高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。


私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。

 

 

 

44.家族調停でわかった“きょうだいの本音”

 

「親に会いたいのに、きょうだいが面会を拒む」。
 

そんな現実に直面し、胸を締めつけられるような思いをしている方は少なくありません。

 

家庭裁判所における「家族調停(家事調停)」は、こうした状況を解決するための一つの手段です。私がこれまで相談を受けた中にも、「調停にまで発展するのは辛い」「でも他に方法がなかった」という方が多くいらっしゃいました。

 

そして、実際に調停の場に臨んだとき、そこで初めて知る“きょうだいの本音”があるのです。今日は、そのリアルな一端をお伝えしたいと思います。

 

 

1.家族調停とは何か

 

家庭裁判所の調停は、中立の調停委員が間に入り、当事者同士の話し合いをサポートする制度です。
 

「親に会わせてもらえない」「財産管理に不安がある」といった争いごとを、裁判にする前に冷静に話し合う場として機能します。

 

特徴的なのは、直接顔を合わせて言い争うのではなく、調停委員を通じて双方の意見を伝える“シャトル方式”が基本となる点です。これにより、感情的な衝突を最小限にしつつ、それぞれの主張を聞き取ってもらえます。

 
 

 

2.調停で明らかになる“本音”

 

私が支援したあるご家族では、長女が親を自宅に引き取り、他のきょうだいには一切会わせない状況が続いていました。次女と長男は「せめて顔だけでも見たい」と訴え、ついに家族調停を申し立てたのです。

 

調停が始まると、次女と長男の思いはシンプルでした。
 

「母の笑顔を見たい」
「元気かどうか確認したい」

 

しかし、長女側の主張は違いました。
 

「親は疲れている。会えば混乱する」
「相続のことばかり気にしているのではないか」

 

表面上は“親を守るため”という理由が強調されていましたが、やり取りが進むにつれて、次のような本音が見えてきました。

  • 「自分が一番親の面倒をみてきた。だから他のきょうだいに口を出されたくない」
  • 「親の財産管理を疑われるのが嫌だ」
  • 「昔から私ばかり損な役回りだった。その不満が積もっている」

つまり、“親のため”という大義名分の裏側には、自分自身の負担感・不安・過去の確執が絡んでいたのです。

 
 

 

3.きょうだいの心理的背景

 

調停の場で本音が出ると、依頼者である次女や長男は衝撃を受けます。
 

「そんなことを思っていたのか」
「結局、親のことより自分の気持ちが優先なのでは」

 

しかし心理的にみれば、囲い込みをしてしまうきょうだいにも理解すべき背景があります。

  • 長年の介護負担による“報われなさ”
  • 親の財産を管理する責任の重圧
  • 子ども時代から続く“きょうだい間の力関係”

これらが複雑に絡み合い、「誰にも渡したくない」「信用できない」という強い感情につながるのです。

 

 

4.調停がもたらす効果

 

調停で本音が出ることは、決して悪いことではありません。
 

むしろ「言葉にすることで、初めて相手に理解される」可能性があります。

 

前述のケースでも、長女の本音を調停委員を通じて知った次女と長男は、ただ怒るのではなく「では、あなたの負担を軽くするにはどうしたらいいか」と視点を変えることができました。

 

最終的には、

  • 面会は月1回、施設の職員立ち会いで実施
  • 財産の状況は定期的に開示
    という合意に至り、関係は完全に修復されたわけではないものの、少なくとも「絶縁状態」からは抜け出すことができました。
 
 

 

5.調停を考える際の注意点

 

もちろん、調停は魔法の解決策ではありません。
きょうだいの関係が深くこじれている場合は、調停でも平行線のまま終わることがあります。

 

それでも、次のようなメリットがあります。

  • 相手の本音を知るきっかけになる
  • 中立的な第三者が介入してくれる安心感がある
  • 書面記録が残ることで、その後の裁判や交渉に活かせる

 

一方で注意すべきは、感情的にぶつけすぎると逆効果になる点です。調停は“相手を打ち負かす場”ではなく、“歩み寄りの糸口を探す場”であることを忘れてはいけません。

 

 

6.まとめ ― 家族の本音をどう受け止めるか

 

家族調停で明らかになる“きょうだいの本音”は、ときに耳を塞ぎたくなるほど辛い内容かもしれません。
 

しかし、その本音を受け止めることで、初めて見えてくる現実があります。

 

「親は家族みんなのもの」――
 

この原則を守るために、調停という制度をどう活かすか。
それが、囲い込みからの解放への大切な一歩になるのです。

 

 

 

 

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