高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。


私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。

 

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 71. 「親の声が聞きたいだけなのに」

 

「いま、元気?」——ただその一言を交わしたいだけなのに、電話はつながらず、LINEは既読にならず、施設の窓口では「ご家族の代表の方を通してください」と繰り返される。

 

あなたのその胸の痛みは、わがままでも執着でもありません。

家族としてまっとうな願いであり、心の安定を取り戻すための、ごく自然な欲求です。

 

専門家として多くのご相談を受けてきた立場からも、「声を聞きたい」は人が尊厳を保つうえで大切な“権利に近い感情”だとお伝えしたいのです。

 

 

 

ある女性(りかさん・仮名)は、数年来、母の声を電話越しに聞けていません。

母と同居するきょうだいが窓口を独占しているからです。

 

りかさんは責める言葉を重ねたくないので、毎月一回、短い留守電だけを残します。

 

「お母さん、今日は少し寒いね。足もと温かくしてる?」その五十秒に、季節の話題と「大好きだよ」をそっと忍ばせる。

折り返しはありません。

 

けれど、通話記録に“自分の声が母に届く道筋を残した”という手触りがあるとき、彼女はようやく眠れます。

 

それは報われない努力ではなく、愛情のかたちを自分の手に取り戻す行為です。

 

「声」は、記憶と安心をつなぐ糸です。

顔を見ることが叶わなくても、音の高低、間の取り方、ため息の混じり方——それらが一瞬で、長い年月に編まれた親子の履歴を呼び起こします。

 

だからこそ遮られると、人は「自分の居場所が消えていく」ような不安に襲われるのです。

怒りや罪悪感が波のように押し寄せるのは当然で、あなたが弱いからではありません。

心は、関係の音信で整うからです。

 

 

 

もう一人、健さん(仮名)の話を紹介します。

彼は父の入所する施設名を知っていますが、受付でいつも「本日のご面会は難しくて……」と立ち止められます。

 

ある日、施設の自販機の前で、健さんはスマホのメモに父への“声の手紙”を書きました。

 

「父さん、今日は青空だよ。いつもの散歩コース、彼岸花が咲いてた。今度、一緒に歩こう。」それを音読し、録音して自分のメールに送る。

 

届先は自分自身なのに、読み終えた瞬間、彼の表情は少し緩みました。

 

後日、ケアマネを介して数分の電話が実現したとき、父はこう言いました。

「お前の声は、胸に染みるね。」

 

実際には音源は渡っていませんでしたが、“声に出して言葉を整える”ことが、健さんの態度と言い回しを変え、交渉の空気を温かくしたのです。

 

 

「それでも、どうしても連絡が閉ざされる」——そんな夜のために、心がほどける小さな作法を三つだけ置いておきます。

 

まず、あなた専用の“声のノート”をつくること。

日付と天気、今日伝えたい一言を書いて、静かに音読して閉じる。

 

次に、施設や関係者へは短く中立的な言葉で伝えること。

「親の安否と今日の様子だけ、30秒で教えてください。感謝しています。」事実確認の枠を先に示すと、相手は動きやすくなります。

 

最後に、既読がつかない夜は深呼吸を三回してから、「明日また連絡するね」と自分に言うこと。

行動の約束は、不安の反芻を止めるブレーキになります。

 

 

 

あなたが願っているのは、支配でも、誰かをやり込めることでもありません。

 

季節の移ろいを、親の声と一緒に確かめたいだけ。

その当たり前の希望を、どうか疑わないでください。

 

もし誰かから「忙しい」「一括窓口だから」と遮られても、あなたが丁寧に書いた一通の手紙、穏やかな声かけ、誠実な確認のメールの積み重ねは、見えないところで必ず効いてきます。

 

周囲の人も、“責められている”と感じると硬くなりますが、“安心を共有したい”というメッセージには心が動きます。

 

そして、もしあなたがSNSで発信をしているなら、今日の投稿は立派な結論でなくてかまいません。

 

「母さん、今日は風が強いよ。洗濯物、室内に入れてね。」——その一行を世界に置くことで、同じ痛みを抱える見知らぬ誰かが、「自分も書いていいんだ」と思えます。

 

体験を“きれいにまとめない”誠実さは、フォロワーの心を守る灯になります。

発信が、あなたの焦りを鎮め、関係者への言葉を整えるリハーサルにもなるはずです。

 

 

「親の声が聞きたいだけなのに」。

この短い文章には、あなたが紡いできた人生の厚みが宿っています。

 

大げさに戦わなくていい。

ただ、今日もあなたの言葉を一つ、世界に、そしていつか必ず届く親御さんの心に向けて放ってください。

あなたの声が、あなた自身を支えます。

 

もしよかったら、最後に一行だけ、ここに書いてみてください。

「お父さん(お母さん)、——」。その続きは、あなたのやさしさが知っています。

 

 

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3. 家族心理学・家族療法スクール オンライン ~ 家族関係に悩む方や支援職のための学びの場。家族との距離の取り方や関係性の見直しに役立つ知恵を、心理学の視点から発信

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