このブログについて
高齢親の囲い込みとは、認知症や要介護状態にある親について、一部の家族が「親を守る」という名目で、面会、連絡、医療・介護情報、財産管理、施設との連絡窓口を独占し、他の家族を遠ざけていく状態をいいます。
親を守ることは大切です。
しかし、その言葉が、親本人の意思を見えにくくし、家族を排除し、情報や財産の出入口を一人が握るために使われるなら、それは保護ではなく支配に近づきます。
このブログでは、高齢親の囲い込みを、個人批判ではなく家族内支配の構造として考え、親の尊厳と家族関係を守るために何が必要かを考えていきます。
第18回 高齢親の囲い込みを社会問題として考える ― それは、単なるきょうだい喧嘩ではない
高齢親の囲い込みという問題は、外から見ると、単なる家族のもめごとのように見えることがあります。
「きょうだい喧嘩でしょう」
「親の介護方針の違いでしょう」
「相続をめぐる争いでしょう」
「家族の中で話し合えばいいのではないですか」
そう言われることがあります。
しかし、本当にそうでしょうか。
高齢の親に会えない。
親の状態を教えてもらえない。
施設や病院の連絡先を共有してもらえない。
通帳や財産管理の状況が分からない。
「親が会いたくないと言っている」と言われるが、親本人に直接確認できない。
親の意思、生活、財産、人間関係が、一部の家族の説明だけで動いていく。
これは、単なるきょうだい喧嘩なのでしょうか。
私は、そうではないと思います。
高齢親の囲い込みは、家族の中で起きる問題でありながら、そこには介護、認知症、相続、財産管理、施設対応、成年後見、法的手続など、さまざまな社会的問題が重なっています。
だからこそ、これは個別家庭の内輪もめとして片づけてはいけない問題です。
高齢親の囲い込みは、社会全体で考えるべき問題なのです。
1 「家族の問題」と言われることで、問題が見えなくなる
高齢親の囲い込みが難しいのは、家庭内で起きることです。
外部の人からは、何が起きているのか分かりにくい。
親本人が本当に何を望んでいるのか分かりにくい。
誰が親の意思を正確に伝えているのか分かりにくい。
誰が親の情報を握っているのかも、外からは見えにくい。
そのため、周囲はついこう言いがちです。
「家族で話し合ってください」
「身内の問題ですから」
「どちらが正しいかは分かりません」
「親御さんのことを一番分かっている人が決めればよいのでは」
もちろん、家族で話し合えるなら、それが一番よいでしょう。
しかし、高齢親の囲い込みが起きている場面では、そもそも話し合いが成立していないことがあります。
一方が情報を持っている。
一方が親との接点を握っている。
一方が施設や病院との窓口になっている。
一方が親の言葉を代弁している。
他方は、親に会えず、情報も得られず、質問しても答えてもらえない。
この状態で「家族で話し合ってください」と言われても、それは現実的ではありません。
情報を持っている側と、情報を遮断されている側では、力の差が大きすぎるからです。
「家族の問題」という言葉は、ときに問題を見えなくします。
本当は、支配や排除、情報独占が起きているかもしれない。
本当は、親本人の意思が見えなくされているかもしれない。
本当は、財産管理や介護方針に不透明な点があるかもしれない。
それなのに、「家族のことだから」として外部の目が入らない。
ここに、高齢親の囲い込みの大きな問題があります。
2 介護の問題として見る
高齢親の囲い込みは、介護の問題と深く関係しています。
親が元気なうちは、家族関係に問題があっても、親本人が自分で判断し、自分で連絡を取り、自分で会いたい人に会うことができます。
しかし、病気や加齢によって体力が落ちる。
認知症によって判断力が低下する。
施設に入所する。
病院に入院する。
電話や手紙のやり取りが難しくなる。
そうなると、親本人の生活は、周囲の家族や介護関係者に大きく依存するようになります。
このとき、誰が連絡窓口になるのか。
誰が施設に説明するのか。
誰が面会の可否を調整するのか。
誰が医療や介護の情報を受け取るのか。
これらは、とても重要です。
介護の現場では、実際に親の近くにいる家族、施設とのやり取りをしている家族が、自然と窓口になることがあります。
