高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。


私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。

 

 

 

42.「手紙」から始めて親と再会したケース

 

はじめに

 

高齢の親が、きょうだいの一人によって「囲い込み」状態に置かれてしまう。つまり、特定の子どもが親を自宅や施設に入れたまま、他のきょうだいに会わせない状況が続く。この問題は近年、深刻化しています。

 

「親に会いたいのに、電話もつながらない。施設に行っても断られる。どうすれば…」
 

そうした相談を日々受ける中で、実際に突破口となったのが「手紙」だった、というケースがあります。

 

今回は、“手紙から始まった再会の物語”を取り上げ、そのプロセスや注意点、そして学べることを整理してみたいと思います。

 

 

 

ある相談者のケース

 

Aさん(50代女性)は、5年間も母親に会えないまま時を過ごしていました。きっかけは、兄による囲い込み。母親を兄の家に住まわせてから、他のきょうだいには住所も知らせず、電話もつながらず、連絡手段をすべて遮断してしまったのです。

 

Aさんは何度も「会わせてほしい」と兄に頼みました。しかし返ってくるのは「母は会いたがっていない」「お前は母を混乱させるだけだ」といった言葉でした。やがて兄は連絡にすら応じなくなり、Aさんは孤独感と無力感に苛まれました。

 

弁護士に相談しても

 

Aさんは一度、弁護士に相談し、内容証明を送りました。ところが「母の意思に基づいて会わない」という兄の返答により、法的な強制力を持たせることはできませんでした。成年後見人も選任されていなかったため、裁判の手も取りにくい状況。Aさんはますます途方に暮れました。

 

 

転機となった「手紙」

 

そんなとき、Aさんが思い出したのは、かつて母が「やっぱり手紙は心が伝わる」と話していたことでした。

そこでAさんは、「直接会うことを求めるのではなく、まず母への思いを言葉にして届けよう」と決意します。

 

書いた内容

 

Aさんが心がけたのは次の点です。

  1. 自分の寂しさを正直に伝える
     「お母さんに会えない日々がとても寂しい」
     「声を聞くだけでも安心できる」
  2. 兄への批判は書かない
     囲い込みの状況について不満は山ほどありましたが、それを書けば母は苦しむだけ。あえて一切触れませんでした。
  3. 母の安心を願う言葉で締める
     「お母さんが元気でいてくれることが、私の一番の願いです」

 

届け方

 

住所は分からなくても、兄の家を突き止めて投函することはできました。直接渡そうとすれば拒絶される可能性が高いため、普通郵便で送りました。

 

 

 

再会までの道のり

 

最初の手紙に返事はありませんでした。しかし、Aさんは諦めず、月に一度、短い手紙を送り続けました。

 

3通目を出したころ、ある日突然、兄からメールが届きました。
 

「母がお前に会いたがっている。短時間なら来てもいい」

 

Aさんは半信半疑でしたが、指定された日時に兄の家を訪れると、そこには少し痩せた母が座っていました。母は涙ぐみながら「手紙を読んで、本当に会いたくなった」と言ったのです。

 

再会が実現した理由

  • 母は「会わせてもらえない」ことを受け入れざるを得なかったが、娘の気持ちを知ることで自分の意思を表に出せた。
  • 手紙は兄を介さず母に届いたため、母自身の反応を引き出すことができた。
  • 兄も「母が本当に望んでいる」と分かったことで、拒みきれなくなった。
 

 

専門家の視点からの考察

 

1. 手紙は「静かな対話」

電話や直接訪問は、拒絶やトラブルに発展しやすい方法です。対して手紙は、受け取った側が自分のペースで読めるため、感情的な摩擦を避けやすい。特に高齢者には、何度も読み返せる安心感があります。

 

2. 批判や要求を避けることが大切

手紙は「武器」にもなります。感情的に相手やきょうだいを非難する内容は逆効果です。大切なのは、親に寄り添う気持ちを素直に書くこと。相手の心を動かすのは、要求や論理よりも、温かい情です。

 

3. 「積み重ね」が信頼を生む

1通で効果を期待するのではなく、継続することが鍵です。短くてもよいので、定期的に送る。これが「忘れていないよ」という安心につながります。

 

 

 

注意すべきリスク

 

もちろん、すべてのケースで手紙が有効とは限りません。

  • 親の認知症が進んでいて、内容を理解できない場合
  • 囲い込むきょうだいが手紙を隠す場合
  • 「しつこい」と受け止められて逆効果になる場合

こうしたリスクを踏まえたうえで、慎重に取り組むことが必要です。

 

 

まとめ

 

「親に会いたい」と願っても、きょうだいの壁に阻まれる。そんなとき、直接的な要求ではなく、静かで誠実なアプローチ=手紙が突破口となる場合があります。

 

今回のケースのように、手紙を通じて親の心が動き、再会が叶うこともあるのです。

 

もし同じように悩んでいる方がいれば、手紙という方法を一つの選択肢として思い出してください。そこから始まる小さな一歩が、大きな再会につながるかもしれません。

 

 

 

 

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