起こり得る問題です。

 

親が高齢になる。

認知症や病気で判断力が弱る。

介護が始まる。

財産管理が必要になる。

施設や病院との連絡が増える。

相続の問題が見え始める。

 

そのとき、家族の中で一人だけが情報と窓口を握ると、囲い込みは起こりやすくなります。

 

そして多くの場合、外からは見えません。

 

だからこそ、判決で事実が記録されることには、社会的な意味があります。

 

それは、同じように苦しむ人にとって、道しるべになる可能性があるからです。

 

親に会えないことを、ただの家族喧嘩で片づけてはいけない。

情報を一人が握ることには、慎重な目が必要である。

「親が会いたくないと言っている」という言葉だけで、すべてを終わらせてはいけない。

親本人の意思確認には、透明性が必要である。

家族内の支配構造は、記録しなければ見えない。

 

こうした視点が、社会に残っていくことには意味があります。

 

判決は、一つの家族だけのものではありません。

 

同じ問題に直面している人が、自分の状況を理解するための言葉にもなり得ます。

 

 

7 和解ではなく判決を求める意味

 

裁判では、和解が勧められることがあります。

 

もちろん、和解が有効な場面もあります。

早期解決が必要な場合もあります。

親の負担や当事者の負担を考えると、合意によって終わらせることに意味がある場合もあります。

 

しかし、高齢親の囲い込みの問題では、判決を求めることにも意味があります。

 

なぜなら、和解では、事実関係が十分に整理されないまま終わることがあるからです。

 

「今後はこうしましょう」

「一定の金額を支払います」

「互いにこれ以上争いません」

 

それで解決する場合もあります。

 

しかし、長い間、面会遮断や情報独占が続いていた場合、当事者にとって本当に必要なのは、単なる終結ではないことがあります。

 

何が起きていたのか。

なぜ起きたのか。

誰がどのような行動をしたのか。

親本人の意思確認は適切だったのか。

家族の中で、どのような支配構造があったのか。

 

それを明らかにしたい。

 

その思いがあるとき、判決を求めることは、単なる強情ではありません。

 

家族の中で見えなくされてきた事実を、公的な判断として残したいという意思です。

 

もちろん、判決を求めることには負担もあります。

時間もかかります。

精神的な消耗もあります。

思い通りの結果になるとは限りません。

 

それでも、記録として残すことに意味がある事案はあります。

 

 

8 親の尊厳を中心に置き続ける

 

ここで大切なのは、裁判の目的を見失わないことです。

 

判決を求めることは、相手を叩きのめすためではありません。

家族の恨みを晴らすためでもありません。

勝った負けたを誇るためでもありません。

 

本来の目的は、親の尊厳を守ることです。

 

親が孤立させられていなかったか。

親本人の意思が本当に確認されていたか。

親の人間関係が不当に狭められていなかったか。

親の財産や生活が透明に扱われていたか。

親が一部の家族の都合の道具にされていなかったか。

 

高齢親の囲い込みで問われるべき中心は、常に親本人です。

 

きょうだいの勝ち負けではありません。

財産を誰が取るかだけの問題でもありません。

家族の感情だけの問題でもありません。

 

親本人の意思、尊厳、自由、人間関係、財産の透明性。

 

そこに光を当てるために、裁判があり、判決があります。

 

 

9 まとめ

 

判決には、家族の事実を記録する意味があります。

 

高齢親の囲い込みは、家族の中で密室化しやすい問題です。

 

面会が遮断される。

情報が一人に集中する。

親本人の意思が見えなくなる。

他の家族が悪者にされる。

説明を求めても答えがない。

財産管理や遺言の経緯が不透明になる。

 

こうした問題は、記録しなければ見えません。

 

裁判は、感情をそのままぶつける場所ではありません。

しかし、感情の背後にある事実を整理し、時系列にし、証拠として提出し、第三者に判断してもらう手続です。

 

判決は、すべてを救うものではありません。

けれど、長い間見えにくくされてきた家族内の支配、面会遮断、情報独占の経過を、公的な形で記録する可能性があります。

 

それは、当事者にとっての確認であり、同じ問題に苦しむ人への道しるべであり、社会への問題提起でもあります。

 