それ自体が悪いわけではありません。
問題は、その窓口が閉じた窓口になってしまうことです。
他の家族に情報を共有しない。
面会を制限する。
施設や病院に一方的な説明をする。
親本人の意思確認を自分だけで行ったことにする。
「親のため」と言いながら、親の人間関係を狭めていく。
こうなると、介護は支援ではなく、支配の道具に近づいてしまいます。
介護は、本来、親本人の生活と尊厳を支えるためのものです。
しかし、家族内の力関係が歪んでいると、介護の名目で、面会や情報の出入口が一人に握られてしまうことがあります。
だから、高齢親の囲い込みは、介護問題として考える必要があります。
3 認知症の問題として見る
高齢親の囲い込みでは、認知症や判断力低下が大きな要素になることがあります。
認知症があると、親本人の意思確認は難しくなります。
昨日言ったことと今日言ったことが違う。
相手によって返事が変わる。
強く言われると、その場で同意してしまう。
不安から、近くにいる人に依存しやすくなる。
自分の財産や契約内容を十分に理解できないことがある。
このような状態では、親の言葉をどう受け止めるかが重要になります。
たとえば、ある家族がこう言ったとします。
「親が会いたくないと言っている」
「親があなたのことを嫌がっている」
「親が財産は全部こちらに任せると言っている」
「親が遺言を作りたいと言っている」
これらが本当に親本人の自由な意思なのか。
誰かに誘導されていないか。
親が十分に理解しているのか。
他の家族の存在や意向を知ったうえで判断しているのか。
その場に、利害関係のある家族だけがいなかったか。
慎重に確認する必要があります。
認知症の親の言葉を尊重することは大切です。
しかし、「親がそう言った」という言葉だけで、すべてを終わらせてしまうのは危険です。
なぜなら、その言葉を誰が聞いたのか、どのような場面で聞いたのか、どのような説明のもとで言ったのかによって、意味が変わるからです。
認知症や判断力低下がある場合、親本人の意思を守るためには、むしろ透明性が必要になります。
一人の家族だけが親の意思を代弁するのではなく、第三者の関与、記録、複数人による確認、専門職の視点が必要になることがあります。
だから、高齢親の囲い込みは、認知症問題としても考えなければなりません。
4 相続・財産管理の問題として見る
高齢親の囲い込みは、相続や財産管理の問題とも結びつきます。
親の通帳を誰が持っているのか。
年金はどのように使われているのか。
施設費や医療費はどのように支払われているのか。
親の不動産が売却されていないか。
保険や預金の手続はどうなっているのか。
遺言が作られていないか。
その遺言は、どのような経緯で作られたのか。
こうした情報が一部の家族に集中すると、他の家族は状況を確認できません。
もちろん、親の財産は親本人のものです。
子どもたちが当然に管理できるものではありません。
相続人予定者だからといって、親の財産を自由に知る権利が常にあるわけでもありません。
しかし、親の判断能力が低下している場合や、一部の家族が親の財産管理を事実上担っている場合には、不透明さが問題になることがあります。
とくに、面会遮断、情報遮断、財産管理の不透明化が同時に起きている場合には、慎重に見なければなりません。
親に会えない。
親本人に確認できない。
財産状況も分からない。
遺言や契約の経緯も分からない。
このような状態では、親本人の意思や財産が、本当に適切に守られているのか確認できません。
高齢親の囲い込みは、単に「会わせる、会わせない」の問題ではありません。
財産管理、相続、遺言、契約の問題と結びつくことで、より深刻な問題になります。
だから、社会問題として考える必要があるのです。
5 施設・病院対応の問題として見る
高齢親の囲い込みでは、施設や病院の対応も重要になります。
施設や病院は、日々の介護や医療に追われています。
その中で、家族間の争いに深く関わることは簡単ではありません。
そのため、実際に連絡を取っている家族、入所や入院の手続をした家族、費用を支払っている家族の説明を中心に対応せざるを得ない場面もあるでしょう。
