映画深読み つづきです。
ラストシーン他
ネタバレ含みますのでご注意ください。
『ミセス・ハリス パリへ行く』
映画の中で
青は「労働者」を象徴していましたが
対する存在として
黒が象徴していたのが力を持つ人
「権力者」です。
ロンドンで家政婦だった
労働者のミセス・ハリス。
対して 雇い主の3人は皆
初見で黒を身につけていました。
彼女を門前払いしようとした
クリスチャン・ディオールの支配人も
黒のスーツを着ていたし
彼女が1番気に入った
赤いドレスを横取りした
意地悪なごみ処理王夫人も
全身黒の服で 帽子も黒でした。
映画前半 ミセス・ハリスは
黒の人たちに
たとえ無碍な扱いをされても
見て見ぬふりをする
諦める
押し黙る
気にしないわ
などと自分に言い聞かせて
黒の人たちに従っていました。
でも バリへ行ってからの彼女は
思ったことを素直に口にして
どんどん解放的になっていきます。
個人的には緑と赤が調和して
優しさや穏やかさを持ちつつ
毅然と振舞うようになりました。
青と黄色で
一見不幸な出来事も好転換を果たし
社会的にも家政婦という仕事に対して
自信と誇りを持ちました。
最終的に
ミセス・ハリスと同じ立場だった
労働者たちはストライキで勝利し
意地悪なごみ処理王夫人は
権力者だった夫の失脚により退場。
彼女を追い払おうとした支配人
さらには
クリスチャン・ディオール本人
そうした社会的地位を持つ黒の人とも
彼女は対等に渡り合うようになり
彼らも彼女に一目置くようになりました。
途中 彼女が
クリスチャン・ディオールを
「牛乳屋さんに似てるわ」
ストリッパーの踊り子を
「おばさんに似てるわ」
と言う描写があるのだけれど
これは彼女が身近な人に喩えることで
社会的な地位があるかどうか
仕事の職種によっても
上下↕ ではなく
対等 ⇔ に見ている
ことを表しているのだと思います。
そんな彼女が出来上がったドレスを持って
ロンドンに帰国すると
雇い主の2人は服の色がもう黒ではなく
薄い色になっていました。
もう1人は
彼女が「見て見ぬふり」をしていた原因
がなくなっていました。
そして
自分を見下したり 都合よく使い
「Invisible 透明人間」扱いしていた
身勝手で失礼な黒の人に対して
それまで出来なかった
本心をハッキリ伝える
見下す相手にNOを突き付ける
理不尽な状況を自ら終わりにする
といった態度を 彼女は
キッパリ! 堂々と!
取れるようになったのです。
こんな風に
ドド―――ン!!!とね。
また この映画では
カール・マルクスの著書
「存在と無」
他にも
「即自存在」「対自存在」「実存主義」
などという言葉が出てきて
ちょっと難しいのだけど
自分の在り方を見つめ直す
こともテーマなのだと思う。
ミセス・ハリスはパリで変化する途中
黒地の服を着ていたし
存在定義や対自存在について
話していた人たちもまた
黒の入った服や持ち物を身に着けていたし。
そんなことからも
黒は「存在」や「在り方」
も象徴していると感じました。
「あなたはどんな存在ですか」
「どんな在り方で生きますか」
この問いに対して
自分で考えること
自分で出した答えに従って
行動すること
が大切なのでしょう。
ミセス・ハリスはラストシーンで
しっかり黒を身につけ
映画序盤とは雰囲気 激変!
周囲の彼女を見る目もすっかり変わりました。
色を混ぜていくと 黒 になりますね。
死を表す色も 黒
緑 赤 青 黄 黒
他にも色々な色の経験を重ね
最期に
どんな深みのある黒になっているか
それが 一人一人 唯一無二の
生き様の色 となるのでしょうね。
所々で名画のオマージュも感じ
文字通り 色々に楽しめる映画でした♬
最後に黒で思い浮かんだカード
3枚を提示して終わります。
~ 映画『ミセス・ハリス パリへ行く』 深読み 完 ~