高齢親の囲い込みは、単なる家族喧嘩ではありません。

 

親の尊厳、家族関係、介護、認知症、相続、財産管理、法的手続が絡み合う問題です。

 

だからこそ、必要なときには、裁判という場で事実を記録する意味があります。

 

恨みではなく、記録として。

怒りではなく、問題提起として。

家族内紛ではなく、高齢親の尊厳を守るために。

 

判決で事実を残すことには、確かな意味があるのです。

 

 

 


 

プロフィール

 

高齢親の囲い込み解放コンサルタント 白岩俊正

白岩会計事務所 代表/公認会計士・税理士/株式会社みらい 代表取締役

〒422-8005 静岡市駿河区池田616-2パレス葵102

お問い合わせはまずはメールで release.advisor@gmail.com

 


 

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このブログについて

 高齢親の囲い込みとは、認知症や要介護状態にある親について、一部の家族が「親を守る」という名目で、面会、連絡、医療・介護情報、財産管理、施設との連絡窓口を独占し、他の家族を遠ざけていく状態をいいます。

 

 

 親を守ることは大切です。
 しかし、その言葉が、親本人の意思を見えにくくし、家族を排除し、情報や財産の出入口を一人が握るために使われるなら、それは保護ではなく支配に近づきます。

 

 このブログでは、高齢親の囲い込みを、個人批判ではなく家族内支配の構造として考え、親の尊厳と家族関係を守るために何が必要かを考えていきます。

 

第16回 調停・訴訟・成年後見制度でできること――家族だけで解決できないとき、第三者を入れる意味

 

高齢親の囲い込みに気づいたとき、多くの人はまず、家族の中で何とか話し合おうとします。

 

「親に会わせてほしい」

「親の様子を教えてほしい」

「施設や病院の連絡先を共有してほしい」

「財産や通帳の管理状況を説明してほしい」

「親本人の意思を直接確認したい」

 

本来であれば、これらは家族同士で冷静に話し合えるはずのことです。

 

 

しかし、高齢親の囲い込みが起きている場面では、話し合いそのものが成立しないことがあります。

 

連絡しても返事がない。

質問しても答えない。

「親が嫌がっている」とだけ言われる。

施設や病院への連絡窓口を一人が握っている。

親の意思を確認しようとしても、必ずその人を通さなければならない。

財産や介護の情報が開示されない。

 

このような状態になると、家族だけで解決することには限界があります。

 

そこで重要になるのが、第三者を入れることです。

 

第三者とは、家庭裁判所、調停委員、裁判官、弁護士、成年後見人、司法書士、社会福祉士、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどです。

 

もちろん、制度を使えばすべてがすぐに解決するわけではありません。

 

それでも、家族内で密室化していた問題を、外部の目にさらし、記録し、整理し、親本人の利益を中心に置き直すためには、制度の力が必要になることがあります。

 

 

1 まず考えたいのは「話し合いの場」を外に出すこと

 

高齢親の囲い込みでは、問題が家族の中に閉じ込められます。

 

閉じられた家族関係の中では、声の大きい人、親の近くにいる人、通帳や印鑑を持っている人、施設との窓口になっている人が、圧倒的に有利になります。

 

一方、親から遠ざけられている家族は、情報を持っていません。

 

親の状態も分からない。

誰が何を決めているのかも分からない。

施設や病院にどう説明されているのかも分からない。

親本人が本当にそう言っているのかも分からない。

 

この状態で「家族で話し合ってください」と言われても、実際には話し合いになりません。

 

なぜなら、話し合いの前提である情報が、一方に偏っているからです。

 

そこで、家庭裁判所の調停などを利用して、話し合いの場を家族の外に出すことが考えられます。

 

調停は、裁判のように白黒をはっきり決めるものとは限りません。

むしろ、第三者を交えて、当事者双方の言い分を整理し、合意できる点を探っていく手続です。

 

高齢親の囲い込みの場面では、たとえば次のようなことを話し合うきっかけになります。

 

親との面会方法。

親への電話や手紙の可否。

施設や病院との連絡方法。

親の体調や介護状況の共有。

親本人の意思確認の方法。

親族間での最低限の情報共有ルール。

 