しかし、そこに危うさがあります。
もし窓口になっている家族が、他の家族を意図的に遠ざけていたらどうなるでしょうか。
施設や病院に、他の家族について一方的な説明をしていたら。
「会わせると親が混乱する」と説明していたら。
「親が嫌がっている」とだけ伝えていたら。
他の家族からの問い合わせを拒むよう求めていたら。
親本人の意思確認が十分でないまま、面会制限が続いていたら。
施設や病院が一人の家族の説明だけで判断してしまうと、結果的に囲い込みに加担してしまう可能性があります。
もちろん、施設や病院を責めるだけでは解決しません。
現場には現場の制約があります。
個人情報保護の問題もあります。
親本人の安全や安静を守る必要もあります。
家族間トラブルに巻き込まれたくないという事情もあるでしょう。
それでも、介護・医療の現場には、家族の一人の説明だけで親の人間関係を決めてしまうことの危うさを知ってほしいのです。
親本人の意思は、誰が、どのように確認したのか。
面会制限は、本当に親本人の利益のためなのか。
他の家族の言い分を聞く機会はあったのか。
窓口になっている家族に、情報や権限が集中しすぎていないか。
こうした視点が必要です。
高齢親の囲い込みは、施設・病院対応の問題でもあります。
6 成年後見制度の問題として見る
高齢親の囲い込みが深刻になると、成年後見制度が関係することがあります。
成年後見制度は、判断能力が不十分な人の権利や財産を守るための制度です。
親の判断能力が低下し、財産管理や契約、施設対応などに不安がある場合、成年後見人などの第三者が関与することで、一定の透明性が生まれることがあります。
しかし、成年後見制度も万能ではありません。
後見人が選任されても、家族間の感情的対立がなくなるわけではありません。
面会問題が自動的に解決するわけでもありません。
親本人の生活や意思が、すべて理想的に守られるとは限りません。
それでも、少なくとも、一部の家族が親の財産や契約を完全に握り続ける状態を見直すきっかけにはなり得ます。
高齢親の囲い込みでは、家族の一人が「自分が親を守っている」と主張しながら、財産情報、施設対応、医療情報、親族関係の出入口を握ることがあります。
このようなとき、成年後見制度は、親本人の利益を中心に置き直すための一つの制度的手段になります。
ただし、成年後見制度を利用するかどうかは、慎重に考える必要があります。
親本人の状態。
財産管理の必要性。
家族関係の状況。
後見人に何を期待するのか。
費用や手続の負担。
本人の生活への影響。
これらを総合的に考える必要があります。
大切なのは、制度を使う目的を見失わないことです。
目的は、相手を攻撃することではありません。
親本人の権利、財産、生活、意思を守ることです。
7 「親を守る」という言葉を社会で問い直す
高齢親の囲い込みで、もっとも難しいのは、「親を守る」という言葉です。
親を守ること自体は、とても大切です。
高齢の親が病気になったり、認知症になったり、体力が落ちたりすれば、周囲の家族が支える必要があります。
危険な人から守る。
詐欺や悪質商法から守る。
体調に配慮する。
無理な面会を避ける。
穏やかな生活環境を整える。
これらは必要なことです。
しかし、「親を守る」という言葉が、他の家族を排除するために使われることがあります。
親を守ると言いながら、親の人間関係を狭める。
親を守ると言いながら、親の意思確認を一人で独占する。
親を守ると言いながら、財産情報を開示しない。
親を守ると言いながら、施設や病院との連絡窓口を握る。
親を守ると言いながら、他の家族を悪者にする。
このとき、「親を守る」という言葉は、保護ではなく支配に近づいていきます。
社会は、この違いを見分けなければなりません。
本当に親を守っているのか。
それとも、親を通じて家族を支配しているのか。
親本人の意思は確認されているのか。
他の家族との関係を断つことは、本当に親の利益なのか。
情報や財産が一人に集中していないか。
この問いを、家庭の中だけに閉じ込めてはいけません。
8 当事者だけに背負わせてはいけない
高齢親の囲い込みに苦しむ人は、孤立しやすいです。
親に会えない。
情報が得られない。
