高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。
私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。
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(期間: 2025/8/2土~2025/8/31(日))
46.弁護士に依頼して事態が改善した一例
「親の居場所も分からず、会いたいと言っても“無理”の一点張り。どうしていいか分からない」
そんなご相談が、この数年で本当に増えました。私は“高齢親の囲い込み”に悩むご家族を支援しています。
今日は、弁護士に依頼して事態が実際に動いた一例(仮名・一部改変)をご紹介します。同じ状況の方に、具体的なイメージと希望をお届けできればと思います。
ケースの概要(仮名)
· 相談者:長女の Aさん(50代)
· 囲い込み側:長男の Bさん(40代)
· 親: お母さま(80代・軽度の認知症)
· 状況:Bさんが母を自宅近くの施設に入所させ、施設名・住所をAさんに開示しない。電話・手紙も遮断。Aさんが実家へ行っても面会拒否。
· Aさんの不安:
母の健康状態が分からない
財産管理が不透明
最期に会えないかもしれない恐怖
Aさんは区役所や地域包括支援センターにも相談しましたが、「家族間の対立」で止まり、現場へ働きかける“決定力”に欠けるのが実感でした。そこで弁護士への依頼を決断します。
弁護士選任までに整えた“土台”
弁護士に「依頼してから」動くのではなく、依頼“前”の整え方で進み方が変わります。Aさんと一緒に、次の3点を揃えました(私の役割は、全体設計と事実の棚卸しの伴走です)。
1. 時系列表
面会拒否の発言、LINEの既読、録音の有無、施設やケアマネへの照会履歴などを日付順に一本化。
2. 客観資料の束
介護認定・主治医意見書の入手状況、被保険者証の所在、銀行通帳の名義・使用履歴の分かる範囲、固定資産の有無。
3. 関係図
親族・施設・ケアマネ・包括支援・主治医の関係線、連絡先、これまでの応対の要約(感情評価ではなく事実メモ)。
ポイント:
・感情と事実を分ける(感情は大切に“別ノート”へ)。
・推測語(たぶん・きっと・おそらく)は、事実表から外す。
・第三者が読んでも10分で状況が分かる資料にする。
弁護士が行った初動(1〜3週間)
選任したのは高齢者法務・家事事件に慣れた弁護士。依頼後の初動は次の通りでした。
1. 受任通知・内容証明の送付(対Bさん)
連絡遮断の即時中止、面会調整の協議、親の所在・健康状態・主治医・施設情報の開示を求める。
「威圧」ではなく、**法的根拠に基づく“穏当な要求”**に徹する。
2. 施設・ケアマネ・包括への連絡
弁護士名で「親族からの面会希望」「意思確認の機会確保」を文面で正式表明。
施設が家族間トラブルを恐れて黙ってしまわないよう、“正規の窓口が立った”安心感を提供。
3. 家庭裁判所の手続き準備
面会調整に向けた家事調停や、親の判断能力の状況に応じて成年後見申立ての是非を検討。
併せて、財産管理の透明化に資する記録・照会の方法を設計。
ここで大切なのは、いきなり裁判ではなく“協議→制度活用”の順でギアを上げること。施設・包括・ケアマネにとっても、「法的に整理された依頼」は受け止めやすく、現場の“安全配慮”と矛盾しない落とし所が見え始めます。
事態が動いた転機(4~8週間)
· 施設からの応答
受任通知後、施設に弁護士からの連絡が入ったことで、**「親御さんの意思確認のための面談」**が設定されました。最初は「15分・職員同席・録音不可」などの条件付きでしたが、**ゼロから“一歩”**が作られたことが大きい。
· 面会の定期化
初回面会後、月2回・30分・職員同席での定期面会が合意。併せて、主治医・ケアマネからの月次状況共有(文面)も取り付けられました。
· 財産管理の透明化
親の判断能力の評価を踏まえ、家庭裁判所に手続を申し立て。成年後見人(第三者専門職)が就任し、通帳・支出の客観的管理と年次報告の仕組みが走り始めました。
結果:
Aさんは母の近況を定期的に把握できるようになり、顔を見て言葉を交わせる“当たり前”が回復。財産についても誰か一人の恣意で動かない体制が整いました。
もちろん家族関係が一夜で元通りになるわけではありませんが、「見えない不安」に呑まれない仕組みができたことが、何よりの前進でした。
なぜ弁護士依頼で改善したのか(本質)
1. 要求の“言語化”と“正当化”
「会わせてください」ではなく、**“何を・なぜ・どの制度の下で”**を明確化。現場が動きやすくなる。