大切なのは、調停を「相手を懲らしめる場」と考えすぎないことです。

 

調停の意味は、密室化した家族関係を、第三者のいる場に出すことにあります。

 

 

2 訴訟は「事実を記録する」手段にもなる

 

調停で解決できない場合や、損害、権利、財産、契約、遺言、面会妨害などの問題が深刻な場合には、民事訴訟が検討されることもあります。

 

訴訟というと、多くの人は「勝つか負けるか」「お金を取れるか取れないか」というイメージを持つかもしれません。

 

もちろん、訴訟には権利を主張し、裁判所に判断してもらうという側面があります。

 

しかし、高齢親の囲い込みにおいて、訴訟にはもう一つ大きな意味があります。

 

それは、家族の中で起きてきた事実を、公的な手続の中で記録することです。

 

いつから親に会えなくなったのか。

誰が連絡窓口を握ったのか。

どのような説明で面会が制限されたのか。

施設や病院に何が伝えられていたのか。

他の家族の質問に対して、どのような回答があったのか、なかったのか。

親本人の意思は、どのように確認されたのか。

財産管理や遺言作成の経緯に不透明な点はなかったのか。

 

これらは、家族の中で感情的に言い合っているだけでは、時間とともに流れてしまいます。

 

しかし、訴訟では、主張書面、証拠、陳述書、録音、メール、LINE、手紙、診療記録、介護記録などを通じて、事実関係を整理していくことになります。

 

もちろん、裁判所がすべての感情を受け止めてくれるわけではありません。

また、こちらが思うとおりの判断が必ず出るわけでもありません。

 

それでも、長い間、家庭内で見えにくくされてきた支配構造を、記録として残す意味は大きいのです。

 

高齢親の囲い込みでは、問題が表に出たときには、すでに何年も経っていることがあります。

 

そのとき、重要になるのは、感情の強さだけではありません。

 

重要なのは、時系列です。

記録です。

証拠です。

第三者に説明できる形で、何が起きてきたのかを整理することです。

 

訴訟は、そのための一つの手段になり得ます。

 

 

3 成年後見制度は「親の財産と意思」を守るための制度

 

高齢親の判断能力が低下している場合、成年後見制度の利用が問題になることがあります。

 

成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な人について、本人の権利や財産を守るための制度です。

 

高齢親の囲い込みでは、財産管理が不透明になることがあります。

 

通帳を誰が持っているのか分からない。

年金がどのように使われているのか分からない。

施設費や医療費の支払い状況が分からない。

不動産の売却や契約が進んでいた。

遺言の作成経緯が分からない。

親本人が本当に理解していたのか疑問がある。

 

このような場合、成年後見制度を通じて、親本人の財産管理や契約行為について、第三者的な管理を入れることが検討されます。

 

ただし、成年後見制度も万能ではありません。

 

後見人が選ばれれば、すべての親族関係が修復されるわけではありません。

面会問題が自動的に解決するわけでもありません。

家族の感情的対立が消えるわけでもありません。

 

それでも、親の財産管理や法律行為が一部の家族の手の中で不透明になっている場合、成年後見制度は重要な選択肢になります。

 

大切なのは、成年後見制度を「相手から親を取り戻す制度」と考えるのではなく、親本人の権利、財産、生活を守るための制度として位置づけることです。

 

親のために必要なのか。

親の財産管理が透明になるのか。

親本人の意思や生活の安定につながるのか。

一人の家族に権限が集中している状態を見直せるのか。

 

この視点が重要です。

 

 

 

4 制度を使う前に準備すべきこと

 

調停、訴訟、成年後見制度を考える前に、準備しておくべきことがあります。

 

それは、記録です。

 

高齢親の囲い込みに苦しんでいると、どうしても感情が先に立ちます。

 

なぜ会わせてくれないのか。

なぜ説明しないのか。

なぜ親の言葉を一人で代弁するのか。

なぜこちらだけが悪者にされるのか。

 

その怒りや悲しみは当然です。

 

しかし、制度を使う場面では、感情だけでは伝わりにくいことがあります。

 

必要なのは、次のような記録です。

 

