高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。
私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。
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(期間: 2025/8/2土~2025/8/31(日))
42.「手紙」から始めて親と再会したケース
はじめに
高齢の親が、きょうだいの一人によって「囲い込み」状態に置かれてしまう。つまり、特定の子どもが親を自宅や施設に入れたまま、他のきょうだいに会わせない状況が続く。この問題は近年、深刻化しています。
「親に会いたいのに、電話もつながらない。施設に行っても断られる。どうすれば…」
そうした相談を日々受ける中で、実際に突破口となったのが「手紙」だった、というケースがあります。
今回は、“手紙から始まった再会の物語”を取り上げ、そのプロセスや注意点、そして学べることを整理してみたいと思います。
ある相談者のケース
Aさん(50代女性)は、5年間も母親に会えないまま時を過ごしていました。きっかけは、兄による囲い込み。母親を兄の家に住まわせてから、他のきょうだいには住所も知らせず、電話もつながらず、連絡手段をすべて遮断してしまったのです。
Aさんは何度も「会わせてほしい」と兄に頼みました。しかし返ってくるのは「母は会いたがっていない」「お前は母を混乱させるだけだ」といった言葉でした。やがて兄は連絡にすら応じなくなり、Aさんは孤独感と無力感に苛まれました。
弁護士に相談しても
Aさんは一度、弁護士に相談し、内容証明を送りました。ところが「母の意思に基づいて会わない」という兄の返答により、法的な強制力を持たせることはできませんでした。成年後見人も選任されていなかったため、裁判の手も取りにくい状況。Aさんはますます途方に暮れました。
転機となった「手紙」
そんなとき、Aさんが思い出したのは、かつて母が「やっぱり手紙は心が伝わる」と話していたことでした。
そこでAさんは、「直接会うことを求めるのではなく、まず母への思いを言葉にして届けよう」と決意します。
書いた内容
Aさんが心がけたのは次の点です。
- 自分の寂しさを正直に伝える
「お母さんに会えない日々がとても寂しい」
「声を聞くだけでも安心できる」 - 兄への批判は書かない
囲い込みの状況について不満は山ほどありましたが、それを書けば母は苦しむだけ。あえて一切触れませんでした。 - 母の安心を願う言葉で締める
「お母さんが元気でいてくれることが、私の一番の願いです」
届け方
住所は分からなくても、兄の家を突き止めて投函することはできました。直接渡そうとすれば拒絶される可能性が高いため、普通郵便で送りました。
再会までの道のり
最初の手紙に返事はありませんでした。しかし、Aさんは諦めず、月に一度、短い手紙を送り続けました。
3通目を出したころ、ある日突然、兄からメールが届きました。
「母がお前に会いたがっている。短時間なら来てもいい」
Aさんは半信半疑でしたが、指定された日時に兄の家を訪れると、そこには少し痩せた母が座っていました。母は涙ぐみながら「手紙を読んで、本当に会いたくなった」と言ったのです。
再会が実現した理由
- 母は「会わせてもらえない」ことを受け入れざるを得なかったが、娘の気持ちを知ることで自分の意思を表に出せた。
- 手紙は兄を介さず母に届いたため、母自身の反応を引き出すことができた。
- 兄も「母が本当に望んでいる」と分かったことで、拒みきれなくなった。
専門家の視点からの考察
1. 手紙は「静かな対話」
電話や直接訪問は、拒絶やトラブルに発展しやすい方法です。対して手紙は、受け取った側が自分のペースで読めるため、感情的な摩擦を避けやすい。特に高齢者には、何度も読み返せる安心感があります。
2. 批判や要求を避けることが大切
手紙は「武器」にもなります。感情的に相手やきょうだいを非難する内容は逆効果です。大切なのは、親に寄り添う気持ちを素直に書くこと。相手の心を動かすのは、要求や論理よりも、温かい情です。
3. 「積み重ね」が信頼を生む
1通で効果を期待するのではなく、継続することが鍵です。短くてもよいので、定期的に送る。これが「忘れていないよ」という安心につながります。
注意すべきリスク
もちろん、すべてのケースで手紙が有効とは限りません。
- 親の認知症が進んでいて、内容を理解できない場合
- 囲い込むきょうだいが手紙を隠す場合
- 「しつこい」と受け止められて逆効果になる場合
こうしたリスクを踏まえたうえで、慎重に取り組むことが必要です。
まとめ
「親に会いたい」と願っても、きょうだいの壁に阻まれる。そんなとき、直接的な要求ではなく、静かで誠実なアプローチ=手紙が突破口となる場合があります。
今回のケースのように、手紙を通じて親の心が動き、再会が叶うこともあるのです。
もし同じように悩んでいる方がいれば、手紙という方法を一つの選択肢として思い出してください。そこから始まる小さな一歩が、大きな再会につながるかもしれません。
自己紹介など
1. 自己紹介
https://www.ameba.jp/profile/general/release-advisor/
2.高齢親の囲い込み問題について体系的な説明(ChatGPT DeepResearchより)
https://ameblo.jp/release-advisor/entry-12919635429.html
3.出版済の電子書籍キンドルリストはこちら
https://ameblo.jp/release-advisor/entry-12920372756.html
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