高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。


私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。

 

 

 

46.弁護士に依頼して事態が改善した一例

 

「親の居場所も分からず、会いたいと言っても“無理”の一点張り。どうしていいか分からない」
 

そんなご相談が、この数年で本当に増えました。私は“高齢親の囲い込み”に悩むご家族を支援しています。

 

今日は、弁護士に依頼して事態が実際に動いた一例(仮名・一部改変)をご紹介します。同じ状況の方に、具体的なイメージと希望をお届けできればと思います。

 

 

 

ケースの概要(仮名)

 

·        相談者:長女の Aさん(50代)

·        囲い込み側:長男の Bさん(40代)

·        親: お母さま(80代・軽度の認知症)

·        状況:Bさんが母を自宅近くの施設に入所させ、施設名・住所をAさんに開示しない。電話・手紙も遮断。Aさんが実家へ行っても面会拒否

 

·        Aさんの不安:

 母の健康状態が分からない

 財産管理が不透明 

 最期に会えないかもしれない恐怖

 

Aさんは区役所や地域包括支援センターにも相談しましたが、「家族間の対立」で止まり、現場へ働きかける“決定力”に欠けるのが実感でした。そこで弁護士への依頼を決断します。

 

 

弁護士選任までに整えた“土台”

 

弁護士に「依頼してから」動くのではなく、依頼“前”の整え方で進み方が変わります。Aさんと一緒に、次の3点を揃えました(私の役割は、全体設計と事実の棚卸しの伴走です)。

 

1.      時系列表

  面会拒否の発言、LINEの既読、録音の有無、施設やケアマネへの照会履歴などを日付順に一本化。

 

2.      客観資料の束

 介護認定・主治医意見書の入手状況、被保険者証の所在、銀行通帳の名義・使用履歴の分かる範囲、固定資産の有無。

 

3.      関係図

 親族・施設・ケアマネ・包括支援・主治医の関係線、連絡先、これまでの応対の要約(感情評価ではなく事実メモ)。

 

ポイント:
感情と事実を分ける(感情は大切に“別ノート”へ)。
推測語(たぶん・きっと・おそらく)は、事実表から外す
・第三者が読んでも10分で状況が分かる資料にする。

 
 

 

弁護士が行った初動(1〜3週間)

 

選任したのは高齢者法務・家事事件に慣れた弁護士。依頼後の初動は次の通りでした。

 

1.      受任通知・内容証明の送付(対Bさん)

  連絡遮断の即時中止、面会調整の協議、親の所在・健康状態・主治医・施設情報の開示を求める。

  「威圧」ではなく、**法的根拠に基づく“穏当な要求”**に徹する。

 

2.      施設・ケアマネ・包括への連絡

 弁護士名で「親族からの面会希望」「意思確認の機会確保」を文面で正式表明

 施設が家族間トラブルを恐れて黙ってしまわないよう、“正規の窓口が立った”安心感を提供。

 

3.      家庭裁判所の手続き準備

 面会調整に向けた家事調停や、親の判断能力の状況に応じて成年後見申立ての是非を検討。

 併せて、財産管理の透明化に資する記録・照会の方法を設計。

 

ここで大切なのは、いきなり裁判ではなく“協議→制度活用”の順でギアを上げること。施設・包括・ケアマネにとっても、「法的に整理された依頼」は受け止めやすく、現場の“安全配慮”と矛盾しない落とし所が見え始めます。

 

 

事態が動いた転機(4~8週間)

 

·        施設からの応答
受任通知後、施設に弁護士からの連絡が入ったことで、**「親御さんの意思確認のための面談」**が設定されました。最初は「15分・職員同席・録音不可」などの条件付きでしたが、**ゼロから“一歩”**が作られたことが大きい。

 

·        面会の定期化
初回面会後、月2回・30分・職員同席での定期面会が合意。併せて、主治医・ケアマネからの月次状況共有(文面)も取り付けられました。

 

·        財産管理の透明化
親の判断能力の評価を踏まえ、家庭裁判所に手続を申し立て。成年後見人(第三者専門職)が就任し、通帳・支出の客観的管理年次報告の仕組みが走り始めました。

 