2. 当事者同士の対立から“手続き”へ移行
感情応酬を離れ、合意形成のレールに乗せる。
3. 第三者の“安心”
施設や包括にとって、専門職からの依頼はリスク評価と説明責任を助ける。
4. “強すぎず弱すぎない”圧力
受任通知→協議→家裁手続という段階的エスカレーションが、相手の過剰防衛を避けつつ実効性を生む。
ありがちな“行き詰まり”と回避策
· × 声を荒げる・詰め寄る
→ 施設は「安全確保」優先で全面遮断に傾く。文面中心・録音/記録で冷静に。
· × 推測で相手を断定
→ 名誉や虐待認定の“線引き”は制度・証拠の世界。事実のみに徹する。
· × 施設を“味方or敵”で分類
→ 現場は“敵”ではない。安全配慮と家族関係の両立をどう設計するかが鍵。
· × すぐに訴訟に飛びつく
→ 手続の選択を誤ると長期化しがち。協議→家裁の順で。
弁護士に依頼する前の「準備チェックリスト」
· □ 直近1年の時系列メモ(できれば2~3年分)
· □ 相手方・施設・公的機関とのやり取り記録(日時・要旨・スクショ)
· □ 親の医療・介護情報(分かる範囲)
· □ 親の意思の痕跡(手紙、会話メモ、動画など)
· □ 関係図(連絡先付き)
· □ 希望の落とし所(例:月2回30分の面会/健康情報の月次共有)
· □ “やらないライン”(暴言・接触強要はしない、等の自己ルール)
これらが揃っていると、**初回相談の30~60分で“戦略の骨格”**が見えます。費用も時間も、無駄撃ちが減るのが実感です。
想定タイムライン(目安)
· Week 0–1:資料整備 → 初回相談 → 受任
· Week 1–2:受任通知・内容証明 → 施設/包括へ正式表明
· Week 3–6:初回面会(条件付き) → 定期化の協議
· Week 4–8:必要に応じて家事調停・成年後見の申立て検討/実行
· Month 2–3:定期面会・情報共有が安定運用、財産管理の透明化が始動
※あくまで一例。状況・地域差・相手方の対応で前後します。
「弁護士=裁判」ではありません
弁護士に依頼すると「敵対が深まるのでは」と心配される方は少なくありません。
実務の感覚で言えば、“争うため”より“争いを作らないため”の依頼がむしろ多数派です。
専門職の第三者性が入ることで、双方が引き下がれる出口が作られます。
最後に――“当たり前”を取り戻すために
囲い込みの渦中にいると、不安・怒り・焦りが心を占領します。
そのどれもが当然の感情です。自分を責めないでください。
今日お伝えしたケースのように、適切な準備と専門家の力で、「会える」「分かる」「任せすぎない」という“当たり前”は少しずつ戻ってきます。
「親に会いたい」――その願いは、十分に正当です。
一歩ずつ、手続きに翻訳していきましょう。私も、その歩みに並走します。
付録:初回相談で伝える要点テンプレ(コピペOK)
- 【状況要約】○年○月から会えていない。相手方は兄(B)。
- 【求める落とし所】月○回○分の面会、健康情報の月次共有。
- 【これまでの対応】包括・施設への連絡、相手方とのやり取り(別紙時系列)。
- 【親の状態】認知症診断の有無、主治医、介護度(分かる範囲)。
- 【懸念】所在不明期間、財産管理の不透明さなど。
- 【資料】時系列表、関係図、スクショ一式を添付予定。
※この記事は一般的な情報提供であり、特定事案の結論を保証するものではありません。地域の実務運用や機関の対応には差があるため、各地の専門家にご相談ください。
自己紹介など
1. 自己紹介
https://www.ameba.jp/profile/general/release-advisor/
2.高齢親の囲い込み問題について体系的な説明(ChatGPT DeepResearchより)
https://ameblo.jp/release-advisor/entry-12919635429.html
3.出版済の電子書籍キンドルリストはこちら
https://ameblo.jp/release-advisor/entry-12920372756.html
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ブログのご紹介
ブログ主宰 しらいわ は以下のブログも作成しています。併せてご覧ください。
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2. 高齢親の囲い込み 解放アドバイザー ~ 介護が必要になった高齢親が自分以外のきょうだいに囲い込まれて会えなくなった方へ~
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