相手に説明を求めても答えない。
周囲に話しても「家族の問題」と言われる。
専門職に相談しても、すぐには動いてもらえない。
自分が騒ぎすぎなのかと悩む。
この孤立は、とても深刻です。
囲い込みの問題は、当事者だけに背負わせてはいけません。
介護関係者。
医療関係者。
法律関係者。
成年後見関係者。
行政。
地域包括支援センター。
家庭裁判所。
メディア。
そして、これから親の介護や相続に向き合う一般の人たち。
社会全体が、この問題を知る必要があります。
高齢親の囲い込みという言葉が広がれば、今まで「自分の家だけの異常な問題」だと思っていた人が、少し救われるかもしれません。
これは構造の問題なのだ。
同じように苦しんでいる人がいるのだ。
記録してよいのだ。
相談してよいのだ。
第三者を入れてよいのだ。
親本人の意思確認を求めてよいのだ。
そう思えるだけでも、当事者にとっては大きな支えになります。
9 社会問題として見ることで、解決の道が開ける
高齢親の囲い込みを社会問題として見ることには、大きな意味があります。
第一に、当事者の苦しみが言語化されます。
「親に会えない」
「情報をもらえない」
「悪者にされる」
「親の意思が分からない」
これらの苦しみは、単なる感情ではありません。
面会遮断、情報遮断、親の意思確認の不透明化、財産管理の不透明化という構造的問題です。
第二に、専門職の視点が変わります。
家族の一人の説明だけで判断してよいのか。
親本人の意思確認は十分か。
他の家族の声を聞く必要はないか。
情報や権限が一人に集中していないか。
こうした視点を持つことで、囲い込みを見逃しにくくなります。
第三に、制度利用の必要性が見えてきます。
調停。
訴訟。
成年後見制度。
地域包括支援センターへの相談。
弁護士、司法書士、社会福祉士などへの相談。
施設や病院への記録に基づく申し入れ。
家族だけで抱え込まず、外部の手段を使うことが選択肢になります。
第四に、予防につながります。
親が元気なうちに、介護方針、財産管理、連絡体制、面会の希望、遺言、任意後見などについて話し合っておく。
これにより、将来、一人の家族がすべてを握る状態を防ぎやすくなります。
社会問題として見ることは、当事者を救うだけでなく、将来のトラブルを防ぐことにもつながります。
10 まとめ
高齢親の囲い込みは、単なるきょうだい喧嘩ではありません。
親に会えるかどうか。
親の情報を知れるかどうか。
親の財産管理が透明かどうか。
親本人の意思が確認されているかどうか。
施設や病院との連絡窓口が一人に独占されていないかどうか。
これらは、家族の中だけで片づけてよい問題ではありません。
介護の問題です。
認知症の問題です。
相続の問題です。
財産管理の問題です。
成年後見制度の問題です。
施設・病院対応の問題です。
そして、親本人の尊厳の問題です。
「親を守る」という言葉は、大切な言葉です。
しかし、その言葉が、他の家族を排除し、情報を独占し、親本人の意思を見えなくするために使われるなら、それは保護ではなく支配に近づいていきます。
高齢親の囲い込みを、個別家庭の恨みや感情の問題として終わらせてはいけません。
これは、社会全体で考えるべき問題です。
同じ問題で苦しむ人が、孤立しないために。
介護や医療の現場が、一人の家族の説明だけで判断しないために。
法律や制度が、親本人の尊厳を中心に機能するために。
そして、高齢の親が、一部の家族の都合によって孤立させられないために。
高齢親の囲い込みは、言葉にする必要があります。
記録する必要があります。
社会に開いていく必要があります。
それは、家族を壊すためではありません。
親本人の尊厳を守り、家族関係を透明にし、同じ苦しみを抱える人に道を示すためです。
プロフィール
高齢親の囲い込み解放コンサルタント 白岩俊正
白岩会計事務所 代表/公認会計士・税理士/株式会社みらい 代表取締役
〒422-8005 静岡市駿河区池田616-2パレス葵102
お問い合わせはまずはメールで release.advisor@gmail.com
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