結果
Aさんは母の近況を定期的に把握できるようになり、顔を見て言葉を交わせる“当たり前”が回復。財産についても誰か一人の恣意で動かない体制が整いました。
 

もちろん家族関係が一夜で元通りになるわけではありませんが、「見えない不安」に呑まれない仕組みができたことが、何よりの前進でした。

 

 

 

なぜ弁護士依頼で改善したのか(本質)

 

1.      要求の“言語化”と“正当化”
「会わせてください」ではなく、**“何を・なぜ・どの制度の下で”**を明確化。現場が動きやすくなる。

 

2.      当事者同士の対立から“手続き”へ移行
感情応酬を離れ、合意形成のレールに乗せる。

 

3.      第三者の“安心”
施設や包括にとって、専門職からの依頼はリスク評価と説明責任を助ける。

 

4.      “強すぎず弱すぎない”圧力
受任通知→協議→家裁手続という段階的エスカレーションが、相手の過剰防衛を避けつつ実効性を生む。

 

 

ありがちな“行き詰まり”と回避策

 

·        × 声を荒げる・詰め寄る
→ 施設は「安全確保」優先で全面遮断に傾く。文面中心録音/記録で冷静に。

 

·        × 推測で相手を断定
→ 名誉や虐待認定の“線引き”は制度・証拠の世界事実のみに徹する。

 

·        × 施設を“味方or敵”で分類
→ 現場は“敵”ではない。安全配慮と家族関係の両立をどう設計するかが鍵。

 

·        × すぐに訴訟に飛びつく
→ 手続の選択を誤ると長期化しがち。協議→家裁の順で。

 
 

 

弁護士に依頼する前の「準備チェックリスト」

 

·        □ 直近1年の時系列メモ(できれば2~3年分)

·        □ 相手方・施設・公的機関とのやり取り記録(日時・要旨・スクショ)

·        □ 親の医療・介護情報(分かる範囲)

·        □ 親の意思の痕跡(手紙、会話メモ、動画など)

·        □ 関係図(連絡先付き)

·        □ 希望の落とし所(例:月2回30分の面会/健康情報の月次共有)

·        □ やらないライン”(暴言・接触強要はしない、等の自己ルール)

 

これらが揃っていると、**初回相談の30~60分で“戦略の骨格”**が見えます。費用も時間も、無駄撃ちが減るのが実感です。

 

 

想定タイムライン(目安)

 

·        Week 0–1:資料整備 → 初回相談 → 受任

·        Week 1–2:受任通知・内容証明 → 施設/包括へ正式表明

·        Week 3–6:初回面会(条件付き) → 定期化の協議

·        Week 4–8:必要に応じて家事調停・成年後見の申立て検討/実行

·        Month 2–3:定期面会・情報共有が安定運用、財産管理の透明化が始動

 

※あくまで一例。状況・地域差・相手方の対応で前後します。

 

 

 

「弁護士=裁判」ではありません

 

弁護士に依頼すると「敵対が深まるのでは」と心配される方は少なくありません。

実務の感覚で言えば、“争うため”より“争いを作らないため”の依頼がむしろ多数派です。
専門職の第三者性が入ることで、双方が引き下がれる出口が作られます。

 

 

最後に――“当たり前”を取り戻すために

 

囲い込みの渦中にいると、不安・怒り・焦りが心を占領します。
そのどれもが当然の感情です。自分を責めないでください。


今日お伝えしたケースのように、適切な準備と専門家の力で、「会える」「分かる」「任せすぎない」という“当たり前”は少しずつ戻ってきます。

 

「親に会いたい」――その願いは、十分に正当です。
一歩ずつ、手続きに翻訳していきましょう。私も、その歩みに並走します。

 

 

 

 

付録:初回相談で伝える要点テンプレ(コピペOK)

 

  1. 【状況要約】○年○月から会えていない。相手方は兄(B)。
  2. 【求める落とし所】月○回○分の面会、健康情報の月次共有。
  3. 【これまでの対応】包括・施設への連絡、相手方とのやり取り(別紙時系列)。
  4. 【親の状態】認知症診断の有無、主治医、介護度(分かる範囲)。
  5. 【懸念】所在不明期間、財産管理の不透明さなど。
  6. 【資料】時系列表、関係図、スクショ一式を添付予定。
 

 

※この記事は一般的な情報提供であり、特定事案の結論を保証するものではありません。地域の実務運用や機関の対応には差があるため、各地の専門家にご相談ください。

 

 

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