いつ、誰に、何を伝えたのか。

それに対して、どのような返事があったのか。

返事がなかったのか。

面会を求めたのはいつか。

断られた理由は何か。

親本人と直接話せたのはいつか。

施設や病院に連絡した記録はあるか。

財産管理について質問した記録はあるか。

相手の説明に変化や矛盾はないか。

 

このような記録を、時系列で整理しておくことが重要です。

 

完璧な証拠でなくてもかまいません。

 

メール、LINE、手紙、メモ、録音、郵送記録、面会記録、施設とのやり取りなど、残っているものを整理することから始めればよいのです。

 

高齢親の囲い込みでは、「何となくおかしい」という感覚が、長い時間をかけて積み重なっていきます。

 

その「何となく」を、第三者に伝わる形にする作業が、記録化です。

 

 

 

5 制度を使うことは、家族を壊すことではない

 

調停や訴訟、成年後見制度の利用を考えると、多くの人がためらいます。

 

「ここまでしたら、家族関係が壊れてしまうのではないか」

「裁判所を使うなんて大げさではないか」

「親が悲しむのではないか」

「自分が悪者にされるのではないか」

 

そう感じるのは自然なことです。

 

しかし、考えなければならないのは、すでに家族関係が歪められていないかということです。

 

親に会えない。

親の状態が分からない。

情報が一人に集中している。

他の家族が排除されている。

親本人の意思が確認できない。

説明を求めても答えがない。

 

このような状態が続いているなら、問題は「制度を使うから家族が壊れる」のではありません。

 

すでに、家族の中で不透明な支配構造が生まれている可能性があるのです。

 

制度を使うことは、家族を攻撃することではありません。

 

親本人の意思を確認すること。

情報を透明にすること。

家族内の力の偏りを見直すこと。

第三者の目を入れること。

必要な記録を残すこと。

 

そのための手段です。

 

6 目的は、相手を倒すことではなく、親の尊厳を守ること

 

高齢親の囲い込みに直面すると、どうしても相手への怒りが強くなります。

 

なぜ親を独占するのか。

なぜ説明しないのか。

なぜ他の家族を悪者にするのか。

なぜ親の言葉を一人で握るのか。

 

その怒りには理由があります。

 

しかし、制度を使うときに忘れてはいけないのは、最終目的です。

 

最終目的は、相手を倒すことではありません。

 

親本人の尊厳を守ることです。

親本人の意思を確認することです。

親が孤立させられないようにすることです。

親の財産や生活が不透明に扱われないようにすることです。

家族関係の出入口を、一人の家族だけが握らないようにすることです。

 

 

高齢親の囲い込みで本当に問われているのは、きょうだいの勝ち負けではありません。

 

親を守るとは、どういうことか。

親のためと言いながら、親の人間関係を狭めていないか。

親の意思を代弁する人に、説明責任はあるのではないか。

家族の中で、情報と権限が一人に集中していないか。

 

その問いを、社会の側に開いていくことが大切です。

 

7 まとめ

 

高齢親の囲い込みに気づいたとき、家族だけで解決しようとしても限界があります。

 

話し合いができない。

情報が開示されない。

親本人の意思が確認できない。

施設や病院との連絡が遮断されている。

財産管理が不透明になっている。

 

そのようなときは、調停、訴訟、成年後見制度など、第三者を入れる手段を検討する必要があります。

 

 

もちろん、制度は万能ではありません。

 

しかし、密室化した家族関係に外部の目を入れ、事実を整理し、記録し、親本人の利益を中心に置き直すためには、制度の力が必要になることがあります。

 

大切なのは、感情的にぶつかることではありません。

 

記録すること。

時系列を作ること。

説明を求めること。

第三者に相談すること。

親本人の意思と尊厳を中心に置くこと。

 

高齢親の囲い込みは、家族の中だけで抱え込むには重すぎる問題です。

 

だからこそ、制度を知ること。

記録を残すこと。

第三者を入れること。

そして、親本人の尊厳を守るという原点に立ち返ること。

 

そこから、閉じられた家族関係を、少しずつ開いていくことができます。


 


 

プロフィール

 

高齢親の囲い込み解放コンサルタント 白岩俊正

白岩会計事務所 代表/公認会計士・税理士/株式会社みらい 代表取締役

〒422-8005 静岡市駿河区池田616-2パレス葵102

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