高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。
私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。
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(期間: 2025/8/21~2025/9/19 ー 30日間)
74. 「親が元気かどうかさえわからない」不安の正体
――はじめに
電話は鳴らない、LINEは既読にならない、施設や病院に問い合わせても「ご家族の代表の方から」と繰り返される。
たった数行の近況でいいのに、それすら届かない時間が続くと、人は自分の足元が崩れていくような心細さに襲われます。
「親が元気かどうかさえわからない」——この状態は、単なる心配を超えて、心の安全基地を失う体験そのものです。
専門家としてお伝えしたいのは、あなたが感じている胸のざわめきには理由があり、言葉を使えば確かに扱える、ということです。
見えない“空白”が心に与えるもの
人の心は、関係の“手応え”で落ち着きます。
手応えとは、声の温度、息づかい、短い相槌、たとえ「今日は眠いからまたね」であっても、行き来があること。
連絡が途絶えると、心は空白を埋めようとして最悪の想像に走ります。これが不安の正体です。
不確実さは、そのままではただの“分からなさ”ですが、長引くと「拒絶されたのでは」「何かを隠されているのでは」といった意味づけが始まり、自分を責めたり、誰かを責めたりする気持ちが膨らんでいきます。
さらに厄介なのは、この不安が身体の反応として現れることです。
眠りが浅くなり、通知音に過敏になり、スマホを何度も更新してしまう。
こうした反応は弱さではありません。心が「大切な人に異変はないか」と見張りを強めている証拠です。
見張りは短期間なら役に立ちますが、長引けば生活を蝕みます。
だからこそ、“今できる小さな確実”を手元に置き直す必要があるのです。
エピソード①:窓辺の報告書(志穂さん・仮名)
志穂さんは、入所先の窓口が一本化されたことで、母の様子がほとんど分からなくなりました。
兄が連絡の主体になってから、「今は忙しい」「落ち着いたら知らせる」とだけ。
最初の数週間、志穂さんは怒りと不安で眠れず、夜ごと長文のLINEを打っては下書きのまま消しました。
ある晩、彼女は窓辺の小さなノートを開き、こう書きました。
「今日の空は高くて、雲が糸みたい。お母さんは朝ごはん、食べられたかな。」声に出して読み、ノートを閉じる。
翌日も、その次の日も、一行か二行だけの“報告書”を重ねました。
二週間後、ケアマネから短い電話が来ます。
「この頃、お母さまは食事の前に窓を見上げて、外の空の話をされるんです。」直接の因果はわかりませんが、志穂さんは「私の言葉は届かない」という無力感から、「私の言葉は私を支えている」へと、足場の置き換えに成功しました。
以後、連絡が来ない日はノートを開き、来た日は感謝を一文添える。
小さな儀式が、彼女の一日を守る柱になったのです。
エピソード②:三十秒の現在形(悠人さん・仮名)
単身赴任中の悠人さんは、父が一人暮らしを続けることに不安を抱いていました。
週末に電話を試みても、つながらないことが増える。
焦りから矢継ぎ早に質問をぶつけると、父は黙り込み、会話はすぐに途切れました。
ある医師の助言で、悠人さんは“最初の三十秒だけ現在形”を意識するようにしました。
「今、駅から歩いてる。風が冷たくて気持ちいい。父さんはどんな景色見てる?」
質問よりも、まず自分の状況を短く共有する。
情報を取りに行くのではなく、手のひらを見せるように話し始めると、不思議と父の声がほどけました。
「今、味噌汁温め直してる。出汁がちょっと薄いかもな。」
以降、連絡がつかない日が続いても、悠人さんは三十秒だけ現在形のメッセージを残し、翌朝に一文の近況をSNSへ。
「心配」を「共有」に翻訳し直す癖が、父との連絡そのものを温め直し、悠人さん自身の不眠も軽くしていきました。
不安を扱う言葉の置き場所
不安は、消そうとするほど濃くなります。
大切なのは、広がりを止める“囲い”を用意すること。囲いとは、言葉・時間・場所の三点です。
長文が書けない夜は、一行で良いから“いま”を言う。
たとえば「朝は食欲がなかったかも、と思う自分が怖い。今日はここまで。」時間は、連絡を試みる“窓”を決めて守る。
たとえば夕方の二十分だけ連絡を試し、それ以外は携帯から意識的に離れる。
場所は、あなたの心が柔らかくなる定位置。窓辺、台所、駅のベンチ——どこでもいい。
そこでだけ、不安を言葉にしてよい、と決めます。
SNSを使うなら、公開の広さを自分で選びましょう。
鍵をかけた小さなスペースでも、匿名のメモでも構いません。
ハッシュタグを一つ決めると、時系列が見返しやすくなり、気持ちの波の“地図”ができます。
「#今日はここまで」と結ぶのもよい方法です。終わりを自分で宣言できると、反芻は短くなります。
伝える相手がいるときの“やわらかい交渉”
家族内の調整や施設とのやり取りが必要なとき、攻めの言葉は早く届くようでいて、実は道を狭めます。
目的は、相手を変えることではなく、情報の行き来を回復すること。
そのためには、相手が動きやすい“幅”を渡します。
「今日の様子を三点だけ、二分で教えてください」「水曜と日曜の夕方に、三十秒だけ電話をお願いできますか」——短く、具体的に、感謝を添える。
可否と代案を引き出せる余白を残す。
やり取りの温度が上がれば、あなたの“分からない”は少しずつ“分かる”に変わります。
「わからなさ」と共存するための視点
ときに、どれほど整えても、情報が来ない日が続きます。
そのとき覚えておきたいのは、関係は連絡だけで出来ているわけではない、という視点です。
同じ空を見上げる、相手の好きだった音楽を流す、食卓に一皿分をよける。
これらは未練ではなく、関係の“現在形”を保つ営みです。
わからなさの中にも、できる関わりがある。
そう気づくと、あなたの一日は、再びあなた自身の手に戻ってきます。
おわりに
「親が元気かどうかさえわからない」——この言葉の重さは、あなたが親を大切に思ってきた歴史そのものです。
不安は、愛情の裏返し。だからこそ、飲み込まず、言葉にして置き場所を与えましょう。
ノートの一行でも、三十秒の音声でも、静かなSNSの投稿でもいい。
あなたが今日交わした小さな現在形が、やがて連絡の道をもう一度あたためます。
もしよかったら、今この瞬間のあなたの言葉を一文だけ。
「今日はここにいるよ。あなたのことを、ちゃんと考えているよ。」
その一文が、あなたの夜を少し穏やかにしますように。
自己紹介など
1. 自己紹介
https://www.ameba.jp/profile/general/release-advisor/
2.高齢親の囲い込み問題について体系的な説明(ChatGPT DeepResearchより)
https://ameblo.jp/release-advisor/entry-12919635429.html
3.出版済の電子書籍キンドルリストはこちら
https://ameblo.jp/release-advisor/entry-12920372756.html
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